輝夜は忙しい日々を送っていた。今ではマネージャーとなった元スカウトマンは大手芸能プロダクションの社員で、彼に社長と面会させられると、とんとん拍子で契約が決まり、即戦力としてモデルの仕事を受けていたのだ。その間、彼女はホテルで暮らしていた。会社から持たされた携帯電話で唯一の登録相手であるコナンと雑談をしたり、相変わらず家探しを手伝ってもらったりしながらも、充実した日々を送っていた。
ちなみに、社長は輝夜の容姿を目にしてどこにも渡したくないと思ったようで、彼女のわがままとも言えるゆるい労働条件を次々と呑んでいった。例えば、話を聞いて気分が乗らない仕事はしたくない、インタビューやテレビの仕事など、あれこれ自分のことを話さなくてはならないようなことも嫌、あらゆるプライベート、個人情報は秘匿したい等々だ。「蓬莱山輝夜」としてあれこれ調べられても困るため(まあ、調べられたところで彼女は戸籍などの書類を気付かれないように完璧に作り上げていたが)、「カグヤ」と本名を片仮名にした芸名を使っていた。
人はミステリアスなものに惹かれる。それがこの世に比類ない美しい女性ならば、なおさらだ。そういうわけで、彗星のように現れた謎の美少女モデル「カグヤ」はまたたく間に雑誌を賑わせ、世間を賑わせ、あっという間に有名人となった。年齢不詳、本名不明、その素性、経歴の全てが謎に包まれた、現代の「かぐや姫」として、特に断る理由のない仕事は片っ端から受けていった。その結果、あまりに静止画だけであることや、あらゆる情報が伏せられていることから、一部では「バーチャルの存在なのでは?」という疑いすら浮上している始末だった。
「しつれーだよな! 輝夜の姉ちゃんはここにいんのに!」
ぷりぷりと狭い車内で怒っているのは小嶋元太だった。出発前に見たワイドショーで、輝夜のことをバーチャルの存在と断言していたのを聞いてしまったためだ。
「別にどちらでも構わないわよ。バーチャルってことにしといた方が面倒事も少ないかもしれないし」
助手席で微笑む輝夜は、自身の載ったファッション誌を見ながらそう返した。ファッション誌では、数ページにわたって「究極のモテ女子・『カグヤ』姫になりたい! 時代を超える愛され清楚な姫メイク特集」という長いタイトルの特集が組まれている。
「でも、輝夜さんは大丈夫なんですか? 家出中なら、見つかってしまうのでは……」
心配そうにつぶやく光彦に、輝夜は雑誌を閉じて振り返った。後部座席に座るのは、元太、光彦、歩美、コナンの四人。今日は灰原はいないようだった。
「前も言ったかもしれないけど、家の者は私の与えた『難題』を解けないことには、迎えに来ないわ。たとえ私の居場所を突き止めたとしてもね」
「もしかして、謎解き勝負してるの?」
「うふふ。まあ、そんなところよ。ところで、博士が開発したおもちゃの新製品って、なんだったかしら?」
話題を逸らした輝夜は、博士に水を向ける。というのも、本日こうして輝夜が仕事を休んで彼らと外出しているのは、博士がおもちゃの新製品の開発に協力して契約金を手に入れたため、少年探偵団相手に宝探しゲームをするので、一緒に来ないかとコナンに誘われたからだった。それだけならば誘われる理由にはならないかもしれないが、輝夜は未だに忙しい合間を縫って家探しをしている。時々北川のところにも顔を出すが(彼は輝夜のことを上京してきたばかりの箱入り娘で、つい最近夢を叶えて芸能界デビューしたと思い込んでいる)、なんだかんだで契約しようとしていたマンションで殺人事件が起きたり、強盗騒ぎがあったりと落ち着かず、話が流れてしまっていた。
そこでコナンは、今回行くのは博士の伯父夫婦が住んでいた別荘で、マンションなどではないが間取りや雰囲気などが家探しの参考になるかもしれない、ということで声が掛かったのだ。
「じゃあ、私は家の中を自由に見ていることにするわね。もしかしたら、家の周りにいるかも」
「えー! 輝夜お姉さんも一緒に宝探ししようよぉ!」
「まあ……気が向いたら」
実は、輝夜はコナンに誘われた時点で博士からネタばらしをされており、宝の中身がおもちゃであることも、宝探しゲームが彼らのためであることも知らされてしまっている。そのため、出題者の意向を尊重しようと、ゲームには参加しないつもりだった。
ああでもない、こうでもないと話し合う子どもたちを置いて、輝夜は家の中、周りをふらふらと興味の赴くままに歩く。古くはあるが、確かに立派な別荘だった。時折視線を感じたため、この別荘に何者かがいることは分かっていたが、好奇心の旺盛な野次馬ということもあるかもしれない。ともかく、輝夜は基本的に寛容で大らかな性格なのだ。好きに探索をすることをやめなかった。
ふらりと子どもたちの方へと戻ってみると、ちょうどタイミングが良かったのか、歩美が「見て、輝夜お姉さん!」と手招きし、「ボクたち、宝を見つけたんですよ!」と興奮気味の光彦が声を上げる。「さっそく見てみようぜ!」と元太が箱にかかった布をはぎ取った、そのとき。
「そんな……ひどい……」
箱の中にあったのは、ナイフでずたずたにされたおもちゃだった。
「悪趣味ね」
輝夜の吐き捨てるような言い方に、コナンは思わず彼女の表情を窺い見る。いつも笑みを絶やさず、余裕を崩さない輝夜の表情が苦々しく歪んでいたのだ。
「誰かの笑顔を望んで用意した物を、こんな風にしてしまうなんて」
たくさんのおもちゃを買った博士は、宝を見つけて喜ぶ探偵団の姿を想像していたはずだ。ただおもちゃを買い与えるだけでなく、そこに「謎」というセンテンスを含ませたことに、輝夜は好感と共感を抱いていた。何かを手に入れるのならば、苦労の末こそがよい。なぜなら、そこにはただ「手に入れた」という事実だけではなく「誰と」あるいは「どのように」手に入れたか、「手に入れた」事実に思い出を重ねることができるからだ。
暗い雰囲気の中、コナンが「もしかしたら、この別荘には、本物のお宝があるのかも」と発言したことで、子どもたちはその明るさを取り戻し、再び屋敷の中で宝探しを始めた。聞くところによると、別荘にある物の中に、暗号の刻まれた物があるらしく、それを解読すれば宝を発見できるはずだ、とのことだった。
「記号を言葉に置き換えて当てはめてみたら?」
「ああ、そうしたいんだが……法則が見えそうで見えねえんだ。ちょっと紙に書きだしてみるか」
「右側三つの記号が同じなら、そこには共通の言葉が入るのよね?」
探偵団そっちのけで話を始めた輝夜とコナンだったが、やがて一つの答えに辿り着く。「そうか!」と彼が声を上げたところで、「二人だけで盛り上がるなよな!」「ボクたちにも教えてくださいよぉ」「仲間外れにしないで!」と探偵団の面々から非難の声が上がった。困ったように笑うコナンが解説をすると、すぐに理解したらしい少年たちは、暗号に従ってバタバタと動き回った。
暗号の指示通りに動くと、別荘から奇妙な音が聞こえる。音のした方角へと真っ先に駆け出したコナンの後に、その他の面々もついていった。
暗い隠し部屋に辿り着き、部屋に光を取り入れるため、博士が窓を開ける。すると、子どもたちがその隠し部屋で白骨死体を見つけてしまった。その人物は誰なのか、なぜこの場所に隠れる必要があったのか、コナンが推理を話していると、コツリと音がする。
銃口を向けてきたその人物は、この部屋を探していたようだった。そして謎を解いた彼らの後を付けてきたのだろう。白骨死体となった男性が作っていたという偽札をどうしても手に入れたいようで、コナンがキック力増強シューズのつまみに手を掛けようとすると、唐突に発砲してきた。
「動くな! 妙な真似をしたら殺すぞ!」
脅しをかける男に、輝夜は怯えのひとつも見せず涼しい顔で「あなた、こんなもののためにおもちゃをずたずたにしたの?」と問いかけた。
「ああ……偽札の原版がようやく見つかると思ったのに、あの肩透かしだ。恨むんなら、妙な事考えて素直にプレゼントしなかったやつを恨むんだな!」
「ナンセンスだわ」
輝夜は「動くな」と言われたことを聞いていなかったのか、否、聞いていても従う意思がなかったのか、肩をすくめて両手の平を天井に向けた。
「相手にただ与えるだけなんて……そんなものは、ナンセンスが過ぎるのよ。そしてそれを理解しないあなたは、どうやら美学の欠片もないようね」
「減らず口を叩きやがる女だ。次口を開いたらぶっ殺すぞ!」
「あら、そんなことできるのかしら? ……そもそも、あなたの大事なその『おもちゃ』、どうやら壊れてるみたい。誰かにずたずたにされたおもちゃのように、『いつの間にか』暴力にさらされてしまったのかしら」
脅されているのに、輝夜は何も怖くないとでも言うようにくすくす笑いながら言葉を続けるので、男は引き金を引いた。――そのはずだった。
「そんな!? い、一体何が!?」
銃口はあらぬ方向にねじ曲がっていた。しかし、先ほどコナンが動いたときには、正常に発砲できたはずだ。それがこの一瞬で、まるで尋常ならざる怪力の持ち主が、憤怒を以って力任せにひん曲げたかのように、あるいは固まり切っていない粘土細工に力を加えた時のように、歪な形に姿を変えていた。
「怒ってるんじゃないかなぁ、あのおじいさんも。ねぇ、オクダトモアキさん?」
ニヤリと笑ったコナンがそう告げると、男はあからさまにうろたえながら「なぜオレの名前を!?」と叫ぶ。
「簡単さ。あのおじいさんに教えてもらったからね」
「は……ハハ、ガキが、脅かそうったって……」
『……オクダトモアキ……』
ふいに、誰のものでもない低い声が部屋の中に響く。声はゆっくり、地を這うように、何度も何度も男の名を呼ぶ。やがて男は恐慌状態に陥ったように部屋から逃げようとして、足を滑らせ階下に転げ落ちた。
「……一応、目覚めたときに暴れないよう、縛っておきましょうか」
輝夜は博士にロープを持ってきてもらい、男をぐるぐると縛り上げた。それから博士が警察に通報し、事情を説明して男の身柄を引き渡すことで、二時間がつぶれてしまった。
「あなたたちといると、なんだか事件に巻き込まれるわね」
帰りの車内、疲れた様子で眠ったりあくびをしたりする子どもたちを見ながら、輝夜がそうつぶやく。博士は乾いた笑い声をあげたが、コナンはムッとした顔で「それを言うなら、輝夜さんといると怪奇現象に巻き込まれるよな」を返した。彼は男が所持していた拳銃をまじまじと観察したが、どう見ても力任せに捻じ曲げられたような変形の仕方をしていた。しかし、それをできる者はそもそも滅多にいないだろうし、少なくともあの場にはいないはずだ。つまり、「怪奇現象」と表現せざるを得ない。探偵としては、この事件で唯一納得のいかないところだ。警察も不思議がっていたが、子どもたちがあまりに「タタリだよ!」と騒ぐので、深追いせずに犯人を連行していた。
「それって、どっちがマシなのかしらね」
涼しい顔で車窓から見える景色を眺めている輝夜がそう問うと、「……どっちもロクなもんじゃねぇよなぁ……」とコナンはうなだれそうになった。
「そういえば、どうだった?」
それからすぐに、コナンは話題を変えるべく再び顔を上げた。
「どうって、何が?」
「何がって、家だよ。博士の伯父さんの別荘、参考になった?」
「おお、わしとしてもそれは感想を聞きたいのう」
「そうね。いい家だったと思うけど……とりあえず、自分が住む家に隠し通路も隠し部屋もいらないなと思ったわ」
今度こそコナンは(ついでに博士も)がっくりとうなだれたのだった。
*おまけ
コナンが事件に巻き込まれたり自ら首を突っ込んだりしている間に、輝夜から「家が決まった」との連絡があった。灰原以外の少年探偵団を引き連れて彼女の新居にお邪魔することになり、彼らが小五郎に鬱陶しそうに見られる中、探偵事務所で輝夜を待っていると、約束の時間ぴったりに彼女は扉を開けた。
「あら、みんな揃ってるじゃない。毛利さん、こんにちは。待ち合わせ場所に使ってしまって、悪いわね」
「いやいや、輝夜さんがいらっしゃるなら大歓迎です。今日は輝夜さんのお宅に子どもらがお邪魔すると聞きましたが、よろしければアタシも……」
「申し訳ないけど、大人は呼ばないことにしたの。下手な誤解を与えないようにって、事務所からの忠告もあってね」
「あ……そうですか。それは残念」
心底残念そうに肩を落とす小五郎を見て、輝夜はくすりと笑った。
「あなたは見てて飽きないわね。まあ、また何かの機会があったら子どもたちも一緒に食事でもどうかしら? これからも、こうやって探偵事務所に遊びに来させてもらうことがあるかもしれないし」
「おお! それはいいですね! ぜひお願いします!!」
力強く拳を突き上げて、喜びを全身で表現した小五郎に、輝夜は再びくすくす笑いながら「さ、行きましょ」と子どもたちへ外に出るように促した。
「輝夜お姉さんのお家、楽しみ!」
「きっと広くてきれいなところなんでしょうねぇ」
「なあなあ、引っ越し祝いにうな重喰おうぜ!」
「あら、いいわよ。それなら夕食は鰻にしましょうか。親御さんに夕飯はいらないことを伝えておいてちょうだい。帰るときに外で食べましょう」
子どもたちがはしゃぐ中、輝夜は探偵事務所の前に停めさせておいた車に乗り込む。そのままマネージャーに美味しい鰻屋を探しておいてほしいと頼んだ。人を使うことに慣れ切っている様子は、芸能人というよりは、やっぱり「お嬢様」という感じが強いなとコナンは感じた。
着いたのは、大きなマンションだった。家賃の支払いにほとんど問題のなくなった輝夜はどこでもいいと思っていたのだが、低層階は家宅侵入されやすいからダメ、もちろんオートロック付きのところでなくてはダメ、駐車場は登録車以外しか入れない場所でなくてはダメ、など事務所の社長が厳しいジャッジを下して今回の家に決まったのである。
「ちょっと出入りが面倒な家なのよね。本当はその辺の小ぢんまりしたアパートの一階で、好きなときに出掛けて好きなときに家でのんびりしたかったのに」
(これほど小ぢんまりしたアパートが似合わない人もなかなかいねーよなぁ)
輝夜の呟きに、コナンが内心呆れる。世間知らずなお金持ちのお嬢様で現在は大人気モデル。その美貌は日本だけではなく、早くも海外から熱視線を注がれるほどである。そんな輝夜が小ぢんまりしたアパートに住んでいるところはおろか、出入りしているところすらも、想像しただけで違和感しかなかった。
輝夜が面倒だと言うだけあって、駐車場に停めるのにも住人に配られている駐車券がなければならない。引っ越し業者や宅配業者などの業者が停められるスペースには、マンションの管理会社と契約を結んでいる業者以外は、一度常駐している管理人に「いつ、どこで、誰に依頼されたのか」を明確にしてから仮の駐車券を受け取らなければならないのだ。
また、それ以外の送迎についてはマンションの敷地内にロータリーがあり、こちらも一度管理人に「誰を迎えに来たのか」ということを伝え、管理人からそのような約束があるかを連絡して、確認を取らねば駐停車できないことになっている。ちなみにこちらのロータリーには、タクシーもよく停まっている。住民の来客用スペースもあるが、そこを利用するにも一度管理人を通す必要があり、それを嫌う者は管理会社から余分に駐車場と駐車券を買い取り、合い鍵のように渡しているのだという。
輝夜は自分で車を所有していないため、各部屋に割り当てられた駐車場はマネージャー専用にしてあるが、引っ越したばかりにも拘らず、輝夜は既に「面倒だな」と頻繁に感じていた。
「ひろーい!」
「にしても、何もねぇじゃんか。輝夜の姉ちゃん、こんなんで生活できんのかよ」
マネージャーとは駐車場で別れ、エレベーターを使用して案内された輝夜の部屋に目を輝かせる歩美と、きょろきょろと部屋の中を見まわしながらその広さに反して物がほとんど置いていないことに驚きを示す元太。
「引っ越したばかりだし、なんだかんだ買い物に行くと目立っちゃうから、とりあえずは最低限のものだけで過ごしているのよ。洋服なんかは、仕事で使った衣裳が気に入れば買い取れるし、困ってないわ」
「さすが芸能人ですねぇ……」
光彦の感心と呆れの混じったような呟きに、輝夜は「面倒よね」と首をふるふる横に振った。
「そういえば、仕事の移動中、マネージャーにウノというカードゲームを教えてもらったの。あなたたち、やり方は知っている?」
「ウノってあのウノですよね?」
「輝夜お姉さん、もしかして今まで一回もやったことがなかったの?」
「うすうす感じてたけど……まさか、友達いなかったのか?」
子どもたちが明らかに憐憫の目を向けてきたことに、輝夜は少々動揺した。
「ま、まあ……たしかに今まで家の者以外と関わることはあまりなかったけど……あ! 一人いたわ! 友達とは思っていないけど、たまに『遊ぶ』人はいたわよ!」
とはいえ、その「遊び」は殺し合いであるが。そうと知らない子どもたちは次々と輝夜の手を取る。歩美など、目に涙を浮かべてすらいた。
「ひとり……輝夜お姉さん。歩美たち、お姉さんの友達だからね?」
「そうですよ、これからは寂しくないですよ」
「なんかあったら、友達のオレたちに相談しろよな!」
子どもたちからの憐れみと同情の視線にいたたまれなくなり、輝夜はコナンの方を見た。彼は何を考えているのか、子どもたちよりさらに深い同情と、「自分たちは味方だからな」といううれしくない優しい視線を向けていた。
子どもたちと白熱したカードゲームの時間を過ごし、時折休憩してお茶やお菓子を出して談笑していた。
「そういえば、輝夜お姉さんってどこの学校に通ってたの? お家の人が心配性だったなら、やっぱり女子校かなって思ったんだけど」
小学校の話を興味深く輝夜が聞いていたとき、ふいに歩美からそんな質問をされた。
「……? 私、学校には通ったことがないわ」
輝夜の爆弾発言に、少年探偵団たちは目を丸くする。
「えっと、じゃあ小学校とか中学校にも通ったことがないってこと?」
「ええ。必要なことは家庭教師に教えてもらっていたし、『特殊な体質』だから、そういうところには通えないと思うの」
「特殊な体質?」
矢継ぎ早に質問を重ねるコナンに、聞いてはいけないことを聞いてしまったかのようにハラハラした顔でそれを眺めている探偵団の子どもたち。輝夜にはそれがなんだか面白おかしく、かわいらしく映った。
「まあ、そうね。『怪我ができない』のよ、私」
それだけではなく、見た目が変わらないので同じところに通い、さらには卒業などできないだろう。人は異質を恐れる。長く一緒にいればいるほど、輝夜の異質は際立ってしまう。学校というものに興味はあったが、輝夜がこの世界でさえ、楽しそうに笑い合う少女たちと同じ立場を選ばなかったのは、単に手続きや生活が拘束されるのが面倒だからというだけでなく、いつになるか分からない「帰り」のそのときまでは通えないだろうなと分かっていたからだった。
「それって今もだよね? そのわりに、輝夜さんって危険なことにも首を突っ込むタイプに見えるけど……」
「あら、言うじゃない」
その後、コナンは輝夜に罠に掛けられ続け、ウノでは一勝もすることができなかった。その様子を見て、輝夜は楽しそうに笑っていた。
怪奇現象(ほぼ物理)