俺に兄からある一人の少女が預けられた。俺はその少女にヴァイオレットと名前と名付けた。この少女、ヴァイオレットエヴァーガーデンという創作の主人公。俺なんかではなく、本当のギルベルトが慕うべきだった可憐で純粋な少女だ。そして人を幸せにすることができる、こんな戦場には程遠い存在なのだ。
「少佐?」
「ん、どうした?」
「これをいただいてよかったのでしょうか」
「構わない。君は欲しかったのだろう?」
「はい。少佐の瞳と同じ。とてもきれいです」
翡翠のアクセサリーを手に持った少女はかすかに微笑んだ。俺はそれが美しいと思った。でも、俺は知っている。それがかって俺が知っている創作の物語にとてもよく似ている。だから俺は生きていけないのだろう。彼女がまだ俺の人形で在ろうとしている事がなによりだ。俺が死ぬ事によって人として歩き出す事ができるのだ。
未来で彼女が幸せそう微笑み光景を俺はしっているのに胸がどうしても痛かった。
「少佐?」
「いや、なんでもない。時間だ。行くぞ、ヴァイオレット」
「はい」
俺の後ろを彼女は雛鳥のようについてくる。もうすぐ俺が死んだ作戦が始まる。彼女とは別れる事になる。未来を変えようとは思わなかった。一介の少佐にできることなどたかが知れている。むしろそれどころか、原作のギルベルトに恥じないように生きることで今の俺の精一杯だ。
「ヴァイオレット」
「はい」
「君は死ぬな」
「少佐?」
「生きてくれ。俺は君に生きて欲しい」
「少佐のご命令なら」
「ああ、今はそれでいい」
少し不思議そうに頷くヴァイオレットの表情を見て浮かぶ心の押し殺した。俺は歩き出す。これから向かう先は物語にあったインテンスの砦。そこが自分の墓標だとしても覚悟はできた。いつもと同じように戦場は静かに少しづつ迫ってきている。
「今から砦の攻略にかかる。俺たちは、インテンス内部に突入し敵の本部の制圧。信号弾を送り作戦は完了だ」
「はっ」
作戦開始され、順調に進んだ。もとより成功が約束されている任務だ。成功の心配はしていない。荒れ狂う銃撃の中を俺と彼女は進んで行く。部隊の犠牲は出ているがそれはいつもの通りのことだ。
「三、四班は私に続け!敵の大聖堂を制圧する!一、二班は周囲に敵を近づけさせるな!」
大聖堂へと辿りつく。もうすぐ俺の終わりが近づいてくる。この後は、俺たちは大聖堂を制圧し信号弾を放ち、敵の銃撃に撃たれ俺は死ぬのだろう。たしかそう記憶している。
「ヴァイオレット」
大聖堂の敵の総統は俺とヴァイオレットを残して殲滅することができた。ヴァイオレットに守れ仲間を死なせて行く俺はどうして。
「信号弾はあがった」
この後、俺は死ぬ。ヴォイオレットエヴァガーデンの物語が始まる。俺は彼女の方へと振り返る。俺を狙う敵がどこにいるかわからない。隠れてもきっと結果は変わらない。俺は死に彼女は生きる。なぜか銃口が見えた。彼女の後ろから狙う敵兵の姿が見えた。その銃口がヴァイオレットへと向いている。ありえない。なぜ彼女に銃口が向いている。死ぬのは俺ではないのか?
「ヴァイオレット!」
少女は振り返る。敵兵を見つけて的確に撃ち抜く。俺に弾は届かなかった。赤く染まる空の下で物語が変わるのを感じた。