【バンドリ×けいおん】唯「バンドリ?」香澄「けいおん?」   作:キラ@創作垢

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 久々に立つステージは、やっぱり熱くて、眩しくて、立ってるだけでドキドキした。

 でも、不思議と怖くなくて……それ以上に、嬉しい気持ちが止まらなかった。


 ……みんな、どうか感じて下さい。

 輝く私達を。

 好きなことに夢中な私達を。

 私達が歌う奇跡をどうか……感じて下さい――!


#8.放課後の奇跡

-ゲストライブ 放課後ティータイム-

 

HTT一同「………………」

 

 静かにステージ上に佇む唯達の姿に、香澄達は思わず息を呑み込んでいた。

 

 

香澄「……………えっっ?」

 

蘭「う、嘘……………今日のゲストって……」

 

彩「……あれは、律……さん………??」

 

友希那「…………梓…さん………っ」

 

 唯達の姿を見た香澄達の間に沈黙が走る。

 

 予想外の人物のいきなりの登場に頭の整理が追いつかず、香澄達の間に動揺が駆け巡り、彼女達を知る全員が言葉を失っていたのだが……。

 

 そんな香澄達の沈黙をよそに、こころだけはステージに向け、嬉々とした表情で声を上げていた。

 

 

こころ「…………!!! すごいわ!! つむぎーー!! 紬が演奏するのねっ!!」

 

こころ「がんばって!!!! つむぎーーー!! 応援してるわね~~~~っっ!!」

 

 あらん限りの声量でこころはステージに向かい、声援を送り続ける。

 

 その声に応えるように、律がスティックを掲げ、放課後の演奏が開始された――。

 

 

律「ワンツスリーフォーワンツースリーフォー!」

 

-HTT1曲目 GO! GO! MANIAC-

 

https://www.youtube.com/watch?v=EV-bDK_aipw

 

 

 特に自己紹介もないまま、突如としてその曲は奏でられた。

 

 それは言葉による自己紹介ではなく、演奏による自己紹介と言っても過言ではない。

 

 あえて最初の挨拶はせず、一気にハイテンションの演奏を見せつける事で急激に観衆の心に飛び込んでいく。

 

 そんな律の目論見は見事にハマり、息もつかぬ程に奏でられる音は無条件にフロア全体の注目を浴び、放課後の存在を瞬く間に知らしめていくのだった。

 

 

声「うわ、いきなり凄い演奏……! 誰? あの人達?」

 

声「私達よりも年上っぽいけど、ねえ知ってる?」

 

声「ううん……でも、かっこいいなぁ~! リフも正確だし、あの人達、とってもライブ慣れしてるって感じがするね!」

 

声「ベース弾いてるあの女の人……かっこいいなぁ~」

 

声「でも、この人たち、どっかで見たことあるような気が……」

 

声「あー! 私あのギターの人知ってる! 前にジャズのライブやってた人だよ!」

 

声「えっ!? じゃあ、もしかしてプロの人なの?」

 

声「えー! 誰々?? 有名人???」

 

まりな(唯ちゃん達、凄いよ……初めて見る人も多いはずなのに、お客さん達みんなが放課後ティータイムに注目してる……!)

 

 

 ステージの上で奏でられる歌と音は着実に観衆の心を昂らせ、既に全身で演奏に乗る人も現れだす程だった。

 

 そして、放課後の演奏に聴き入る観客のその姿を見たこころ達もまた、相次いで紬達への感想を口にしていた。

 

 

はぐみ「ねえねえみーくん! 凄いよ! ムギちゃん先輩が演奏してるよっ!」

 

美咲「お客さん達もあんなに乗ってる……まさか……今日のゲストが紬さん達だったなんて……!」

 

花音「うん……私もびっくりして腰抜かしちゃうところだった……」

 

薫「フフフ……さすが紬さんだ……! あああ、私も心の高鳴りが抑えられない……儚い……なんて儚い演奏なんだろう……!!」

 

こころ「すごいわぁ……さすが紬ね♪ 放課後ティータイムーーー! さいこーよーー!!」

 

美咲「放課後ティータイム……ああああっ、思い出した……!!」

 

花音「み、美咲ちゃん?」

 

美咲「花音さん、前にこころの家にあったCDをアレンジしてみんなで歌った事あったの覚えてます?」

 

花音「そういえば……あったね、覚えてるよ」

 

はぐみ「あー! それって、今ムギちゃん先輩が演奏してるこの歌だったよね?」

 

美咲「うん、そのCDにはっきりと書かれてましたよ、『放課後ティータイム』ってタイトルが……でも、まさかそれが紬さん達の歌だったなんて……いくら何でも世間狭すぎでしょ……!」

 

はぐみ「すごい偶然だね……でもはぐみ、とっても嬉しいよ! はぐみ達、ムギちゃん先輩達と一緒だったんだね♪」

 

こころ「そうね♪ 凄いわ、凄いわ♪ 私達、音楽で紬達と繋がっていたのね♪」

 

薫「これこそまさに運命だね……ああっ、なんて儚いんだろう……!」

 

美咲「運命……ね。薫さんの言ってることも、さすがに今回ばかりは的を得てるって感じがするよ」

 

美咲「紬さん、頑張って下さい……! 私達、最後まで聴いてますから……!」

 

 柄にもなく、美咲は声を上げる。

 

 その声に応じるように、ステージ上の演奏はより一層の熱を増していき、フロアは更に盛り上がりを見せていくのであった。

 

 

憂「おねーちゃーん! かっこいいよーー!!」

 

純「懐かしいな……すっごく懐かしいよ、この感じ!!」

 

直「ええ……みんな、凄く生き生きしてる……!」

 

菫「お姉ちゃん! みんな! がんばれーー!!!」

 

和「唯……みんな、凄いじゃない……!」

 

さわ子「さっすがー、やるじゃないのあの子達♪ ……ほんと、よくやったわね……凄いわよ、みんな!!」

 

 

香澄「唯さんだ……唯さんが、歌ってる……!」

 

有咲「驚いたな……まさか、スペシャルゲストが唯さんたちだったなんて……」

 

香澄「有咲!! 前に行こう!! 前で、唯さん達の演奏、聴きに行こう!!」

 

有咲「ああ……! 香澄、行くぞ!!」

 

 有咲の手を引き、香澄達は強引にステージの前へと繰り出す。

 

 そこには既に蘭に彩、こころや友希那達の姿もあり、多くの演者が観客に混じって放課後の演奏を聴いているのが見えていた。

 

 そしてしばらく、絶好調で始められた放課後の1曲目の演奏が終わりを迎え、唯のMCが始まる。

 

 

唯「みなさんこんにちわ!! 私達が、放課後ティータイムでーす!!!」

 

 ―――ワアアアアアアアアアア!!!!

 

 唯の声に会場全体からは割れんばかりの喝采が巻き起こる。

 

 開始からハイテンポな曲を最高潮のテンションで歌いきった事もそうだが、それ以上に、唯達のその高い演奏力と歌唱力がスペシャルゲストとして観客の期待に応えていたのが何よりも大きい要因だった。

 

 フロア全体から期待と歓喜に溢れた称賛が唯達に送られる。それは突如姿を見せた唯達を、放課後ティータイムの存在を初見の観衆全員が受け入れた事実に他ならなかった。

 

 

唯「いきなりの演奏でみんなびっくりしたと思うけど、でも、こうした方がいいと思ったので、思いっきり演奏してみました。みんな、どうだったかな?」

 

香澄「唯さーん!! 素晴らしい歌でしたーー!!」

 

声「うんうん! サイコー! もっと聴かせてー!!」

 

唯「あははっ、みんなありがとー♪ でもせっかくだし、ここでメンバー紹介するね♪ まずはベースの、秋山澪ちゃん!」

 

 ――♪ ~~~~♪ ~~♪

 

 唯に振られ、自己紹介とともに澪の指がクールなベース音を奏でる。

 

 

澪「皆さんどうも! ここにいるみんなに負けないよう、私達も頑張るので……よかったら是非聴いてってくださーい!」

 

唯「澪ちゃんは私達のお姉さん的な感じで、練習の時はしっかりみんなを纏めてくれてました♪」

 

澪「ボーカルがもっと真面目に練習にしてくれてたら、私ももっと楽できたんだけどなぁ~」

 

 ――あはははっ!

 

 

唯「えへへへ……じゃあ次は、我らがリーダー、田井中律ちゃん!」

 

 ――タカタンッ! タタタタッ! ドコドコドコドコ――ジャンッ!!

 

 次いで律が器用にドラム捌きを披露し、最大音量の声で会場に向けて叫ぶ。

 

 

律「みんなーーー!! 今日はよろしくなーーーーっっ!!」

 

唯「りっちゃんは私達のリーダーで、みんなが困ってる時、すぐに助けてくれたり、支えてくれたりしてました♪」

 

唯「すっごく頼りがいのある子なんだけど、結構女の子っぽい所もありまして、なんと……!」

 

律「おーい! 知り合いがいんだからそれ以上言うなっ! 次行け次ー!」

 

 

唯「ふふふっ……はーい! そしてキーボード担当の、琴吹紬ちゃん!!」

 

 ~~~♪ ――――♪

 

紬「みんな~、盛り上がってるかしらー?」

 

唯「ムギちゃんはいつも練習の時にお茶とお菓子を持ってきてくれて、後輩の菫ちゃんも練習のお手伝いにも来てくれてました、ムギちゃん、菫ちゃん、本当にありがとうーっ!」

 

紬「こちらこそ、どういたしましてー♪」

 

菫「ふふふっ……唯先輩ったら……♪」

 

 

唯「お次は、ギターの、中野梓ちゃんです!」

 

 ――♪ ―――――♪

 

梓「皆さんはじめまして! 今日は楽しんでって下さーい!」

 

唯「あずにゃんは、なんとご両親と一緒にプロのジャズバンドを組んでるんです。もし良かったら、みんなも是非聴きに行ってくださーい♪」

 

梓「もー、ここで無理に宣伝してくれなくてもいいんですよー!」

 

声「梓さーん! 今度ライブ行くから、よろしくねー!」

 

梓「あ、ありがとうございまふっ! あっ……!」

 

 ――あはははっ おもしろーい!

 

 ――可愛いよー! 梓さーん!

 

 観客の声援に思わず噛んだ梓に笑い声が飛び、そして最後に、唯の自己紹介が始められる。

 

 

唯「最後に私、ギター&ボーカルの平沢唯です!」

 

 ――♪ ――♪ ――♪

 

 

唯「私達は、高校生の頃、軽音部で『放課後ティータイム』っていうバンドを組んでました!」

 

唯「大学を卒業してからみんな一度は離れ離れになっちゃったんだけど、でも先週あった同窓会でみんなで再会して……それで、ガールズバンドパーティーで演奏する事をきっかけに再結成したんです!」

 

唯「再結成のきっかけを作ってくれたまりなちゃん! 本当にありがとうーー!!」

 

 突如、フロアの隅でステージを眺めるまりなに向けてスポットライトが当てられる。

 

 いきなりの振りに照れながらもまりなは手を降り、その声に返していた。

 

 

まりな「私の方こそありがとう!! 放課後ティータイム! 最高だよーー!!」

 

唯「えへへっ♪ いやーしかし、みんな若いよねぇー、なんていうか……女子高生パワー恐るべし! だよねえ~」

 

律「あんまそーいうこと言うな! ただでさえこっちはここにいる全員と歳の差感じてんだぞ!!」

 

唯「でも、10年前は私達もみんなと同じだったんだよねぇ~♪」

 

律「だーかーら!! 歳がバレるような事言うなーーーっっ!!」

 

 ――あははははっっ!

 

 

蘭「凄い……ちゃんと会場の笑いも取れて、MCもしっかりこなしてる……これが、澪さんのバンド……!」

 

香澄「ふふっ……唯さん達、私達の10個も上だったんだね……全然見えなかったなぁ」

 

彩「……律さん……みんな、かっこいい……! 私も、あんな大人になれるといいな……」

 

友希那「さっきの演奏……梓さん達が全身全霊を賭けて自分達の音楽に向き合っているのがよく伝わって来たわ……」

 

こころ「うふふっ♪ 次の曲も楽しみよっ♪ 紬達、次はどんな歌を歌ってくれるのかしら♪」

 

 

唯「じゃあ、次は澪ちゃんのボーカルで行くね! 曲名は……『Don't say "lazy"』!!」

 

-2曲目 Don't say“lazy”-

 

https://www.nicovideo.jp/watch/sm8143460

 

澪「Please don't say "You are lazy" だって本当はcrazy――!」

 

 

 澪の歌声に乗せ、二度放課後の旋律が奏でられる。

 

 先程の唯とは対象的に鈴のように凛とした美声が会場中に響き、多くの観客の心を魅了していく――。

 

 そのクールな歌声はAfterglow全員の心を撃ち、初めて聴く澪の歌声に、誰もが酔いしれて行くのであった。

 

 

巴「やっば、澪さんすげえ歌上手い……!」

 

ひまり「うん……! 歌いながらあんなにベース弾きこなすなんて……か、かっこいい……! 凄くかっこいい……!!」

 

蘭「あれ、この曲って確か……」

 

モカ「うん、あたし達も一回演奏した事あったよねー」

 

つぐみ「確か、ひまりちゃんのお母さんに借りたCDに入ってたんだよね、この歌」

 

モカ「そうそう、ってことは、ひーちゃんのお母さん、澪さん達のこと知ってたのかな?」

 

蘭「それは分からないけど………そっか……あたし達、ちゃんと澪さんと通じてたんだ……」

 

 

ひまり「私、もう抑えきれないよ!! 澪さあああん!! ステキーーー!!!」

 

巴「放課後ティータイムーー! いいぞーーーー!!!!」

 

蘭「ふふっ……みんな、凄く盛り上がってるね」

 

モカ「蘭も、ちゃんと耳に残しておこーね、あたし達の先輩……になるのかな? あの人達の歌と音を……さ」

 

蘭「うん、そうだね……!」

 

蘭(澪さん……私達も、負けませんから……!)

 

 微笑みながら、蘭の瞳は一心に歌い続ける澪の姿を見つめていた。

 

 対抗心とも、競争意識とも違う感情が蘭の胸中で渦を巻く。

 

 それは、音楽を奏でるバンドマンとしての尊敬とも言える感情であり……人一倍高いプライドを持つ蘭が澪に対し、憧れの念を抱いた瞬間でもあった。

 

 

澪「皆さん、ありがとうございました!!!」

 

 ――ワアアアァァアァァァァ!!!

 

 2曲目の演奏が終わったと同時、二度歓声が沸き起こる。

 

 その称賛の声を唯達は一身に受け、続く3曲目の演奏が始められた。

 

 

唯「次は私と澪ちゃんの2人で歌います、『ふわふわ時間』、聴いて下さい!」

 

 

-3曲目 ふわふわ時間-

 

https://www.youtube.com/watch?v=ckv4PVgYRNk

 

 続いて奏でられる3曲目の歌。

 

 その聴き覚えのあるイントロに誰よりも強い反応を示したのは、他ならぬPastel*Palettesの5人であった。

 

 

彩「この歌は……!」

 

イヴ「はい……! リツさんが私達に教えてくれた歌ですっ!」

 

千聖「そっか……律さん……私達の事を信じてくれて、自分達の歌を……私達に託してくれていたのね……!」

 

日菜「私さ、この曲を初めて聴いた時、なんとなくだけどそんな気がしてたんだ……これ、律さんが叩いてるんだって、そんな気が……ね」

 

麻弥「やっぱりこの曲、律さん達の曲だったんですね……ジブン……っ……ぃ、今になって感動してます……っ…ッ!」

 

彩「ぅぅ……私、な、泣きそう……っっ」

 

麻弥「彩さん…じ………ジブンもです……うぅっ……!」

 

日菜「ふふふふっ♪ 私、今すごい、ルルルルルン♪ってなってる! 私この曲、ふわふわ時間が大好きっ!!!」

 

イヴ「はい、私もですっ♪ リツさんの歌だって知って私、この歌のこと、もっと……もっと好きになりました!」

 

 

日菜「ねえ、彩ちゃん! 麻弥ちゃん! 泣いてる場合じゃないよ! 私達も歌おう! 律さん達の歌を……律さん達の輝きを!」

 

千聖「ええ! 日菜ちゃんの言う通りね……今は泣くのを我慢して……私達も見届けましょう!」

 

彩「えへへへ……っ……日菜ちゃん、千聖ちゃん……うん、そう……だね!」

 

麻弥「……はいっ! 律さーーん!! かっこいいです!!! ステキです!! 最高ですよぉーー!!!!」

 

 パスパレの5人は互いに手を取り合い、重ねるように絶賛の声を送り、その歌を口ずさむ。

 

 目元から溢れそうになる涙を懸命に抑えつつ……彼女達は、ステージ上でドラムを打ち鳴らす律の勇姿をその眼に焼き付けていた。

 

 

律(彩ちゃん……麻弥ちゃん……みんな見ててくれ!!! これが、私達の……! 私達の輝きだ……!!)

 

 そんな彩達の姿が視界に入り、律のドラムは自身のテンションに合わせ、更に加速していく。

 

 額から滝のように流れる汗すら拭わず、眼前の2人の歌声に合わせ、一心不乱に律はドラムを叩き続けていた。

 

 

澪(ちょっと待て律、いくらなんでも走りすぎだ!)

 

律(悪い!! でも、このままやらせて! ……私今、すっげえ楽しいんだ!!!)

 

唯(私は平気だよ、りっちゃんの好きにやっちゃって!!)

 

梓(律先輩! とてもイイ感じです! このままお願いします!)

 

紬(私達も全力で付いていくわ! りっちゃん、行っちゃえ!)

 

律(みんな悪いな……それじゃあ、次のサビから遠慮なく行かせてもらうぜっっ!!)

 

 唯の合図を皮切りに、律の音は尚も加速する。

 

 それでも決して外すことなく正確に打たれるそのビートに観衆の注目は集まり、一層の熱を帯びていく。

 

 その迫力のあるパフォーマンスには、同じパートを担当するドラマー達も目を離せずにいた。

 

 

あこ「すごい……あの人のドラム、めちゃくちゃ凄いよ! お姉ちゃん!!」

 

巴「ああ……あんなに速くてムチャクチャに見えるのに全然音がズレてない……むしろ周りもしっかりドラムに合わせてる……! いや、なんってテクニックだ! あんなの、アタシだって見惚れちまうよ!」

 

沙綾「まるで、本当にプロのドラマーのみたいな打ち方だね……ははははっ! 唯さん達のリーダー、凄すぎだよ!」

 

花音「ふえぇぇ……わ、私には絶対にマネできないテクニック……でも、あんなに楽しそうに叩いてて……か……かっこいいです!」

 

麻弥「……律さああああん! いっけええええええ!!!!!」

 

 律の演奏はボーカル以上に注目を浴び続け、更にその勢いを増して行く。

 

 

唯・澪「――ふわふわタイム(ふわふわタイム)――ふわふわタイム(ふわふわタイム)――」

 

 ――♪ ―――♪ ――――♪

 

 演奏の最後、最も激しく、荒々しく豪快に叩かれた律のドラムは、最早アレンジにアレンジを重ねたふわふわ時間本来の演奏とは別の物となっていた。

 

 だが、決して乱れることなく、正確にビートを刻み続けるその音は、既にプロのドラマーの音とも呼べる程に魅力的に見え、多くの観客を虜にして行く。

 

 そして3曲目の演奏が終わったその時……。

 

 立て続けに曲を歌いきった唯と澪にだけでなく、終始行われた律の圧巻のドラムパフォーマンスに対しても、割れんばかりの拍手が巻き起こっていた――。

 

 

律「……っ……みんな……ありがとーーーーっっ!!」

 

 ――パチパチパチパチパチ!!!

 

 ――うおおおおおおおおおおお!!!!

 

 ――凄いドラムパフォーマンス!! 私、思わず震えちゃったよ!!

 

 ――やべええええ!! 放課後ティータイム、歌だけでなく演奏も凄ぇえええ!!

 

 

律「はぁ……はぁ……! き、気持ちよかった……!!」

 

 息も絶え絶えになる程の疲労感が律を襲う。

 

 水を被ったような大汗が顔中を流れ、腕は腫れ上がった様にむくみ、脚が鉛のように重く感じる……。

 

 だが、それでも構わないと言わんばかりに、律のその顔は笑顔で満ち溢れていた。

 

 

唯「みんなありがとう!! りっちゃんも凄かったね~♪ でも、まだまだいっくよーーー!!! 次は『ごはんはおかず』!!」

 

 

-4曲目 ごはんはおかず-

 

https://www.youtube.com/watch?v=qHaacTMlaqY

 

唯「――ごーはんはすーごいーよ なんでもあーうよ ホカホカ♪」

 

 軽快なサウンドに乗せられ、放課後の4曲目が始まる。

 

 それは実に放課後らしい、楽しさに溢れた一曲だった。

 

 唯の口から発せられる和やかな歌声は、先程の演奏で昂ぶっていた観客の激情を程よく落ち着かせ、気持ちを穏やかにしていく。

 

 そしてその音と歌は、梓の眼下で佇むRoseliaの少女達の心にも、確かに届いていた――。

 

 

あこ「あははははっ♪ りんりん! 梓さん達の歌……すっごく楽しいね!」

 

燐子「あこちゃん……ふふふっ……うん、そう……だね!」

 

紗夜「先程までとは違う、まるでコミックソングのような曲調なのに……何故でしょう、私も、心が跳ね上がるような感覚がしてきました……日菜達の歌を聴いてもこうはならないのに……っ」

 

友希那「私もよ……さっきまでの震えるような興奮は無い筈なのに……まるで別の感覚が押し寄せて来るようなこの感じは……」

 

友希那「一体、何なの……? さっきまでの興奮とは違う……この胸の高鳴りは……!」

 

 

リサ「友希那、紗夜……きっとそれが、『楽しい』って事なんだよ!」

 

友希那「リサ……」

 

紗夜「今井さん……」

 

リサ「アタシ、思い出したんだ……小さい頃、友希那や友希那のお父さんと一緒にベースを弾いていた頃をさ……」

 

リサ「あの頃は上手いとか下手とか……そんな難しいことなんか考えず、純粋に音楽を楽しんでた……きっと友希那だって覚えてるはずだよ! あの頃の音を……あの頃の楽しさを!」

 

あこ「うんうん! リサ姉の言ってること、あこも分かるよ!」

 

あこ「ほら、音楽って、『音を楽しむ』って書くでしょ、梓さん達の歌って、まさにその通りですよ!」

 

リサ「あはははっ! そうだね、あこ、よく言った!」

 

友希那「音を……楽しむ……」

 

紗夜「ふふふっ……宇田川さんらしい考えですね……」

 

 厳密に言えば、あこのその理論は、友希那と紗夜の知る音楽の本来の意味とは違う考えではあった。が……。

 

 それでも、あことリサの言う『楽しむ』という感覚は、2人が久しく味わっていない感情でもあった。

 

 

 『音を楽しむ』という、音楽に対するアプローチ。

 

 それは『Roseliaに全てを賭け、目標に向かい突き進んでいく』という、彼女達が結成当時に掲げた誓いとはかけ離れた感覚であり。数多の音楽家が胸に抱く、音楽に対する向き合い方の一つでもあった。

 

 情熱や信念だけではない、『楽しむ』という感情。それこそが、何よりも夢や理想に向かう為の原動力となる。

 

 そしてその感情は、共有する人の数に比例し、何倍にも膨らんでいく。

 

 物事に対し、『楽しむ』という事の素晴らしさと大切さを、今この時2人は、梓達の演奏を通して思い出していた――。

 

 

紗夜「……私が音楽を始めた理由は……そもそもが妹の日菜に対する強い対抗意識からでした……だから、音楽に対する楽しさを感じたことなんて、Roseliaに加わるまではほとんどありませんでした……」

 

友希那「……私もよ……お父さんの夢が破れた時から、私が音楽をやる理由は、お父さんが成し遂げられなかった夢を叶えることに変わったから……それ以来、音楽を楽しんでやるなんて事、あまり考えなくなっていた……」

 

紗夜「思い出しました…………この胸の高鳴り……これが、『音を楽しむ』という事なのね……」

 

友希那「『音を楽しむ』……演者だけでなく、観客と演者が一つになる事で生まれる感情……これを私達の演奏に活かすことができれば、私達はまた一歩、前へ進めるかも知れない……」

 

友希那「梓さん、ありがとうございます……貴女達のおかげで……私達はまた一歩、目標へ近付く事が出来たと思います……!」

 

 

リサ「ほーら二人とも! 今は難しい事は考えずに梓さん達の音楽を楽しもうよ!! ほら、腕上げて! ねっ♪」

 

友希那「ふふっ……ええ……紗夜も、今はこの感覚に身を委ねてみるのも良いと思うわ」

 

紗夜「はい……少し照れますが……やってみますっ」

 

 ぎこちなく、辿々しく……2人は腕を上げ、身体を揺らし、自身の感情そのままに身を委ねていた……。

 

 今はまだ完全じゃない……それでも、普段はクールに徹しているあの2人が音楽に乗っている……。その姿が、リサの心を打つ。

 

 

リサ「も~、二人とも照れちゃってしょうがないなぁ……でもアタシ、嬉しいよ……。 梓さんありがとう!!! 私達、今すっごく楽しいよーーーー!!!」

 

あこ「いぇ~~~~い♪ 放課後ティータイム!! いっけ~~~♪」

 

燐子「ふふふっ……♪ 私も楽しいよ……あこちゃん……♪」

 

 

唯「――関西人ならやっぱり お好み焼き&ごはんっ♪ 私前世は 関西人っ♪」

 

律・澪・紬・梓「――どないやねん!」

 

 

 

律(あー、やべ……ヘトヘトなのに……超楽しい……!)

 

澪(ああ………ライブって、みんなで演奏するのって……こんなに楽しいものだったんだよな……!)

 

紬(懐かしい……熱くて、胸がドキドキして……今にも叫びだしそう……!!)

 

梓(終わって欲しくない……いつまでも、いつまでも、こうしてみんなで演奏がしていたい……!)

 

唯(私、今すっごく楽しいよ……またこうして、みんなで演奏できて良かった……本当に良かった……!)

 

 

唯「――1・2・3・4・GO・HA・N! みんなも一緒に!!」

 

あこ「1・2・3・4・ご・は・ん! あははははっっ!! すっごいおもしろ~い♪」

 

リサ「うんうん! 1・2・3・4・ご・は・ん!! ほら、友希那と紗夜も!」

 

友希那「……い、1・2・3・4・ご・は……ぅ、さすがにそれはちょっと……」

 

紗夜「わ、私もです……っ」

 

燐子「うふふっ……照れてる友希那さんと氷川さん……可愛いな……♪」

 

 和やかな場の空気に乗るという気恥ずかしさから、二人の顔が赤く染められる。……しかし、不思議と悪い気はなしかった。

 

 今はまだ、完全に理解できたわけでは無かったが……それでも、絶えず脈打つ心臓の音だけはそれを理解していた。

 

 

 ――その胸を打つ鼓動は、2人が確かに、放課後の歌を心から楽しんでいるということの証でもあったのだから。

 

 

唯「いぇええええええい!! みんな、あっりがと~~~~♪」

 

 ――ワアアアアァァァァーーーー!!!!

 

 HTT! HTT! HTT!!!!!

 

 放課後ティータイム!! さいっこーーだぜえええ!!!

 

 

 そして、笑いに包まれた4曲目の演奏が終わり、放課後の、最後の曲が奏でられようとしていた。

 

 

唯「みんなが楽しんでっ……くれて私達もすっごく嬉しいよ!! でも……んっ……ごめんね、次で最後の歌になっちゃいました!」

 

 ――ええええええ!!!

 

 ――そんな~~~~!!

 

 ――いやだっ! もっと聴かせてよ!! 放課後ー!

 

 

唯「ごめんっね……でも、私たちも最後まで全力で歌いきるから……げほっ、みんな゙、よろしくね゙ーーっっ!」

 

 

 ――ワアアアアァァァーーーッッッ!!!!

 

律(……唯も、そろそろ限界か……!)

 

澪(唯……!)

 

紬(唯ちゃん……)

 

梓(唯先輩……)

 

唯(ごめんねみんな……でも、最後までやらせて……! この歌だけは……!)

 

 ここまでMCを含め、長時間声を張り上げ続けて来た唯の声に微かな変化が生じていた。

 

 しかし、それでも声を上げることをやめることなく、唯は声を上げ、ギターを掻き鳴らす。

 

 

唯「――っそれじゃあみんな、聴いて下さい……大切なものは、いつもみんなのすぐ側に……『U&I』!!」

 

 

-5曲目 U&I-

 

https://www.youtube.com/watch?v=AhfZEDa7zMo

 

 僅かに声を枯らしながら、唯の最後の歌声が響き渡る。

 

 酸欠で目元がふらつき、気を抜くと倒れてしまいそうになるのを懸命に堪えつつ、唯は心のままに歌を歌い続ける。

 

 

 その姿を見る香澄達の眼には、それぞれ光るものが込み上げてきていた――。

 

 

香澄「……っっ……唯さん……っっ……ゆいさん……!!」

 

有咲「……っ……すげえな……唯さん……」

 

たえ「うん……あんなに歌って……もう疲れてヘトヘトな筈なのに……それでも、凄く楽しそうに歌ってる……」

 

りみ「……っ…うん……っ……みんな、すごくて……かっこよくて……うち、泣けてきちゃったよぉ……っ」

 

沙綾「明るくて、前向きで、暖かくて優しい歌……唯さんの想いが伝わってくる歌だね……」

 

香澄「…………唯さんっ…………がんばれ……がんばれ……っ…!」

 

 優しく紡がれる唯の歌……。

 

 それは、自分の大切な物全てに送られる愛の歌。

 

 自分の大事なもの。いつも傍にいてくれる大切な存在。……けど、それが当たり前になっていると気付かない。

 

 そんな大切な事に気付かせてくれる歌だった。

 

 

唯「――まずはキミに つたえなくちゃ―――「ありがとう」を!」

 

 ――♪ ~~~♪

 

声「すごい……いい歌だね」

 

声「うん……あはははっ……なんだか私、泣けてきちゃった……!」

 

声「楽しくって、切なくて……ああもう、よくわかんないけどいい! この感じ、すっごくいい!!」

 

 

純「っっ……っっ……わ、私、もう涙が止まらないよぉぉ……!」

 

直「純先輩……」

 

菫「っ……っっ……ああもう、私も……泣けてきちゃいました……っ」

 

憂「……お姉ちゃん……っっ……うぅ………ぉ……おねえちゃぁん……っっ!……っ」

 

和「憂……」

 

憂「和ちゃん……私……今凄く嬉しい………お姉ちゃん、あんなに輝いてる……!」

 

憂「お姉ちゃんの歌声が、色んな人の心に届いてるのが分かる……! お姉ちゃん! ……私、あなたの妹で良かった……! ほんとうに良かった……っ!」

 

 

 唯の歌声に、会場中の思いが一つになる。

 

 ある者はサイリウムを、またある者は携帯の画面を付け、横に振り続けている。

 

 その光景は、ライブを見る何人かの人の眼に、ある情景を思い描かせていた――。

 

 

香澄(……えっ?)

 

 ふと、香澄の視界が一瞬暗転し、別の景色が浮かび上がる。

 

 それは涙で目の前が滲んだせいか、唯達の演奏が魅せる幻なのか分からないが……香澄の眼は、自分が今までいたライブハウスとは違う風景を描き出していた。

 

 

香澄(ここは……?)

 

 そこは見知らぬ音楽室。

 

 目の前には、紺色のブレザーを着た、香澄と同年代ぐらいの5人の女の子達がそれぞれ楽器を手に、楽しく歌っている様子が見える。

 

 先頭で、学生服姿の女の子が赤いギターを弾き鳴らしつつ、陽気に歌い続けている。

 

 女の子の襟元で青いタイが僅かに揺れ、その女の子は香澄に微笑み、優しく手を差し伸ばしながら言う。

 

 

女の子「――私達のライブに来てくれてありがとう♪ 今日はたくさん楽しんでってね♪」

 

香澄「………うんっ……!」

 

 女の子の声に大きく頷き、涙で濡れた目元を拭う香澄。

 

 やがて視界が戻り、上を見ると、懸命に歌い続ける放課後の姿がしっかりと見えていた。

 

 

香澄「唯……さん……そっか…っっ……そうだったんだ……!」

 

香澄(さっきのはきっと、唯さん達だったんだ……私達と変わらない……音楽が、歌が大好きな……キラキラ、ドキドキしてる……唯さん達だったんだ……!)

 

香澄「……!! 唯さん……がんばれーーーーー!」

 

 会場の声援に負けじと香澄は声を張り上げる。

 

 その頬を伝う涙はもう止まっており、輝きに満ちた笑顔で香澄は声援を送り続ける。

 

 

香澄(泣いてなんかいられない……! もっと、唯さん達の輝きを見ていたい……! 誰よりも、何よりも近い場所で、あの人達の放課後を見ていたい……!)

 

 香澄だけでなく、多くの人が歓声を上げ、放課後の演奏に心を沸かせ続けていた。

 

 そして……。

 

 

唯「――思いよ―――届け――――!」 

 

 ~~~♪ ―――♪ ―――…………♪

 

 最後のフレーズを歌い切り、放課後の演奏が今、終わりを告げた……。

 

 程なくして照明が暗転し、暗闇が会場を包み込んでいく。

 

 演奏の余韻が、会場から送られる歓声が全員の耳の中に響き、感傷が5人の胸中で渦を巻いていた。

 

 

律(終わっちまったな…………)

 

澪(ああ…………)

 

紬(楽しかった……でも、もうおしまい……なのね)

 

 終わってしまったという寂しさが胸を打ち、涙が溢れそうになる。

 

 ――その時だった。

 

 

 ――ル! ――ール!

 

梓(……え?)

 

 ――コール!! ンコール!!

 

 

唯(まさか…………)

 

 ――アンコール!! ――アンコール!!

 

 

唯「みん……な……!」

 

 ――まだ終わらないでーーっっ! 放課後ーーー!!

 

 ――最後に一曲! お願いーーーっっ!!

 

 暗闇の中、止むことなく続くアンコール。

 

 その想いは声となり、意思となり、願いとなり、絶えず唯達に投げ掛けられる。

 

 会場中の誰もが願う『終わってほしくない』、『もっと放課後の歌を聴いていたい』という希望。

 

 まさにそれは、放課後の最後の復活を望む、期待の声だった――!

 

 

 ―――アンコール!! ――アンコール!!!!

 

唯「みんな………っ!」

 

律「マジかよ……はははっ! こんな事って!」

 

 演奏に集中していたこともあり、アンコールが振られるなんて全員が予想すらしていなかった。

 

 驚きとともに興奮が再度全員の胸に蘇り、身体中を締め付ける疲労を払拭していく。

 

 その時、大慌てでまりながステージの脇から唯達に向け、声を上げていた。

 

 

まりな「はぁ……! はぁ……! お、お願い! みんな……! みんなの期待に、応えてあげて!」

 

唯「まりな……ちゃん」

 

まりな「私も見たいんだ……最後にもう一度……私達の思い出を……放課後を……! 会場中に届けてあげて!」

 

唯「でも、時間が……」

 

まりな「大丈夫! この後一度休憩を挟むから! だからお願い! みんなキツいのは分かってる……でも……お願いっ!」

 

 頭を下げ、まりなは懇請する。

 

 観客、スタッフ、演者、会場にいる全ての想いを一身に受け、まりなはひたすらに頼み込んでいた。

 

 

澪「でも……今日やる5曲で手一杯で、アンコール用の歌なんて考えてる余裕は……」

 

梓「唯先輩の声も限界ですし……どうすれば……!」

 

紬「急いで何か、別の歌を考えないと!」

 

律「くそ、どうする……! どうする……!」

 

唯「……あの、さ……みんな!!」

 

唯「それなんだけど、みんなで…………の歌をやるってのは……どうかな?」

 

 唯は立ち上がり、皆にそっと提案を耳打ちする。

 

 その声を聞いた4人全員の顔に笑顔がこぼれ、皆が皆、唯の案を受け入れていた。

 

 

律「はははっ……唯、それ、ナイスアイデアじゃん!」

 

澪「ああ、それなら唯の負担も減らせるし、会場のみんなも乗れるな!」

 

梓「ええ、教科書にも載るぐらい有名な曲ですから、皆さんもきっと知ってると思います!」

 

紬「さすがね唯ちゃん……私ももう一度、この曲を演奏したかったの……!」

 

唯「じゃあ、お客さんが待ってるから……最後にやろう! みんなっ!」

 

一同「――うんっ!!」

 

 

 唯の言葉に頷き、再度楽器を構える5人。

 

 割れんばかりの観客の声に応え、照明がステージを照らし出す。

 

 

 そして、正真正銘、彼女達の、最後の放課後が幕を開けた――!

 

 

唯「みんな……本当にありがとう……! アンコールまでもらえて、私達……すっごく、すっごく嬉しいです!!」

 

唯「……最後の歌は、きっと知ってる人も多いと思います」

 

唯「よかったらみなさんも一緒に歌って下さい……私達のはじまりの歌、『翼をください』!!」

 

 

-アンコール 翼をください-

 

https://www.youtube.com/watch?v=DA9UnKFxm9U

 

律「……ワンツースリーフォー!」

 

 ~~♪ ―――♪ ―――♪

 

紬「――いま 私の願い事が かなうならば――翼がほしい――♪」

 

唯「――この背中に 鳥のように 白い翼つけてくださーいー♪」

 

律「――この大空に 翼を広げ 飛んでゆきたいよ――♪」

 

澪「――悲しみのない 自由な空へ」

 

梓「――翼はためかせ ゆきたい――」

 

 唯だけに負担をかけぬよう、1フレーズ毎にパートを変え、その歌はバトンの様に5人の間を駆け巡っていく。

 

 ある時は観客の方へとマイクが向けられ、その歌はステージの上だけでなく、会場全てを巻き込んだ合唱となり、一層の熱を帯びていった。

 

 

 ――その歌は言わば、放課後の原点とも呼べる歌だった。

 

 13年前、高校に入学し、律が軽音部を立ち上げ、澪と紬が入部をし、3人で奏でたこの曲を聴いたことで唯は入部を決め、そこから全てが始まった。

 

 

 春にギターを買い、夏に合宿をし、やがて顧問が来て、初めての学園祭を迎え、クリスマスを幼馴染とみんなで過ごした。

 

 2年の春には後輩ができ、その年の2度目の学園祭で桜高軽音部は、放課後ティータイムへと名前が変わった。

 

 3年になり、マスコットが増え、修学旅行に行き、結婚式にも参加した。

 

 夏フェス、夏期講習、マラソン大会と、色んな行事に参加した。……そして最後の文化祭、ステージで歌を歌い、夕日に照らされた部室でたくさん泣いた。

 

 そして受験を迎え、大学に合格し、みんなでロンドンに行った。

 

 卒業式、後輩にみんなで作った歌を届けた。その時に見た後輩の涙は、今まで見たどの涙より輝いていた……。

 

 

 その年の春、大学へ入学し、沢山の素晴らしい人達に出会うことが出来た。

 

 それと同じ頃、妹とその友達が軽音部に入部をしてくれた。それから新しく二人の後輩も入部をしてくれて、わかばガールズが結成された――。

 

 それは、僅か4年に満たない、人生でほんの僅かな期間だったけど、これだけの思い出が軽音部にはあった。

 

 

 その全ての思い出を歌に乗せ、放課後の少女達は声を合わせて歌い続ける。

 

 過去から現在……そして未来へと羽ばたく翼のように、いつまでもいつまでも、ここにいるみんなと共に歩いていけるように。

 

 

 そんな誓いを立てた少女達の歌声が一斉に響き渡る。

 

 世代、時、全ての垣根を超え、想いが一つになり、全てが輝いていく――!

 

 

 ――この大空に 翼をひろげ 飛んで行きたいよ―――

 

 

 ――悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ―――

 

 

 ――行ーきーたーい―――――――――。

 

 

 そして……ステージ、演者、会場中の全てを巻き込んだ大合唱は終わりを迎え、少女達の放課後が終わる。

 

 

 全ての音が静まったその時。舞台の上の少女達は、自分達の演奏を聴いてくれた全ての人に向け、心の底から感謝の言葉を上げていた。

 

 

HTT一同「みんな……………あ………ありがとう…………っっ! ありがとうーーーーーー!!!」

 

 ――ワアァァァァアアアァァ!!!

 

 ――HTT! HTT! HTT!

 

 ――みんな最高だったよ! ありがとう!! ステキな歌をありがとうーーーー!!!!

 

 

 何度目か分からないほどの歓声と拍手が会場中にこだまする。

 

 喝采を浴び、少女達は笑顔を浮かべつつ、肩を支え合い、会場を後にする。

 

 

 その表情は、10年前のあの頃と同じように、大きな輝きで満ち溢れていた――。




※10/18一部修正

10/13より歌詞の掲載が可能になった為、歌を歌うシーンに歌詞を載せました。

この改正により、少しでも読み手の方に物語の臨場感が伝わってくれれば幸いです。

合わせて原曲の動画リンクも是非ご覧くださいませ。

この物語で特に評価できる点があれば教えて下さい

  • 大人になったけいおんキャラを描いた所
  • 作品の枠を超えたキャラの掛け合い
  • 随所で見られる原作小説とゲームネタ
  • ライブの選曲
  • 『輝き』というテーマ

使用楽曲コード:00617041,15817504,15969967,17188784,17188822

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