【バンドリ×けいおん】唯「バンドリ?」香澄「けいおん?」   作:キラ@創作垢

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 ――子供の頃から、両親には凄く感謝していた。

 生まれた時から私をずっと守り、ずっと私の我がままを聞いてくれたから。

 だから私には、父や母の期待を裏切ることはできなかった。

 そして、子供をやめた時に私は誓った。両親のために、父の積み上げてきた物を守っていこうと決めた……。


 立場、権威、家、財産……。

 これまで幾度も私を支え、守って来てくれた大切な物にある、唯一の“枷”。

 ……私にも、来るのかな。

 この枷を外し、誰の前でも、ありのままの自分でいられる、そんな時が。


 私の中にある小さなわだかまりは、“彼女”に再会した時、ようやく解けようとしていた―――。


#2-3.放課後の邂逅~琴吹紬~

 ……凄く、懐かしい場所に私はいた。

 

 そこは、放課後の音楽室……私達が毎日のように過ごした部室。

 

 眼の前には、懐かしい制服に身を包んだ仲間たちの姿が見える。(さま)

 

 私の用意するお茶を楽しみにする二人と、そんな二人を呆れ顔で見ながら、それでも私のお茶を美味しそうに飲んでくれる同級生と、一人の後輩。

 

 やがて、顧問の先生も合流し、私達の部活が始まる。(ぅさま)

 

 

 みんなの笑い声が部室中に響き、暖かな時間が過ぎていく。(ょう様)

 

 それは、私が3年間、毎日のように見てきた光景……。

 

 その中で私は……。(じょう様)

 

 

 (お嬢様)

 

 もう……さっきから何だろう、この声は……。

 

 もう少し、みんなの声を聴いていたいのに……誰の声だろう。

 

 

 (お嬢様)

 

 

 違うわ……ここでの私はお嬢様なんて固い呼び名じゃない……私は……。

 

 

 (起きて下さい、お嬢様)

 

 

 わたし……は…………。

 

 

声「起きて下さいお嬢様…………お姉ちゃん……起きて」

 

紬「っ……!」

 

 突如、紬は弾けたように瞼を開く。

 

 ぼやけた目線の先には、跪いて声をかけ続ける、蒼い瞳に金髪のスーツ姿の女性が映って見える。

 

 その女性が、自分のよく知る秘書であり、また身の周りの世話をしてくれる使用人の斉藤菫だと認識するのに、そう時間はかからなかった。

 

 

【琴吹邸】

 

声「お嬢様……お目覚めですか」

 

紬「菫……ちゃん」

 

菫「すみません、お休みのところを無理に起こしてしまって」

 

紬「いいえ、私の方こそごめんなさい、まさか眠ってしまうだなんて……」

 

 おそらく、連日の仕事疲れが溜まっていたのだろう……少しの間、熟睡してしまっていたようだ。

 

 準備の何もかもを使用人達に任せてしまっていたことを謝罪し、紬は菫に向き合う。

 

 

菫「いいえ、それが私達の務めですから、お嬢様はお気になさらないで下さい」

 

 申し訳なさそうな表情の紬に向け、菫は優しく微笑みながら続ける。

 

 

菫「車の準備が整いました、時間も迫っています、そろそろ向かいましょう」

 

紬「ええ、そうね」

 

 豪華な装飾の散りばめられた真紅のドレスを身に纏い、紬は玄関へと歩き出す。

 

 

使用人「行ってらっしゃいませ、紬お嬢様」

 

紬「ええ、留守をお願いね」

 

 出迎えの使用人に一礼し、自宅の屋敷の玄関の先、開かれた高級車の助手席に乗り込む。

 

 そして程なくし、運転席には菫が乗り込み、多くの使用人に見送られながら、車は発進する。

 

 紬の古い友人の令嬢、弦巻こころの屋敷へ向かって――。

 

―――

――

 

 ――大学を卒業してすぐの事。琴吹紬は、自身の父が経営する会社……琴吹グループに就職し、懸命に働いていた。

 

 周囲から親の七光りだと思われたくない一心で紬は昼夜を問わず働き続け、着実に業績を上げ、己の実力で周囲を認めさせ……会社の役員へと登り詰めていった。

 

 そんな過酷な生活と並行し、紬は淑女としても社交界で華々しい活躍を見せており、数ある資産家や富豪の間でも、紬の存在は一際有名になっていた。

 

 今日は、数多ある資産家の一つ……琴吹家と古くから親交のある、弦巻家のホームパーティーに招待されたのだ。

 

 こころより直々に招待を受けた紬は大喜びで出席の旨を伝え、使用人の斉藤菫を伴い、弦巻家の屋敷へと向かっていた。

 

 

【琴吹家専用車内】

 

菫「弦巻家へは約20分程で到着となります、お嬢様、お疲れのようですし、しばらくお休みになられては如何ですか?」

 

紬「ううん、菫ちゃんが運転してくれるんだもの、いつまでも寝てばかりいられないわ」

 

紬「……それに、今日は久々にこころちゃんに会えるんですもの、その後は高校時代のみんなにも会えるんだし、もう楽しみで楽しみでっ」

 

菫「ふふ、お嬢様、本当に楽しみにされていましたよね」

 

 期待感溢れる笑顔を顔全体に浮かべながら、ハンドルを握る菫に紬は言う。

 

 それはまるで遠足前の子供のようで、そんな紬の笑顔に釣られたのか、自然と菫の声も柔らかくなっていた。

 

 しかし、一瞬和らいだその声も、次の言葉を発する頃には真面目なトーンに戻っていた。

 

 

菫「ですがお嬢様……浮かれるのもよろしいですが、今日は多くの資産家の方々もお見えになられます、その点、くれぐれもお忘れなきようお願い致します」

 

紬「はーい、分かってるわ」

 

 どこか寂しげな返事をする紬に対し、菫は運転を止める事もせず、頭の中に詰め込んだ数百に及ぶ来賓のリストを読み上げていく。

 

 

菫「本日ご出席される来賓には、ドイツ外交官のダミアン氏にイギリスの不動産王アーサー氏……ロシア政財界のトップ、アレクサンドル氏もいらっしゃいます」

 

菫「……それと、中国財団の王氏は先日ご子息がご誕生なされたので、ご祝言をお忘れなくお願いします」

 

紬「ええ、分かったわ」

 

菫「いずれも琴吹グループとは古い付き合いであり、仕事の上でもビジネスパートナーとして重要な方々ですから……申し訳ありませんが、今回は仕事の一環として参加しているという事も覚えておいて下さい」

 

紬「ええ……仕方ないけど……一応理解はしてるつもりよ。ありがとうね、菫ちゃん」

 

 社交界の集まり、そこには当然多くの資産家が来賓として招待される。

 

 今や紬の存在は社交界や政財界でも注目されており、そこには当然、紬に一目会おうとする者や、今後の事を踏まえ、琴吹家との友好関係を築こうとする者もいる。

 

 紬としても、旧友との一時を過ごそうという場で仕事や家の事を考えるのは不本意ではあった。が、それが琴吹家の家紋を背負って立つ、『琴吹紬』の立場なのだという事を理解していた。

 

 

紬「分かってはいるけど、あーあ、なんかやる気出ないなぁ」

 

 紬がむくれる仕草をする、その表情にやれやれと観念し、菫はそっと一言、紬に囁いた。

 

 

菫「……私も頑張るから、少しだけ頑張ろう……ね? お姉ちゃん」

 

紬「……うんっ」

 

 静かな車内に紬の笑顔が戻り、車は進む。

 

 そして数分後、菫の運転する黒塗りの高級車は、弦巻家の屋敷へと到着していた――。

 

―――

――

 

【弦巻家 庭園】

 

紬「んんん……やっと着いたわねー」

 

 軽く背伸びをし、紬は周囲を見る。

 

 屋敷の外には既に多くの高級車と共に本日の来賓として招待された資産家の姿も見え、その姿の一つ一つが場の華やかさを一層引き立てていた。

 

 

菫「もう既に多くの方が見えられてますね」

 

紬「ええ、では、早速行きましょうか」

 

 菫を従え、会場となる屋敷のホールへと向かう途中の事だった。

 

 

男性「Oh, Tsumugi!」

 

紬「……? あれは……」

 

 突然、タキシード姿の白人男性が紬に英語で声をかけてきた。

 

 彼が以前、父の付き添いでアメリカに行った際に知り合った男性だという事を思い出し、紬は頭の中を仕事モードに切り替え、応対する。

 

 

男性「I am glad to see you after a long time, how is your father doing?」

(久しぶりに会えて嬉しいよ、お父上はお元気ですか?)

 

 本場さながらの流暢な英語だが、決して何を言っているのかが分からない紬ではない。

 

 後ろに控えている菫が通訳に入ろうと男性の前に割って出たが、紬はそれを制止し、英語で返す。

 

 

紬「I am happy to see you after a long time, my father is fine」

(久しぶりにお会いできて嬉しいです、父は元気ですよ)

 

男性「Please tell me that it was good and please come to our company again in the future」

(それは良かった、ぜひまた今後、我が社に来てくださいとお伝え下さい)

 

紬「Yes, let me know, so let's see you again......」

(はい、お伝えしておきますわ、それではまた……)

 

男性「Yes see you again」

(ええ、またお会いしましょう)

 

 紬に軽く一礼し、男性は庭園の端、多くの資産家の集まりの中へと入っていく。

 

 男性の姿を見送り、紬は軽くため息をついていた。

 

 

紬「びっくりした……彼も招待されていたのね」

 

菫「そのようですね……先程はすみません、出過ぎた真似をしようとしてしまって」

 

紬「ううん、通訳を通すよりも、直接お話したほうが向こうも嬉しいと思ったからね」

 

菫「お嬢様……」

 

菫(こういうのは私に任せてくれればいいのに……)

 

 紬のこうした人と向き合う姿勢が、昔から公私両面に置いて良い関係を築いているのだろうと菫は思う。

 

 ただ、菫の中に紬への唯一の不満があるとするなれば、お嬢様のサポートにと必死で覚えた外国語を話す機会が、当の紬の前では、ほとんど発揮されない事ぐらいだった。

 

 

女性「Hallo Tsumugi」

 

 弦巻家の使用人と挨拶を交わしながら屋敷へと向かうその途中、二度紬に話しかける声が聞こえてくる。

 

 今度はやや年配と見られる女性が、ドイツ語で話をかけていた。

 

 先程同様に思考を仕事に切り替え、紬はドイツ語で言葉を交わす。

 

 

紬「Na ja Es ist lange her, ich freue mich, Sie kennenzulernen!」

(まあ! お久しぶりです、お会いできて嬉しいです!)

 

女性「Gutes Deutsch wie immer, ich bin beeindruckt」

(相変わらず上手なドイツ語ね、感心しちゃうわぁ)

 

紬「Danke für das Kompliment」

(お褒めいただき光栄です)

 

女性「ch lass ihn warten, lass uns wieder Tee trinken, also auf Wiedersehen」

(彼を待たせてるの、またお茶でもしましょう、それじゃあね)

 

紬「Wir sehen uns wieder」

(またお会いしましょう)

 

 そう言い、手を振る女性に向け、紬もまた同じように手を振り、女性を見送る。

 

 それから屋敷へ向かう道中、様々な国の様々な資産家が紬の元に集い、挨拶を続けていた。

 

 それらに対し、紬はフランス語、中国語、ロシア語と、その人の国籍に合わせた言葉で挨拶を交わし、笑顔で言葉を交わす。

 

 ……それから、庭園を抜けて屋敷に辿り着くまでに、既に30分余りの時間が経過していた。

 

 ようやく屋敷に辿り着き、紬はぼやく。

 

 

紬「まさか、お友達のお屋敷に着くまでの間に5ヶ国語も話す事になるとはね……」

 

菫「お嬢様……」

 

紬(はぁ……早くこころちゃんに会いたいわ……)

 

 恐らく、今日は一日中こんな感じになるのだろうかと……考えれば考えるほど、気が重くなる。

 

 ……でも、こころに会う事ができれば、きっとこの憂鬱とした気持ちも晴れるだろう……と。そう信じ、広い屋敷を歩き続ける……。

 

 紬と菫の2人は、ただひたすらに本日の主催の姿を探し求めていた。

 

―――

――

 

【弦巻家 パーティー会場】

 

 所変わってパーティー会場の別フロア。

 

 そこには、本日の主催である弦巻こころの友人……『ハロー、ハッピーワールド!』のメンバーが集っていた。

 

 

美咲「せっかくのテスト休みだから家でのんびりしてたのに……こころってば急にみんなを呼び出して……どうしたんだろ」

 

花音「おうちの前に大きな車が止まってて……私、びっくりしちゃったよ」

 

美咲「ウチもです、黒服さんに言われるがままに大きな高級車に乗り込んでたのを母に見られた時、『あんた、一体何やったの?』って心配されましたよ……まぁその誤解は黒服の人達が解いてくれたみたいでしたけど」

 

花音「大変……だったね、それにしても……ふえぇ……ここにいる人達みんな、すっごいお金持ちみたいだね……」

 

美咲「ええ、いかにもお金持ちのやるパーティーって感じですね……ほんと、つくづくこころって凄いんだなって思います」

 

 自分達の周囲にいる来賓を見ながら、美咲と花音は口を揃える。

 

 それは一般庶民である美咲や花音から見ても分かるほど、周りにいる来賓の一人ひとりが自分達とは違い、華やかな人生を歩んできているのだと言うことが伝わっていた。

 

 

薫「ああ……なんて美しい……これが、本場のパーティー……フフフ、今宵の私のダンスのお相手は、どこにいるんだろうね……」

 

はぐみ「みーくんみーくん! あっちに大きなケーキがあったよ! あとで食べに行こっ!」

 

美咲「この2人は相変わらずだし……」

 

花音「うふふっ、薫さんも、今日は大人っぽくてかっこいいね……」

 

美咲「まぁ、薫さんの場合、普段からあんな感じですからね……様になってると言うか、舞台慣れしてると言うか……」

 

花音「うんうん、美咲ちゃんのそのドレスだって、すごく綺麗で似合ってるよ?」

 

美咲「ありがとうございます、花音さんのそのワンピースも、よく似合ってて、可愛らしいと思いますよ」

 

薫「ふふふ、はぐみ……かわいいドレスだね、汚さないように気をつけるんだよ」

 

はぐみ「うん! 薫くんのお洋服も、すごくかっこいいと思うよ!」

 

 黒服に言われるがままに屋敷に来た美咲達は、黒服の用意したパーティー衣装に着替えていた。

 

 皆が皆、普段はまず目にかかれないようなパーティー衣装を着こなし、年相応の女の子らしい反応をしている。

 

 そして、会場の様子が更なる賑わいを見せてきた時だった……。

 

 

美咲「しかし、こころってば、一体どこにいるんだろ……」

 

声「あっ! みんな、来てくれたのね♪」

 

 美咲達の耳に飛び込む、一際明るい声。

 

 振り向くとそこには、美咲達と同様に優雅なドレスを身に纏った、弦巻こころの姿があった。

 

 

こころ「ようこそ! 今日はホームパーティーを開いたのよ、みんな楽しんでってちょうだい♪」

 

はぐみ「こころん、今日ははぐみ達を呼んでくれてありがとうね!」

 

薫「ふふふっ、こころの素敵な招待に感謝するよ、ありがとう……こころ」

 

花音「ありがとうこころちゃん、こころちゃんも今日は一段とキレイだねっ」

 

美咲「それでこころ、一体今日はどうしたってのさ?」

 

こころ「今日は、ハロー、ハッピーワールド!の事を、私のお友達に紹介しようと思ったのよ♪」

 

花音「……お友達?」

 

美咲「まさか、それだけのためにこんな大きなパーティーを開いたっていうの……?」

 

こころ「そうよ、みんながハロハピの事を知ってくれたら、世界はもっと笑顔になると思うの♪ どう、ステキでしょ?」

 

美咲「……………ははは、もう、なんでもいいや」

 

 こころのこういう突拍子もない所についていちいち突っ込むのも今更かと、乾いた笑顔でこころの発言を受け入れる美咲だった。

 

 

 ――それから、4人も次第にパーティー会場の高貴な雰囲気にも慣れていった時のこと。

 

 

はぐみ「うんうん、このお肉、すっごくおいしいっ!」

 

薫「ほら、はぐみ、口元にソースが付いてるよ」

 

はぐみ「本当だぁ、薫くん、ありがとっ」

 

美咲「しかし、本当にすごいなぁ……有名政治家に資産家……どこも有名人だらけですね」

 

花音「ねえ、美咲ちゃん、あそこ見て……」

 

美咲「あれって……えええ?? う、嘘でしょ?」

 

花音「あの2人、私、朝のテレビで見たよ……確か、すっごく仲の悪い事で有名な政治家だよね?」

 

 美咲と花音が目を向けた先、そこには、連日のようにテレビを賑わせている有名な2人の政治家がいた。

 

 一人は恰幅の良い初老の白人男性と、もう一人は威圧感のある軍服を身に纏ったアジア系の男性で、互いに啀み合うような表情で双方を睨んでいる。

 

 その後ろに佇む部下と思われる男達も例外ではなく、2人の政治家の間には、見えない火花が散っているように感じられていた。

 

 

こころ「私、ちょっと2人とお話してくるわっ♪」

 

美咲「ちょっ……話してくるって……こころ、待ちなって!……ああもう、こころってば……」

 

 超大物政治家2人を相手に怖気づく様子もなく、こころは2人の元へ向かっていく。その度胸……というよりも空気の読まなさ加減に、美咲の口からは呆れ声が出る。

 

 そして何より、ここで下手に2人を刺激すれば、両国の関係が崩れてしまうのではないかと美咲が危惧した矢先の事だった。

 

 2人の元にこころが駆け寄り、何やら話をしているのが伺える。

 

 

美咲「ちょっとこころ、あのバカ何やってんの……?」

 

花音「なんだか、2人の間に入ってお話してるしてるみたいだけど……」

 

美咲「ここからじゃ、何を言ってるのか聞こえないですね……」

 

 

こころ「~~~~? ~~~! ~~♪」

 

白人男性「…………」

 

軍服男性「…………」

 

こころ「~~~! ~~~♪ ~~~~☆」

 

白人男性「…………」

 

軍服男性「…………」

 

 

 2人の間にこころは立ち、笑顔で話を続けている。

 

 次第に強張っていた顔の2人は、その表情を緩め、互いが互いの顔を優しく見つめていた。

 

 そして……。

 

 

白人男性「I was bad...... Would you like to get along well now?」

(私が悪かった……これからも仲良くしてはくれないだろうか?)

 

軍服男性「I was bad, let's go together and build a good country!」

(私こそ悪かった、共に2人で、良い国を築いて行こう!!)

 

 2人の政治家は言葉を交わし、握手をする……かと思いきや、次に2人は、涙を流しながら熱く肩を抱き合っていた。

 

 

美咲「嘘でしょ……あの2人、泣きながら抱き合ってるよ!」

 

花音「ふえぇぇ……こ、こころちゃん、何を言ったんだろう」

 

こころ「ドナルドとジョン、ケンカでもしてたのかしら? 会った時からずっと笑顔じゃなかったのよ」

 

こころ「だから、私が2人を仲直りさせてあげたの♪ これでみんな笑顔になれたわよっ♪」

 

美咲「こころ、あんたって本当に……」

 

 こころの行動は国際問題どころか、一触即発状態にあった国を和平へと導くことになった。

 

 これをきっかけに後日、犬猿状態にあった両国間に友好条約が締結される事になるのだが、それはまた別の話である――。

 

―――

――

 

こころ「うふふっ♪ みんな笑顔で楽しそうね、私も嬉しいわっ」

 

こころ「……あっ!」

 

美咲「ん……?」

 

 ふと、こころが一組の来賓を見かける。

 

 こころのいる所から数メートル先、そこには赤いドレスを身に纏った金髪の女性と、その横には、スーツ服姿の金髪女性の姿が映って見える。

 

 2人の女性に向け、こころは駆け出し……後ろから抱き着いていた。

 

 

こころ「つむぎーーー♪ 会いたかったわ、つむぎーーっっ♪」

 

紬「きゃっ……こ、こころちゃん??」

 

 突然背後から抱きつかれ、思わずよろける紬だったが、抱きついてきた主が自分の探し求めていた人物だと知ると、その驚きは安堵に変わっていた。

 

 

紬「こころちゃん! 会いたかったわぁ……」

 

菫「こころお嬢様……どうも、ご無沙汰しております」

 

こころ「紬、菫♪ 久しぶりね、来てくれてありがとう♪ 2人とも元気だったかしら♪」

 

紬「ええ……うふふっ、こころちゃんもお元気そうね……」

 

 こころと紬、菫の3名が久々の再会を喜び合っていたその時、こころの後方より、美咲達が追いついてきた。

 

 

美咲「ちょっとこころ……急に走り出さないでよー」

 

花音「はぁ、はぁ……きゅ、急に走り出すからびっくりしちゃった」

 

薫「ふふっ、こころ、急に走り出したりして、一体どうしたんだい?」

 

はぐみ「わぁぁ、綺麗なお姉さん達だねー、こころんのお友達?」

 

こころ「そうよ♪ この二人は私のお友達の、紬と菫よ♪」

 

こころ「紬、菫、こちらは私のお友達なの♪ みんな、ステキな人達なのよ♪」

 

紬「まぁ……そうなのね」

 

 こころの目線の先にいる4名の少女達に向け、紬と菫は自己紹介をする。

 

 

紬「はじめまして、琴吹紬です、こころちゃんとは昔からお付合いをさせていただいてるの、どうぞよろしくね」

 

菫「斉藤菫と申します、皆様、どうぞ宜しくお願い致します」

 

花音「ま、松原花音です、よろしくお願いします」

 

薫「薫……瀬田薫と申します……ああ、なんて美しい女性達なんだろう……」

 

はぐみ「北沢はぐみですっ! つむぎさん、すみれさん、よろしくねっ」

 

美咲「どうも、奥沢美咲です……ん、『琴吹』って……もしかして、あの琴吹??」

 

 紬の名前を聞いた美咲の表情に、僅かな緊張が走る。

 

 

はぐみ「みーくん、知ってるの?」

 

美咲「知ってるも何も、超大手のグループ会社じゃん……はぐみだってテレビのCMぐらいは見たことあるでしょ?」

 

美咲「しかも、名前が紬って……もしかして、あの琴吹家の紬お嬢様……?」

 

花音「こころちゃん……すごい人とお友達だったんだね……」

 

美咲「ええ、とても凄い人だって聞いてます、……ああ、私、なんだか緊張してきた……」

 

 眼の前の女性が、過去に何度かテレビや新聞でも見たこともある女性だという事を思い出し、思わず息を呑む2人だった。

 

 そんな緊張気味な2人に向け、こころが話しかける。

 

 

こころ「2人とも何を固くなってるの? 紬は紬よ、私の大事なお友達よ? つまり、みんなのお友達よっ♪」

 

こころ「さあ、怖い顔してないで、美咲も花音も紬と握手しましょっ♪ これで2人も、紬のお友達よっ」

 

美咲「こころ……」

 

花音「こころちゃん……」

 

 こころに促されるまま、美咲と花音は紬と手を交わす。

 

 紬の手に2人の手が重ねられ、優しく握られた。

 

 

美咲「紬……さん、さっきは失礼しました。改めて、よろしくお願いします」

 

花音「わ、私も……よろしくお願いしますっ」

 

紬「ええ……ありがとう、美咲ちゃん、花音ちゃん……これからもよろしくね」

 

はぐみ「あー、みーくんもかのちゃん先輩もずるーい! 今度ははぐみと薫くんとも握手しよっ!」

 

薫「ふふっ……紬さん、どうぞ宜しく……」

 

紬「ええ、私からもよろしくね」

 

 次いで差し出されたはぐみと薫の手を優しく握り、紬は微笑む。

 

 その光景を満足そうにこころは眺め、笑顔を絶やさず続けた。

 

 

こころ「ふふふっ、みんなが紬と仲良くなれて、私も嬉しいわっ♪」

 

紬「うふふふっ……こころちゃん、ありがとうね」

 

こころ「……? 変な紬、私は何もしてないわよ?」

 

 眩しい程に輝くこころの笑顔を見て、紬はふと思う。

 

 こころは決して立場や状況を弁えず、空気を読まない。どこにいようが、常に等身大のこころでいる。

 

 そして、こころが持つ笑顔の輝きの前では、誰もが立場や権威を捨て、ありのままの自分に戻れる。

 

 それは、周囲の評価や立場に縛られた大人になってしまった紬には決して出来ない事で……それを容易くやってのけてしまうのが、弦巻こころの魅力であり、皆がこころを慕う理由でもあった。

 

 紬自身も、先程までの資産家らを相手にした立ち回りとは違う、等身大の自分でいられる事に喜びを抑えきれずにいた。

 

 そこにはもう、琴吹家令嬢としての『琴吹紬』はなく、ただ一人の女性としての『琴吹紬』がいるのみだった――。

 

 

こころ「うふふふっ、なんだか楽しくなってきたわね、そうだ♪ せっかくだし、みんなで今から踊りましょうっ♪」

 

美咲「えええ、いきなり? しかもここで?」

 

花音「ふえぇぇ、わ、私……こういう所で踊るダンスなんて知らないよぉー」

 

薫「大丈夫だよ、花音、さあ、私の手を取ってごらん……」

 

はぐみ「みーくんみーくん! みーくんも踊ろっ!」

 

美咲「あーもう……みんな、少しは落ち着きなってばー」

 

 それから程なく、こころの思い付きで、舞踏会が開かれる。

 

 自由に踊るこころ達の姿を見て、周囲では互いに手を取り、社交ダンスを行う者が相次ぐ。

 

 気付けばフロアの一角は優雅なダンス会場となり、互いが互いの手を取り合う場へと成り代わっていた。

 

 

紬「素敵なお友達ができたのね……こころちゃん」

 

菫「はい、あんなにも笑っていられるこころ様のお姿……私も久しぶりに見た気がします」

 

こころ「二人とも、何をしてるの? みんなで踊りましょっ♪」

 

紬「うん、行こう、菫ちゃん!」

 

菫「はい、お嬢様……」

 

紬「ううん、違うわ、今の私は……」

 

 『お嬢様』という堅苦しい呼び名ではない、今の私は、あなたと長い時を過ごした、たった一人のお姉ちゃんよ。

 

 言外でそう紬は言っている……言葉にしなくとも、菫にはそれが十分伝わっていた。

 

 

菫「そう……だね……うん、お姉ちゃんっ!」

 

 菫は叫ぶ。紬の妹として、親しみと敬愛を込め、紬の家族としての呼び名で叫ぶ。

 

 そこにいるのは既に紬の秘書でも使用人でもない。

 

 血の繋がりこそ無いが、それでも紬のことを長く『お姉ちゃん』と呼び親しんで来た、琴吹紬の唯一の妹としての、『斉藤菫』だった。

 

―――

――

 

 そして、こころの思い付きで開かれたダンス大会もほどなく終わりの気配が近付いた頃。

 

 

はぐみ「あーっ、楽しかったね~」

 

薫「ああ、とても儚い一時だったね……心が洗われるような時間だったよ」

 

美咲「あははは、慣れないことやったから脚がガクガクだよ……」

 

花音「私も……でも、楽しかったよね」

 

美咲「まぁ……悪くはなかったですよね」

 

はぐみ「ねえねえこころんー、そういえば、ミッシェルはどうしたの?」

 

薫「そういえば、今日はまだミッシェルを見ていなかったね……かくれんぼでもしてるのかな?」

 

こころ「それが、ミッシェルってば、今日はどうしても外せない用事があるっていうのよ」

 

紬「……ミッシェル?」

 

はぐみ「うん、ミッシェルっていうのはねー」

 

美咲「あー、まぁ、その話は今はいいでしょ? 今日は来れないって言ってたんだしさ」

 

 はぐみの言葉に美咲が被せる、ここで下手にミッシェルの話を膨らませて、どうしてもこころがミッシェルに会いたいと言い出しでもしたら、きっと黒服が動いて自分がミッシェルにならざるを得なくなるだろう。

 

 それはあまりにも面倒なので、こころとはぐみの気をどうにか紛らわせる事にする。

 

 

こころ「今度、紬にもミッシェルを紹介するわね♪」

 

紬「ええ、楽しみにしてるわっ」

 

美咲「……それにしても紬さん、本当にこころと仲良しですよね」

 

花音「うん、そうだね~」

 

美咲「あの、紬さんとこころは、どれくらい前からの知り合いなんですか?」

 

紬「私が高校生ぐらいの頃からだから……もう10年ぐらいになるのかしら」

 

こころ「紬のお家で、紬のお誕生日の日に私達はお友達になったのよ、懐かしいわねっ♪」

 

紬「あの頃はまだ背も小さかったのに……今じゃこんなに立派になって……うふふっ、こころちゃんも大きくなったのね……」

 

 こころの頭を紬が優しく撫でる。

 

 既にこころの気は、ミッシェルから紬へと移っていたようだった。

 

 ……その時。

 

 

はぐみ「つむぎさん……」

 

美咲「ん、はぐみ、どうかした?」

 

はぐみ「つむぎ……つむぎ………う~ん……」

 

 はぐみが一人、ぶつくさと独り言を繰り返していた。

 

 

はぐみ「つむぎ……つむぎ……むぎ…………ムギちゃん先輩!」

 

紬「えっ……?」

 

 はぐみの言葉を聞いた紬の眼が一瞬、大きく開かれる。

 

 

美咲「ちょっとはぐみっ、年上の人に失礼でしょ」

 

はぐみ「ごめーん、う~ん……でもなんか、そう呼んだらすごくしっくり来たんだ」

 

紬「ううん、い、いいの! はぐみちゃん、もう一度呼んでくれる?」

 

はぐみ「……? うん! ムギちゃん先輩っ!」

 

紬「……っ」

 

 『ムギちゃん先輩』と、はぐみが紬を呼ぶその声に、懐かしい日々が紬の脳裏に蘇る。

 

 かつて、制服を着て高校に通っていた頃。その高校で、素敵な仲間に出会えたこと。その仲間とともに、軽音部で青春を謳歌したこと。

 

 様々な思い出が紬の中を駆け巡り、懐かしい声が紬の記憶の中でこだまする。

 

 

 『――ムギちゃーんっ! 一緒に部活行こっ』

 

 『――おーいムギー! 今日のお茶も、楽しみにしてるからなー』

 

 『――二人とも、ムギに甘えすぎだぞー! ……ムギ、いつもありがとうな』

 

 『――ムギ先輩! 次のライブ、楽しみですね!』

 

 

紬(…………)

 

紬「……っ……っ」

 

 皆に気付かれぬよう、紬はそっと目元を拭う。

 

 

菫「お嬢……お姉ちゃん……大丈夫??」

 

紬「うん……ごめんなさい、ちょっと昔を思い出しちゃって……」

 

紬(懐かしいな……)

 

 紬の事をそのあだ名を呼ぶ人は、もう紬の周りには一人としていなかった。

 

 それが、ここで再びそのあだ名で呼ばれることになろうとは。

 

 突如訪れた不思議な偶然に、紬の口から感謝の言葉が囁かれる。

 

 

紬「……ありがとう、はぐみちゃん」

 

はぐみ「……? ムギちゃん先輩、どうしたのかな?」

 

―――

――

 

 それから、7人の話題は、こころ達の今の話に移っていった。

 

 

はぐみ「そうだ、ねえこころん、ムギちゃん先輩達にもハロハピの事、教えてあげようよっ」

 

紬「ハロハピ?」

 

こころ「そういえば紬はまだ知らなかったわね、私達は、『ハロー、ハッピーワールド!』っていうバンドを組んでるのよっ♪」

 

はぐみ「うん! みんなすごいんだよ!」

 

薫「ふふふ、音楽を通して世界中を笑顔に……なんて素晴らしく、儚い目標なんだろうね」

 

花音「私達、こころちゃんに誘われて、バンドをやってるんです」

 

美咲「まぁ誘われたというか……巻き込まれたって言っても良いですけどね」

 

 そして紬達はこの時初めて知った。

 

 こころ達が今、『ハロー、ハッピーワールド!』というバンドを結成し、音楽を通して世界を笑顔にするための活動を行っていることを。

 

 

こころ「みんな行くわよ♪ ハッピー! ラッキー! スマイル!」

 

はぐみ・薫・こころ「イェーイっ!」

 

花音・美咲「い、イェーイ」

 

 こころ達が声を合わせ、お決まりのフレーズを口にする。

 

 紬と菫も、その様子を見て優しく微笑んでいた。

 

 

紬「うふふっ、こころちゃんの作ったバンドかぁ……なんだか楽しそうね……」

 

菫「バンド……懐かしいですね、私も昔を思い出します」

 

こころ「そういえば、紬たちも昔、バンドを組んでたのよね?」

 

紬「ええ、そうよ、うふふっ、懐かしいわね……」

 

薫「それはそれは……不思議な縁だね、お二方とも、バンドをやってただなんて」

 

こころ「私、小さい頃に紬と菫の演奏を見たことがあるのよ! あの時の2人、すっごくかっこよかったわ! バンド名は……なんだったかしら?」

 

紬「放課後ティータイムと……」

 

菫「わかばガールズ……ですね、本当に懐かしいです」

 

美咲(ん……放課後ティータイム……? どこかで聞いたことあるような……)

 

花音「あ、あの! お二人のパートは何だったんですか?」

 

紬「私はキーボードで、菫ちゃんはドラムだったわよね?」

 

菫「はい」

 

はぐみ「じゃあ、かのちゃん先輩と、ミッシェルと同じだね!」

 

美咲「まぁ、厳密に言えばミッシェルはキーボードじゃなく、DJだけどね」

 

こころ「……そうだわ♪」

 

 突如、こころがパチンと手を叩き、弾けたように何かを思いつく。

 

 

美咲(うわぁ、すごく嫌な予感……)

 

美咲「い、一応聞くけど……こころ、一体何を思いついたの?」

 

こころ「ライブよ! 今からライブをやりましょう♪」

 

花音「え……ふえええええ!?」

 

美咲(やっぱり……)

 

薫「ふふふっ……ああ、私も今、こころと同じことを思っていた所だよ」

 

はぐみ「うんうん! どうせなら、ムギちゃん先輩とスミーレ先輩にも、はぐみたちの演奏を見てもらおうよ!」

 

菫「す、スミーレって……また懐かしいあだ名を……」

 

紬「こころちゃん達のライブかぁ……楽しそうね♪」

 

美咲「で、でもほら、ミッシェルはどーするの? 今いないんだよ?」

 

 言いながら美咲が目線をホールの端に寄せてみる……すると。

 

 

黒服(美咲様、ミッシェルの準備、いつでもOKです!)

 

 と、美咲に向け、親指を立てる黒服達の姿が見えた。

 

 

美咲「はぁ……やっぱ、やんなきゃダメか」

 

 観念した美咲が目線で黒服に了承し、その了解を受け取った黒服はこころに耳打ちをする。

 

 

黒服「こころ様、ミッシェル様ですが、たった今こちらに向かってるとの事です」

 

こころ「そう! ならよかったわ! 黒服さん、ありがとう♪」

 

こころ「みんなー! ミッシェルも今ここに向かってるわ! これからライブをやるわよー♪」

 

 こころは会場中に聞こえる声量で声を上げる。

 

 その声を聞き、会場中の来賓の間で、こころの催事への期待を寄せる声が聞こえてくる。

 

 

男性「おお、どうやら、これからこころお嬢様がご学友の方々と演奏会をするようですね……」

 

女性「まぁ……楽しみですわ、きっと、優雅な演奏会になるのでしょうね……」

 

美咲「演奏会って……みんな何か勘違いしてない……?」

 

花音「あははは……いいんじゃないかな……ガールズバンドパーティーも近いし、リハーサルも兼ねてってことでさ」

 

薫「こんな大勢の前でライブだなんて……胸が踊りだすよ、みんなが私の演奏の虜に……ああ、なんて儚いんだ……!」

 

はぐみ「えへへへ、はぐみも頑張るよ!」

 

美咲「まぁ、このメンツで集まってライブをやらないことの方が珍しいか……わかった、分かりましたよ」

 

紬「菫ちゃん、最前列で見ましょう! 私もこころちゃん達のライブ、見てみたいわ!」

 

菫「あの、お嬢様、言い難いのですがその……そろそろお時間が……」

 

紬「えっ? 嘘、もうそんな時間なの?」

 

 菫に言われ、紬が時計を見る。すると次の約束……紬と菫の高校の同窓会まで、既に1時間を切っていた。

 

 

紬「もっと早く、こころちゃん達に会えていれば良かったのに……残念だわ」

 

菫「私もです、楽しい時間が経つのはあっという間なんですよね……」

 

こころ「紬ー、紬達も見てってくれるわよね! 私達のライブ!」

 

紬「ごめんなさいこころちゃん……せっかくなんだけど、もう次の約束の時間が来ちゃったのよ……」

 

 時間が迫っていることを説明し、落胆した様子で紬はこころに打ち明ける。

 

 

こころ「あら、そうなの……? それは残念だわ」

 

紬「また誘ってくれる? 次は時間を作って、必ず行くから……」

 

花音「そっかぁ……残念ですけど次の予定があるなら、仕方ないね……」

 

美咲「ええ、紬さんもお忙しいようですし……次の機会に……ですね」

 

はぐみ「ムギちゃん先輩っ! だったら、今度はぐみ達がやるライブに来て欲しいなっ」

 

薫「そうだね……今日のライブは一旦お預けになってしまうけど……でも、次のライブは、今日以上に儚いライブになると、お約束しますよ」

 

こころ「そうね、紬、菫。来週やるガールズバンドパーティーには是非いらしてちょうだい! みんなで待ってるわね♪」

 

黒服「紬様、菫様、詳細につきましてはこちらを御覧ください」

 

 こころの声に合わせ、黒服より、ガールズバンドパーティーの告知フライヤーが紬に手渡される。

 

 数多の出演バンドの名前が連ねられたそのフライヤーには、ハロハピの名前も確かに書き留められていた。

 

 

紬「ええ、必ず行けるようにするわ、もちろん、菫ちゃんも一緒に……ね」

 

菫「はい、私も、皆様のご活躍を楽しみにしております」

 

紬「それと……美咲ちゃんっ!」

 

 そして会場を後にする間際、紬は美咲を呼び止める。

 

 

美咲「……はい? なんでしょう?」

 

紬「こころちゃんと、これからも仲良くしてあげて……ね」

 

美咲「……ええ、もちろんです」

 

美咲「今日は会えて良かったです……また、お二人にお会いできる日を楽しみにしてます」

 

 紬の眼差しに、美咲は笑顔で応え……改めて、固い握手を交わすのであった。

 

 

―――

――

 

 それから程なく、移動の準備を終えた二人は弦巻家の屋敷を後にする。

 

 しばらくしてから微かに聞こえてくるライブの賑わいに、僅かにうしろ髪が引かれる気持ちの二人だったが、迷いを振り切り、車は走り出す。

 

 

【琴吹家専用車内】

 

紬「こころちゃん達、本当に楽しそうだったわね……」

 

菫「ええ、私も、昔を思い出しました……」

 

紬「うん、早くみんなに会いたくなったわ、まだ着かないのかしら?」

 

菫「お嬢様、もう少々お待ちください……会場まで、後少しですよ」

 

紬「も~、違うでしょ、菫ちゃん……」

 

 むくれた子供のような顔で紬は言う。

 

 その言葉の意図を理解し、菫は僅かに溜息を漏らし、言い直す。

 

 

菫「……うん、もうじき着くから、少しだけ待ってて……お姉ちゃん」

 

紬「うんっ!」

 

 夕日に照らされる道路を、黒塗りの車はひた走る。

 

 二人の目的地は、すぐそこまで迫っていた――。

この物語で特に評価できる点があれば教えて下さい

  • 大人になったけいおんキャラを描いた所
  • 作品の枠を超えたキャラの掛け合い
  • 随所で見られる原作小説とゲームネタ
  • ライブの選曲
  • 『輝き』というテーマ
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