【バンドリ×けいおん】唯「バンドリ?」香澄「けいおん?」   作:キラ@創作垢

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 まさか、あの時の再会がこんなにも素晴らしい事になろうだなんて、あの時は誰にも想像できなかっただろうな……もちろん、私にだって想像できなかった。

 些細な偶然が折り重なり、そしてその偶然は、やがて運命と呼べる程に膨らんでいき、私達を巻き込んでいった。


 もうすぐ、始まる。

 私達の放課後が、始まる――!


#6.放課後と輝きの交錯

【花咲川駅前】

 

 ガールズバンドパーティー当日の早朝、花咲川の駅前には。始発電車で移動を済ませた唯達5人の姿があった。

 

 

唯「ん~~……ねむい……」

 

律「おい唯、しっかりしろー」

 

澪「これからリハなのに、大丈夫か?」

 

梓「ほら、唯先輩、起きて下さい」

 

紬「唯ちゃん、おきて~」

 

唯「ん~~~…………」

 

 眠い目を擦りながら歩く唯を引っ張りつつ、律達は人通りの少ない道を歩き、CiRCLEへと向かう。

 

 彼女達が早朝から集まった理由、それは、主役の少女達が集まる前に、ライブに向けたリハーサルを行うためであった。

 

 

【CiRCLE ステージ】

 

まりな「や、みんなおはようー♪」

 

律「よ、まりな、今日は宜しくな」

 

まりな「うんっ♪ こちらこそよろしくね」

 

唯「んんん…………うわぁ~、広いステージだね~」

 

紬「唯ちゃん、やっと目が覚めたのね」

 

唯「うんっ♪ えへへへ、ステージ見たら一気に目が覚めちゃった」

 

律「唯も起きたことだし、それじゃー早速準備に取り掛かるか」

 

 律の声に合わせ、各々が楽器の調整に取り掛かる。

 

 そして数分後、演奏の準備が完了し、ステージ上にて放課後ティータイムのリハーサルが開始された。

 

 

まりな「それじゃあみんな、早速だけどお願いね」

 

律「ああ……みんな行くぞ。ワン、ツー、スリー!」

 

 ――♪  ―――♪

 

 楽器の具合、音の反響や照明のチェック、各メンバーの立ち位置など、細かい点を確認するようにリハは続けられる。

 

 途中、梓と律の確認により、中断を挟む場面も見られたが、それでも順調にリハーサルは行われていった。

 

 

 そして1時間程の時が流れ、5人の最後の曲も問題なく終えられた頃……。

 

 

 ――♪ ~~♪

 

唯「ふぅ……どうにか演奏できたね」

 

澪「ああ、でも安心するのはまだ早いぞ、本番はあと数時間後なんだから」

 

律「ん~……4曲目の照明、もうちょっと落としても良かったかな?」

 

梓「はい……でも、あまり暗すぎると手元が見えづらくなりそうですよね」

 

紬「私は平気だけど……澪ちゃんや唯ちゃんは大丈夫かしら?」

 

 入念にチェックを重ねる5人に向け、曲を聴き終えたまりなから、称賛の声が上がる。

 

 

まりな「みんなお疲れさまー。凄いね……本当にここまでやってくれるなんて」

 

律「ふふ……感動すんのはまだ早いぞ~、なんたって本番はこんなもんじゃないからな~」

 

唯「うんうん、本番はもっと凄くなるよ♪」

 

まりな「うんっ、楽しみにしてるね」

 

 

律「じゃあ、私はもう少し残ってまりなと話詰めとくから、みんなは先に上がっててくれ。あんまりここに長居して、あの子達と鉢合わせたらマズいだろうしさ」

 

澪「そうだな……RoseliaやAfterglowのみんなももう来るかも知れないし、私達は先に上がってようか」

 

唯「うん、それじゃありっちゃん、まりなちゃん、また後でね~♪」

 

紬・梓「お疲れさまでしたー」

 

 そして律を残し、唯達4人は退出する。

 

 律とまりなが話を進めていたその10分後、澪の予想通り、早速一組のグループが楽器を手にスタジオの扉を開いていた。

 

 

友希那「おはようございます。Roseliaです、今日は宜しくお願いします」

 

律「っと、もう来たか……えらく早いな……」

 

まりな「あ、友希那ちゃん、おはよー。今日も一番乗りだね」

 

友希那「別に……ライブ当日の準備に念を入れるのは演者として当然の事ですから」

 

まりな「うんうん、感心感心。今日はよろしくねー♪」

 

律(ははは……すげぇやる気……)

 

 まだ開場まで3時間以上も時間があるというのに、彼女達は既に準備万端と行った様子でスタジオに入っていた。

 

 そんな友希那達……Roseliaの意識の高さに感心しつつ、律も退席を決めようと入口に向かう。

 

 

律「それじゃあまりな、後はよろしくね」

 

まりな「うん、それじゃあね」

 

律「っと、ちょっと失礼……」

 

リサ「あっ、すみません……」

 

 友希那達の横を通り、律はスタジオを後にする。

 

 そんな律の姿を片目で追いつつ、友希那達は本番前の最終チェックに臨んでいた。

 

 

リサ「……? あの人は……」

 

友希那「リサ、集中して」

 

リサ「あ、うん……ごめん」

 

律(さすがRoselia……貫禄もすげえな……)

 

 単に隣を通り過ぎただけでも伝わる、Roseliaの気迫……彼女達が纏うその気迫には、大人の律ですら威圧されかねない程の雰囲気が滲み出ていた。

 

 そんな彼女達に漂う空気に一瞬だけ身が竦むを感じつつ、律は唯達との合流のため、CiRCLEの建物を後にする。

 

―――

――

 

【ファミリーレストラン】

 

 朝食がてらに最後の打ち合わせをしようと集まったファミレス、そこに放課後ティータイムの姿はあった。

 

 まだ注文は済ませていないのだろう、各々の前には、未だに開かれたままのメニューが置かれていた。

 

 

律「よ、みんなお待たせ」

 

唯「りっちゃん、お疲れ様ー」

 

律「いやー、さっきスタジオでRoseliaと擦れ違ったけど……すげー迫力だったよ……ライブ前なのにあの気迫……もうプロ顔負けって感じでさ」

 

梓「……そんなに凄かったんですか、友希那さん達……」

 

律「ああ……ありゃー相当やべえぞ……私達も気合い入れて行かなきゃな」

 

澪「……律が珍しくやる気になってる」

 

律「あたしゃいつでもやる気十分だってのっ……てゆーか、腹減ったから早く何か頼もうぜ~」

 

紬「あ……私達はもう注文決めたのよ、りっちゃんは何にする?」

 

律「ああ、あたしカツ丼にする」

 

 朝食メニューとは別にあるメニューを開き、律は即答していた。

 

 

澪「朝からよくそんな重いもの食べれるな……」

 

律「早朝から深夜まで食い続けられる胃袋がなきゃ人気アイドルのマネージャーは務まらないんだよ」

 

唯「芸能関係のお仕事って大変なんだねぇ……」

 

 そして、呼び出しボタンを推し、店員にオーダーを済ませてからしばらく。

 

 朝食を済ませた彼女達は、最後の打ち合わせを始めていた。

 

 

唯「それにしても……本当に凄いライブだね、朝から夕方までずっと続くなんてさ」

 

 まりなから受け取ったライブのパンフレットを手に、唯は率直な感想を述べていた。

 

 

梓「はい……大人ならともかく、高校生が主体のライブでここまで長丁場なのも珍しいですね」

 

律「代表の5バンドなんかは特に凄いよな……朝の部に昼の部と出演数も多く割り振られてるし……一体1日に何曲歌うんだ?」

 

紬「それだけ……代表のバンド演奏には期待が持たれてるって事なのね」

 

律「ああ……出演するバンドの数も凄いよなー、この辺のガールズバンド、ほとんど全員集合してんじゃないかってぐらいの数だ」

 

澪「こ、これだけ大勢のバンドがいる中で、スペシャルゲストとして出るんだよな、私達……」

 

 澪の声色が僅かに震える。

 

 今更緊張で怖気付いたという訳ではないが、それでも……今日のライブに出演するバンドと、そのバンドを応援をするために駆けつけた人の数を想像するだけで、僅かに身が縮むような感覚がしていた。

 

 そんな澪の様子をよそに、他の4人はライブへの期待をより強めていた。

 

 

唯「ふふっ♪」

 

紬「うふふふっ♪」

 

律「へへっ……唯もムギもやる気だなぁ」

 

唯「うん♪ これだけ多くの人の前で演奏できるって考えると、なんだか楽しくなっちゃってさ」

 

紬「私もよ……私達の演奏を、私達が一番輝いてた頃の音をみんなに聴かせてあげられるのが、凄く嬉しくって」

 

律「はははっ、まー、ここで怖気づいてちゃ私ららしくないしなー、この日の為に散々練習もして来たんだし、今更緊張も何もないよなぁ」

 

梓「はい……精一杯、やってやるですっ」

 

澪「私も……もう怖くないぞ……ライブ会場の全員に見せてやるんだ、私達の演奏を……!」

 

 拳を握り込み、澪は決意を固める。

 

 そんな澪の姿に感化されたのか、唯と律は再びメニューを手に叫んでいた。

 

 

律「よーし! ライブの途中でバテない為にもまだまだ食うぞ~! トンカツ定食追加だぁ!」

 

唯「私もっ! チョコレートパフェもういっちょ!」

 

梓「……あの、お二人共……気合の入れ方、何か間違ってませんか……?」

 

 そうして、勢いのままにオーダーを済ませ、唯と律の2人は並べられた定食とデザートを瞬く間に平らげる。

 

 開場まで残り3時間……刻一刻と、着実にその時は近付いて来ていた。

 

―――

――

 

【CiRCLE】

 

 一方、所変わってCiRCLEには、既に数多くの演者達が揃い、相次いで開演前の準備とリハーサルに勤しんでいた。

 

 特に大きなトラブルもなく開演準備は進められ……それからしばらく、各バンド共にリハーサルも一通り済んだ頃……。

 

 

まりな「はーい! それじゃあみんな、一度フロアに集まって!」

 

一同「はーーい!!」

 

 まりなの声に、今回の主役であるバンド全員がステージのあるフロアに結集していた。

 

 

まりな「遂にこの日が来たね……みんな、本当にありがとう!」

 

香澄「はい!! 私達も、この日を凄く楽しみにしてました!」

 

こころ「私もよ♪ まりな、今日は笑顔の溢れるライブにしてみせるわ♪」

 

彩「香澄ちゃんやこころちゃんには負けないよーっ、私達、パスパレも頑張ります!」

 

蘭「うん、この日の為に練習だって欠かさず積んできたんだし……私達、Afterglowも、最高の歌を届けますよ」

 

友希那「ええ……Roseliaだけじゃない……ここにいる全員の力で、最高のライブにしましょう……!」

 

 皆が皆、ライブに向けての期待を最高潮に高めていく。

 

 そして――。

 

 

まりな「それじゃあみんな!! 今日はよろしく! これより、ガールズバンドパーティーを開催しますっ!!!」

 

全員「はいっっっ!! 宜しくお願いします!!」

 

 まりなの声に合わせ、ガールズバンドパーティーの開催が告げられる。

 

 そして、各メンバーの何人かが呼び込みや誘導、受付等に移り、次第にライブハウス内にも次々に人が入り乱れ、ますます賑わいを見せていく。

 

 そんな中、何人かの少女達は、今日来る筈のゲストの話をしていた。

 

 

美咲「そういえば、ゲストの方々はどうしたんでしょう、少なくとも、朝の打ち合わせには来てなかったですよね?」

 

麻弥「そうですね……一体、どんな人達が来てくれるんでしょう?」

 

有咲「まりなさんも教えてくれなかったし、まぁ気になるっちゃ気になるよなぁ」

 

ひまり「もしかしたら朝の内に会えるかもって思ったんだけど、残念だなぁ」

 

まりな「まぁ、せっかくのゲストだし、みんなにもギリギリまで秘密ってことでね。大丈夫だよ、心配しなくても、みんな来るからさ♪」

 

リサ(今日のゲストってもしかして……今朝すれ違った人じゃ……)

 

 顔に疑問符を浮かべる面々に向け、優しくまりなは答えていた。

 

 

蘭「……みんな、気になるのは分かるけど、いつまでも喋ってないで早く準備しようよ」

 

友希那「ええ、美竹さんの言う通り、今はゲストの方達の事よりも、自分達のライブに集中しましょう」

 

有咲「……友希那先輩の言う通りですね、それじゃ、私達も誘導行ってきます」

 

 友希那の声に同調するように各々は散会し、準備を進めていくのであった。

 

 

【CiRCLE カフェテリア】

 

 CiRCLEの外に隣接されるカフェテリアもまた、既に多くの人の姿で溢れ返っていた。

 

 

声「今日のライブ、ずっと待ってたんだ~、ポピパの演奏、楽しみだな~♪」

 

声「AfterglowとRoselia、またカッコよく決めてくれないかな~、前にやってた2マンライブ、超盛り上がってたしさ」

 

声「パスパレにハロハピも見逃せないよねー♪ あー、待ち切れないよ~!」

 

声「そういえば……スペシャルゲストって誰が来るんだろ? 私、そっちも気になってるんだ!」

 

声「私も! レベル高いバンドだといいねっ♪」

 

 ドリンクを手に、推しのバンドの演奏まで時間を潰す者や、ライブへも興奮を抑えきれずにいる者など、様々な人で賑わうカフェを眺めながら、放課後ティータイムの面々は静かにその時を待っていた。

 

 

唯「うわぁ……凄い数の人だねぇ」

 

澪「ああ……本当に始まったんだな……」

 

紬「ふふふっ、ええ……楽しみになってきたわね……」

 

梓「緊張……じゃないですけど、なんだか体が震える感覚がします……武者震いって言うんでしょうか」

 

唯「ん~……りっちゃん、早く来ないかなぁ?」

 

 唯達が用事で離れた律を待つことしばらく……ようやく律はその姿を現す。

 

 

律「よ、お待たせ」

 

唯「あ、りっちゃ……って、なーに? その格好」

 

梓「律先輩……随分雰囲気変わりましたね」

 

律「しゃーねーだろ、パスパレのみんなには今日出張でいないことにしてるんだし、変装ぐらいしないとすぐにバレちゃうからな」

 

 唯の指摘に律はワックスで整えた前髪をいじりながら言う。

 

 前髪を下ろし、服装も化粧も普段とは違う今の律の姿は、とても普段の彼女からは想像できない雰囲気を醸し出していた。

 

 

紬「うん、落ち着いた大人の女性って感じがして、私は良いと思うわ」

 

澪「ほんと、こういう格好してる時は律も別人だよな…………」

 

律「あの子達には普段スーツ姿で髪上げた格好しか見せてないからなぁ、これでグラサンでもかけりゃー……ほれ、ぱっと見で私とは分かんないっしょ」

 

 言いながら持参したサングラスをかけ、律は笑みを浮かべる。

 

 

唯「お~、りっちゃんかっこいい!」

 

律「へへんっ、だろ?」

 

 まるで有名モデルを前にしたような顔で唯は驚きの声を上げていた。

 

 

唯「そうだ! やっぱりあずにゃんもこうしようよ♪」

 

梓「ちょっ……唯先輩っ、何するんですか、やめてください!」

 

 おもむろにカバンからヘアゴムを取り出し、唯は器用に梓の髪を2本に纏めはじめる。

 

 

唯「ふふふっ、練習の時もずっと思ってたんだけど、やっぱりあずにゃんの髪はこうでなきゃね」

 

澪「はははっ、梓のその髪型も懐かしいなぁ」

 

紬「うんうん♪ まだまだツインテールも行けるわよ、梓ちゃん♪」

 

梓「まったく……皆さん、歳を考えて下さい……さすがにこの歳でツインテールなんて恥ずかしいですよー」

 

律「あーずさ、諦めろ、私だって恥を忍んで髪下ろしてんだからな」

 

梓「律先輩と違って変装するわけじゃ……ああもう、分かりました、分かりましたよ!」

 

 渋々ながら梓はヘアゴムで髪をきちんと2本に纏め、昔の髪型を再現していた。

 

 その姿を感無量といった表情で唯は見つめ、和やかな空気が5人の間に流れていくのであった。

 

 そして……。

 

 

憂「お姉ちゃん、皆さん、どうも♪」

 

唯「あ、憂! みんな~♪」

 

 

純「やっほー、梓、元気だったー?って……うわ~、懐かしい髪型だね」

 

梓「純……髪のことは放っといてよ……」

 

 

菫「お姉ちゃん、皆様、いよいよですね」

 

直「みなさん、頑張って下さいっ」

 

紬「菫ちゃん、直ちゃんも、来てくれてありがと♪」

 

 憂達わかばガールズの面々も揃い、唯達サイドの面子も相次いで集合してきていた。

 

 

和「みんな、先日はどうも」

 

唯・憂「あ、和ちゃん♪」

 

澪「和、和も来てくれたんだ」

 

和「ええ、秋山澪ファンクラブの会長として応援に来たわよ」

 

澪「ああ……ありがとう、和も楽しんでいってくれ」

 

和「そうだ、澪、あとで曽我部先輩も来るって言ってたから、来たら顔、見せてあげてね」

 

澪「曽我部先輩、懐かしいな……うん、必ず会いに行くって伝えといて」

 

 和の言葉に懐かしい顔を思い浮かべつつ、笑顔で返す澪だった。

 

 

梓「そういえば……純、頼んでおいた衣装は?」

 

律「そだそだ、私と澪がお願いしといた物も持ってきてくれたよね?」

 

純「はい、律先輩、澪先輩、こちらをどうぞ……梓も大丈夫、衣装はバッチリ仕上がってるよ♪」

 

 手に持った袋を澪と律に手渡しながら純は指で合図を送る。

 

 その指の先に視線を送ると、そこには、疲労困憊の様相でこちらに歩いてくる元顧問の姿があった。

 

 

さわ子「はぁ……はぁっ……みんなお待たせ……い、衣装なら……ここにあるわよ……」

 

律「うわっ、さわちゃん……どうしたのそのクマ……」

 

唯「髪もボサボサだし……一体何があったの?」

 

さわ子「これよこれ……今日までに仕上げるの大変だったわよ……」

 

 さわ子の手には大きめの紙袋が握られており、その中にはさわ子が今日の為に徹夜で仕上げた人数分の衣装が収められていた。

 

 

さわ子「せっかくの元教え子達の再結成の晴れ舞台だもの……憂ちゃんと純ちゃんにも協力してもらって、徹夜して作ったのよ……」

 

唯「さわちゃん、こんなになるまで頑張って作ってくれたんだね……」

 

律「気持ちは嬉しいけど……また、とんでもない衣装じゃないよな……」

 

澪「と、とりあえず開けてみよう……」

 

 高校の頃の記憶が全員の頭を過る。

 

 さわ子が作った軽音部時代のライブ衣装……それらのほとんどが人前では着られないような衣装であり、当時の唯達ですら着るのを躊躇うような代物が多かった。

 

 そんな心配が脳裏を過るのを自覚しつつ、澪は恐る恐る衣装を広げていた。

 

 

澪「これは……Tシャツ?」

 

律「な~んだ、何の変哲もない普通のTシャツじゃん、別にそこまで苦労するようなもんじゃないでしょ?」

 

 肩透かし感を喰らいつつ、澪と律は口々に感想を述べる。

 

 2人の言う通り、それは一見すると何の変哲もない、無地の白いTシャツに見えた。

 

 しかし……。

 

 

唯「あれ、でも裏になにかスイッチみたいなのがあるね?」

 

梓「これは電池……ですか? 裾の辺りに何か入ってますね」

 

さわ子「いいから、一回着てみてご覧なさいな」

 

 さわ子に誘われるがまま、唯はTシャツを着込み、裾にあるスイッチを押す。

 

 ……すると。

 

 

律「うわっ! ひ、光った!」

 

唯「えー? 私からじゃうまく見れないよぉ~」

 

澪「凄い……一見すると無地のTシャツなのにこんなに明るくなって……これ、LEDで光るTシャツだったんですね」

 

紬「このデザインは……懐かしいわ……学園祭ライブのTシャツですね」

 

梓「わぁぁ……凄く、凄く良い衣装ですよ、これ!」

 

さわ子「ふふっ、みんなのその顔が見たかったわぁ……」

 

 さわ子が用意した衣装、それは無地の白いTシャツに紫色の星が黄色く縁取られたデザインが施され、その前面には大きく『HTT』という文字が描かれた、唯達にとって思い出のTシャツだった。

 

 まさしくそれは10年前、放課後ティータイムが高校最後の学園祭で演奏した際に着ていた衣装を再現したものであったが……。

 

 しかし、それは単なる再現ではなく、Tシャツの各所にLEDが埋め込まれ、スイッチ一つで発光するという、10年前よりも遥かに進化した衣装となっていた。

 

 

さわ子「苦労したのよー、1週間しか時間なかったんだし、今日なんてもう寝ずに仕上げてそのまま来たってわけ」

 

律「さわちゃん……」

 

澪「先生……あ、ありがとう、ございます!」

 

紬「ステキな衣装ですね……ありがたく着させてもらいますっ!」

 

さわ子「ええ、私にここまでさせたんだから頑張りなさいよー? みんなの演奏、あなた達の元顧問として……軽音部の先輩として、しっかりと観させてもらうからね」

 

唯「さわちゃん先生……」

 

さわ子「唯ちゃん、あなたの歌も、楽しみにしてるわね」

 

 疲労の中にも確かな期待が宿るさわ子の眼に、全員の顔が強く引き締まる。

 

 それと同時に、さわ子と過ごしたかつての記憶が律達の中で思い起こされていた……。

 

 

律(……そういや、さわちゃんって昔っからこうだったよな……)

 

澪(ああ……3年間、いつも私達のことを見守ってくれていて……)

 

唯(ギターが下手だった私にいっぱいギターを教えてくれたり……ライブの衣装を人数分作ってくれたり、ロンドンにも応援に来てくれたよね)

 

紬(ええ……合宿に来てくれたり、夏フェスにも連れて行ってくれて……私の淹れるお茶をいつも美味しそうに飲んでくれてたのも、さわ子先生だったわ)

 

梓(どこか抜けてて、それでもかっこ良くて……先生っていうよりも、まるで歳の近い先輩みたいな感じで、気付いたらいつも私達と一緒にいてくれましたよね……)

 

 

さわ子「……? みんな、どうかしたの?」

 

律「ううん、いや、ちょっと昔を思い出して……」

 

 

律「……さわちゃん、ありがと……さわちゃんの想い、確かに受け取ったよ」

 

さわ子「……? ええ……私がいて、みんながいた頃の軽音部……桜高の軽音部魂を、会場中に集まってる若い子達に見せつけてあげなさいっ」

 

唯「うんっ! 私達に任せて!」

 

律「よーっし! みんな、準備は整ったし、行くか!」

 

一同「うんっ!!」

 

 眼前の恩師の言葉に、5人は力強く返す。

 

 その言葉に合わせ、憂達からもエールが送られる。

 

 

憂「お姉ちゃん、私達も応援してるからねっ」

 

唯「うんっ! 憂、純ちゃん、和ちゃん……ありがとう!!」

 

紬「菫ちゃん、直ちゃん、私達の演奏、最前列で見ててねっ♪」

 

直「はい! お気をつけて!」

 

菫「うん! それじゃあお姉ちゃん、先輩方、また後で!」

 

一同「皆さん、頑張ってくださーい!」

 

唯「はーい! みんな、行ってくるねー!」

 

 そして、さわ子から託されたTシャツを着たその上に上着を羽織り、放課後は歩き出す。

 

 揚々とした素振りでライブハウスへ進む放課後に向け、あらん限りの声援が投げ掛けられる。

 

 1人の先輩と親友、そして4人の後輩……多くの人々の期待を背に彼女達は、その舞台へと大きく足を進ませていた――。

 

―――

――

 

【CiRCLE 受付】

 

 CiRCLEの受付前、そこは既に多くの人で賑わっていた。

 

 引っ切り無しに人が往来する中、受付と誘導の手伝いに来ていたPoppin'PartyとPastel*Palettesの面々もまた、来る客の誘導と応対に追われているのが伺える。

 

 多くの人が入口付近で沙綾と有咲の誘導に従って列を作り、その先の受付では、彩と日菜の2人が笑顔を絶やさず接客を行っていた。

 

 

沙綾「はーい、皆さん列を乱さないようにお願いしまーす! って、あ、唯さん!」

 

唯「や、沙綾ちゃん、やっほー♪」

 

有咲「どうも唯さん、今日は遠くから来て下さってありがとうございます……そちらの方々は?」

 

唯「うん、私のお友達も呼んできたんだ、有咲ちゃんもお疲れ様、頑張ってるね」

 

 自分の後ろに並ぶ律達を軽く紹介し、誘導に従って唯も並び始める。

 

 

沙綾「皆さん、今日は早くから来ていただいてありがとうございます。唯さん、香澄ならもう下にいると思いますよ」

 

唯「うん、あとで顔見に行くよ、ありがとね♪」

 

 次第に列は進み、そして程なく、彩の前へと唯達は進んでいった。

 

 

女性「彩ちゃん、今日も応援してるよ、頑張ってね!」

 

彩「はいっ♪ ありがとうございますっ! では、奥へどうぞ♪」

 

唯「…………あ、あの! 丸山彩ちゃん……ですよね?」

 

彩「はいっ? あ、えっと……」

 

唯「あ、あのその……サ、ササササインをを……」

 

彩「え? あっ、はい」

 

律「うおっほんっっ! あの、詰まってるんだけど……」

 

 どこに隠し持っていたのか、唯が懐から色紙を取り出し、流れで彩がペンを持とうとしたうとしたその刹那、背後から物凄い剣幕で咳をする律の声が響いていた。

 

 

唯「あっ! す、すすすすみましぇんっっ!」

 

彩「……え? あ、特別客の方ですね、そのまま奥へどうぞ♪」

 

 その威圧感に押し出されるようにして、唯は予めまりなから手渡された特別チケットを彩に手渡し、背後の律に背中を押されながら受付を済ませていた。

 

 

律「ったく……あ、どうも」

 

彩「……??」

 

日菜「………あれは…………ふふふっ♪ ……おねーさん♪」

 

律「ん……?」

 

 律の姿を見かけた日菜が含み笑いを絶やさず、優しく声をかける。

 

 

日菜「ライブ、楽しんでってくださいね♪」

 

律「あ、ああ……ありがと……」

 

律(受付、日菜ちゃんもいたのか……バレてない……よな)

 

 努めて冷静に、クールを装いながら律は日菜に言葉を返す。

 

 そんな律に送られる日菜の視線を受け流しつつも、5人はライブハウスの奥へと歩を進めていった。

 

 

彩「……あの人達、なんだか不思議な人だったね」

 

日菜「あれ? 彩ちゃん、気付かなかったの?」

 

彩「えっ、な、何のこと?」

 

日菜「ふふふっ……♪ ライブ、頑張ろうね~♪ るんるんっ♪」

 

彩「…………???」

 

 

【CiRCLE ラウンジ】

 

 

律「ゆーーーいーーーーーっっ」

 

 ――ぎゅうううう………

 

 

唯「いひゃいいひゃい……! りっひゃん……ご、ごごごごごめんなひゃいいいいぃぃぃ!!」

 

紬「ほらほら……りっちゃんもそのぐらいにして……」

 

律「ったく……後で彩ちゃんにもキツく言っとかなきゃな……あんま安売りすんなっていつも言ってんのに……」

 

 先程の唯の問題行動に対し、怒り心頭の様相で律は唯の頬をつね上げていたが、紬の声により、その手は開放される。

 

 そして当の唯は、涙目で赤くなった頬を擦っていた。

 

 

唯「あーずにゃーん、みおちゃあぁぁん……痛かったよぉぉ」

 

澪「まったく……さっきのは唯が悪いと思うぞ」

 

梓「同感です」

 

まりな「あ、みんなー♪ 今朝はどうもね」

 

唯「あ、まりなちゃん♪」

 

 まりなの声に涙目から一変し、唯の顔に笑顔が戻っていた。

 

 

律「よ、まりな、どうかしたの?」

 

まりな「うん、もうすぐ最初のバンドの演奏が始まるんだけど、ポピパやパスパレの演奏まではまだ少し時間あるからさ」

 

まりな「今のうちにみんな、知り合いの演者の子達に挨拶とか激励とか、行ってきてあげたらどうかなって思って」

 

唯「え、いいの?」

 

まりな「うん、本当は関係者じゃなきゃダメなんだけど、放課後ティータイムのみんなは特別ってことでね」

 

律「そうだなぁ……って言っても私は行けないからな……あ、そうだ」

 

 思いついたように律は手に持った袋をまりなに手渡す。

 

 

律「まりな、これ、あの子達に差し入れ持って来たんだ、あとでパスパレのみんなに届けてくれないかな?」

 

まりな「うん、いいよー」

 

澪「私も、Afterglowのみんなに差し入れ持ってきたんだ、喜んでくれるといいけど」

 

紬「ハロハピの演奏までまだ時間あるし、私、こころちゃん達に挨拶してくるわね」

 

唯「私も、ポピパのみんなに挨拶してこよっと♪」

 

梓「じゃあ、私と律先輩はここで待ってますね」

 

唯「あれ、あずにゃんは行かないの? Roseliaのみんなと知り合いだったんでしょ?」

 

梓「あの人達には激励とか、そういうの不要だと思います、友希那さん達の演奏、1回目は最初の方ですし……今行ったら邪魔になると思いますので」

 

唯「あ、そうなんだね」

 

梓「はい、ですから私にお構いなく、唯先輩達は皆さんの挨拶に行ってきて下さい」

 

唯「うん、わかったよ、じゃあまたあとでねー!」

 

 そして、律と梓の2人を残し、唯、澪、紬の3人は、それぞれがそれぞれの縁ある少女達の元へと向かって行くのだった。

 

 

―――

――

 

-ライブ開始前 Pastel*Palettes-

 

 

【控室】

 

 受付をCiRCLEのスタッフと代わり、彩達Pastel*Palettesの面々は控室でメイクのチェックに勤しんでいた。

 

 

まりな「みんな、いるかな?」

 

彩「あ、まりなさん。どうかしたんですか?」

 

まりな「うん、さっきそこでファンの人から差し入れ届けてもらうように頼まれたから、ここに置いとくね♪」

 

まりな「あ、もちろん中はちゃんとチェックしてあるから、そこは安心してもらっていいからね」

 

千聖「わざわざすみません、ありがとうございます」

 

 まりなに礼を言い、日菜と麻弥は差し入れの袋を開ける。

 

 袋の中には、以前日菜の話にも出た、桜が丘の喫茶店のパンが詰め込まれていた。

 

 

日菜「あ~~、これ、前に律さんと食べた喫茶店のパンだ~~♪」

 

麻弥「へぇー、それが日菜さんが前に言ってた、桜が丘の喫茶店のパンですか」

 

日菜「うんうん♪ 前にお姉ちゃんもおみやげに買ってきてくれたし、本当にここのパンって、ルンっ♪って味がするんだよね~♪」

 

イヴ「どんな味がするのか、楽しみですっ」

 

千聖「そうね、あとで休憩の時にでも頂きましょうね」

 

日菜「ふふふっ♪ あーー、そっか……そうだったんだね♪」

 

彩「……日菜ちゃん、さっきからすごくご機嫌だね……ほんと、どうしたんだろ?」

 

日菜「ねえ、みんなー♪」

 

千聖「日菜ちゃん、どうしたの?」

 

日菜「ライブ、がんばろうねっ!」

 

彩「日菜ちゃん……うんっ! もちろんだよ!」

 

イヴ「はいっ! 緊褌一番、私も頑張ります!」

 

千聖「ふふっ……日菜ちゃん、なんだか今日はいつも以上に燃えてるわね」

 

麻弥「ハイ……何か、良いことでもあったんでしょうか?」

 

日菜「……♪ 今日は楽しいライブになりそうだなぁ~♪」

 

 日菜の眼が一段と輝く。

 

 普段以上にやる気に満ちた日菜のその意図は4人には読めないが、それでも日菜の言う通り、今日は楽しいライブになるだろうと彩達は予感していた。

 

―――

――

 

-ライブ開始前 Afterglow-

 

【控室前】

 

澪「……差し入れ持ってきたはいいけど、ライブ前でみんな集中してるだろうし、私なんかが入ってみんなの邪魔にならないかな……」

 

ひまり「……あれ? み、澪さん!?」

 

澪「……? あ、ひまりちゃん、どうも」

 

 声に振り向くと、今まで髪のセットをしていたのだろう、ヘアスプレーを片手に衣装を着込んだひまりが澪の前に立っていた。

 

 

ひまり「やっぱり澪さんだ! お久しぶりです、今日は来て下さってありがとうございますっ♪」

 

澪「うん、久しぶり……ひまりちゃん、元気そうだね」

 

ひまり「はい、そりゃあもう……あ! そうだ、もし良かったら中へどうぞ、みんなもきっと喜んでくれると思います!」

 

澪「いいの?」

 

ひまり「はい、大丈夫ですよ♪」

 

澪「……ありがとう、それじゃ、失礼します」

 

ひまり「みんなー! 澪さんが応援に来てくれたよっ!」

 

モカ「も~、ひーちゃん騒ぎすぎー……って、お~~、澪さんだ~」

 

 勢いよく扉を開け、ひまりは澪を中に招く。

 

 既に準備は終えられたのだろう、控室には、衣装をバッチリと決めたAfterglowの姿があった。

 

 

澪「みんな久しぶり、ふふっ、準備万端って感じだね」

 

モカ「澪さん、どうも~♪」

 

蘭「……こんにちわ」

 

巴「どうも、ご無沙汰してます、今日は来てくれてありがとうございます!」

 

つぐみ「澪さんお久しぶりですっ♪ 今日は楽しんでって下さいね」

 

澪「うん。みんな、誘ってくれて本当にありがとう……はいこれ、差し入れ持ってきたんだ、良かったらどうぞ」

 

 律がまりなに手渡したのと同じ袋を澪はひまりに手渡す。

 

 その中は言うまでもなく、以前Afterglowとの話に上がった、桜が丘の喫茶店のパンが入っていた。

 

 

ひまり「わあぁ! ありがとうございますっ! みんなー! 澪さんが差し入れ持ってきてくれたよ!」

 

モカ「おぉぉぉ、これは……まさしく桜が丘の喫茶店のパン……あ、ありがとうございますーー♪」

 

巴「これ、前にあこが買ってきてくれて、それからまた食べたいと思ってたんだ……澪さん、ありがとうございます!」

 

つぐみ「これがモカちゃんの言ってたパンなんだね、私も気になってたんです……澪さん、ありがとうございますっ♪」

 

蘭「モカ、今食べちゃダメだからね……澪さん、本当にありがとうございます」

 

巴「今日はみんな精一杯やりますから、ぜひ最後まで聴いてって下さい!」

 

澪「うん、楽しみにしてるよ。みんな、頑張ってね!」

 

一同「はいっ!!」

 

 これ以上邪魔をするのも悪いと思い、早々に澪は控室を後にする。

 

 その姿を見送り、5人は口々に言葉を交わしていた。

 

 

ひまり「澪さん……本当に来てくれた……良かったぁ~」

 

つぐみ「ふふっ……ひまりちゃん、本当に嬉しそうだね」

 

ひまり「ぅぅ……だってぇ~」

 

巴「はははっ、ひまりがここまで誰かのことを気に入るなんて珍しいよな」

 

モカ「ねーねーひーちゃん、さっきから澪さんの事ばかり推してるけど、薫先輩はいいのー?」

 

ひまり「違うの! 薫先輩は薫先輩でカッコいいけど、澪さんはまた違う意味でカッコいいんだよー!」

 

つぐみ「うんうん、ひまりちゃんの言いたいこと、私も分かるよっ」

 

 そして……。

 

 

ひまり「今度はちゃんと決めるからね、みんな、いい?」

 

 今日に関しては拒否権は無いと、ひまりの眼がそう語っている。

 

 その様子に根負けし、やれやれといった様子でこれからやることを蘭達は承諾していた。

 

 

蘭「まぁ、今日ぐらいはいいか」

 

モカ「よかったねーひーちゃん、今日は蘭も乗ってくれるみたいだよ~」

 

蘭「モカもやるんだからね」

 

モカ「はーい♪」

 

巴「よっし、それじゃあやるか! ひまり、景気よく頼むぞ」

 

つぐみ「ふふっ、こうして揃えるのもなんだか新鮮だね」

 

ひまり「よーーし! みんな、行くよ! えい! えい……おーー!!」

 

一同「おーーっっ!!」

 

 ひまりの声にハモるように、活気の良い掛け声が控室に響き渡る。

 

 彼女達の出番は、すぐ近くまで迫っていた。

 

―――

――

 

-ライブ開始前 ハロー、ハッピーワールド!-

 

【控室】

 

紬「失礼しまーす、こころちゃん達、いるかしら?」

 

 紬はそっと控室の扉を開ける。

 

 扉の前に映る彼女の姿を見て、控室の中からは歓喜の声が上がっていた。

 

 

こころ「あら、紬……? やっぱりそうよ、紬だわ♪ みんなー! 紬が来てくれたわよ♪」

 

紬「こころちゃん、それにみんなもお久しぶり、お元気そうね♪」

 

花音「わぁ……紬さん、今日は来てくれてありがとうございますっ」

 

はぐみ「ムギちゃん先輩! こんにちわ!」

 

薫「これはこれは、紬さん、どうもご無沙汰してます……ああ、今日もお美しい……」

 

ミッシェル「薫さん、そういうのいいから……あ、ええと……」

 

 紬の姿を見ては若干言葉を詰まらせるミッシェル(美咲)だった。

 

 一応設定上は初対面だということもあり、どう反応すればいいのか迷っていたが、咄嗟にこころが双方のことを紹介していた。

 

 

こころ「そういえば、ミッシェルは初めてだったわね、紹介するわ、こちらは琴吹紬、私の小さい頃からのお友達なのよっ♪」

 

こころ「紬、この子はミッシェルっていうの♪ ハロー、ハッピーワールド!のメンバーなのよ、すっごく可愛いでしょ♪」

 

紬「ミッシェル……? あ、そういう事ね……」

 

 こころに紹介され、紬はまじまじとミッシェルを見る。

 

 そして、何かを察したのか、ミッシェルに近づき……。

 

 

紬「ええと……美咲ちゃん……よね? 今日は頑張ってね♪」

 

ミッシェル「あははは、紬さんには分かりますか? はい、どうもありがとうございます、紬さん」

 

 即座に気ぐるみの中に誰が入っているのかを当て、紬はミッシェルの中にいる美咲にそっと耳打ちしていた。

 

 

こころ「紬、今日は最高のライブにするから、ぜひ楽しんでいってね♪」

 

紬「ええ、私も菫ちゃんと一緒に応援するから、ハロハピのみんなも頑張ってね!」

 

一同「はいっ!」

 

こころ「ふふふっ♪ 出番が待ちきれないわ~♪ 早く来ないかしら♪」

 

花音「ふふっ、こころちゃん、凄く楽しそうだね」

 

薫「私も心と身体が震えるようだよ……ああああ……儚い……こんなにも儚いだなんて……最高の気分だ……!」

 

はぐみ「うんっ♪ はぐみもがんばるよ! ムギちゃん先輩とスミーレ先輩に、かっこいいとこ見せてあげなきゃ♪」

 

ミッシェル「はははは、みんな気合十分だね……かくいう私もちょっとだけ燃えてきた……かな」

 

 紬の激励により、いつも以上に活気に満ち溢れる様子の5人だった。

 

 そして……。

 

 

こころ「みんな、行くわよ~♪ ハッピー♪」

 

はぐみ「ラッキー!」

 

薫「スマイル!」

 

全員「イェーイ♪」

 

 手を取り合い、お決まりのフレーズを口にする5人。

 

 その表情は、会場にいる誰よりも眩しい笑顔で埋め尽くされていた。

 

―――

――

 

-ライブ開始前 Poppin'Party-

 

【CIRCLE ラウンジ】

 

 客の誘導を終え、ラウンジの一角に香澄達は集まっていた。

 

 

唯「あー、いたいた……香澄ちゃん、こんにちわ♪」

 

香澄「唯さん! 今日は来てくれて本当にありがとうございます!」

 

 唯の突然の声に笑顔で香澄達は声を返す。

 

 その表情には先程の誘導の疲れは微塵も感じられず、むしろ活き活きとした表情に包まれていた。

 

 

たえ「唯さん、今日は精一杯演奏するので、ぜひ最後まで聴いていって下さい」

 

りみ「あの、みんなこの日のために一生懸命頑張ったんです、よかったら感想とかも聞かせてくださいっ」

 

有咲「わ、私達も頑張ってやりますんで、その……期待してて下さい……」

 

紗綾「あははは、有咲ったら顔硬すぎ、もしかして緊張してる?」

 

有咲「う、うっせー! ここまででっかいライブって初めてだし、なんか緊張すんだよ……」

 

香澄「あーりさ、えいっ!」

 

有咲「ひゃっ!」

 

 緊張で硬くなっていた有咲に向かい、背後から香澄が抱きついていた。

 

 

有咲「か、香澄!! 予告なく急に抱きつくな!」

 

香澄「そっか、じゃあ次からは予告してから抱きつくね?」

 

有咲「そ、そういう問題じゃねーっ!!」

 

紗綾「あはははは! 香澄のおかげで有咲の緊張も解けたみたいだね♪」

 

唯「ふふふっ……みんな楽しそう、私も前はそうだったなぁ~♪」

 

唯「私があずにゃんに抱き着いて、それで困った顔してて、澪ちゃんやりっちゃん、ムギちゃんがそれ見て笑ってくれてて……懐かしいなぁ」

 

 

有咲「ほら見ろ、唯さんに笑われてんじゃねーかっ」

 

唯「あ、ううん、違う違う……みんな凄く良い顔してるよ、うん♪」

 

香澄「唯さん……」

 

唯「私も客席でたくさん応援するから、みんな頑張ってね!」

 

一同「はい、ありがとうございます!」

 

唯「それじゃあ、またあとでねー♪」

 

 そう言い残し、唯はフロアへと戻っていく。

 

 その姿を見送った香澄達の中に、確かな熱が込み上げていた。

 

 

香澄「唯さん……ありがとうございますっ!」

 

たえ「ふふふっ……ねえみんな、少し早いけど、久々にあれ、みんなでやらない?」

 

沙綾「お、いいね♪ あれ、結構気合入るよね」

 

りみ「うん♪ じゃあ、円陣組んでやろう♪」

 

有咲「別にいいけど、何もここでやらなくても……」

 

香澄「ううん、私も今やりたいって思ってたんだ♪ じゃあ行くよ、せーのっ」

 

一同「ポピパ! ピポパ! ポピパパ! ピポパ!! いぇーい!!」

 

 5人の声が綺麗に重なり、それぞれの笑顔が咲き乱れる。

 

 香澄達の想いは一つになり、ステージでは、一組のバンドの演奏が始められる。

 

 

 少女達の待ちに待った宴が、いよいよ始まった瞬間であった――。

 

―――

――

― 

 

 

-ライブ開始前 Roselia-

 

【Roselia 控室】

 

 ステージの演奏が微かに聴こえる控室に、Roseliaの姿はあった。

 

 言葉を介する事もなく、静かに来るべき時を待つ彼女達の熱意と集中力は、既に極限まで研ぎ澄まされていた。

 

 

歌声「~~♪ ――――っっ♪」

 

 

紗夜「始まりましたね……皆さん、次で出番ですけど、調子はどうですか?」

 

燐子「はい……いつでも行けます……」

 

あこ「あこも準備オッケーです! こう……闇の波動があこの体中を駆け巡るっていうか、そんな感じです!」

 

リサ「あはははっ、あこは相変わらずだなぁ……うん、アタシもいつでも行けるよ」

 

友希那「私も、問題ないわ」

 

 

リサ「ああ、そういえばさっき、梓さんに似た人見かけたんだ」

 

あこ「え? ほんとに?」

 

リサ「うん、前に会った時みたいにスーツ姿じゃなくて私服姿だったけど……あの人、今日来てくれたのかなって思ってさ」

 

燐子「梓さん……確か……ご両親とジャズバンドをやってるって言ってましたね……」

 

リサ「うん、もしそうだったら、今日、本当の音楽のプロの人に私達の演奏を見て貰うってことだよねぇ……いやー、なんか緊張しちゃうよね」

 

紗夜「今井さん、それは違うと思うわ」

 

友希那「ええ、紗夜の言う通りよ、たとえ今日誰が来ようが、私達は私達の最高の演奏をするだけ……そうでしょう?」

 

リサ「そうだね……ごめん。友希那や紗夜の言う通りだね」

 

 今更何を言っているのかと、自身の言葉を反省するリサだった。

 

 

友希那「みんな、お喋りはそのぐらいにしましょう……そろそろだわ」

 

スタッフ「お待たせしました、Roseliaの皆さん、スタンバイをお願いします!」

 

友希那「みんな、行くわよ…………!!」

 

一同「はい!!」

 

 友希那の声に合わせ、リサ達は相次いで立ち上がり、ステージへと移動を開始する。

 

 

 そして、彼女達のライブの幕が今、大きく開かれる――!

この物語で特に評価できる点があれば教えて下さい

  • 大人になったけいおんキャラを描いた所
  • 作品の枠を超えたキャラの掛け合い
  • 随所で見られる原作小説とゲームネタ
  • ライブの選曲
  • 『輝き』というテーマ
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