【バンドリ×けいおん】唯「バンドリ?」香澄「けいおん?」   作:キラ@創作垢

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 ――最初は、離れ離れになったみんなと再会できる、それだけだと思っていた。

 でも、それはほんの小さなきっかけに過ぎず、そのきっかけがあったからこそ、あの奇跡は生まれたんじゃないのかな。


 今でも思う、これは本当に偶然なのかって。

 私があの日、あの時、高校でみんなに出会えたのは偶然じゃなく、もしかしたら、運命だったんじゃないかって。

 年甲斐もなく、そんな事を思ってしまう。


 それ程に、そのきっかけが生んだ奇跡は、私にとっても、皆にとっても、衝撃的だったんだ――。


#3.放課後の再会

 そこは、桜が丘からすぐ近くにあるホテルのホール。

 

 宴会用に設けられたそのホールの入り口には【桜が丘女子高等学校 同窓会会場】という案内板が立てかけられ、その看板のすぐ側には、凛々しくスーツを着込んだ一人の女性が立っていた。

 

 彼女こそが今日の同窓会の企画であり、また幹事でもある、桜が丘高校の元生徒会長、真鍋和であった――。

 

 

【同窓会 会場ホール入口】

 

和「もうすぐ時間ね……みんな、大丈夫かしら?」

 

声「よー、和、久しぶりー!」

 

 和の姿を見かけるなり、元気な声がホール内に聞こえてくる。

 

 

和「あ……来たわね……律、こっちよ!」

 

 最初に会場に到着したのは、律だった。

 

 仕事を終えたばかりということもあり、その顔からはやや疲れの色が伺えるが、それでも今日を楽しみにしていたのだろう、その顔には笑みが溢れていた。

 

 

律「せっかくの同窓会だし、早めに仕事切り上げてきたんだけど……間に合ってよかったぁ」

 

和「ふふっ、澪から聞いてるわよ、凄いじゃない、有名アイドルのマネージャーだなんて」

 

律「いやー、まぁ、実際すげーのはあの子達であって私じゃないよ……ってか、他のみんなはまだなの?」

 

和「えっと、みんなもそろそろ来ると思うけど……」

 

 

声「のどかー! ひさしぶり!」

 

声「和先輩! お久しぶりです! お元気でしたか?」

 

 次いで聞こえる声が2つ……律と和が見る先には、澪と梓の姿が見えていた。

 

 駆け寄ってくる2人に向かい、大きく手を降りながら律が声を返す。

 

 

律「よーっ、澪~!」

 

澪「ああ、律、もう来てたんだ」

 

律「まぁねー、澪とは一ヶ月ぶりぐらいか?」

 

澪「そうだな、前に一緒に飲んだ時以来だな」

 

律「んで……こっちのロングの髪は……えっと、誰だっけ?」

 

 梓を見つつ、にやりとした顔で律は問いかける。

 

 

梓「それ……本気で言ってますか?」

 

律「いやー、似た声の後輩なら心当たりあるんだけどなぁー」

 

梓「梓ですよ! あーずーさ! これでもまだ思い出しませんかっ?」

 

 言いながら梓は己の髪を両手で握り、即席のツインテールを作りながら叫んでいた。

 

 

律「おーおー! そのツインテール、覚えてる覚えてる! あははっ! なっつかしいなー!」

 

澪「律、そのぐらいにしときなって」

 

律「へへっ、悪い悪い」

 

 

梓「まったく、律先輩も全然変わってませんよね」

 

澪「でも、これでも有名アイドルのマネージャーやってるんだから、ほんと、信じられないよな」

 

梓「え……? 律先輩、アイドルのマネージャーなんてやってるんですか?」

 

律「『なんて』とはなんだ中野~、こう見えてもあたしゃ今をときめく天下のPastel*Palettesのマネージャーだぞ?」

 

梓「ええええ??? Pastel*Palettesって……あのパスパレの??」

 

律「これが証拠だ! へへん、どーだ、まいったか」

 

 律は大きく胸を張りながら自分のスマートフォンの画面を差し出す。

 

 そこには、ライブの打ち上げでパスパレのメンバーと共に撮った律の写真が映されていた。

 

 

梓「こ、これ、本物ですか……? し、信じられないです……」

 

 

和「まさか律がアイドルのマネージャーをやるだなんて、高校の頃は想像もできなかったわね」

 

澪「ああ、私も最初聞いた時はびっくりしたよ」

 

和「澪はどう? 生活は順調かしら?」

 

澪「そうだなぁ、忙しいけど、毎日充実してるよ」

 

和「そう、それなら良かったわ」

 

澪「うん、和は?」

 

和「私も、少し前までは忙しかったけど、最近になってようやく落ち着いてきたって感じかな」

 

澪「そっか……和も梓も、元気そうで何よりだよ」

 

 昔のままじゃれ合う律と梓を見つつ、久々の再会を喜び合う和と澪だった。

 

 ――そして、会場には続々とかつての仲間が集い始めていく。

 

 

声「みんな久しぶりー! 元気にしてたかしら?」

 

声「梓せんぱーい! 皆さん、お久しぶりでーす!」

 

律「おーー! ムギだ! おーい!」

 

梓「ムギ先輩っ! それに菫も、久しぶりーっ!」

 

 澪と梓に続き、紬が菫を伴い、会場に合流する。

 

 

澪「ムギー! 久しぶり、会いたかったよ」

 

紬「澪ちゃん、りっちゃん……懐かしいわ……元気にしてた?」

 

律「まーな、見ての通り、元気でやってるよ」

 

和「ムギ、ありがとう、忙しいところを来てくれて本当に嬉しいわよ」

 

紬「ううん、私も、もうずっと前から楽しみにしてたんだもの……こうしてみんなにまた会うことができて、本当に良かったわ」

 

 

梓「菫も元気そうだね」

 

菫「はいっ、梓先輩、その説はどうも……」

 

紬「梓ちゃん、あの時は来てくれて本当にありがとうね」

 

梓「いえ、ムギ先輩、菫……私の方こそご招待していただき、ありがとうございました」

 

律「ん? 梓、ムギ達と何かあったの?」

 

梓「ええ、実は、今年の初めに琴吹家主催のジャズライブに出演しまして……」

 

律「琴吹家主催のジャズライブか……なんかもう、聞いただけですげえライブって感じがするな……」

 

梓「もう緊張どころじゃなかったですよ……海外でも有名な超一流のジャズ演奏者の中に混ざれるだなんて思っても見ませんでしたし……」

 

紬「あの時の梓ちゃん、凄く格好良かったわぁ♪」

 

菫「ええ、梓先輩、一際輝いてたと思いますよ」

 

梓「みんなやめて下さいよ~……恥ずかしいなぁ」

 

 紬と菫の賛美に頭を掻きながら照れる梓。

 

 それからも、相次いで見知った顔が会場に集って行くのを、嬉々とした表情で和達は見つめていた……。

 

 

声「梓ちゃん! 澪さんに律さん、紬さん! スミーレちゃん! 皆さんお久しぶりです!」

 

声「やっほー、梓、先輩方、お久しぶりでーすっ」

 

声「先輩方、菫も、お久しぶりです」

 

梓「わぁ……憂! 純に直も! 久しぶりー、みんな元気だった?」

 

純「うんうん、へへっ、どうにか元気でやってるよー」

 

 

直「梓先輩、お久しぶりです」

 

憂「梓ちゃん、活躍聞いてるよ、本当にプロになったんだね」

 

梓「あははっ、うん、お陰様でね。憂も元気そうで良かったよ」

 

菫「直ちゃんも久しぶりだね、元気にしてた?」

 

直「菫……うん、菫も元気そうだね」

 

梓「えへへ……わかばガールズ、これで全員集合だね」

 

憂「うん、スミーレちゃんも直ちゃんも、みんな元気そうで良かったぁ」

 

純「私もだよ、梓と憂にも全然会えなかったから……凄く嬉しいよ」

 

梓「うん、私もだよ……」

 

 互いに微笑みつつ、数年ぶりの再会を喜び合う5人だった。

 

 

和「憂、ご無沙汰ね、今日は来てくれてありがとう」

 

憂「和ちゃんも久しぶりー、私の方こそ、今日は招待してくれてありがとうっ」

 

澪「ふふっ……みんな変わってなさそうだなぁ」

 

紬「ええ、本当に……みんな、元気そうね……」

 

律「ああ、エリにいちごに姫子達も来てたみたいだし、あとは…………あいつか」

 

和「そうね……ねえ憂、唯は?」

 

憂「うん、今確認するね」

 

 和の声に合わせ、携帯を手にする憂だったが、それを遮るように梓がスマートフォンの画面を見ながら答える。

 

 

梓「あ、それなんですけど今唯先輩から連絡来ました、もう間もなく到着するそうですよ」

 

和「そう、なら良かったわ」

 

澪「それにしても、梓や憂ちゃんはともかく、まさか菫ちゃんに直ちゃん達まで来てくれるとは思わなかったな」

 

律「ああ……っかし、改めて見るとすげえ顔ぶれだな……同窓会って聞いてたから、てっきり私達の学年だけでやるもんだと思ってたけど」

 

和「それは……さわ子先生の希望でね……学年毎に何度も分けてやるぐらいなら、一度に纏めてやって欲しいって事でね」

 

和「そもそも、同窓会って、何も同じ学年だけで開かなきゃいけないってわけでも無いからね」

 

律「へー、そうなんだ……そういう所もさわちゃんらしいな、あははっ」

 

澪「そういえば、さわ子先生は?」

 

和「先にホールで待ってるって」

 

紬「それじゃあ、あとは唯ちゃんが来るのを待つだけね」

 

 などと言った会話が広げられることしばらく……。

 

 

声「――ごめーーん! みんな、お待たせーーーっっ!!!」

 

和「この声は……」

 

 着実に揃いつつある懐かしの顔ぶれで賑わう会場内に、一際明るい声が響き渡る。

 

 声のする方に皆が振り向くと、そこには、息も絶え絶えに会場へと駆けつける唯の姿が見えた。

 

 

律「へへっ、やっと来たな……」

 

澪「おーい唯! こっちこっち!」

 

紬「唯ちゃん、お元気そうね」

 

梓「唯先輩、お久しぶりです!」

 

唯「みんなごめんね、来る途中で園児のお母さんとばったり会っちゃってさ……」

 

和「そっか、唯、今幼稚園の先生をやってるのよね」

 

唯「うん、私も急いでたんだけど、でも無視するわけにも行かなくって……それで少しお話してたんだ、本当にごめんねぇ」

 

和「ううん、そんなに遅れたわけじゃないんだから、そこまで謝らなくてもいいわよ」

 

 申し訳無さそうな顔で謝る唯を優しくフォローする和だった。

 

 そんな唯を囲む様にして、次々と旧友達から声が投げかけられる。

 

 

律「へへ、これで放課後ティータイムも全員集合だな」

 

澪「ああ、唯、相変わらず元気そうだな」

 

紬「唯ちゃん、お久しぶりっ」

 

唯「うんっ! ありがと。へへ、りっちゃんも、澪ちゃんも、ムギちゃんも元気そうだね」

 

梓「……唯先輩、どうもお久しぶりです」

 

唯「あずにゃ……ううん、梓ちゃんも久しぶりだね」

 

梓「……いいですよ、そんなにかしこまらなくても、また昔みたいにあだ名で呼んで下さい」

 

唯「……うん、ありがと……あずにゃん……へへっ」

 

梓「ふふっ……少し恥ずかしいですけど……でも、凄く懐かしいです……」

 

 懐かしい呼び名に多少恥じらいつつ、それでも照れ笑いを隠さずにいる唯と梓だった。

 

 

紬「ふふっ、やっぱり、いつ見てもいいわねぇ~」

 

菫「お姉ちゃん、見すぎです」

 

律「変わってないな……ムギのやつ」

 

澪「みたいだな……」

 

和「さてと……全員集まったわね、じゃあみんな、ホールに入って、それぞれ名札のあるテーブルに着いてくれるかしら」

 

 出欠表を見つつ、今日招待した全員が集まったことを確認した和が声を上げる。

 

 そして、数多の元生徒達は移動を開始する。

 

 その中に――。

 

 

女性A「あはははっ、ちょっとやだ、みんな変わってなさすぎでしょ!」

 

女性B「そういうあんただって、昔のまんまだよね」

 

女性C「ふふっ、そうだ、まりなちゃんは今何してるの?」

 

まりな「私? うん、今は花咲川のライブハウスで働いてるんだー」

 

女性A「あー、私知ってる! 花咲川って、最近ガールズバンドで盛り上がってるよね?」

 

まりな「うん! 実は来週大きなライブやるんだ、もし良かったら遊びに来てよ」

 

女性A「うんうん! 絶対行くよ~」

 

まりな「ふふっ、ありがとうね」

 

まりな(あははっ、みんな懐かしい……今日は来てよかったなぁ)

 

 ――唯達と同じように、かつての仲間との再会を喜び合う月島まりなの姿もあった。

 

―――

――

 

【同窓会 会場】

 

 会場ホールに入るや否や、全員の目が一つのテーブルに釘付けになる。

 

 彼女達の目線の先には茶髪に染められた髪を腰まで降ろした女性が一人、テーブルに着いて暇を持て余していた。

 

 彼女の名は山中さわ子、唯や梓達の所属していた部の顧問であり、唯達の学年の担任教師でもあった。

 

 

さわ子「やっと来たわね……ふふっ、みんな、待ってたわよ~♪」

 

唯「さわちゃんっ! 久しぶりーーー!」

 

澪「さわ子先生、随分ご機嫌みたいだな」

 

紬「あははは……そうね……なんだか顔も赤くなってるみたい」

 

律「さわちゃんのやつ、まさか……」

 

梓「ええ、どうやら先に一人で始めてたみたいですね」

 

純「あははは……先生らしい」

 

さわ子「も~、待ちくたびれたから先に飲んじゃったじゃないのよ~」

 

律「あんたはアル中か! みんなが来るまで我慢してろっての!」

 

さわ子「いいじゃない、カタいこと言いっこなしよ~♪」

 

 彼女自身もこの日を待ち切れなかったのだろう。最年長の威厳は何処へやら、なんとも締まりのない顔で笑い続けている。

 

 そして、各々が着席を済ませ、和の司会の元、同窓会が開かれようとしていた。

 

―――

――

 

和「では最後に……皆さん、今日はくれぐれも飲みすぎないように気をつけて、楽しい同窓会にしましょう。……先生、乾杯の音頭をお願いします」

 

 ステージにいる和の手からさわ子にマイクが手渡され、僅かに顔を赤くした担任により、宴の幕が開かれる。

 

 

さわ子「はーい、えー……皆さん、今日はよく集まってくれたわね、私も久々にみんなの顔が見れて凄く嬉しいわ」

 

さわ子「……とまぁ、長ったらしい挨拶はこの辺にして、今日はたっくさん飲んで、大いに盛り上がっちゃいましょう!! じゃあみんなグラスを持って――――乾杯っっ!!」

 

 

 ――カンパーイ!!

 

 

 会場中の人々がその手に持ったグラスを交わし、乾杯をする。

 

 

 注がれる酒を美味そうに呷る者や、並べられた高級料理に舌鼓を打つ者、早くも再会の記念撮影をするグループがいたりと、同窓会特有の賑わいが会場中に立ち込める。

 

 旧友との再会に歓喜する者がいる一方で、中には感極まって泣き出してしまう者もいた。

 

 こうして、かつて少女だった彼女達の、およそ10年ぶりの再会を祝う宴が開かれたのだった――。

 

 

律「んっ……んっっ……くはぁぁぁ…………一仕事終わった後の一杯……うんめぇ~~っ!! よし、おっちゃんもう一杯!」

 

澪「ここは居酒屋か……ったく、律、あまり飲みすぎるなよ?」

 

紬「うふふっ……私、またこうしてみんなで集まってお酒を飲むの、夢だったの♪」

 

律「あははっ、ムギのそのフレーズも久々に聞いたなぁー」

 

 

唯「ん~、お酒もごはんもおいしい~……ほんと、来て良かったぁ~」

 

和「ふふっ、そう言ってもらえると、私も企画した甲斐があったわ、みんな、来てくれて本当にありがとうね」

 

梓「はいっ、こちらこそ、和先輩、今日はありがとうございますっ♪」

 

さわ子「みんな変わってなさそうで安心したわぁ、せっかくだし、後で記念に写真でも撮りましょうか」

 

憂「はい、そう思って、私カメラ持ってきたんですよ♪」

 

純「憂、梓、あとでスミーレと直も一緒に撮ろうよ、わかばガールズ再集結って事でさ」

 

梓「うんっ」

 

 ――会場にいる誰もが昔を懐かしみつつ、再会を喜び合っていた。

 

 凛々しいスーツ姿に化粧を施した彼女達のその外見は、立派な女性と呼ぶに相応しい、大人の様相を呈していたが……。

 

 その内面は10年前と変わらない、学生服を身に纏っていた頃の少女と何一つ変わっていなかった。

 

 

唯「えへへっ、あのねー。私、今日は卒アル持ってきたんだぁ~♪」

 

 大きめの紙袋の中から卒業アルバムを取り出し、テーブルの上に広げる唯。

 

 その光景に、次第に周囲から人が集まりだしていく。

 

 

律「うはっ! なっつかしー! なあみんな、見てみようぜ!」

 

紬「わぁぁぁ……みんな若いわねぇ」

 

澪「10年前の写真……今見るとその……は……恥ずかしいな……」

 

律「ぷっ! 唯、この髪型……っっ!」

 

唯「あはははっ、そういえばこの時、前髪切りすぎちゃって変な感じになっちゃってたんだよねー」

 

梓「憂も純も……みんな若いね……って……唯先輩、なんですかこの写真!」

 

唯「えへへへ、ネコ耳姿のあずにゃんの写真、記念に貼っておいたんだ~♪」

 

梓「は、恥ずかしいから取って下さい!!」

 

憂「うふふ……お姉ちゃん、全然変わってないね」

 

和「幼稚園の先生って、歳を取らないのかしらね……」

 

 

純「やだなぁ、私もこの頃は全然イケてたのに、もうすっかりオバサンになっちゃってさ」

 

さわ子「あーら? それは私に対するあてつけかしら……?」

 

純「べ、べべべ別にそんな意味で言ったんじゃ……!」

 

さわ子「問答無用~~! 純ちゃん! 罰としてこのジョッキを飲み干しなさ~い!」

 

純「先生ぇー! それ、アルハラですよぉー!」

 

 

菫「あ~あ、私達も、1年早く生まれていたらなぁ、そしたらお姉ちゃんや先輩達と同じ高校生活送れたのなぁ」

 

直「ふふ、でもこればっかりは仕方ないよ」

 

直「確かに、唯先輩や紬先輩達と一緒の高校生活もきっと楽しかったと思うけど……でも、梓先輩達と過ごした生活の方が、私は楽しかったと思うよ」

 

菫「……うん、それもそっか……ごめん、そうだよね」

 

 

律「しっかし、澪も昔と大して変わってないよな、まぁ澪の場合、元々大人っぽい雰囲気があったってのもあるんだろうけどさ」

 

澪「そういう律だって、落ち着きのないところは10年前どころか、子供の頃と本っ当に変わってないよな……むしろ加速してるんじゃないか?」

 

律「おーおー言ってくれるじゃん。澪だって昔に比べりゃ随分オトナの色気出しちゃってさ~……さては彼氏でも出来たか?」

 

澪「……っ、そ、そういうところを言ってるんだっ!」

 

紬「……いいわねぇ」

 

菫「ですからお姉ちゃん、見すぎですって」

 

 ――皆が皆、卒業アルバムを開いては高校時代の思い出話に花を咲かせていた。

 

 それらの他にも彼女達の話題は尽きる事はなく、現在の近況報告に仕事の話……既に何人かは済ませている結婚生活のことなど多岐に及び、少女へと戻りつつある彼女達の話は、更に膨らんでいくのであった。

 

 

純「スミーレに直も昔と変わらず元気そうだね、今は何してるの?」

 

菫「はい、私、現在は紬お嬢様の使用人と、秘書をやってます」

 

直「私は……今フリーで作曲の仕事を……最近になって、ようやく仕事の依頼も来るようになって来たんですよ」

 

純「へ~、みんな凄いなぁ……私なんて小さな会社の営業だよ……」

 

 そうした純の話を皮切りに、話題はそれぞれの仕事の話へと移っていく。

 

 それぞれが今どんな仕事に就いているのかを知り、ある者は驚愕し、またある者は他業種の話を興味津々に聞いていた。

 

 

さわ子「……えっと、澪ちゃんがファンシー雑貨の制作、りっちゃんがアイドルのマネージャー、ムギちゃんは一流企業の役員に……唯ちゃんは幼稚園の先生、梓ちゃんはプロのジャズメンか、ほんと、10年前じゃ信じられない話よねぇ」

 

律「まー、10年前は10年後のことなんて想像もできなかったもんなぁ」

 

唯「あ、そうだりっちゃん……実はりっちゃんに折り入ってお願いがあるんだけど……」

 

 もじもじとした素振りで唯が律に問いかける。

 

 唯のその仕草に僅かながら違和感を感じつつも、律は言葉を返していた。

 

 

律「ん? 唯、改まってどーしたん?」

 

唯「あの、今度パスパレの丸山彩ちゃんのサインってもらえないかなぁ、私、ずっと前から彩ちゃんのファンなんだー」

 

律「ほ~、唯は彩ちゃん推しか~」

 

唯「うんっ! 研修生の頃から応援してるんだ、すっごくがんばり屋さんだよね」

 

律「……ありがとな、唯にそう言ってもらえて、あの子もきっと喜ぶと思うよ」

 

 身近な所に自身の監督するアイドルのファンがいると知り、嬉しさが込み上げる律。

 

 だが……。

 

 

律「でもだーめ、サインが欲しかったらちゃんとCD買ってサイン会に来てくれなきゃな、いくら友達だからって贔屓はしないぞー」

 

 ばっさりと、律は唯の願いを断った。

 

 

唯「ちぇー、やっぱりダメかぁ」

 

律「そこはちゃんと公平にしなきゃな」

 

 プロを監督する者として、先輩として。決して彼女達の安売りだけはしない。

 

 それが律のマネージャーとしての矜持だった。

 

 

さわ子「ふふっ、唯ちゃん、残念だったわね~」

 

唯「う~……あそうだ、ねえさわちゃん」

 

さわ子「ん?」

 

唯「さわちゃんは、今も先生やってるの?」

 

さわ子「ええ、変わらずね……っても、最近はあなた達ほど手のかかる生徒も減っちゃったけどね」

 

 グラスの中身を飲み干しつつ、何処か寂しそうな眼でさわ子は答える。

 

 

律「え~、あたしらってそんな手のかかる生徒だったっけ?」

 

さわ子「そりゃーもう、凄くかかったわよ~、りっちゃんと唯ちゃんは特にね」

 

唯「あはははっ、そういえば、私よくりっちゃんと二人で職員室でお説教されてたもんね」

 

律「そういえばそんな事もあったっけな……あー、懐かしいなぁ」

 

 過去を振り返りながら、グラスに注がれる琥珀色の液体を飲み干す律。

 

 その声に反応し、その場の各々が過去を振り返っていた。

 

 

紬「ええ……本当に……懐かしいわ……」

 

律「ああ、毎日飽きもせず、律儀に学校行って……勉強して、みんなで喋って……」

 

澪「そして放課後は決まって部室に集まって部活して……」

 

梓「でも結局、練習やらない日のほうが多かったですよね……」

 

唯「えへへ、ムギちゃんの淹れてくれるお茶とお菓子、美味かったよね~」

 

 

梓「はいっ……でもまさか、唯先輩達が卒業してからもそれが続くとは思わなかったけどね」

 

純「うんうん、スミーレのお茶と憂のお菓子、本当に美味しかったよね」

 

菫「結局、私達が卒業するまでティーセットは部室に残ったままでしたね」

 

憂「放課後にみんなでお茶した後に練習するの、私、一番の楽しみだったんだぁ」

 

直「……ええ、どれも良い思い出です」

 

 いつしか話題は高校時代の話で持ちきりになり……その場にいる全員が、ある一つの想いを胸中に抱き始めていた。

 

 

律(……あ~あ、昔の話してたら思い出しちまったよ、この感じ)

 

澪(もし、出来ることなら……)

 

紬(またもう一度……)

 

唯(……みんなで演奏)

 

梓(できたら……な)

 

 

 ――あの頃に戻って、このメンバーで演奏がしたい。

 

 それはその場の9人が共通して抱く、淡い希望だった。

 

 言うのは簡単だが、実際問題、日々の生活に追われる中でその時間を作り出すのがどれほど大変か……その現実の無情さが、彼女達の希望に影を宿す。

 

 大人になってしまい、時間を自由には使えなくなってしまったからこそ分かる、“時間”というものの儚さ。

 

 若かりし頃、湯水の如く消費した時間の有り難みを、今この時になって彼女達は実感していたのだった――。

 

 

さわ子「ふふふ、みんな、今になってやっと時間の有難みに気付いたってところかしらね」

 

 そんな彼女達の憂鬱を察してか、優しい顔でさわ子は声を投げかける。

 

 

律「まぁ、こればっかは後悔してもしょうがないって思うけど……なぁ」

 

唯「うん、大人になった時、こんな気持ちになるって知ってたら、もっとみんなと色んな事、したかったって思っちゃうよね」

 

さわ子「それが大人になるってことよ……実際私も、今のあなた達ぐらいの歳の頃、あなた達と同じ気持ちだったからね」

 

律「さわちゃん……」

 

さわ子「……でも、人生ってほんと、何があるか分からないからね~」

 

 片手で別のグラスを呷りつつ、さわ子は続ける。

 

 

さわ子「みんな覚えてる? 私のお友達の結婚式の打ち上げのこと」

 

梓「そういえば、ありましたね……」

 

澪「ああ、あったあった」

 

律「みんなでやたらとトゲトゲしたメイクして……今思えば、ホント似合ってなかったよなぁ~」

 

 

さわ子「あの時唯ちゃん達、紀美にそそのかされて、慣れない衣装着て、慣れない曲でライブやったでしょ」

 

唯「うん、確か……それを見かねた先生がステージに上がって……私達の先輩の、デスデビルのライブが始まったんだよね」

 

紬「私達、あの時、初めて先生の生歌を聴いたんですよね」

 

澪「あの時のさわ子先生、少し怖かったけど、でも……とても格好良かったです」

 

 皆の中にかつての記憶が蘇る。

 

 それは、高校3年生の夏の日のこと。

 

 さわ子の旧友に誘われ、サプライズとして出演した結婚式の打ち上げライブ。

 

 そこで行われた唯達の演奏の拙さにさわ子……否、キャサリンは再びマイクを握り……。

 

 

 ――『今、ホンモノってのを見せてやる!!!』

 

 

 キャサリンの咆哮を皮切りに、彼女がかつて所属していたヘヴィメタバンド、“DEATH DEVIL”によるライブは盛大な盛り上がりを見せた。

 

 DEATH DEVILのライブの影響は、当時の唯達にも確かな影響を与え……それは彼女達の中に『いつかは自分達も大人になる』という意識を強く芽生えさせたのだった――。

 

 

さわ子「あの時はまさか、昔のメンバーと歌うことになるなんて思いもしなかったわ……ほんと、人生、何がきっかけになるか分からないものよね」

 

紬「さわ子先生……」

 

さわ子「ふふふっ、だからまぁ……無理だなんて思わなくても良いんじゃないの? きっかけなんて、案外すぐ近くにあると思うし……ね」

 

紬「はい……きっとそうだと……思います」

 

 優しく諭すさわ子の声にそれぞれが頷いていた。

 

 

さわ子「さ、堅苦しい話はこのぐらいにして、今日はまだまだ飲むわよ~~♪ 唯ちゃん、りっちゃん! ほら澪ちゃんも、お酒が進んでないんじゃない?」

 

唯「え~~、それ、アルハラですよぉ先生~」

 

さわ子「甘えたこと言わないの~」

 

律「へへっ……おうよ! 厳しい芸能界の縦社会で鍛えた肝臓、見せてやんぜっ」

 

澪「ぅぅ……わ、私、頭痛くなってきた……」

 

梓「ふふっ、先生、本当に楽しそうですね……」

 

紬「ええ……さわ子先生も、私達とこうしてお酒を飲み合うの、凄く楽しみにしてくれてたのよね……」

 

 真面目な顔から一変し、飲みの空気に気持ちを切り替える先輩。

 

 そんな先輩の意を汲むように、顔をしかめつつも相次いで酒を呷る後輩達だった。

 

 

 また、昔のように皆で演奏が出来る日が来るかも知れない。

 

 それがいつになるのかは分からないが、そう遠くないといいなと。

 

 そんな想いが、彼女達の心に宿る。

 

 

 ……そして、その想いは、意外な形で実現することを、この時の彼女達はまだ、知る由もなかった――。

 

―――

――

 

 宴の開始から既に長い時間が経過し、残り時間も短くなってきた頃だった。

 

 既にホール内には二次会に向け、次の飲み場の手配をする者や、明日も予定があると、早めに会場を後にする者が現れたりと、若干の慌ただしさが見えて来た時。

 

 唯達の姿を見かけ、“彼女”は声をかけていた。

 

 

まりな「やっほー、お久しぶり、みんな元気にしてた?」

 

 様々な話で花を咲かせる唯達の元に突如、声が投げかけられる。

 

 声の主……月島まりなの姿を見て、唯達は懐かしさのあまり、歓喜の声を上げていた。

 

 

唯「わぁ~、まりなちゃん! まりなちゃんも来てたんだねっ」

 

澪「どうも月島さん、久しぶり」

 

梓「えっと、すみません、こちらの方は……?」

 

紬「月島まりなちゃん、私達の隣のクラスで、よく移動教室とかで一緒だったのよ」

 

梓「あぁ、先輩たちの同級生の方なんですね」

 

まりな「みんな懐かしいねー、お変わりなさそうで良かったよ」

 

澪「うんっ、月島さんも変わりなさそうだね」

 

まりな「えへへ、まぁね~」

 

律「よー、まりな、久しぶり~」

 

まりな「やぁ、りっちゃんも、先月ぶりだねぇ」

 

律「ああ、まりなんとこ、いつもあの子達が世話になってるな、本当にありがと」

 

まりな「ううん、とんでもない、パスパレのみんなにはいつも助けてもらってるよ、こちらこそありがとうね」

 

唯「……え、まりなちゃん、パスパレのみんなと知り合いなの?」

 

澪「っていうか、先月ぶりって、律、月島さんとよく会ってるんだ?」

 

律「あ~、いや、あの子達のホーム、まりなんトコの、花咲川のライブハウスなんだよ」

 

 意外と言った表情でまりなを見る唯達だった。

 

 それもその筈、まりなが務めるライブハウス、CiRCLEには、今や花咲川や羽丘を中心に多くのガールズバンドが集ってライブを行っている。

 

 それは律の監督しているPastel*Palettesも例外ではなく、アイドル活動も含め、バンドとしてのパスパレのライブもCiRCLEでは頻繁に行われていた。

 

 その伝手もあった事で律も何度かCiRCLEに顔を出し、まりなとは仕事の上でも交流を深めていたのだ。

 

 

律「いやぁ、最初CiRCLEに行った時はびっくりしたよ、まさかまりなが仕事してるとは思わなくってさ」

 

まりな「うんうん、私もだよ。りっちゃんがパスパレのマネージャーさんだって聞いた時はびっくりしちゃってさ」

 

律「ほんと、世間って狭いもんだよなぁ」

 

まりな「あははは、うん、そうだねぇ~」

 

 互いに思うところは同じなのか、不思議な縁に笑い合う律とまりなだった。

 

 

唯「知らなかったなぁ……パスパレのみんな、花咲川でライブやってたんだね」

 

唯「……ん? あれ、でも花咲川って……」

 

澪「花咲川か……私も今日仕事で行ってたんだ、道に迷って困ってた私を、助けてくれた女の子達がいて……」

 

澪「そういえば……その子達、バンドやってるって言ってたっけ」

 

唯「私も、今日、花咲川の高校の子たちが職場見学に来てくれてさ」

 

唯「その子達も、バンドやってるんだって言ってたよ」

 

紬(そういえば……こころちゃん、花咲川の高校に通ってるのよね)

 

梓(湊さん、確かお住まいは花咲川の近くだって言ってたっけ……)

 

 それぞれが今日あったことを振り返る。

 

 それと同時に皆、この宴の前に偶然巡り合えた、眩いばかりの輝きを持つ少女達のことを思い出していた――。

 

 

律「まりなも高校の頃、バンドやってたんだよな」

 

梓「え、そうだったんですか?」

 

まりな「うん、1年生の頃に一度、軽音部に見学に行ったこともあったんだけどね」

 

澪「月島さんが入ってくれたら、きっと軽音部ももっと盛り上がったんだけどなぁ……結局、入部が叶わなかったのは残念だったよ」

 

まりな「まぁ……ほら、あの頃はりっちゃん達4人、凄く息ぴったりでバンドやってたからさ」

 

純「そういえば、先輩達の中に入れる自信がないって理由で入部を断ってた子、何人かいたっけ……」

 

憂「あ、私も聞いたことあるよ、その話」

 

まりな「うん、それに丁度その頃、私も外バンでバンド組むようになったからね」

 

まりな「きっと、軽音部に入ってみんなとバンドやるのも楽しかったと思うけど……でも私は、外バンでバンド組めたのも良かったって思うんだ」

 

唯「まりなちゃん……」

 

まりな「その時の経験がきっかけで、今のお仕事にする事もできた訳だしさ」

 

まりな「優秀なスタッフにも囲まれてお仕事ができて、私、今すごく幸せだよ♪」

 

 はにかみつつ、真っ直ぐな瞳で言い切るまりなだった。

 

 

澪「月島さん……」

 

律「ははは、さわちゃんの言う通り、人生何がきっかけになるか分からないもんだなぁ」

 

まりな「ウチでライブをやってくれるみんなのおかげで、花咲川も今すごく盛り上がっててね……」

 

 昔組んでいたバンドのことを振り返りつつ、まりなは今を見つめ直す。

 

 ――その時。

 

 

まりな(……あれ、そういえば)

 

 皆と楽しく談笑をするまりなの頭の片隅に、今日あったことが思い起こされる。

 

 来週開かれる大型ライブ、『ガールズバンドパーティー』の事や、怪我で出場を辞退せざるを得なくなったスペシャルゲストの事と……。

 

 

 ――ガールズバンドパーティーに参加できる、スペシャルゲストに見合うバンド探しの事。

 

 

 Poppin'PartyやRoselia達と同等……いや、彼女達以上の実力を持ち、高校時代、既に幾つものライブを成功させてきたガールズバンド。

 

 それは、眼前にいるこの5人がまさにそうだ。

 

 

まりな(もしかして……ううん、きっと、りっちゃん達以上に条件に当てはめられるバンドなんて、いないよね……)

 

まりな「あのさ、放課後ティータイムのみんなに、その……」

 

一同「ん?」

 

 突然、こんなことを言い出して迷惑じゃないだろうか、そんな心配がまりなの頭を過る……が、藁にもすがらなければならないこの状況だ。四の五のなんて言っていられる余裕なんて無い。

 

 刹那の間の後、意を決し……真顔でまりなは5人に話しかける。

 

 

まりな「―――折り入って、お願いしたいことがあるんだけど……、聞いてくれないかな」

 

 

 まりなの言葉をきっかけに、運命は大きく動き出す。

 

 それは、放課後の復活……その兆しとも呼べる内容だった―――。

この物語で特に評価できる点があれば教えて下さい

  • 大人になったけいおんキャラを描いた所
  • 作品の枠を超えたキャラの掛け合い
  • 随所で見られる原作小説とゲームネタ
  • ライブの選曲
  • 『輝き』というテーマ
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