ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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地中鮫 ゲオザーク 登場!


第十章 学園祭のライオンハート
第60話「地の鮫」


ガイア「行くぞ、みんなっ!」

 

ダイナ「おう!」

 

ティガ「ああ!」

 

 

ステージ上の等身大のガイア、ダイナ、ティガの3人は同じく等身大のガンQ、ダイゲルン、ゴルザに向かっていく。

 

今日、我夢達は冥界の旧首都ルシファードにある大型コンサート会場にて『冥界特撮シリーズ ウルトラマン』のヒーローショーに参加していた。

 

通常はアトラクション担当のスーツアクターが演じているのだが、今回は我夢、一誠、大悟は各々が変身するウルトラマンのスーツを着て演技している。勿論、怪獣達も着ぐるみだ。

我夢達も学園祭間近ということもあって断ろうとしたが、懇願するサーゼクスに負け、こうして出演することになったのだ。

 

 

「さあ、みんな!3人を応援して!せーのっ!」

 

『頑張れーー!!』

 

 

司会のお姉さんの声に合わせて客席の子供達は声援を送る。

子供達の声援を受け取ったティガ達は怪獣達を蹴り飛ばすと、バック転で距離を取る。

 

 

ティガ「チャッ!!」

 

ダイナ「デェアッ!!」

 

ガイア「デヤッ!!」

 

ドォォォォォンッ!

 

 

3人のウルトラマンの光線ポーズ(ゼペリオン光線、ソルジェント光線、フォトンエッジ)に合わせて背後のスクリーンから光線エフェクトが放たれる。

怪獣達は苦しむ演技をしながらステージ下のパイプから噴き出す煙に紛れて舞台裏にはけていった。

 

 

木場「おのれ……。覚えていろッ!」

 

 

木場扮する黒衣の剣士───ダークネスナイト・ファングは捨て台詞を吐くと、漆黒のマントを翻してステージの段差にある舞台裏に通じる抜け穴へ飛び込んで退場する。

 

こうして、老若男女見守る熱いヒーローショーは大盛況のもと幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ふぅ~」」」

 

 

ひと通りの出番が終わってくたびれた我夢、一誠、大悟は舞台裏の楽屋で一息ついていた。

というのも我夢達3人の出番はヒーローショーだけでなく、終わった後にあるサイン会と撮影会もあり、本来なら30分の予定だったが、予想以上にファンが多かったので1時半もかかってしまったのだ。それも1人1人丁寧に。

なのでこうしてくたびれている訳で、スタッフが用意してくれていたタオルと飲料水は有難いものだ。

まさに砂漠をさ迷った先に見つけたオアシスだ。

 

体の火照りが静まり出したところで、我夢が菓子をつまみながら言う。

 

 

我夢「握手会なんだけどさ。女の人、だいぶ大悟の方に流れてなかった?」

 

一誠「あ~確かに……」

 

 

我夢の一言に一誠は合いの手をつく。

大悟が変身するティガは男の子のファンもいるが、お母さん含めた女性ファンが特に多く、ティガが初参戦した回の視聴率は現時点で最高記録を叩き出したという。

変身前も後もイケメンである大悟の魅力のおかげだろう。

 

 

大悟「そうかな?多いとは思ったけど、2人にも沢山女性ファンが───」

 

我夢「ははっ、謙遜するなよ!性別問わず支持してくれるファンがいるのはいいことじゃないか!」

 

一誠「俺達にも分けて欲しいくらいだぜ。よっ、人気者!イケメン総大将!」

 

 

そこまで誉め殺しされて流石に恥ずかしくなった大悟は「いじるなよ」と一誠を小突く。

だが、人気があるのは嬉しい限りで表情筋が緩むのを抑えきれなかった。誉められて嬉しいことは誰もが持つ人の本能だろう。

 

 

一誠「ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

我夢「行ってらっしゃい」

 

 

そうこう談笑していると、一誠はそう言って立ち上がる。ガブガブと水分補給したものだから尿意を催すのは当然と言えば当然だろう。

我夢はごく自然に返すが───

 

 

大悟「ファンが欲しいからって、女子トイレに入るなよー。迷走期みたいにーー……」

 

 

大悟はニヤニヤと冗談を吐く。

大悟は我夢から一誠の迷走期(変態時代)のことは聞いている。先程のいじりを絡めたお返しのようだ。

 

 

一誠「入るか!馬鹿ッ!!」

 

 

痛い黒歴史を突かれた一誠は顔を真っ赤にしてツッコむと、足早に楽屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁだぁぁぁーーーーーッ!!!」

 

一誠「ん?」

 

 

用を足してスッキリした気分で廊下を歩いていると、近くから子供の喚く声が聞こえてきた。

気になった一誠は裏口の扉の陰からこっそり覗くと、駄々をこねる男の子とその母親らしき女性が困った様子でスタッフと話していた。

 

 

「何とかなりませんか……?」

 

「すみません、本日の整理券配布は終了しまして……」

 

「そうなんですか……。ほら、もう終わりだって」

 

「やだやだッ!!ダイナにあいたいよーーーッ!!」

 

 

母親から諦めの言葉を告げられた男の子はよりいっそう泣きじゃくる。

意地でもここを離れたくない様子で、母親とスタッフも困り果てていた。

こういったイベントではよくあることで今回が初めてではない。一誠達も整理券無しでのサインや握手は固く注意されており、特別に許してしまうとそれに便乗してよってたかり、不平等が生じるからだ。

 

 

一誠「……」

 

 

最初こそ立ち去ろうとした一誠だったが、すぐに思い留まった。

男の子の泣き叫ぶ自身(ダイナ)の名前──そして、男の子が大事そうに持つダイナのソフビ人形。汚れや塗装剥げはあるものの愛着を持ってくれているのはひと目でわかった。

それを見て胸の底から込み上げるものを感じた一誠は自然とリーフラッシャーをかざし、等身大のダイナへ変身した。

 

 

ダイナ「どうしたんすか?」

 

 

裏口から身を出したダイナは声をかけると、スタッフと親子は振り返る。

すると──

 

 

「あ!ウルトラマンダイナだ!」

 

 

一転して泣き止んだ男の子はぱあっと満開の笑顔を咲かせると、ダイナに駆け寄る。

ダイナはよしよしと男の子の頭を撫でていると、スタッフは困り顔で説明する。

 

 

「実はこちらの方達がサイン会に間に合わなかったようでして……」

 

ダイナ「なるほど……。あ、サインペンなんかあります?」

 

「あ、はい。ありますよ」

 

 

事情を呑み込んだダイナはスタッフからサインペンを受け取ると、男の子を一旦自分から離し、片膝をついて目線を男の子に合わせる。

汚れない純粋な眼差しを見つめ返しながら問いかける。

 

 

ダイナ「君、お名前は?」

 

リレンクス「リレンクス!」

 

ダイナ「リレンクス……よ~し、リレンクス。俺に会いに来てくれてありがとう!ところで、君はどうして俺が好きなんだ?」

 

リレンクス「うーんとね……ティガもすきだけど、ダイナはおとこっぽくてかっこいいから!あかいのがすき!」

 

ダイナ「そうか、そうか。こんな熱心なファンに出会えて嬉しいぜ。記念といっちゃあだけど、この帽子にサインしてもいいかな?」

 

 

憧れの存在のお願いにリレンクスは断る選択肢はなく、うんうんと頷いた。

ダイナはリレンクスから預かったダイナを模した帽子にダイナのウルトラサインを書くと、それをリレンクスの頭に被せた。

リレンクスは目をキラキラと輝かせると、帽子を取って母親に自慢するように見せた。

 

 

「おかーさん、みてみてー!本物のダイナのサインだよー!」

 

「よかったわね~……。本当にありがとうございます!」

 

 

母親は男の子の頭を撫でると、ダイナに感謝の言葉を告げる。

ダイナは照れくさそうにいやいやと手を振ると、再びリレンクスに視線を向ける。

 

 

ダイナ「いいか、リレンクス。すぐ泣いちゃ駄目だ。ウルトラマンは呼べばいつでも来てくれる訳じゃない。助けられない時だってある。だからこそ精一杯頑張って、身近にいるお母さんやお父さん、お友達を守れるように強くなるんだ。約束できるな?」

 

リレンクス「うん!」

 

 

ダイナからの約束にリレンクスは元気一杯に誓うと、両腕のクロスタッチを交わした。

 

その後、母親に連れられて帰るリレンクスにダイナとスタッフは手を振って見送った。

親子の姿が見えなくなるのを合図に変身解除した一誠は背伸びをしていると、スタッフは困惑した顔で苦言を口にする。

 

 

「兵藤さん。これからこういうのは控えてください。全ての人に対応するのは無理ですから……」

 

一誠「すいません……」

 

 

スタッフの言い分に一誠はわかってたはいたものの素直に謝る。

しかし、一誠にはルールを破ってでも、あの小さなファンを見捨てることは出来なかった。

子供の悲しむ姿は見たくなかったのだ。

 

スタッフも気持ちを汲んだのかふぅと軽く息を吐くと、それ以上何も言わず持ち場へ戻っていった。

事が済んだ一誠も舞台裏に戻ろうと振り返ると、裏口の扉にリアスが寄っ掛かっていた。

 

 

一誠「あ、部長」

 

リアス「最後まで見させて貰ったわよ。あれは少し軽率すぎたわね」

 

 

そう咎められ落ち込む一誠だったが、リアスは「でも」と付け加えると一誠に歩み寄り──

 

 

リアス「少なくともあの子の夢は守ったわ。あなたは立派なヒーローよ」

 

一誠「部長……」

 

 

にっこりと微笑むリアスの賛辞に一誠はたちまち笑顔になる。

心の底から確信した。───ああ、この人は俺をわかってくれてると。

 

 

リアス「さ、そろそろ帰るから支度しなさい。遅れてもしらないわよ?」

 

一誠「うっす!」

 

 

小悪魔な笑みを浮かべるリアスに一誠は運動部の部員のように気持ちのよい返事をすると、リアスと一緒に舞台裏へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。大悟は借りているアパートの自室で山のように積もったファンレターに目を通していた。

ちなみにこのアパートの部屋は前に我夢が借りていた部屋である。

 

1枚1枚読み、必要とあらばお返しのレターを書く。

逐一読む必要はないのだが、書かれている内容はどれも似通ったものだが、その1枚1枚に書かれている応援のメッセージは大きな支えになるのだ。

 

 

大悟「ふぅ~ぅうん……!終わったーー!」

 

 

それから時計の長針が2時を指す頃。大悟は大きく唸りながら背伸びをすると、ソファーの背もたれに体重を乗せる。

かれこれ4時間以上513枚のファンレター全てに返事を書いたのだからくたびれるのも無理はないだろう。

 

 

大悟「……?」

 

 

達成感に満たされた大悟は紙コップに淹れてあるコーヒーを飲んでいると、コート掛けにかかっている自分の上着のポケットに白い紙が挟まっているのに気付いた。

気になった大悟はコーヒーをテーブルに置いて上着のポケットからそれを抜いた。

その白い紙は丁寧に封がされた手紙だった。どこを見ても宛名や差出人の名前はなく、無地の真っ白な手紙だった。

 

 

大悟「……あれ?こんな手紙貰ったかな?うおっ!?」

 

 

見覚えない手紙に大悟は首を傾げていたその瞬間、手紙の封が勝手に開き、中から目映い光が漏れる。

驚きのあまり思わず手紙を落としてしまった大悟は唖然としていると、光の中から人の形をしたホログラムが現れた。

それと同時に光は収まり、ホログラムの人物の全貌が露になった。銀髪に鋭い眼をした長身の少年だった。

思い当たりがない大悟がますます困惑する中、その少年のホログラムはペコリとお辞儀をして挨拶する。

 

 

ヴァーリ『ごきげんよう。はじめまして、長野 大悟。俺は禍の団(カオス・ブリゲード)の一員、ヴァーリ・ルシファー』

 

大悟「……ヴァーリ?ッ!そうか、お前が……」

 

 

見覚えがない人物だったが、その名前を聞いてピンときた大悟はアザゼルに聞かされた情報を思い出す。

───ヴァーリ・ルシファー。初代魔王・ルシファーの直属の血筋であり、恐るべき相手の力を半減させる白龍の力を持つ存在。

そして、テロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員である。つまりは自分達の敵である。

 

敵の出現に警戒心を強める大悟だが、ヴァーリはその心中を見透かしているのか高らかに笑った。

 

 

ヴァーリ『ハッハッハッ……!警戒しないで頂きたい。これはただのホログラム。君に害を与える細工は一切していない。……しかし、君だったんだね。超古代の光を受け継いだのは……』

 

大悟「何が望みだ!?言えッ!」

 

ヴァーリ『望み?まあ、俺は強いて言うなら……君のファン。そして、()()()()()()を持っている。気になるんだよ。君が()()()()()()()()()()()()を』

 

大悟「何?」

 

 

問いかけに対する返答とは全く違う意味深な返答に大悟は眉をしかめる。

──君と同じもの?どうやって光になれるのか?

大悟は眉間にしわを寄せて考えていると、ヴァーリは手をかざし、何かの地図を見せる。

 

 

大悟「これは……!」

 

 

それを見た大悟はすぐに思い出した。その遊園地は昔、家族で行ったことがある遊園地の地図だった。

思い当たる反応を見せたのを見計らったヴァーリは指示を出す。

 

 

ヴァーリ『知っているとは思うが、これは九州の熊本にある遊園地『ドンシャインランド』だ。明日の午後15時丁度、ランド内の中央広場に来い。わかっているとは思うが、誰にも話さずたった1人で来るんだ』

 

大悟「もし、来なかったら……?」

 

ヴァーリ『それは君の判断に任せる。ただ、明日は平日とはいえ設立55周年のイベントが開催される。いつもよりも幼い子供もわんさかといるだろう……』

 

大悟「まさかッ!」

 

ヴァーリ『さぁね?ご想像にお任せするよ』

 

 

ヴァーリのとぼけた反応から察した大悟は睨み付ける。

つまり、こう言いたいのだ。──こちらは()()()()()()()()を人質にとっていると。

もし、妙な動きを見せればランド内の人々の命は無い…。大悟は込み上げる怒りで歯を噛み締める中、ヴァーリは不敵な笑みで淡々と話し続け──

 

 

ヴァーリ『詳しい指示は当日、同封しているインカムで伝える。忘れずに着けてくるんだ。それでは、また明日会おう』

 

大悟「待てッ!」

 

 

大悟を制止しようと手を伸ばすが、すんでのところでホログラムは消えた。

やりきれない怒りを堪えながら大悟は残された手紙を拾い上げて中を確認すると指示通り、丁寧にビニールで包装されたインカムが入っていた。

大悟はそれを取り出すと、ぷるぷると手を震わせながら手紙を握り締めた。

自分達と全く無関係な人々を人質にとる卑劣なやり方に怒りを抑えきれずにいるのだ。

 

激しい怒りと同時に大悟は冷静にヴァーリの企んでいることを考える。

この脅迫は明らかに罠で、何が待ち受けているかわからない。しかし、逆らおうともランド内の人々が人質にとられている。

ヴァーリは戦闘狂で、戦わせる為なら非常な手段をも取る男なのは知っている。

 

だが、反対に言えば脅迫をしてまで自分を呼び寄せたいということだ。

敵にバレるリスクを負ってまでやり遂げたいその行動理念が大悟にはわからなかった。

 

 

大悟「(奴は何が狙いなんだ……?)」

 

 

──戦いたいのか。それとは別か。ヴァーリの企みについて色々と考えるが、無情にも時間が過ぎていくだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明け翌日。我夢達はいつも通り駒王学園に登校し、朝のHRに入っていたのだが───

 

 

「えー皆さん。1時限目の歴史の授業ですが、長野先生が体調不良でお休みとのことなので自習となります」

 

『えーー!!?』

 

 

担任の教師から出た言葉にクラス中は湧き立つ。

普通なら授業が無くなって喜ぶのだが、この歴史学だけは別だった。

教え方がわかりやすいのはさながら、大悟のかっこよさもあって生徒から大人気なのだ。

それが無くなったとなれば落ち込むのも無理ないだろう。

 

 

「えー!私、長野先生にお弁当食べてもらおうと思ってたのにー」

 

「あたしもー」

 

 

特にイケメンに目がない一部の女子生徒達にはショックなようで、口々に残念がる。

教師になってから大悟は休み時間に押しかけてきた女子生徒達からプレゼントやら手料理を渡されている。大悟は柔らかく断っているのだが、収まるどこか更にプレゼントがグレードアップしている模様だ。

 

 

一誠「風邪か?知ってたか、我夢」

 

我夢「さあ?初耳だよ。昨日まで元気だったのに……」

 

 

大悟が学校を休むことに大きく反応した我夢達もだった。話どころか、誰1人携帯やXIGナビにも連絡が来ていなかったのだ。

どうしたんだろうと一誠と我夢は首を傾げていると、何かを察したイリナはハッと声をあげる。

 

 

イリナ「きっと、まともに連絡出来ないくらい酷いのよ!ああ…!今でも苦しんでるんだわ!」

 

アーシア「はわっ!?そうなのですね!大悟さん、大丈夫でしょうか……?」

 

ゼノヴィア「よし!学校が終わったら真っ先にお見舞いに行こう!教会時代の看病を振るうぞー!」

 

 

一致団結したイリナ、アーシア、ゼノヴィアはおー!と掛け声をあげる。

変に盛り上がる3人を横目に我夢は「まともに連絡出来ないなら学校に連絡がきてないだろ」と心中でツッコむと、大悟のことを考える。

単なる風邪だとは思うが、体調を崩したと聞けば親友として不安なるのは本当だ。

 

 

我夢「(帰りにお見舞いにでも行くか……)」

 

 

そんなことを考えながら、我夢は窓から差し込む暖かい光を眺めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時刻が進み午後15時近く。ここ、熊本県のとある地域には『爆裂戦記ドンシャイン』という特撮ヒーローを取り扱った遊園地───『ドンシャインランド』がある。

設立55周年キャンペーンとあって平日にも関わらず、多くの人々で賑わっていた。

 

 

大悟「……」

 

 

人が溢れ変える遊園地の中央広場に長野 大悟の姿はあった。指示通り、インカムを耳に装着し、誰にも告げずたった1人でやって来た。

「これからどうなるのだろう」と不安な気持ちを抱きつつ、神妙な面持ちで一定間隔で刻まれる腕時計の針を眺め、次の指示が出されるのを待っていた。

 

そして、時計の針が丁度15時きっかりに差し掛かった時、中央広場に建てられている時計からポーンと午後15時を報せる音が鳴った。

「いよいよか」と呟きながら大悟は気を引き締めて待ち構えた。

周囲の人混みの1人1人に目をやって、迎えに来るであろう人物を探す。

 

 

大悟「?」

 

 

しかし、どうしたことか。いくら待っても迎えに来る人物は来なかった。

腕時計ではとうに午後15時は過ぎており、今は15時10分だ。中央の時計を見ても同じ時間なので自分の時計がずれている訳ではないのがわかる。

どうしたのかと思った矢先、悲鳴と共に人々が逃げ出し始めた。

 

 

大悟「何だッ!?」

 

 

明らかに不審な行動に大悟は驚きながらも向かってくる人々とは反対の方向へ走り出す。

スタッフの避難誘導と悲鳴を耳にしながら人混みをかき分けながら進むと、パニックの正体が視界に映った。

 

それは地中からそびえ立つ大きな鮫のヒレだった。

比喩とかではなく、まごうなき生き物のそれで、巨大な影をつくる程の規模を誇っていた。

巨大なヒレはまるで水中の泳ぐ鮫のように地中を掘り進めながら、真っ直ぐこちらへ向かってきていた。

大悟はタイミング悪く出現した怪獣に眉をしかめていると、インカムからヴァーリの声が聞こえてくる。

 

 

《ヴァーリ「やあ、長野 大悟。遅れてしまって申し訳ない」》

 

大悟「ヴァーリ!どこにいる?!姿を見せろッ!」

 

《ヴァーリ「それは言えない。俺の計画が台無しなるからね。……それよりも俺の作ったゲオザークに驚いてくれて嬉しいよ」》

 

大悟「…ゲオザーク?あの怪獣はロボットなのか!?」

 

《ヴァーリ「その通り。フェンリルの遺伝子情報を基に作った地中襲撃兼偵察ロボットさ」》

 

 

ヴァーリは軽い口調で話す。

地中鮫───ゲオザークはヴァーリが作り出した怪獣。

目的はわからないが自分とは関係ない人々を巻き込んでいる事態に大悟は激しい怒りを抑えながら訊ねる。

 

 

大悟「何が狙いだ…!」

 

《ヴァーリ「そんな話をしてる暇があるかな?後ろを見てみろ」》

 

 

ヴァーリに言われるがまま大悟は後ろを振り向くと、その視線の先には2人の男女スタッフが切羽詰まった状態で話していた。

大きく話すものなので、会話が自然と耳に流れてくる。

 

 

「避難状況はどうなってる?!」

 

「場内は大丈夫です。けと、まだ観覧車に人が!」

 

大悟「!?」

 

 

その情報を聞いた大悟は目を丸くすると、観覧車を見上げる。

目を凝らすと、ゆっくりと回り続ける観覧車のゴンドラの中には確かに取り残された人々がいた。

迫りくるゲオザークに人々は恐怖し、ある者は騒ぎ、ある者は体を寄せあって震えていた。

しかも最悪なことに観覧車はゲオザークの進路に入っていた。このままではゲオザークと衝突してしまう。

 

 

《ヴァーリ「どうした?変身しないのか?このままだとあそこにいる全員がゲオザークの餌食になってしまうぞ?」》

 

 

インカムからは変身するようにヴァーリが煽る。

これを聞いた大悟は察した。そう、ゲオザークと戦わせるのがヴァーリの狙いだったのだと。

ウルトラマンにならざる得ないこの状況を作るのが目的だったのだ。

 

このまま変身して戦えば観覧車にいる人々は救える。

しかし、それは同時にヴァーリの罠に入るのも同然である。目的はわからないが、嫌な予感がするのは確かだ。

姑息なやり方に大悟は歯を噛み締める。

 

 

大悟「…ッ」

 

 

だが、迷って暇はない。罠だとはわかっているが、目の前で消えそうな命を見捨てる訳にはいかない。

意を決した大悟は近くのトイレの物陰に隠れると、懐からスパークレンスを取り出す。

いつも両腕は交差させているがそうはせず、両腕を大きく回転させて斜め上に掲げる。

スパークレンスのウィングパーツが展開し、露になったレンズから溢れる光に包まれ、ウルトラマンティガに変身した。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

 

地上に降り立ったティガはファイティングポーズを取ると、土煙を巻き上げながら向かってくるゲオザークのヒレを真っ正直から受け止める。

後ろ足に力を込めて何とか押し返そうとするが──

 

 

ティガ「ジョワァッ!?」

 

 

推進するゲオザークは効果がなく、力負けしたティガははね飛ばされてしまう。

障害がなくなったゲオザークは遊園地の方へ進んでいく。

 

 

ティガ「──ハッ!フッ!」

 

 

ならば、ティガは両腕を額の前で交差させてティガクリスタルを赤く輝かせ、そのまま両腕を振り下ろすと、全身真っ赤のパワータイプにタイプチェンジした。

筋骨粒々の逞しい姿になったティガは後ろからゲオザークのヒレに掴みかかり、行かせまいと後ろへ引っ張っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦いの様子はニュース番組の緊急生中継にて報道されていた。

 

 

我夢「ティガ!?どうして熊本に……」

 

 

当然、この緊急生中継は昼休みに入った我夢達にも届いていた。

オカルト研究部の部室にて一誠のスマホを取り囲む一同は驚いていた。休んでいるはずのティガ───大悟が何故か遠く離れた熊本で突然現れた怪獣と戦っているのだから。

大悟の欠勤と同じ日に起きたこの戦い───皆、偶然とは思えなかったのだ。

 

 

朱乃「部長。ただ事ではありませんわね」

 

リアス「ええ、何者かによる陰謀が絡んでるのは間違いないわね。私達も行きましょう、熊本に」

 

 

朱乃の意見に頷いたリアスはそう言うと、全員、部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲオザークのヒレを掴みながら正面に移動したティガは引っ張り上げようと両腕に力を込める。

 

 

ティガ「ヂャアッ!」

 

 

思いっきり力を込めて上へ引っ張ると、地中に埋まっていたゲオザークの後半身が露になる。

ティガは後ろに回り込むと同じように上へ引っ張り、ゲオザークを引っ張り上げた。

完全に露になったゲオザークは青い瞳を持ち、鼻先がドリルに似た形状となっている巨大な鮫に似た姿をしていた。

 

 

ティガ「ヂャッ!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

ティガはゲオザークを重量上げのように高々と持ち上げると、地面へ放り投げる。

地面に叩きつけられたゲオザークは痛がる様子も見せず、すぐさま起き上がる。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

ティガ「フッ!」

 

 

身構えるゲオザークに合わせてティガはファイティングポーズを構える。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

間合いを計って両者は睨み合う中、ゲオザークは胸鰭と尻尾を叩きつけた反動で飛び上がると、体当たりを仕掛ける。

 

 

ドンッ!

 

ティガ「ヂャアァァッ!?」

 

 

胸元に直撃したティガは火花を散らすと、仰向けに倒れる。

背中を地面にぶつけたティガが苦しむ中、ゲオザークは再び飛び上がって体当たりを仕掛ける。

 

 

ティガ「チャッ!」

 

ドォォンッ!

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

 

そうはさせないとティガは右手の手先からくさび型の光弾──ハンドスラッシュを放つ。

直撃したゲオザークは体勢を崩すと、そのままジェットコースターのレーンを崩しながら倒れる。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

ティガ「ッ!」

 

 

すぐさま起き上がったゲオザークはジェットコースターの残骸を踏み潰しながら地面を這ってティガの前に出る。すると、ゲオザークは胸鰭で地面を叩いて飛び出ると、鋭い歯で噛みつきにかかった。

ティガは前転してゲオザークの後ろに回り込むと、右手でヒレを掴みながら上に乗っかった。

 

 

ティガ「チャッ!ハッ!」

 

 

真上に乗っかったティガは拳と蹴りの応酬で攻め立てる。パワータイプの怪力を前にゲオザークは抵抗出来ず、胸鰭と尻尾をジタバタさせることしか出来なかった。

そして、額の皮膚に掴みかかると、ギシギシと音を立てながら力を込め───

 

 

ティガ「ヂャアッ!!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

思いっきり剥ぎ取った。火花を散らして皮膚が剥ぎ取れた箇所は内臓の代わりに本来の金属質な皮膚が覗かせている。

そのままティガはゲオザークの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領でその場で回し始める。

 

 

ティガ「───チャアァァァァーーーーッ!!!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

3回回して勢いがついたティガはゲオザークを力一杯投げ飛ばす。

投げ飛ばされたゲオザークは土埃を巻き上げながら地面に叩きつけられる。

 

 

ティガ「ハッ!ハァァァァーーー……!!」

 

 

その隙にティガはとどめを刺そうと両腕を広げ、灼熱のエネルギーを溜めていく。デラシウム光流の体勢だ。

そして、球状の赤色エネルギーを胸の前に構え、発射の体勢に入ろうとした時───

 

 

《ヴァーリ「大悟」》

 

ティガ「フッ!?」

 

 

突然ヴァーリの声が脳内に聞こえ、思わず手を止める。

声の発信主は目の前にいるゲオザークだ。とはいってもゲオザーク自身が話しているのではなく、青い瞳にはうっすらと浮かぶヴァーリがゲオザークを通して話しかけているのだ。

その声は周りには聞こえておらず、ティガにしか聞こえないテレパシーのようなもので話しかけている。

固まるティガにヴァーリは問いかける。

 

 

《ヴァーリ「人よりも遥かに進化した力を手に入れたというのに、何でつまらないことばかりしているのかな?」》

 

ティガ「…ッ」

 

 

その問いかけに息を詰まらせたティガは溜めていたエネルギーを手放してしまう。

その問いかけにティガ───大悟は何故かはわからないが急所を貫かれたように胸に刺さったのだ。

ヴァーリは不敵な笑みで話し続ける。

 

 

《ヴァーリ「選ばれたにも関わらず平和の為だとか、愛の為だとか……そんな窮屈な理由で戦ってもいいのかな?俺だったら違う。俺は俺自身を遥かな高みへ昇る為に使うね。アザゼルが掲げる平和は所詮、自己を押さえ付ける縛りにしかならない」》

 

ティガ「……」

 

《ヴァーリ「君は選ばれたから戦っていると思っているのだろう?違うんだよ。君はたまたまティガのピラミッドを見つけただけ。俺は自分の力で超古代の遺跡を見つけたんだ。あらゆる手を使ってね」》

 

 

そう話し終えると、ゲオザークは尖っている鼻先から光線を放った。

 

 

ドォォンッ!

 

ティガ「グゥアッ!?」

 

[ピコン]

 

 

直撃したティガは胸元から火花を散らし、くの字で吹っ飛ぶ。

地面に叩きつけられて悶えるティガの胸元のカラータイマーは青から赤へと点滅していた。

 

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!」

 

ティガ「ヂャアッ!?」

 

 

痛みを堪えて起き上がろうとするティガだが、ゲオザークのアンキロサウルスのような尻尾が直撃。宙を舞って地面へと叩きつけられる。

間髪入れずゲオザークは鋭い歯を立てて胸鰭を駆使して飛び出ると、膝をついて立ち上がろうとするティガの左肩に噛みついた。

 

 

ティガ「グゥアァァァァーーーーッ!!!」

 

[ピコン]

 

 

左肩に襲いかかる鋭い痛みにティガは悲鳴に似た叫びをあげる。体験したことがない苦痛にティガは身動きが取れず、カラータイマーの点滅も速くなっていく。

 

 

ティガ「フッ!ンンンンン~~~…ッ、ヂャアッ!!!」

 

 

ティガは内側の肉と肉が裂けていくような激痛を堪えながら、ゲオザークの頭を持つと、精一杯の力で突き飛ばすように無理やり引き離した。

 

 

ティガ「グゥアァァッ…!」

 

 

激痛から解放されたティガは肩を抑えながら息を切らす。噛みつかれた肩からは光の液体が血のように溢れていた。

 

 

ティガ「ハッ!ハァァァァーー……!!」

 

ゲオザーク「ピシュュ~~ッ!!」

 

 

ティガは痛みを堪えて立ち上がると、再びデラシウム光流の体勢に入る。

球状の赤色エネルギーを胸の前に形成すると、そうはさせまいとゲオザークは大きく口を開いて飛びかかる。

 

 

ティガ「ハッ!!!」

 

 

ゲオザークが辿り着く前にエネルギーを溜め終えたティガは右手を突き出してデラシウム光流を放った。

放たれた光流はゲオザークの口に侵入。そして──

 

 

ドガガガァァァァァンッ!!!

 

 

内部のあらゆる回路を破壊し、宙で爆発四散した。

破片を跡形も残さないほど木っ端微塵にだ。

 

 

ティガ「フッ!?グゥアッ!!」

 

[ピコン]

 

 

ひと安心したからか堪えていた痛みや疲れが一気に襲いかかる。ティガは思わず膝をつきそうになるが何とか立て直すと、空を見上げ──

 

 

ティガ「ジョアッ!!」

 

 

両手を広げて大地を蹴ると、遠い空へと飛んでいった。

戦いが終えた頃には上空にあった太陽も西の空へと沈み始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり陽が落ち、辺りは夜に包まれていた。

遊園地のあちこちからイルミネーションが点灯し、闇夜を美しく照らしている。

本来ならこの時間にも来場客がいるものだが、ゲオザークの騒ぎもあって閉園となっており、人っこ1人もいない。

だが、たった1人。遊園地の床で仰向けに倒れている青年がいた。

 

 

大悟「う……」

 

 

アスファルトの硬い感触を肌に受け、青年───大悟は重たい瞼を開ける。意識がまだはっきりとしないながらも上体を起こして辺りを見渡すと、夜の遊園地にいることを把握した。どうやら、空を飛ぶ最中に気を失ってしまったらしい。

 

 

ヴァーリ「お疲れ様」

 

大悟「ッ!」

 

 

状況整理をしている大悟の耳に1つの声が聞こえてくる。

その声にハッとなった大悟は声のした方へ顔を向けると、メリーゴーランドの馬車に揺られるヴァーリの姿があった。それを皮切りに物陰から次々と人影が現れる。

アーサー、美猴、黒歌、ルフェイ、フェンリル───ヴァーリチームの登場だ。

 

疲労感と身体中の痛みに顔を歪めながらも大悟は立ち上がる。幸い噛まれた左肩からはウルトラマンの硬い皮膚のおかげで軽傷で済んでいるものの痛みは続いており、右手で抑えながら堪えている。

大悟が警戒する中、メリーゴーランドから降りたヴァーリは健闘を祝うように拍手を送りながら歩み寄り始める。

 

 

ヴァーリ「お見事、お見事。素晴らしい。俺も苦戦したゲオザークを倒すなんてね。流石、ウルトラマンに選ばれし者といったところか」

 

大悟「…ッ」

 

 

不敵な笑みを浮かべるヴァーリに大悟は口元を締める。関係ない人々に恐怖を与えたにも関わらず、平然としていられるのだから。

ヴァーリは拍手を止めると、疑問に思うように顎に手を当てる。

 

 

ヴァーリ「……だが、ウルトラマンになっても君の体は酷使されているね。そんなにまでなって、君は何の為にティガになるのかな?」

 

大悟「ッ、それは……」

 

ヴァーリ「君の自己満足の為だよ。地球を救うという美しい言葉に酔っているだけさ。ティガの光が無かったら君に何が出来る?教えてくれよ」

 

 

問いかけると同時にヴァーリの拳が顔面目掛けて放たれる。大悟は額にティグの紋章を輝かせると、拳を掌で受け止める。もう片方の拳で腹部に打ち込んでヴァーリを怯ませると、背負い投げの要領で投げ飛ばした。

投げ飛ばされたヴァーリは宙で一回転して着地する。腹部の一撃が強烈なあまり、口元からは一筋の血が流れていた。

 

 

美猴「ヴァーリ!」

 

ヴァーリ「手を出すな。こいつは俺1人でやる」

 

 

援護に入ろうとする美猴をヴァーリは冷静な声音で制する。ヴァーリもまだまだ本気ではないのだ。

口元の血を手の甲で拭ったヴァーリは駆け出すと、素早い足技で攻め立てる。先程の拳とは比にもならない速さで。

 

その素早い攻撃に最初は対処出来ていた大悟も段々と追い付かなくなり、ブロックしていた両腕を蹴り上げられる。

 

 

ヴァーリ「シャアッ!」

 

大悟「ぐぅッ!?」

 

 

がら空きになった大悟のみぞおちにヴァーリのストレートキックが炸裂。大悟は肺の空気が全て口から吐き出すような感覚と共に後ろへ吹っ飛び、床に体を打ち付けながら転がっていく。

 

 

大悟「う……ぐ…ッ!」

 

 

仰向けに倒れた大悟は何とか起き上がろうとするが、先程の一撃で体が痺れて中々出来ない。額に輝いていたティグの紋章も消え去っていた。

ヴァーリはパンパンと服の埃をはたくと、再び不敵な笑みを浮かべながら歩み寄る。

 

 

ヴァーリ「俺は生まれつきどんな悪魔よりも強い力を備わっている。白龍皇の力も手にしている。『歴代最強の白龍皇』なんて呼ばれるがそれに慢心せず、常に鍛えてきたんだ。強靭な力をより高める為にね。……だけど、君はどうだ?何の努力もしていない君にウルトラマンの光を使う資格があると思うのか?」

 

 

ヴァーリはそう言葉を投げ掛けながら苦悶している大悟の上着の裏に手を突っ込むと、スパークレンスを奪い取る。

イルミネーションの光を受けて輝くクリスタルで出来たウィングパーツに魅了されたヴァーリは満足気に微笑む。そのまま立ち去ろうとするヴァーリの足を大悟はしがみつく。

 

 

大悟「止めろ……ッ!」

 

ヴァーリ「綺麗だな……。これだけが俺に足りなかった、俺の体を光に変えてくれるシステム……」

 

 

そう言ってヴァーリは足を振るって大悟をはね飛ばすと、仲間達のもとへ向かう。ヴァーリチームの面々もスパークレンスの美しさに目を奪われている様子だ。

 

 

アーサー「目的は済みましたね。さあ、行きましょう」

 

ヴァーリ「ああ。頼む」

 

 

アーサーは手に構える剣──コールブランドで宙を三回斬ると、空間に裂目を作り出す。

一同が次々と乗り込む中、ヴァーリは別れ際に振り向いて告げる。

 

 

ヴァーリ「この力、有り難く頂戴する」

 

大悟「待て……ッ!」

 

 

大悟は痛みに顔を歪ませながらも止めようと手を伸ばすが、裂けていた空間は中にいたヴァーリチームごと閉じ、跡形もなく消えていった。

 

まんまと辛酸を舐めさせられた大悟は項垂れる。

それは悔しさや怒りなどではなく、自分への不甲斐なさであった。迷ってもいい、答えはじっくりと探す───ティガとして戦う決意としてきたのだが──

 

 

(ヴァーリ「君は何の為にティガになるのかな?」)

 

 

ヴァーリの問いかけが頭を過る。あの時、大悟は答えられなかった。躊躇してしまったのだ。

何の為に戦う。そして、“ティガ”ではない自分は何が出来るのか。

その言葉は迷ってもいいと思っていた大悟の決意を揺らがせるのには充分だった。

 

 

ゼノヴィア「大悟ーーー!」

 

木場「大悟さーーーん!」

 

イリナ「返事してーー!」

 

大悟「……ッ!?」

 

 

そんな中、近くから仲間達の探す声が聞こえてきた。

どうしてここにいるのかはわからないが、自分を探しに来たことは明白だ。

 

しかし、助けに来たにも関わらず大悟はこっそり身を隠しながら仲間から離れていった。

よくはわからないが、とても皆の前に顔を見せる気分ではなかったのだ。

 

 

我夢「大悟ーーー!イッセー。そっちは?」

 

一誠「いや、全然だ。小猫ちゃんの方は?」

 

小猫「……いえ、私の方も。……気が弱っているのか探知も出来ません」

 

 

一誠の問いかけに小猫は首を横に振る。

手分けして探しているのだが、一向に見つからない。頼みの綱である小猫の気の探知も全く見つからないのだ。

 

 

ビュオォォォーーーーッ!

 

一誠「うおっ!?」

 

我夢「ッ!?」

 

小猫「きゃっ!?」

 

 

捜索に難航している3人に一陣の風が吹く。

2人は突然の突風に身を固め、小猫は自然と捲られそうになるスカートを抑える。その突風はまるで巨大な手で触られるような奇妙な風だった。

数秒もしないうちにすっかり収まると、3人は風が通り過ぎていった方角を不思議そうに眺める。

 

 

一誠「何だったんだ?あの風……」

 

我夢「さあ?とにかく大悟を探そう」

 

 

我夢の言葉に頷いた一誠と小猫は大悟の捜索に戻った。

 

しかし、この時我夢と一誠は気付かなかった。

一陣の風に紛れて黒い人影が通ったことを。

 

その後。何度も呼びかけるが、大悟からの返事が帰ってこなかった。

大悟はその夜から姿を消した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王町。すっかり夜になり、街灯がつく路地を四之宮はくたびれた様子で歩いていた。

基本すぐに帰宅する彼が夜遅くに帰宅しているのには理由があり、京都に行く為に無断欠席をしまくったせいで補修を受けるハメになったのだ。とはいっても元々の四之宮も常習犯だったようなので、教師間では日常茶飯事のことらしいではあるが。

 

 

四之宮「流石にこれからは長期間離れるのは控えるか。めんどくさかったしな。あ″ぁ″~~!晩飯どうすっ──」

 

 

と背伸びしながらぶつぶつ呟く矢先、背後から気配を感じ、素早く跳躍して電柱に上に乗る。電柱から下を見下ろすと、先程まで四之宮がいた地面は無数のカラスのような真っ黒な羽が突き刺さっていた。

四之宮は隣の電柱の影に顔を向けると、挑発するように話しかける。

 

 

四之宮「随分手荒な挨拶だな?出てこいよ。とっくにわかってる」

 

 

四之宮が言葉を投げ掛けると、電柱の影から1つの人影が現れる。その人物は黒いコートを身に纏い、フードを目元まで深く被った女性だった。

この人物は以前、コカビエルにアパテーやスフィアを与えたあの黒フードの女である。

黒フードの女は凍りつくような低い声音で四之宮に話しかける。

 

 

「四之宮 龍……いや、ジャグラスジャグラー。私と共についてきてもらうぞ」

 

四之宮「ほぉう?俺の正体を知っているのか。なら、お前は()()に近いってことだな?」

 

「答える必要はない」

 

 

四之宮の問いに対してそう言い捨てた黒フードの女は鋭い爪を生やした手で襲いかかる。

四之宮は手に持っていた学生鞄を投げつけるが、黒フードの女は難なく切り裂いて突き進む。だが、四之宮の姿はない。

 

 

 

四之宮「こっちだ!」

 

「!」

 

 

声の通りに見上げると、四之宮は上空にいた。

四之宮は神器・『不必要の再創造者(トラッシュ・リクリエイター)』を発動させて路地中のゴミを集めて巨大な拳を創ると、黒フードの女に振り下ろす。

黒フードの女は背中からカラスのような真っ黒な翼を生やして素早く後ろへ回避すると、翼を羽ばたかせて無数の羽を手裏剣のように飛ばす。

 

 

四之宮「ふんッ!」

 

 

四之宮はすぐさまゴミの山を拳の形から円形状の盾に変形させて、豪雨のように襲い来る羽手裏剣を防ぐ。

羽手裏剣は次々と盾に刺さっていくが、四之宮のもとにまで届かない。盾に隠れながら四之宮は蛇心剣を取り出すと、紫色に輝く三日月状の斬擊を飛ばす。

斬擊は盾ごと切り裂きながら黒フードの女に向かっていく。

 

 

「ッ!」

 

 

迫る斬擊に黒フードの女は羽を飛ばすのを止めると、翼を羽ばたかせて猛スピードで回避する。

対象を見失った斬擊は勢い無くすことなく飛んでいき、遠くにあるビルに三日月状の傷を残した。

 

 

四之宮「あいつら……」

 

 

四之宮は脳内に一誠と我夢を思い浮かべながら毒づく。先程の攻撃を黒フードが避ける際に見えたのだ。女の懐にリーフラッシャーとエスプレンダーがあることに。

そう、一誠と我夢は知らぬ間に変身アイテムを盗られてしまっていたのだ。

「あいつら何やってんだ」と呆れていると──

 

 

ドムッ!!

 

四之宮「が……ッ!?」

 

 

鋭い痛みが四之宮の腹部に突き刺さる。四之宮が気を取られている隙に接近していた黒フードの女の拳が打ち込まれたのだ。

この一撃に流石の四之宮も敵わず、ガクリと項垂れた。

地上へ落ちようとする四之宮を女は担ぐと、冷たい視線で顔を覗く。

 

 

「無駄な足掻き……」

 

 

意識を失った四之宮に冷たく吐き捨てると、黒フードの女は四之宮と共に闇夜に消えた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。すっかり夜が明け、空に昇った朝日が大地を照らす頃。人里離れた自然溢れる山中の芝生で大悟は寝転んでいた。

雲が点々と昇る空を見上げながら大悟は内心呟く。

 

 

大悟「(僕はただの人間だ……。スパークレンスが無ければ何も出来ない、無力な小さな人間……)」

 

 

ヴァーリとの出来事で自分の無力さを痛感した大悟は身も心もすっかり傷付いてしまった。

大悟は光に選ばれたから戦っていた。ティガのピラミッドも自分が呼ばれたから見つけた。だからこそ皆の為に戦う決意をした。

 

──でも、それは本当にそうなのか。

 

ヴァーリの言うように自分はたまたま見つけただけだとしたら。今までやってきたことが全て自分の思い上がりだとしたら。ただ単に自分はウルトラマンの力を借りるしか能がない人間なのか。

現に生身でヴァーリに負けた。魔王の直系とはいえ、生身の悪魔にすらも負けたのだ。誰よりも強く、誰よりも力を欲するヴァーリと力を借りているだけの自分ではこんなにも差があると思い知らされた。

このことが重なり、大悟はすっかり意気消沈していた。

 

 

「くぅ~~ん……」

 

大悟「?」

 

 

やはり、自分にはティガである資格はないのか───と悩んでいたとき、野原から一匹の子犬が飛び出す。

子犬は大悟を見かけるなり駆け寄ると、尻尾を嬉しそうに振りながら大悟の顔をペロペロと舐め始める。

最初は構う気分ではないので無視を決め込もうとしたが、あまりものこそばゆさに思わず頬が緩む。

 

 

大悟「よせよ~。遊びたい気分じゃないんだよ……」

 

 

そう文句は言いながらも大悟の表情は依然曇りは残ってはいるが、明るくなっていた。動物と触れあうのは別に嫌いではないし、こうして慰めてくれるのは癒されるものだ。

しばらくじゃれていると、何かを感じ取った子犬は大悟から離れ、何処かへ走り出す。

 

 

「ワンッ!」

 

大悟「どこ行くんだ?」

 

 

まるでついてこいと言わんばかりに吠える子犬に大悟は首を傾げながらその後を追いかける。

 

子犬は人が通らない山の奥深くまで進んでいくと、岩肌に出来た洞窟に辿り着く。洞窟はそれほど古くなく、まだ新しい形跡が残っている。

その中へ入っていく子犬の後を大悟は着いていく。

 

そして、奥深くまで進んでいくと、洞窟の最深部に辿り着いた。しかし、行き止まりであり、案内をしていた子犬の姿も何処にも見当たらなかった。

 

 

大悟「どこ行っちゃったんだ……ッ!?」

 

 

と呟いた矢先、行き止まりの壁から光が溢れたかと思うと、壁が消え、隠し通路が姿を現した。

大悟は警戒しながらも奥へ奥へと進んでいき、遂に最深部に到達した。

行方知らずだった子犬もそこにいた。大悟は安堵する最中、子犬が視線が気になって見上げると、言葉を失った。

 

 

大悟「!?」

 

 

大悟が見上げる視線の先。

そこには1匹の怪獣の石像。

そして──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ティガのピラミッドにしかないと思われていた、ウルトラマンの像が佇んでいた。

 

 

大悟「巨人が、他にもいた……!」

 

 

 




次回予告
※(イメージBGM:ウルトラマンティガ次回予告BGM)

地下洞窟で巨人像を発見し、邪悪な心を持ったままウルトラマンに変身したヴァーリ!
傷ついた大悟は、渾身の力を籠めてイーヴィルティガに立ち向かう!

次回、「ハイスクールG×A」!
「影を継ぐもの」!
お楽しみに!

相棒にしたい怪獣は?

  • ピグモン(ウルトラマン)
  • セブンガー(ウルトラマンレオ)
  • ミラクロン(ウルトラマンゼアス2)
  • マキーナ(ウルトラマンティガ)
  • リドリアス(ウルトラマンコスモス)
  • シェパードン(ウルトラマンギンガS)
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