ハイスクールG×A   作:まゆはちブラック

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イーヴィルティガ
超古代狛犬怪獣 ガーディー 登場!


第61話「影を継ぐもの」

熊本に現れた地底鮫ゲオザークはティガを疲弊させる為に作られたロボットだった。

大悟はヴァーリにスパークレンスを奪われ、四之宮は謎の女に連れ去られてしまった。

 

一体、何が起きようとしているのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「巨人が、他にもいた……!」

 

 

唖然とする大悟の見上げる先。天井から地上の光が僅かに差す広々とした地下遺跡には怪獣の石像、そしてウルトラマンの像が佇んでいた。

ティガのピラミッドにしかないと思われていたものがあることすら驚きなのだが、胸のプロテクターの形状や顔つきが違うものの、その巨人像はティガそっくりだったのだ。

 

大悟が言葉を失っている中、案内してくれた子犬は巨人像に向かって歩き出す。好奇心が体を突き動かしたのだろう。そのまま巨人像の足下へ近寄ろうとしたその瞬間──

 

 

バリバリィッ!

 

子犬「キャウゥゥン!?」

 

大悟「ッ!?」

 

 

突然電撃が走り、子犬は苦痛の叫びをあげながら弾き飛ばされた。目を丸くした大悟は駆け寄り、子犬の体に手を当てて安否を確認する。幸い命は別状はないようだ。

 

ひと安心した大悟は子犬が弾き飛ばされた場所を目を凝らして見る。そこには電撃を帯びた不可視の壁が巨人像を護るように張り巡らされていた。

 

 

ヴァーリ「おや?ここまで来れたんだな」

 

 

──誰の仕業だ、と思った矢先、とぼけた口調で話しかける銀髪の男と複数の男女が物陰から姿を現す。大悟からスパークレンスを奪った男、ヴァーリとその仲間達である。大悟が警戒する中、ヴァーリは不敵な笑みを浮かべながら話す。

 

 

ヴァーリ「俺は君と同じ……言っただろう?君は選ばれし特別な存在じゃない。思い上がってるだけだってね……」

 

大悟「そうだ……僕は特別な人間なんかじゃない……。けど、与えられた力があるなら全力で守りたい。この星に住むみんなと一緒に──」

 

ヴァーリ「みんな?フフッ……やはり思い上がっている。せっかく神をも越える力を手にしたというのに……。良いのかい、そんな()()()()()()で」

 

大悟「情けないだって?」

 

 

真剣で答えた戦う理由を鼻で笑い飛ばされた大悟は眉をひそめて声音を僅かに荒らげる。

その言葉にヴァーリは「そうさ」と答えると、大悟を指差しながら話し続ける。

 

 

ヴァーリ「君は光の力を頼っているだけだ。何の理想も持たず、ただ戦うだけ……。人智を越えた力で他者を制し、この世に知らしめる……。それが光に選ばれた者の使命と思わないか?」

 

大悟「違う!暴力による支配なんて、間違っている!」

 

 

巨人像を指差しながらそう言うヴァーリに大悟は抗議する。暴力による支配は余計に反発を生むだけ、血で血で争う負の連鎖を繋げることになる。

その抗議にヴァーリは「いいや、違わない」と一蹴すると、話し続ける。

 

 

ヴァーリ「ウルトラマンとはそういう存在なのさ。…物心ついた頃から俺は高みを目指して戦いに明け暮れていた……それが白龍皇である自分の使命なのだとね。数多の強者を打ち破った俺だが、ウルトラマンには勝てなかった。理解に苦しんだよ…どうして俺が負けるのか、ってね。そんなある時、ガイアとアグル──2人のウルトラマンの戦いを見て確信したよ……いくら努力したって越えられない壁があるってね」

 

大悟「……」

 

ヴァーリ「ショックだったよ。どこまでも強くなれると信じていた俺に“限界”があるなんてね……。アルビオンを信頼していない訳じゃないが、正直このまま鍛えても絶対に越えられないと悟ったよ」

 

 

ヴァーリの長々とした話を大悟は視線に捉えたまま沈黙していた。自身のことを語るヴァーリはただ乾いた笑みを浮かべていた。戦闘狂なのは同感できないが、悔しいという気持ちだけは大悟にも理解できた。

 

曇った顔をしていたヴァーリだったが、気持ちを切り替えて再び不敵な笑みを浮かべると、人差し指をピンと天高く上げた。

 

 

ヴァーリ「そこで思い付いたんだ。ウルトラマンを越えられないなら、俺がウルトラマン()()()()になればいいってね。……フェンリルの嗅覚を頼りに巨人像を見つけたが、肝心な変身するシステムはわからなかった………。そんな悩んでいた矢先、君に白羽の矢が立ったという訳さ!」

 

大悟「何……?」

 

 

どういう意味だと眉間にしわを寄せていると、ヴァーリは後ろで控えていた黒歌にアイコンタクトを送る。

ニッコリと妖しく微笑んだ黒歌は指で何もない虚空に向かって魔方陣を描いていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある薄暗い地下洞窟。地上の光が一筋とも差さないこの空間に、コンクリート材質の壁や床にパイプが張り巡らされていた。何かの工場か研究所のようである。

ここでは、テロリスト組織・『禍の団(カオス・ブリゲード)』の構成員達がところ狭しと動き回っていた。

 

如何にも秘密基地の内装に包まれた空間には構成員だけではなかった。黒いフードを口元が見えるか見ないかぐらい深く被り、真っ黒なコートを纏った女がいた。

格好からして不気味な雰囲気を漂わせる彼女のその肩には、気絶した四之宮が項垂れていた。

 

 

「連れてきたぞ……」

 

 

冷たい声音でそう言った黒フードの女は、肩に背負っていた四之宮を雑に投げ渡す。あまりもの雑さに構成員達は驚くも咄嗟に受け止めた。

 

 

「お、おい!もう少し丁寧に扱え!目が覚めたらどうする!」

 

 

構成員達がせっせと四之宮を奥の装置がついた椅子に運び込む中、彼女の乱雑な態度に抗議の声が1つ。その声を発した人物は黒いハットに黒い紳士服を身に纏い、ペンキで白塗りしたくらい真っ白な顔をしたふくよかな男だった。さながら、太ったチャップリンを彷彿とさせる。

少し焦りの色を見せる太った紳士に黒フードの女は視線を向けず、閉ざしていた口を再び開く。

 

 

「……私は任務を全うした。この男を丁寧に扱えなどという指示は一切受けていない」

 

「し、しかしだな……。こいつは一癖も二癖もある奴だ。あらゆる()()を転々と回り、長年築き上げてきた商売先もこの男のせいでほとんどがパアになった……」

 

「それは貴様の問題だろう。貴様が怪獣メダルの製造方法を知らないせいで手間がかかったのではないか?」

 

「ぐっ…!し、仕方ないだろう!私が渡したあの4枚のメダルはセレブ……いや、顧客から物々交換したものだ!製造方法までは知らん!」

 

 

淡々と話す黒フードの女の言葉に太った紳士は痛いところを突かれながらも反論する。焦りのあまりか思わず、彼の職業でご法度である顧客の名前を出しそうになってしまったが、すんでのところで誤魔化した。

 

ジャンヌやヘラクレス達が持っていた怪獣メダル。それらは全てこの紳士服の男から渡されたものである。ジャグラー同様、この男もまた別の宇宙からの来訪者だったのだ。

 

ふんふんと鼻息を荒くする男を見て、言い争うのは無意味と考えた黒フードの女は話を切り替えようと四之宮の方へ顔を向ける。視線の先にいる四之宮は額に電極をつけて椅子に縛り付けられていた。

黒フードの女は太った紳士に訊ねる。

 

 

「……そこでジャグラスジャグラーの記憶を機械で読み取り、怪獣メダルの製造方法を手にいれる訳だな。本当に知っているのか?」

 

「情報が確かなら、怪獣メダルの製造方法を記したメモを奴は目にしているそうだ」

 

「……」

 

 

男の情報に黒フードの女は信憑性があるのかと疑うが、数多の次元を渡り歩いてきたこの男なら本当なのだろう。

 

 

「準備が完了しました!いつでも動かせます!」

 

 

そんなやりとりをしていると、構成員の1人が2人に報せにやってくる。装置の起動準備が完了したようだ。

 

 

「始めろ……」

 

「了解!記憶収集装置、起動!」

 

 

黒フードの女の了承を得た構成員達は椅子付近に設置されているパネルのスイッチを押して起動させる。

四之宮の額につけられている電極が仄かに光ると、電極のコードから繋がっているパソコンを経由して、宙にあるモニターに記憶情報が次々と投影されていく。

 

 

「おおっ!素晴らしい、素晴らしいぞ!メダルだけでなく、私の知り得ない怪獣のことまでしっかりと映っているぞ!ハハハッ!」

 

 

四之宮───ジャグラーの記憶に胸踊らせる太った男は興奮気味に笑う。未知の怪獣を知ったとなれば彼の職業柄、喜ぶ意外何もない。

 

太った紳士の男の愉快な声が響く中、四之宮の記憶は次々と構成員達に記録されていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「これは…!」

 

 

大悟は黒歌が形成した魔方陣から投影される映像を見て目を丸くする。宙で浮かぶ映像。そこに映っているのは、京都の二条城で初めて大悟がティガとなる瞬間を捉えた映像だった。記憶に新しい出来事、当事者である大悟は勿論憶えていた。

しかし、何故この映像を見せるのかと疑問の色を見せている中、ヴァーリは話す。

 

 

ヴァーリ「そう、ルフェイに撮ってきてもらった映像アーカイブだ。この時、君は光になった。そして、巨人像に転移し、巨人を甦らせた……。これは君自身を光の粒子に変移させるシステムなんだ」

 

 

そう言いながらヴァーリは懐から大悟のスパークレンスを取り出す。スパークレンスは天井から差す地上の光で美しく輝いている。

ヴァーリの計画についてわからなかった大悟だったが、ここまでの話を聞いて思い浮かんだ。

 

 

大悟「お前が何をしようとしているかわかったぞ……。お前がどんなに強くて、頭が良くても……お前はウルトラマンティガにはなれない!」

 

 

大悟はハッキリと言い放つ。例え、巨人の力を解明したとしても超古代人の遺伝子を受け継いでいなければ変身は出来ないのだ。そのことを大悟は充分理解している。

だが──

 

 

ヴァーリ「ハハハハハハーーッ!!」

 

大悟「!」

 

 

ヴァーリはまるでその事実がさも可笑しいようにゲラゲラと笑い出した。その笑い声は静寂に包まれている洞窟内に響き渡る。

大悟が何が可笑しいのかと眉をひそめていると、ヴァーリは笑いを抑え──

 

 

ヴァーリ「やはり君は自分を特別な人間だと思っている!見ろ……」

 

 

そう言ってヴァーリは宙のスクリーンに向かって手をかざして画面を切り替える。大悟はつられてスクリーンを見ると、切り替わったスクリーンには2つの遺伝子図を比較したものが投影されていた。

 

 

ヴァーリ「これは君と俺の遺伝子情報を分析し、図形化したものだ。この結果から、君と俺は同じ遺伝子ルーツを持っているんだよ」

 

大悟「何…!?」

 

ヴァーリ「俺が悪魔の父と人間の母のハーフというのは聞いている筈だ。俺の母は超古代人の光を受け継ぐ者、つまり、その子供である俺も超古代人の末裔なんだよ。君達だけじゃなかったんだよ、光を受け継ぐ資格を持つ者は……!」

 

大悟「…ッ!」

 

 

ヴァーリから突きつけられた事実に大悟は言葉を失う。彼もまた『光を継ぐもの』───いわば兄弟のようなものだったと。

身近の人が光を受け継いでいるのなら他にもいるのかもしれない考えたことはあったが、まさかそれがヴァーリとは予想だにもしなかったであろう。

 

大悟が衝撃を受けている中、ヴァーリは地面の魔方陣からピラミッド型の機械を出現させた。

スイッチを点けていって機械を起動させたヴァーリは不敵な笑みを浮かべながらスパークレンスを眺める。

 

 

ヴァーリ「ウルトラマンになろうとしても、スパークレンス(これ)だけでは変身出来ない。そこで、俺は強制的に自ら光へと変換させ、巨人像と一体化させるこの『光遺伝子コンバーター』を開発した。こう見えて、科学者としての顔も少し持っているんでね」

 

 

淡々としていながらもどこか自慢げに話すヴァーリ。

科学の知識があるのもアザゼルのもとで育てられた影響なのだろう。大悟がそんなことを考えていると、ヴァーリはスパークレンスを光遺伝子コンバーターの頂点にある固定具にセットしていた。

 

 

大悟「やめるんだッ!間違った心で光になったら──!」

 

ヴァーリ「フッ…。間違いかどうか、これでわかるさ……」

 

 

引き止めようとする大悟の叫びをヴァーリは嘲笑うと、

光遺伝子コンバーターに掌をかざして起動させる。すると、光遺伝子コンバーターからプラズマが走り、ヴァーリの掌から全身へと流れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、熊本の市街地から少し離れた広野には武装した多くの悪魔、堕天使、天使が集まっていた。その中には各勢力のトップであるサーゼクス、アザゼル、ミカエルの顔もあった。

彼らはヴァーリからの連絡でここにくるように呼び集められたのである。当然、招待相手がテロリストなので、周囲への警戒を強めていた。

 

 

リアス「お兄さ──魔王様!」

 

ソーナ「遅れて申し訳ございません」

 

サーゼクス「おお、君達か…!」

 

 

緊迫した空気が漂う中、サーゼクスのもとにリアスとソーナ、彼女らが率いる眷属が到着する。しかし、全員揃っている訳ではなく、グレモリー眷属からは我夢、小猫、ゼノヴィア。シトリー眷属からは椿姫、匙、四之宮の姿がなかった。

サーゼクスは跪こうとする彼らを制すると、リアスに訊ねる。

 

 

サーゼクス「リアス。大悟君の行方は?」

 

リアス「はい。現在、私達の眷属に捜索させていますが……」

 

サーゼクス「そうか……。四之宮君に加えて大悟君もいなくなるとは……」

 

 

段々と落ちていくリアスの声のトーンから察したサーゼクスは曇った顔で呟く。

ヴァーリが不審な動きを見せると同時に行方知らずとなった四之宮と大悟。自身が所有する魔王専用捜索チーム・リザードにも捜索させているが、一向に手がかりが掴めていなかった。

 

その近くで建てられている仮設テントでは、アザゼルがXIGナビを通して石室と通信していた。

 

 

《石室「──わかった。だが、念の為、そちらの方にも何機か待機させておこう」》

 

アザゼル「頼むぜ」

 

 

石室とのやりとりを終えたアザゼルはXIGナビを閉じると、そこへミカエルがテントに入ってくる。

 

 

ミカエル「何の話を?」

 

アザゼル「ああ。石室に冥界と天界の警備を強化するように頼んだ。俺達がいない間に攻める……何てこともあり得るからな。まあ、こっちの方にも戦闘機を手配してくれるそうだけどな」

 

 

訊ねるミカエルにアザゼルはうっすらと笑みを浮かべながら答える。ここまでするのは、三大勢力のトップが出払っているうちに領地へ何かしらを仕掛けるかもしれないと踏んだからだ。

相手はヴァーリ。何を考えているかわからないこそ危険なのだ。

 

 

ミカエル「ヴァーリ。彼は何を始める気なんでしょうか?」

 

アザゼル「さぁな。ろくでもねぇことが起きるってことは確かだな」

 

 

ミカエルの問いにアザゼルは真剣な表情で答える。

普段のだらしのない態度とは一変しているのは、目的は不明だが、不穏なことが起きようとしていると感じ取っているからだ。

 

アザゼルとミカエルは空を見上げた。先程まで晴れていた空は太陽が雲に隠れた影響で暗転に包まれていた。それは、まるで両者の心情を表していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地下遺跡ではヴァーリがウルトラマンへ変身しようという計画の最終段階へと移行していた。

稼働している光遺伝子コンバーターはヴァーリを光へ変換させる準備が着々と進んでいた。

 

 

ヴァーリ「神を超えた存在へと俺は進化するのだ!ハハハーーーッ!!」

 

 

完全に有頂天となっているヴァーリは最早説得も応じない。もう誰にも止められない。

テンションが最高潮に高まっているヴァーリは両手を広げて──

 

 

ヴァーリ「古代の力よ!俺を光に変えたまえーーーッ!!」

 

 

と叫んだ瞬間、光遺伝子コンバーターにセットされていたスパークレンスが煌めく。それと同時に光遺伝子がヴァーリに流しているプラズマが強まっていく。

 

 

ヴァーリ「う″ぉ″あ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ーーーー……!!!」

 

大悟「やめろーーッ!」

 

バリバリッ!

 

大悟「ぐあっ!」

 

 

制止させる為、駆け寄ろうとした大悟だったが、電流が流れる不可視の壁に弾かれる。

地べたに倒れ伏す大悟をルフェイは合掌して軽く謝る。

 

 

ルフェイ「ごめんなさーい。それは北欧の術式で創った丈夫な結界なんです」

 

大悟「今すぐ解くんだ!大変なことになるかもしれないんだぞ!」

 

美猴「うるせぇな。見物なら黙って見てろやい。もうすぐ神を超える存在が誕生するんだからよぉ」

 

 

大悟の必死の訴えに美猴は耳を痛そうに話す。

まともに聞こうとしない美猴の態度に大悟は眉間にしわを寄せる。

 

 

大悟「何を言っているんだ!?巨人の力は僕も完全にはわかっていない!そんな危険なマネを、君達は止めようと思わないのか!?」

 

美猴「思わねぇよ。ヴァーリならお前よりも扱いきれるってぇ確信はあるぜぃ」

 

アーサー「ええ、私も同感です。旧ルシファーの血統に白龍皇の力……。これだけ強い要素があれば巨人の力を使いこなせるかと」

 

黒歌「ヴァーリが強くなればどうでもいいにゃん」

 

 

大悟が訴えかけるも美猴、アーサー、黒歌も全く耳を貸さない。黒歌はどうでもよさそうにしているが、止める気は全く無い様子だ。

そうこうしているうちにヴァーリの体は光輝き、粒子状へと変換していく。

 

 

ヴァーリ「ひ″~~~か″~~~り″~~~よ″ォ″ォ″~~……!!」

 

大悟「駄目だ……!」

 

 

大悟の願い虚しく、光となったヴァーリは巨人像のカラータイマーから全身へ伝っていく。

そして、淡い光を放つ巨人像の額のクリスタルが煌めくと、ヴァーリは淡い光を纏った巨人へと変身した。

 

 

大悟「そんな馬鹿なこと……!」

 

 

大悟は口をあんぐりと開ける。目の前でヴァーリが文字通り変身したのだ。ウルトラマンへと。失敗するかと思っていたから尚更だ。

動揺を隠しきれない大悟に反して、ヴァーリチームの面々は嬉しそうに微笑む。

 

 

もう1人の巨人「……シ″ャ″ァッ!」

 

 

巨人は手を握って開いたりして満足に動けることを確認すると、両腕を天高く上げて地上へと飛び立っていく。

それに連れてヴァーリチームもルフェイとフェンリルを残して魔方陣で転移する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢「ゼノヴィア。そっちはどうだい?」

 

《ゼノヴィア「いいや。全く掴めていない……」》

 

 

その頃、近くでは我夢達が大悟の捜索に当たっていた。我夢は小猫を後ろに乗せてファイターEXで上空から、残りのゼノヴィア、椿姫、匙は地上で捜索していた。

四之宮の方はチームリザードに任せているが、未だどちらとも見つかっていない。

 

 

我夢「(大悟。君は何処に……)」

 

 

我夢は不安を募らせる。先日から今日にかけて不幸続きだった。

まず始めに大悟が失踪。次には四之宮。更にはエスプレンダーと一誠のリーフラッシャーも消えてしまった。

落としたのだろうと思って思い当たる場所を探し回ったが、何処にも見当たらなかった。

 

変身アイテムは我夢が開発したものではないスパークレンス以外、盗難した時を想定してGPSを搭載しているが、位置情報が掴めない場所なのか全く反応しなかった。親友と仲間の失踪に変身アイテムの盗難が加わって、気分は最悪だった。

 

 

PAL『ガム 12ジのホウガクカラ カイセキフメイノヒコウブッタイ セッキンチュウ

 

我夢「ん?」

 

 

不安が募る中、EXに備え付けてある人工知能PAL(パル)の呼び掛けが耳に入った我夢は前方を見据える。前方からは遠くから光を放つ謎の物体がこちらへ近付いてきていた。

警戒していつでも迎撃出来るように操縦桿の引き金に手をかけていた我夢だが、光の正体がはっきりと見える距離に近付いた瞬間、その手を緩めた。

 

 

我夢「ティガ!」

 

 

そう、光る物体はティガにそっくりだったのだ。探していた大悟が変身するティガと瓜二つなのだ。

大悟が見つかったと我夢は安堵するが、小猫は訝しげに呟く。

 

 

小猫「……待ってください。何か様子がおかしいです」

 

我夢「え?」

 

 

その声で疑問を感じた我夢は前方に佇むティガ?を再度見据える。最初こそ発する光が眩しいせいで大まかなシルエットしかわからなかったものの、段々と目が慣れてき、細かいシルエットが判明していった。

その姿は全体像がティガに似通っているものの、全くの別人だった。

 

 

我夢「ティガじゃない!うおっ!?」

 

 

目の前にいるのがティガではないとわかった瞬間、ティガ──否、ヴァーリが変身した光の巨人は握り拳を突き出し、紫色の光弾で攻撃してくる。

我夢は咄嗟に操縦桿を手前に引いて急上昇し、紙一重のところで避けた。

 

 

もう1人の巨人「……シ″ャ″ァッ!」

 

 

進路を阻む者がいなくなった巨人は何処かへ向かって飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

バリバリッ!

 

大悟「うぅ、ぐぅぅ……!」

 

 

残された大悟はもう1人の巨人を追うべく、スパークレンスがセットされている光遺伝子コンバーターに駆け寄る。

電流が流れる不可視の壁に阻まれるものの、大悟は奥歯を噛み締めて痛みを堪え、強引に通ろうとするが──

 

 

バリバリッ!

 

大悟「……ぐあぁぁッ!!」

 

 

やはり、魔法で作り出した結界を普通の人間が突破できるはずもなく弾き飛ばされる。

痛みに顔を歪めながら地べたに這いつくばる大悟にルフェイは嘆息をつく。

 

 

ルフェイ「これで10回目。無駄ですよー。この結界は私だけじゃなく、ヴァーリ様の北欧魔法も入ってますから絶対に破れません」

 

 

ルフェイの忠告に大悟は悔しげに拳を握り締める。

ティガであれば簡単に突破出来るであろうが、それがないと何も出来ない自分の不甲斐なさが悔しかったのだ。

 

そんな大悟の視線に倒れている小さな影が映る。

先程、結界に張られた電流で吹き飛ばされた子犬だ。

幸い、まだ生きているものの命の保証があるとは断定出来ない状態だ。

大悟は地べたを這って、子犬に手を伸ばす。柔らかい毛並みが手から伝わってくるが、体温は徐々に冷めていく。

 

 

大悟「僕は、何でもない……無力な存在だったのか……?」

 

 

消え入りそうな声音で大悟は弱音を吐く。

自分はティガじゃないと何も出来ない。こうして、目の前で傷付き消えようとする小さな命さえも救えない。大悟の心はますます曇っていく……。

 

しかし、この時大悟は気付かなかった。子犬の体が仄かに光輝き出し始めたことに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス「な、何なの……?あの光り輝くティガは……」

 

 

大悟が悪戦苦闘している頃、リアス達は目の前の状況にざわめいていた。彼らが見上げる先、そこにはヴァーリチームの面々と淡い光を纏うティガが佇んでいた。

味方であるティガが何故敵対勢力と…?現状が把握出来ず戸惑っていると、アザゼルのXIGナビに通信が入る。

相手は我夢からだった。

 

 

《我夢「先生!その巨人はティガじゃありません」》

 

アザゼル「何!?じゃあ、あの巨人は俺達の敵ってことか!」

 

 

我夢からの通信を受けたアザゼルは驚きながらも再度巨人を見上げる。確かにシルエットは似ているものの、よく見ればティガとは顔つきが違う別人だ。

別人とわかると否や、全員は臨戦態勢に入る。テロリストと一緒にいる以上、敵と判断するのは容易だった。

緊張が走る中、ティガに酷似したウルトラマン──もう1人の巨人は地上にいるアザゼルに話しかける。

 

 

もう1人の巨人「久しぶりだな、アザゼル」

 

アザゼル「その声!?お前、ヴァーリかッ!」

 

 

巨人が発する聞き覚えのある声に動揺するアザゼル。

忘れるはずがない。敵側に寝返ったとはいえ、幼少期から長年育ててきていたヴァーリの声なのだから。

動揺の色を見せるアザゼルにもう1人の巨人は満足げに鼻を鳴らすと、自らを誇示するかの如く高らかに声をあげる。

 

 

もう1人の巨人「……俺は、神をも超える新しい存在へと進化したのだ。見よ、この肉体!白龍皇と旧ルシファーの血を持つ俺は最早、誰にも越えられない!その絶対的な力を手にしたのだ……!」

 

アザゼル「何てこった……」

 

 

ヴァーリがウルトラマンに変身した。つまり、ただでさえ強大な力を持つヴァーリもまた、我夢達と同じ光を継ぐ存在だったということなのだ。

その事実にアザゼルは冷や汗をかく。

 

 

サーゼクス「これを我々に見せる為に呼び寄せたのか」

 

ミカエル「ヴァーリの周到な計画、という訳ですね」

 

 

反対にサーゼクスとミカエルは冷静に今回の出来事について分析していた。彼らの言う通り、ヴァーリはウルトラマンとなった自分の力をアピールする為に三大勢力のトップをここへ呼び寄せたのだ。

 

 

もう1人の巨人「ッ、ゥウ″ウ″ゥゥゥ…!グゥゥ……ッ!!」

 

朱乃「様子がおかしいですわ……」

 

 

巨人の変化に朱乃は呟く。しばらく誇示していたもう1人だったが、急に苦しそうに震え始めたのだ。

 

苦しそうにもがいていた巨人だったが、1分もしないうちにピタリと収まる。それと同時に光が晴れ、見え辛かった体色や体の造形が明らかとなった。

銀を貴重としたボディーに黒のラインが走り、手首足首には朱色のプロテクター。そして、鋭く尖った目は青く輝いている。

 

 

もう1人の巨人「……」

 

 

もう1人の巨人は周囲をキョロキョロと見渡した。周囲の地形、点々とした雲が浮かぶ青空、地上にいるリアス達。

品定めをするように見渡す中、不安に思った美猴は筋斗雲で近寄る。

 

 

美猴「おい、ヴァーリ?大丈夫かぃ──」

 

もう1人の巨人「フ″ン″ッ″!」

 

美猴「ッ!?」

 

 

と、声をかける美猴目掛けて、もう1人の巨人は握り拳を突き出して紫色の光弾を放った。

美猴は思わぬ攻撃に驚きながらも咄嗟に横へかわした。光弾は遠くの地面に着弾。爆発を起こす。

 

 

美猴「な、何をするんでぃ!悪ふざけは止めろぃ!」

 

アーサー「ヴァーリ。ふざけてる場合では──」

 

もう1人の巨人「シ″ャ″ァ″ッ″!」

 

 

美猴とアーサーは抗議するも、もう1人の巨人は耳を貸さず、2人目掛けて左右の拳から紫色の光弾を放つ。2人は避けるものの、これを機にもう1人の巨人は積極的にヴァーリチームへ攻撃を仕掛ける。

 

 

ロスヴァイセ「仲間割れ?」

 

 

目の前で繰り広げられる光景にロスヴァイセは理解出来ないでいた。

ウルトラマンとなったヴァーリが現れたかと思えば、急に仲間を攻撃し始めた。それは皆も同じであった。

仲間割れを始める巨人の姿を見て、サーゼクスはあることに感づいた。

 

 

サーゼクス「まさか、暴走しているのか…!」

 

リアス「え?」

 

 

聞き返すリアスを筆頭に皆が振り向くと、サーゼクスは神妙な面持ちで話す。

 

 

サーゼクス「人には誰しも光のように明るい善の心、それとは対極に影のように潜む悪の心がある。光は正しき心しか扱えない。だが、彼は光とは真逆の邪悪な心で変身……その結果、闇の巨人へとなってしまったんだ」

 

リアス「そんなことが……」

 

 

その言葉に皆は唖然とする。それもそうだろう。

まさか、光であるウルトラマンが闇に堕ちてしまうとは思いもしなかったからだ。

 

サーゼクスの読み通り、ヴァーリが変身したもう1人の巨人。

彼は光から闇へと堕ちた巨人──『イーヴィルティガ』へとなってしまったのだ。

 

 

黒歌「出し惜しみ無しで行くにゃ!」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!」

 

 

黒歌は仙術を纏った手で地面を叩く。すると、大地から巨大な蔦が生え、イーヴィルティガを縛りつける。

 

 

アーサー「はぁぁぁーーーーッ!!」

 

美猴「デカくなれ、如意棒!」

 

 

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』を手にしたアーサーと巨大化させた如意棒を手にした美猴は、身動きが取れないイーヴィルティガに向かって振り下ろす。

聖のオーラが纏った斬撃と高層ビルのように巨大な如意棒が襲いかかる。だが──

 

 

ブチブチィッ!!

 

アーサー「何ッ!?」

 

美猴「うおっ!?」

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ァ″ッ″!!」

 

 

イーヴィルティガは強引に蔦を引きちぎって拘束から脱出。右手でアーサーの放った斬撃を叩き落とすと、もう片方の手で如意棒を受け止めた。

そして、そのまま左手に軽く力を込めると、如意棒は音も無くへし折れた。

 

 

美猴「お、俺の如意棒が……」

 

 

元のサイズに戻り、真っ二つに折れた如意棒を見て青ざめる美猴。

だが、落ち込んでいる時間を与えてくれる程、暴走する巨人は優しくはない。

 

 

イーヴィルティガ「ハ″ァ″ッ″!!」

 

ドォォンッ!

 

アーサー「ぐあっ!」

 

美猴「ぬあっ!?」

 

 

イーヴィルティガは折れた如意棒を雑に投げ捨てると、両腕を胸の位置に上げて闇のエネルギーを溜め、両拳から放つ紫色光弾──イーヴィルビームを放つ。

見事に着弾したアーサーと美猴は爆発と同時に地上へ叩きつけられる。

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』はアーサーの手を離れ、遠くへ吹き飛んでいく。

 

 

ドドドド…ッ!!

 

イーヴィル「ッ!」

 

 

黒歌はパンッと音を立てて合掌し、地面を叩く。すると、土砂が火山の噴火の如く舞い上がり、イーヴィルティガに降り注ぐ。

イーヴィルティガは土砂の山に埋もれていく。

 

 

黒歌「くらえッ!」

 

ドォォォォォンッ!

 

 

土砂の山に向かって黒歌は口から直径50m程の火球を吐き出す。1発だけでなく、40発もだ。

休みなく次々と放たれる火球群を受けて土砂の山は大爆発を起こす。──中にいるイーヴィルティガもただではすまないだろう。そう思った黒歌はほんの少しだけ余裕が生まれ、攻撃の手を止める。

だが──

 

 

イーヴィルティガ「フッフッフッ……」

 

黒歌「ッ!」

 

 

イーヴィルティガには全く通用していなかった。体には傷1つなく、それどころか今までの攻撃を苦ともせず、不気味に笑いながら首をゴキゴキと鳴らしていた。

変身者であるヴァーリがこの程度でやられるとは思ってはなかったが、掠り傷1つもつけられないとは……。

人とウルトラマンとの力量差を黒歌は痛感した。

 

 

イーヴィルティガ「フッフッフッ……」

 

 

そんな黒歌を次の標的を定めたイーヴィルティガは不気味に笑いながら振り上げた右拳に紫色のエネルギーを込める。暴走したイーヴィルティガ────ヴァーリはかつて同じ道を歩んできた仲間でさえも躊躇する気はないのだ。

 

思わず立ち竦む黒歌。ウルトラマンとは以前戦ったが、その時には感じなかった明確な殺意を前に黒歌は蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れなかった。

そんな心情も意に返さないイーヴィルティガは紫色の光弾を放とうするが──

 

 

ドォォンッ!

 

イーヴィルティガ「ッ?」

 

黒歌「!?」

 

 

上空からイーヴィルティガの背中に数発の光弾が直撃、爆発で前のめりに怯む。

驚いた黒歌は光弾を放った方角を見ると、ジェクターガンを構えている梶尾に加えてシトリー眷属とグレモリー眷属の姿があった。

先頭にいる梶尾は叫ぶ。

 

 

梶尾「馬鹿!何固まっている!」

 

黒歌「ッ!」

 

 

梶尾の必死な声に気を取り戻した黒歌はその場から走り出して離れる。

その間にも梶尾達は各々の飛び道具で攻撃していく。標的を梶尾達へ切り替えたイーヴィルティガは光弾を受けても苦ともせず前進していく。

 

 

サーゼクス「総員、攻撃開始!」

 

 

奮闘する梶尾達に続いてサーゼクスの号令がかかると、同時に三大勢力の戦士達も攻撃を仕掛けていく。

数多の魔力弾が次々とイーヴィルティガの身体に直撃していく。

だが、火花が散り、僅かに怯むはするもののイーヴィルティガには全く通用していない。それでも、三大勢力はめげずに攻めていく。

 

 

イーヴィルティガ「ゥ″ウ″ウ″ゥ″ゥ″ゥ″~~~!ハ″ァ″ッ″!!」

 

ドォォンッ!

 

『うあぁぁーーーーッ!!』

 

 

次々と放たれる魔力弾をイーヴィルティガは両腕を上下に広げ、紫色に輝く円形状のバリアで防ぐ。そして、上下を反転させてバリアを回し、魔力弾を弾き飛ばした。

弾かれた魔力弾は近くにいた戦士達を吹き飛ばす。

 

 

イーヴィルティガ「ウ″ア″ァ″ァ″ァ″ァ″ーーーッ″!!!」

 

アザゼル「神をも超える新しい存在か……。皮肉だな、ヴァーリ……」

 

 

粉塵舞い上がる戦場で暴れ回るかつての養子の姿にアザゼルは複雑な表情で吐き捨てる。ヴァーリが幼い時から育て、力の在り方を説いた筈だが、テロリストへ離反。

そこまでしてヴァーリが追い求めた力の先が、彼が目標とするものとは真逆の存在になってしまった。

その光景にアザゼルは呆れや怒り……そして、彼の心に潜む影に気付かなかったことに対して悲しみが湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしよし!いいものを見させてもらった!ふふっ、新しい商売先も見つかりそうだ……」

 

 

その頃、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の秘密基地では、構成員達の手によって四之宮の記憶データは全て録り終えていた。

太った紳士は無事に録り終えたことに加え、まだ見ぬ怪獣を知れたこともあり、でっぷりと出た腹をたぷたぷと揺らして飛び跳ねていた。

喜びに満ち溢れている太った紳士に黒フードの女は場を読まず、冷たい声音で話しかける。

 

 

「……おい。()から頼まれたものを持ってきた。奴はどこだ?」

 

「ああ、それなら……」

 

 

訊ねる黒フードの女の手には一誠と我夢から奪ったリーフラッシャーとエスプレンダー。太った紳士は()がいつも何処にいて、何をしようとしているのかハッキリとわかっている。

彼の居場所を伝えようとしたその時──

 

 

ドォォォォンッ!!

 

『うぁあぁぁぁーーーッ!?』

 

「「!?」」

 

 

突如、構成員の悲鳴と共に爆発が起きた。目を離した隙に四之宮がいた場所が爆発したのだ。

2人が何事かと思った矢先、爆炎から縦状に伸びた三日月の斬擊が黒フードの女を襲う。

 

 

「ッ!」

 

 

黒フードの女は素早く太った紳士を突き飛ばして横へかわすが、流石に油断していたのか、思わずリーフラッシャーとエスプレンダーを床へ落としてしまう。

 

 

「おわわ…」

 

 

尻餅をついた太った紳士は突然のことに驚きながらも床を這い、リーフラッシャーとエスプレンダーを回収しようとする。

 

だが、あと一歩で手が届きそうなところで進行を止めた。いや、止めざるを得なかった。太った紳士の首筋に「これ以上進めば斬る」と言わんばかり、日本刀の刃が突き立てられていたからだ。

太った紳士は「まさか…」と思いながら顔を動かさず目だけを動かして見上げる。視線の先にいるのは、魔人態となったジャグラーだった。

 

 

ジャグラー「久しぶりだな」

 

「ひっ!?」

 

 

ジャグラーの何気ない挨拶に軽い悲鳴をあげる太った紳士。──先ほどまで意識がなかった筈なのにどうして?

そんな疑問をテレパシーを使ったかのように読み取ったのか、ジャグラーは緑色の眼で見下ろしながら答える。

 

 

ジャグラー「何で意識があるんだって顔をしてるが、教えてやるよ。そっちの姉ちゃんと戦った時、わざと捕まったのさ。出来るだけ意識を保つように急所を外して、お前らの秘密基地を確認する為にな……。まあ、思ったより回復が遅かったのは想定外だったがな」

 

 

そう言うとジャグラーは足下に落ちているリーフラッシャーとエスプレンダーを拾い上げる。

そして、黒フードの女がこちらに迫ってきてることを視認すると、蛇心剣を鞘に収めて鼻で笑う。

 

 

ジャグラー「フンッ…どうやら遊んでる場合じゃないらしいな。お前はいずれ引っ捕らえてやる、覚えとけ」

 

 

威圧が籠った声音で言い残すと、ジャグラーは混乱に乗じて逃げ出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフェイ「そ、そんな!?ヴァーリ様ッ!」

 

 

地下遺跡にいるルフェイは人としての理性を失って暴れ回るイーヴィルティガの姿をスクリーンで見て唖然としていた。

白龍皇で旧ルシファーの血を引く男がウルトラマンの力に呆気なく呑まれ、暴走する光景が信じられないのだ。

 

ルフェイがスクリーンに釘付けになっているのを尻目に、粒子状の光となった子犬は怪獣の石像の胸元にあるカラータイマーに吸い込まれるように一体化した。

そして、一際眩しく輝くと、生物感に満ちた体表へ変化した。

胸元にはカラータイマー───ガーディータイマーが青く輝く狛犬に似た怪獣───『ガーディー』が蘇った。

 

 

大悟「君は……あの巨人の、友達だったんだ。……頼む。アイツを、止めてくれ……」

 

ガーディー「ガァゥゥ…」

 

 

息絶え絶えの大悟の頼みに応えるかのようにガーディーは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、すっかり戦場へと変わり果てた広野ではイーヴィルティガと三大勢力による熾烈な激戦が続いていた。

 

 

美猴「そんな……。嘘だろ、ヴァーリ。冗談だよなぁ……お前は巨人の力を誰よりも扱える歴代最強の白龍皇なんだ……」

 

 

そんな中、現状を受け入れられない美猴はすっかり戦意喪失してしまっていた。ウルトラマンの強さもそうだが、誰よりも優れた才能を持つと信じていたヴァーリが暴走してしまう事実が信じられなかったのだ。黒歌やアーサーも同様に意気消沈してしまっていた。

そんな美猴の弱音を近くで耳にした梶尾は鋭い剣幕で美猴の胸ぐらを掴む。

 

 

梶尾「まだそんなことを言っているのか!見てみろ!あの巨人を!何が歴代最強の白龍皇だッ!!自分の心が巨人の力に負けてしまってるじゃないかッ!!」

 

 

梶尾が指差す先にいる巨人。そこには、抑えきれない力で無茶苦茶に暴れる獣以下に過ぎない存在。そこに歴代最強と謳われるヴァーリ・ルシファーの姿はなかった。

光を継ぐものに血統や才能は関係ないのだ。

梶尾は胸ぐらを掴む手を離すと、続けて叫ぶ。

 

 

梶尾「今、ここでやることは奴を止めることだ!得体の知れないものに手を出す程、奴は弱いのか?そうじゃないと信じてるんだろう!?お前が奴を想い、尊敬しているなら、尚更止めなきゃいけないだろうが!」

 

美猴「く、くぅぅ……」

 

 

梶尾の説教を受け、泣き崩れる美猴。誤った道をしたリーダーの現状を受け入れ、止めようとする姿勢──そのことは他の2人にも充分伝わった。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!」

 

 

そんな最中、イーヴィルティガは三大勢力の攻撃を振り払うと、両腕を天高く上げ、何処かへ飛んでいく。

突然の逃亡とも取れる行動に一同が疑問に思う中、アザゼルはイーヴィルティガの向かった方角を見て焦りの色を見せる。

 

 

アザゼル「不味いぞ……あっちには街がある。しかも都市部だ」

 

一誠「え!?」

 

リアス「早く追わないと!」

 

 

それを聞いて青ざめた一同は急いでイーヴィルティガの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我夢、小猫、ゼノヴィア、匙、椿姫の5人はガーディーが飛び出てきた方から大悟がいるのではと検討をつけ、地下遺跡へ繋がる洞窟の中を進んでいた。

 

 

我夢「大悟!」

 

ルフェイ「ッ!?」

 

 

地下遺跡へと到着すると、我夢が地べたで倒れる大悟の姿を発見すると、一行は駆け寄る。

その声でハッと意識を現実に戻したルフェイはビクッと肩を震わす。

ルフェイの存在に気付いたゼノヴィアと匙が身構える中、我夢は大悟の上体を起こし、容態を確認する。

 

 

大悟「我、夢……」

 

我夢「ああ、僕だよ!もう大丈夫だ。小猫、手当てを」

 

小猫「……はい」

 

 

我夢の指示を受けた小猫は猫又の姿になると、仙術で治療を始める。掌から伝わる暖かい感覚に大悟は痛みが柔らいでいく気がした。

 

 

ゼノヴィア「貴様か!大悟をこんな目に合わせたのは!」

 

ルフェイ「あ、い、いや……私は……」

 

 

問い詰めるゼノヴィアの剣幕に圧されるルフェイはヴァーリの現状もあって、しどろもどろにしか話せなかった。

緊迫した空気に包まれていると、椿姫のXIGナビに通信が入る。XIGナビを開くと、それは主であるソーナからだった。

 

 

《ソーナ「椿姫。新たな怪獣が熊本市街に現れました」》

 

『ッ!』

 

 

この報告に一同は驚く。

怪獣の正体はこの地下遺跡から出てきたものだということは皆は察した。しかし、場所が悪い。

ただでさえ、同じ場所にいるイーヴィルティガの鎮圧に苦戦しているのにも関わらず、もう1体相手をしなければならないのは非常に苦しい。

 

皆が焦燥感に駆られていると、小猫の治療を受けている大悟は呟く。

 

 

大悟「あいつは……間違った心を持ってしまった主人を……取り返しに行ったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、熊本市街では大暴れするイーヴィルティガによって戦火に包まれようとしていた。平穏な日常から一変して戦いに巻き込まれた人々はパニック状態になり、XIGやG.U.A.R.D.の避難誘導も手一杯だった。

 

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!シ″ャ″ッ″!!」

 

 

イーヴィルティガはそんなこともお構い無しに本能の赴くまま破壊活動を続けていた。道路を踏み歩き、建物を叩き壊し、光弾で大地を焦がす……。追い付いたリアス達三大勢力に石室が出撃させたXIGの戦闘機も応戦するが、活動を停止させる程の有効打は与えられずにいられなかった。

 

 

イーヴィルティガ「?」

 

ガーディー「ガゥゥ…」

 

 

渦中に包まれる中、イーヴィルティガの前に超古代狛犬怪獣ガーディーが地中より現れた。ガーディーの出現にXIGの面々はおろか、イーヴィルティガも予想外だった様子で、破壊活動の手を緩めた。

 

 

梶尾「こいつは俺が攻撃する」

 

《リアス「待って!あの怪獣、偽のティガに向かっていくわ」》

 

梶尾「何?」

 

 

XIGファイターSSに搭乗する梶尾がガーディーに攻撃しようとした矢先、リアスが待ったをかける。

梶尾はリアスに言われるまま視線を向けると、ガーディーがイーヴィルティガに立ち向かっていく姿があった。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!!」

 

ガーディー「ウォォン!」

 

 

イーヴィルティガは向かってくるガーディーの肩目掛けてかかと落としで蹴りつける。体勢は崩れるもののガーディーは抑えこもうと立ち向かっていく。

イーヴィルティガはそれを払いのけ、蹴りや拳の応酬で徹底的に痛め付ける。

 

 

ガーディー「ウォォン…」

 

 

それでもめげずにガーディーは立ち向かっていく。イーヴィルティガに何度も何度も痛め付けられ、倒れても出来るだけ暴力はせず、必死に押さえ込もうと食らいついていく。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!イ″ィ″ア″ッ!!」

 

 

最初は軽くあしらっていたイーヴィルティガも流石にしつこいと感じ、みぞおちを蹴り込んで怯ませると、頭部の角を両手で掴んで思いっきり後方へ投げ飛ばした。

市街地を転がるガーディーはすぐに立ち上がると、右掌を前に突き出して吠える。

 

 

ガーディー「ウォォン!ウォォンッ!」

 

ロスヴァイセ「何か訴えかけている……?」

 

 

ガーディーの行動に意思を感じたロスヴァイセは首を傾げて呟く。何かを訴えかけるように吠えるガーディー──その仕草も相まって、まるで「止めてくれ」と言っているように見えた。

 

子犬の命を得たガーディーは大好きな主人を止める為に蘇ったのである。

 

 

イーヴィルティガ「ウ″ゥ″ゥ″……ア″ァ″ッ″!シ″ャ″ァ″ッ″!!」

 

 

しかし、イーヴィルティガはその制止にも耳を貸さずに一際大きく唸ると、大地を蹴って飛び上がり、その勢いのままガーディーを蹴り上げた。

 

 

ガーディー「ガゥゥ…ウォォン……」

 

イーヴィルティガ「ハ″ッ″!グゥ″ア″ッ″!」

 

ガーディー「ガゥゥゥ……」

 

 

痛む体に鞭打って立ち上がり、制止するように訴えかけるガーディーにイーヴィルティガは容赦なく握り拳を交互に突き出して、紫色の光弾を2連発浴びせる。

まともに受けたガーディーは胸元から火花を散らすと、ズシンと大地を震わせ、仰向きに倒れた。

 

 

イーヴィルティガ「ゥ″ゥ″ウ″ゥ″ゥ″……!ダァ″ァ″ァ″ァ″ーーーッ″!!ウ″ゥ″ゥ″オ″ア″ァ″ァ″ァ″ーーーッ″!!」

 

 

ガーディーを痛め付けても尚イーヴィルティガの暴走は収まる気配を見せず、癇癪を起こした子供のように道路を踏み荒らし、近くの建物を叩き壊していく。

 

 

ガーディー「ウォォン!ウォォン!」

 

[ビコン]

 

 

ガーディーのエネルギー残量を現す胸元のガーディータイマーが青から赤へと点滅し初めていた。

 

 

ガブッ!

 

イーヴィルティガ「ッ!」

 

 

エネルギーも残り僅かとなり、フラフラになっても立ち上がったガーディーは破壊を続けるイーヴィルティガの左腕に噛み付いた。

イーヴィルティガは力ずくで離そうともがくが、ガーディーは意地でも離れなかった。

 

 

ガーディー「クゥゥン……」

 

 

噛み付きながらガーディーは悲しげに鳴く。

───止めてくれ。君はこんな悪いことをする奴じゃないだろう?

聞こえない悲痛な訴えは一筋の涙となってこぼれ落ちる。

 

 

ロスヴァイセ「泣いている……」

 

 

怪獣ガーディーの涙にロスヴァイセを筆頭にその悲痛な気持ちが伝わってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「さあ、バリアを解いてくれ」

 

 

小猫の治療を受けた大悟はルフェイに頼み込む。

イーヴィルティガが暴走した以上、ヴァーリ側にも良くない状況だ。早くしなければ、スクリーンの向こう側で奮闘しているガーディーが殺されるかもしれない。

焦りという感情が大悟の額に細かな汗を浮かばせていく中、ルフェイは首を横に振る。

 

 

ルフェイ「それは出来ません……。この結界はヴァーリ様が創られたものなんです。術者だったら解けるのですが、ヴァーリ様がああなってしまった以上は……」

 

 

そう話したルフェイは顔を曇らせる。

北欧の術式はそっとやちょっとで解除出来る代物ではない。出来たとしても、その時は熊本市街は壊滅するだろう。

 

皆がどうしようと考える中、大悟は思った。

───自分がやるしかないと。

意を決した大悟は我夢達の方を振り向く。

 

 

大悟「みんなは先に行っててくれ。必ず、帰るから……。お願いします」

 

 

皆にそう頼む大悟。ピッチリと引き締めた口に、何かを決意した眼差し──そこから一同は大悟の真意を汲み取った。

椿姫は皆に指示を出す。

 

 

椿姫「……わかりました。行きますよ」

 

我夢「絶対帰って来るんだぞ」

 

 

去り際に我夢が放った激励に大悟は力強く頷く。それは現状、変身出来ない我夢が大悟に全てを託したということと同じだ。

 

我夢達が地下遺跡から去っていった後、大悟は結界内の光遺伝子コンバーターに供えてあるスパークレンスを見上げる。

 

 

大悟「僕に出来ること……人として出来ることを!」

 

 

自分に言い聞かせるように言うと、大悟は決意を固めると結界へ飛び込んでいく。

 

 

バリバリィッ!

 

大悟「うぅああーーーッ!!?ぐぅあぁぁぁーーーーッ!!!」

 

 

しかし、そう簡単にはいく程甘くはない。結界中を走る電流が大悟に襲いかかる。身体中につんざくような痛みが走り、思わず悲鳴に似た叫びをあげる。

激痛のあまりうつ伏せに倒れる大悟だが、激痛を歯で噛み締めて堪えると、這って先へ進んでいく。

 

 

大悟「う″ぅ″う″ぁ″ぁ″ぁ″……あ″ぁ″ぁ″ぁ″ッ!!」

 

 

倒れるのは簡単だ。このまま吹き飛べば身体中に流れる痛みが収まって楽になる。

だが、大悟は引き下がらなかった。ウルトラマンでなくとも、人である自分自身で出来ること───その熱い決意が大悟の体を押し上げていた。

 

 

ルフェイ「(どうして……無理だとわかってるのに……)」

 

 

ルフェイにはわからなかった。不可能だとわかっていても立ち向かっていくのかを。

高い壁にぶつかれば高い梯子を用意すればいい。わざわざよじ登るより、よっぽど簡単でリスクも少ない。

 

しかし、大悟(この男)はその壁をよじ登ろうとしているのだ。傷付き、倒れるのを承知でだ。

どうして、そこまで意地を張るのか。この時の彼女にはまだ理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!シ″ャ″ァ″ッ″!シ″ャ″ァ″ッ″!」

 

ガーディー「ガゥゥゥ…」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!!」

 

 

イーヴィルティガは左腕に噛み付くガーディーを3発蹴りつけて引き離すと、その場で一回転し、回し蹴りで蹴り倒す。

すかさず、倒れたガーディーの上に股がると、顔目掛け、拳で滅多打ちにかかる。

 

 

ガーディー「ウォォン…」

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ーーーッ″!ハ″ァ″ーーーッ″!!シ″ャ″ーーハ″ハ″ハ″ハ″ッ″……!」

 

 

既に抵抗出来ない程に満身創痍のガーディーを一発、一発、また一発と殴り付けることに快感を感じるイーヴィルティガは不気味に笑い出す。

 

 

イリナ「やめてーーーッ!」

 

梶尾「この偽者めッ!!」

 

ドォォンッ!!

 

イーヴィルティガ「グゥ″オ″ッ″!?」

 

 

目の前で繰り広げられる悲惨な光景に我慢出来ない…。

地上にいるイリナ達の飛び道具、梶尾のファイターSSのミサイル攻撃がイーヴィルティガの胸部に命中。

火花を散らし、怯んだイーヴィルティガは攻撃の手を一旦止めると、地上にいるリアス達を見据え───

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!!」

 

ドガァァァーーーンッ!!

 

『きゃあぁぁぁーーーーーッ!!』

 

 

拳を突き出して光弾を放つ。着弾点からは大爆発が起き、巻き込まれたリアス達は悲鳴をあげながら吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大悟「はぁ……はぁ……」

 

 

その頃、地下遺跡で奮闘していた大悟は遂に結界を突破した。ようやく辿り着いた安堵からか、大悟は思わず地に手をついてきらした息を整えていた。

 

 

ルフェイ「嘘……」

 

 

ルフェイは自分の目を疑った。

あれ程強固な護りで固められていた筈の結界が力ずくで突破したことに。しかも、何の能力を持たないただの人間にだ。

───どうして、何故、と色々疑問が浮かぶが、検討がつかない。

 

 

大悟「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

ある程度息が整ってきた大悟は痛む身体に鞭打って立ち上がると、フラフラとした足取りで光遺伝子コンバーターに供えられているスパークレンスを手に取る。

スパークレンスは光遺伝子コンバーターから放つ照明を受けて美しく輝いている。

 

 

大悟「…!」

 

 

───僕が止めてみせる。新たな決意を固めた大悟はスパークレンスを天高く掲げる。

そうすると、スパークレンスのウイングパーツが開き、中にあるレンズから目映い光が放たれ、大悟を包む……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーシア「皆さん!」

 

 

アーシアは急いで傷付き倒れる仲間達に回復のオーラを飛ばして回復させる。淡い緑色の光の回復力は致命傷レベルの傷もたちまち癒した。

続々と戦線復帰するが、状況は以前として変わらない。

 

 

リアス「流石にきついわね……」

 

ソーナ「ええ。正直、持ちこたえられるかも怪しいですね……」

 

 

思わず吐いたリアスの弱音にソーナは同意する。

アーシアの回復能力があるとはいえ、気力と体力はじわじわとすり減っている。既に死傷者も続々と出ており、自分達もいつ倒れるかわからない。

長引けば長引く程、不安は募り、状況は悪化していくばかりだ。

 

絶対絶命のその時、空を滑空する巨大な物体が飛んできた。

 

 

梶尾「来てくれたぜ、本物が……!」

 

 

その飛行物体を目にした梶尾は頬を緩める。その正体は待ちに待った勇者────ウルトラマンティガである。

 

 

ティガ「チャーーーッ!!」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

地上に降下するに合わせて一回転したティガは蹴りを放つ。直撃したイーヴィルティガは火花を散らして怯むも、側転して素早く身構える。

着陸したティガもそれに合わせて平手にした右手を前、握り拳にした左手を胸元近くに構える。

 

 

ガーディー「クゥゥ……」

 

 

ティガの登場に気付いたガーディーは満身創痍ながらも重たい瞼を開け、フラフラと立ち上がろうとする。

その瞬間──

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!」

 

ドォォンッ!!

 

ティガ「ッ!?」

 

 

イーヴィルティガの拳から放った光弾が胸元に命中し、ガーディーはバタリと倒れてしまう。

もうマトモに動けないのにも関わらず、容赦なく攻撃する姿に思わずティガは固まる。

 

 

[ビコン ]

 

 

致命傷を受けたガーディーは悲しみの涙で濡らした目元をゆっくりと閉じた。それと同時に息絶えたことを知らせるように、胸元で点滅を繰り返していたガーディータイマーの輝きも消えた……。

 

 

ティガ「…フッ!」

 

イーヴィルティガ「フッフッフッ……」

 

ティガ「フゥ~~~……!フゥ~~~………!!」

 

 

ティガは込み上がる怒りで拳震わせた。

人々を傷付け、街を破壊し、ガーディーを殺して嘲笑うイーヴィルティガの悪質さに。

───こいつは絶対に許さない!燃え上がる怒りを力に変えて、改めてイーヴィルティガへ立ち向かう決意を固めた。

 

 

イーヴィルティガ「ォ″オ″オ″オ″……!ェ″ア″ッ″!!」

 

ティガ「チャッ!!」

 

 

身構えた両者は同時に駆け出し、蹴りを入れながら背後に回る。

ティガは交互に拳を繰り出すが、イーヴィルティガは拳を捌くと、素早く背後に回り、ティガの背中を蹴る。

よろめいた隙にイーヴィルティガは蹴り込もうとするが──

 

 

ティガ「チャッ!」

 

イーヴィルティガ「フ″ッ″!?」

 

 

ティガは素早く体勢を切り替えて背後に回ると、逆にイーヴィルティガの背中を蹴りつける。

 

怯んだイーヴィルティガはすぐに体勢を整えると、上下段の蹴りを繰り出す。ティガも合わせて上下段の蹴りを放つ。全くタイミングのあった2人の足がぶつかり合う。

そして、立ち位置を切り替えるた両者は互いの胸に張り手を繰り出し、後退る。

 

───実力は互角。流れを変えようとイーヴィルティガは拳を握った両腕を広げて現れた黒色の軌跡を手前でクロスさせてエネルギーを集約させ、対するティガも平手にした両腕をクロスさせてから白色の軌跡を描いてエネルギーを集約させる。

 

 

イーヴィルティガ「シ″ャ″ッ″!!!」

 

ティガ「ヂョアッ!!!」

 

 

エネルギーを溜めた両者は鏡合わせのように両腕をL字に構え、イーヴィルティガはイーヴィルショットを、ティガはゼペリオン光線を放った!

闇と光の巨人による光線の押し合い合戦が始まる。黒と白の光線のぶつかり合いは凄まじく、周りの影が見えなくなる程の閃光がバチバチと迸る。

 

 

ドォォーーーンッ!!

 

ティガ「チャアッ!?」

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

しばらく打ち合っていたが、光線のぶつかり合う箇所から小規模の爆発が起き、両者は大きく後方へ吹っ飛ぶ。

光線では決着がつかなかった2人だが、すぐに立ち上がると、再び格闘戦を繰り広げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカエル「超人同士の戦いですか……」

 

アザゼル「いや、人の心が引き起こした戦いだ」

 

 

ミカエルの呟きにアザゼルは否と言い換える。

端から見えば超常的な力を持つ者同士の戦いと捉えられる。しかし、結局のところはヴァーリという男の邪な心が発端となった戦いなのだ。

 

 

アザゼル「ティガ、必ず勝ってくれ……」

 

 

アザゼルはティガに自身の願いを込めて呟く。

それはイーヴィルティガを倒してくれという堕天使総督の思いもあるが、何より間違った道を歩んでしまったヴァーリを止めてくれという彼自身の親心からでもあった。

勝手だと思いつつも、アザゼルは静かにティガの勝利を信じて見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手刀を互いに交わしたままゆっくりとした足取りで動くと、互いに蹴りを交わした後、拳をぶつけ合う。

ティガは間合いを取って蹴り込もうとするが、隙を見つけたイーヴィルティガに腹を蹴りつけられる。

 

 

ティガ「…ッ!」

 

イーヴィルティガ「イ″ェ″ア″ッ″!」

 

ティガ「チ″ャァッ!?」

 

 

怯んだ隙にイーヴィルティガはティガの首を軽く掴むと、力任せにティガを投げ飛ばした。

クルリと一回転して倒れたティガにイーヴィルティガは情け容赦なくかかとで蹴りつける。

 

 

イーヴィルティガ「ハ″ハ″ハ″ーーーーッ″!!」

 

 

そして、起き上がろうとするティガの首を掴んで無理やり立ち上がらせると、左肩にチョップを2発打ち込み、首を絞める。

ギチギチと鈍い音が苦悶するティガの耳に流れる。このままだと失神してしまう。

 

 

ティガ「ハッ!」

 

イーヴィルティガ「…ッ″!」

 

 

ティガは意識が遠のきそうなのを堪え、両手の手刀をイーヴィルティガの首に叩き込む。

この一撃で首を絞める手が緩んだチャンスをティガは逃さず、イーヴィルティガの首後ろに手を回して後方に下がり──

 

 

ティガ「チャッ!!」

 

ドォォンッ!

 

イーヴィルティガ「グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

背負い投げの要領で勢い後方の地面に投げつけた。

地面に叩きつけたイーヴィルティガは苦痛の叫びをあげ、土埃を舞わせる。

 

ティガは素早く身構えると同時に起き上がったイーヴィルティガも身構える。両者共傷付いてきているが、まだまだ戦う気力は充分だ。そう思われていたが──

 

 

[ビコン]

 

イーヴィルティガ「…ッ″!」

 

[ピコン]

 

ティガ「…ッ!」

 

 

両者の胸元に光るカラータイマーが青から赤へ点滅し始めた。カラータイマーが示すのは活動限界時間だ。

残された時間がないことを把握した両者は一気に決着をつけようとその場から飛び上がり──

 

 

イーヴィルティガ「シ″ィ″ヤ″ァ″ッ″!!」

 

ティガ「チャーーーーッ!!」

 

 

イーヴィルティガの蹴りとティガのフライングチョップがすれ違い様に炸裂する。

土埃を僅かに舞わせて両者は着地する。そのまま膠着状態が続き、カラータイマーの音だけが聞こえる静寂の時が流れる。

先に倒れるのは───

 

 

ティガ「……チャアッ!?」

 

イーヴィルティガ「ハッハッハッハッ……」

 

 

ティガだった。強烈な痛みがある胸部を抑えながら片膝をつく。

──勝った!そう確信したイーヴィルティガは振り向き様に高々と笑う。だが──

 

 

イーヴィルティガ「ハッハッハッ……グゥ″ア″ッ″!?」

 

 

笑っていたイーヴィルティガも苦しそうな声をもらすと、その場でドサリと倒れた。しかも、ダメージが深かったのは彼の方であり、立ち上がろうにも思うようにいかない。

その間にティガは立ち上がった。

 

 

ティガ「フッ!」

 

イーヴィルティガ「ア″、ア″ァ″……ア″ァ″…ッ″!」

 

 

既に決着がついたにも関わらず、諦めの悪いイーヴィルティガは片膝をついたままイーヴィルショットの体勢に入る。

だが、ティガから受けたダメージが深く、エネルギーが溜められない。

 

 

ティガ「ヂョアッ!!!」

 

イーヴィルティガ「ア″ァ″ァ″ッ″!?」

 

 

その隙にエネルギーを溜め終えたティガは両腕を一瞬胸に添えてからL字に組んで、生物を元あるべき姿に戻す還元光線──セルチェンジビームを織り混ぜたゼペリオン光線を放った!

直撃したイーヴィルティガは一瞬苦しそうな声を出した後、粒子状の光となって消滅した。

 

イーヴィルティガを倒したティガは傷付いた体を押しながら、ガーディーの亡骸に寄り添うと、ギュッと抱き締める。

それはティガが出来る助けられなかったことに対しての悲しみがこもった謝罪であった。

 

 

ティガ「ヂョアッ!」

 

 

ティガはガーディーの亡骸を両腕で抱えあげると、宇宙に向かって空高く飛んでいった。せめてガーディーが死後、安からに眠れるように信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、リアス達は合流した我夢達も加わって、撤収作業と出来るだけの復旧作業に勤しんでいた。

 

 

《石室「皆、よく頑張ってくれた。かけがえのない存在を失った者もいるが、君達のおかげで被害が拡がらずに済んだ。ありがとう」》

 

サーゼクス「私からも礼を言う。本当にありがとう」

 

 

スクリーン越しの石室、サーゼクスは労いの言葉をかける。今回の戦いは決して良く出来たとは思えないぎ、ティガが駆けつけるまで持ちこたえたのは上出来であろう。

 

 

ヴァーリ「ぅう、う″ぁ″ぁ″ぁ″ーーーー!!」

 

 

我夢達が頷いていると、後ろから苦しそうに叫ぶ声が聞こえてくる。皆は振り向くと、その声の発信源は全身を拘束具で拘束されて担架で運ばれているヴァーリだった。

ちなみに黒歌達の姿が見えないのは逃げ出したそうだからだ。

 

 

ヴァーリ「う″あ″ぁ″ぁ″ぁ″ーーーーッ!!う″ぅ″あ″ぁ″ぁ″ぁ″……ッ!!」

 

 

苦しげにもがいているヴァーリは顔中脂汗まみれで安静にしようとも出来ない状況だった。

ゼペリオン光線に織り混ぜたセルチェンジビームを受け、巨人の肉体とヴァーリは無事引き離すことが出来た。

だが、強引に光になったことでその反動が返り、彼を苦しめているのだ。

 

搬送車の中へ運ばれていくヴァーリを皆が見守る中、サーゼクスはアザゼルが今まで見たことがないぐらい悲しげな表情を浮かべているのに気が付いた。

 

 

サーゼクス「アザゼル……」

 

アザゼル「ああ、わかってる……」

 

 

サーゼクスの呼びかけにアザゼルは細々と返す。

ヴァーリは恐らく、医療施設へ治療された後、監禁されるだろう。今回の件に加え、今までのテロ行為もあって重い刑罰は避けられないだろう。

 

しかし、庇っては駄目だと頭ではわかっているが、どうしても“庇う”という選択肢がもやの様に絡まって離れないのだ。

アザゼルの複雑な心情をサーゼクスは察し、これ以上触れることはなかった。

 

 

一誠「そういや、大悟の奴どこ行った?」

 

 

ふいに出た一誠の声に皆はあっとなる。ガーディーを宇宙に帰した後、大悟は一向に現れる気配がなかった。

先に帰ったのだろうか?皆がそう思った矢先───

 

 

大悟「おーーーいッ!」

 

 

と遠くから呼びかける声が聞こえ、皆は振り向く。

その視線の先には爽やかな笑顔を浮かべる大悟が手を振りながらこちらへ向かって駆けてくる姿があった。

 

 

一誠「あ!あいつ、心配かけさせやがって!」

 

ギャスパー「だ、大丈夫そうですね!」

 

我夢「大悟ーー!」

 

 

安堵した一同は一斉に大悟に駆け寄り、周りを囲む。

一誠はこのやろと満面の笑みで大悟の首に腕を回し、頭をやや乱暴にくしゃくしゃと撫で回す。

 

 

ソーナ「……」

 

 

その様子を遠くからソーナ率いる生徒会メンバーは微笑ましく見守る。

うっすら笑みを浮かべるソーナだが、四之宮がどうなったのか気がかかり、ぎこちないものとなっている。

四之宮の安否が気になっていたその時───

 

 

四之宮「かーいちょう♪」

 

ソーナ「……ッ!?」

 

 

と、後ろから左肩に硬いものが触れ、耳元で聞き慣れた囁き声がした。ぎょっと驚いたソーナは飛び退くと、そこにいたのは気味が悪い笑みを浮かべた四之宮の姿だった。

 

 

ソーナ「四之宮!?」

 

四之宮「よっ!皆さん元気そうで……」

 

匙「元気そうって……心配してたんすよ!」

 

梶尾「そうだ!連絡1つも寄越さないで!」

 

 

いつもの調子で話す四之宮に生徒会メンバーはぷんすかと問い詰める。しかし、皆、内心では無事で安心しているのだ。

詰め寄られる四之宮はへらへらと笑みを浮かべる。

 

 

四之宮「お前ら、酷いな~。ほら、せっかく探し出したのにな」

 

一誠「あ!それ、俺達の!」

 

 

そうぶつくさ言いながら四之宮が取り出したのは紛失したリーフラッシャーとエスプレンダーだった。

それを見た一誠と我夢は血相を変えて、どかどかと四之宮に駆け寄る。

我夢は興奮気味に訊く。

 

 

我夢「見付けてくれててたんですか!」

 

四之宮「ああ、結構苦労したぜ~~……。ま、すぐに返してやりたいところだが、こんな大切なものをホイホイ無くすお前らの管理能力は甘いよな?よって、これから3日間、生徒会の俺の分の仕事を命じる」

 

「「えぇ~~~……!」」

 

 

突然の罰則を課せられた一誠と我夢の感情は、先程から込みあがっていたプラスが一気にマイナスへと叩きこまれた。

2人が嫌がるのも、生徒会の仕事はきついとあまり良い評判しか聞かないからである。

 

これを口実に仕事をサボれると四之宮がほくそ笑んでいると、ソーナはちょんちょんと指で肩を叩く。

 

 

ソーナ「四之宮。何、呑気そうにしているのですか。貴方には無断で行動したことに関する始末書が山ほどありますからね?」

 

四之宮「え、あ……」

 

 

それを聞いた四之宮は思わず固まった。忘れていたのだ。自分が無断で失踪していたことになっていることを。

一変してぎこちない表情になった四之宮はしばらく考え込むと、回れ右をして猛ダッシュで逃亡し始めた。

 

 

四之宮「ま、また今度ーー!!」

 

ソーナ「あ!今日は逃がしませんよ!」

 

 

面倒ごとを放り投げる四之宮の後をソーナは追いかけ回す。何気ない微笑ましい光景に皆は自然と笑いが込み上げてきた。

 

身分、種族、分け隔てなく愉快に笑い、温かい空気に包まれる。

そんな彼らの後ろを一匹の子犬が元気そうに走り回っていた……。

 

 

 

 

 

 

 




次回予告
(※イメージBGM:ウルトラマンダイナ次回予告)

一誠「俺は、このまま戦ってもいいのだろうか……」

サイラオーグの過去を知り、きたるレーティングゲームへの姿勢に迷う一誠。
その時、帰国した球友が一誠に告げる言葉とは?

次回、「ハイスクールG×A」
「青春の陰り」
お楽しみに!






作者の一言
『イーヴィルティガは止まらない』

相棒にしたい怪獣は?

  • ピグモン(ウルトラマン)
  • セブンガー(ウルトラマンレオ)
  • ミラクロン(ウルトラマンゼアス2)
  • マキーナ(ウルトラマンティガ)
  • リドリアス(ウルトラマンコスモス)
  • シェパードン(ウルトラマンギンガS)
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