【バンドリ×けいおん】唯「バンドリ?」香澄「けいおん?」   作:キラ@創作垢

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 ――お祭りの準備は、日を追う毎にその賑やかさを盛り上げていきました。

 それと並行して、私達はみんなで学校に通って、放課後にライブの練習をして……。

 毎日が慌ただしくて、すっごく楽しくて、ドキドキの毎日でした。

 もちろん、それは私だけじゃなく、お祭りに参加するみんなの顔もそう、とてもキラキラして……ドキドキしていました。


 その頃の私達はまだ、知りませんでした。

 もうすぐ始まるそのお祭りで、一番のキラキラとドキドキに会えるなんて……きっと、誰にも想像できなかったと思います――。


#5.放課後と五色の輝き

 花咲川、羽丘近郊で活動するガールズバンドにとっての一大イベント、“ガールズバンドパーティー”

 

 そのライブに遠く、桜が丘より放課後ティータイムのゲスト出演が決まり、翌日から彼女達は後輩達の力を借りつつも仕事の合間を縫い、自主練を重ねては揃って音合わせをし、各々が練習を行っていた。

 

 無論、ライブに向けて奮闘しているのは彼女達だけではない。主役の少女達を含め、出演する全バンドがガールズバンドパーティーに向け、その準備に取り掛かっていた。

 

 自分達の歌や演奏の確認に楽器の調整、MCの段取り、演出の仕上げ、衣装の最終チェックなど、大小様々な確認を済ませつつ。皆が皆、その日を待ち望んでおり……。

 

 

 各バンド共に、ライブの準備は、既に大詰めの段階へと差し掛かっていた――。

 

 

-ライブ5日前 Pastel*Palettes-

 

【某スタジオ】

 

 アイドル事務所から歩いて少しの所にあるスタジオ。

 

 そこではガールズバンドパーティーのリハーサルと並行して近日行われるアイドルコンサート、その両イベントに向けて、Pastel*Palettesの本格的な最終調整が行われていた。

 

 音合わせを終え、各々がしばしの休憩を取っていた時の事――。

 

 

彩「ライブの衣装、すっごく可愛い感じになってたね」

 

千聖「ええ、彩ちゃんのMCもあとは自主練で十分行けそうだし、みんな本当に頑張ったと思うわ」

 

麻弥「はい、ガールズバンドパーティーのスペシャルゲストの件もなんとかなったってまりなさんから連絡ありましたから、いよいよですねっ」

 

イヴ「ライブのゲスト……一体どんな人達が来てくれるのか、楽しみですっ♪」

 

日菜「うんうん、ルンっ♪って来る感じの人達だといいよね~♪」

 

千聖「ええ、そのゲストの人達に負けないためにも、私達ももっと練習をしておかなきゃね」

 

イヴ「はいっ! あの、みなさんっ、休憩が終わったら最後にもう一度演奏しませんか?」

 

麻弥「ええ、ジブンも少し確認したいところがあったので、是非お願いしたいと思ってたところです」

 

日菜「私は大丈夫だよー、やっぱみんなと練習するのって、こう、るるるんっ♪ って感じがするよね♪」

 

千聖「ふふふっ、毎回思うのだけれど……日菜ちゃんの『るるるんっ♪』には、一体何通りの意味があるのかしら?」

 

麻弥「あはははは……ええと、ジブンの知る限りでは、既に100通り以上の意味があったと思いますが……」

 

 リハもどうにか無事に終えられ、緊張から開放された5人が和やかに談笑をしていたその時。

 

 

律「よーっす、みんなやってっかー?」

 

 スタジオの扉が開かれ、律が姿を見せていた。

 

 

彩「律さん、お疲れ様です!」

 

一同「お疲れ様です!」

 

律「今休憩中か……じゃあちょうどいいや。ほい、さっきそこでスタッフさんにジュースとお菓子貰ってきたから、みんなで好きに食べていいよ」

 

彩「あ、ありがとうございますっ!」

 

麻弥「律さん、ありがとうございますっ!」

 

 各々が律に一礼し、好みのジュースと菓子類を開けては食べあっていた。

 

 そんな彼女達に向け、スケジュール帳を手に律は優しい声で続ける。

 

 

律「それと、食べながらでいいから聞いて欲しいんだけど。イヴちゃん、日菜ちゃん。再来月、FMラジオでリクエスト番組のゲスト出演決まったからよろしくね~」

 

イヴ「はい! ありがとうございます!」

 

日菜「はーい、律さん、いつもありがとうございまーす♪」

 

律「あと彩ちゃんと千聖ちゃん、麻弥ちゃん……おめでとう、来年やるドラマのオーディションの枠、3人分だけだけど、やっと取れたよ」

 

 にこやかに親指を立てながら、律は言い放つ。

 

 突然のその言葉に一瞬、思考が止まっていた3人だったが、すぐにその言葉の意味を理解する。

 

 彼女達の顔が驚きの表情から一変し、歓喜の色に染め上げられていた。

 

 

彩「……あ……あ……ありがとうございます! 私……精一杯頑張ります!!」

 

麻弥「ありがとうございます! オーディションに受かるよう、ジブンも全力で頑張ってみます!」

 

千聖「律さん、ありがとうございます! 必ず受かるように頑張りますねっ」

 

イヴ「アヤさん! マヤさん! チサトさん、おめでとうございますっ!」

 

日菜「みんなおめでとうー! オーディション、頑張ってね♪」

 

律「詳しいことはまた後日伝えるから、みんな根詰めすぎないように頑張ってね」

 

一同「はい!!」

 

 互いにハイタッチを決め、感激を顕にして喜び合う5人だった。

 

 そんな彼女達の表情を見て、律は以前社長に言った言葉を思い返し、改めて確信する。

 

 

律(……やっぱりパスパレは5人でいなきゃな……個人の仕事も大事だけど、それでも……なるべく全員一緒になれるよう上手く調整してやらないとな……)

 

 それは律の営業の功績か、パスパレの日頃の努力の賜物か、あるいはその両方か……着実にパスパレの全員が己の夢に、目標に向かい、その一歩を踏み締めていた。

 

 その一歩は、決して彼女達一人だけでは踏み出せなかった一歩……パスパレの5人と律が共に支え合う事で踏み出せた、大きな一歩だった。

 

 

日菜「それで律さん、何のドラマのオーディションなの?」

 

律「うん、来年の春頃にやる学園ドラマのオーディションだよ、ほら、あの有名少女漫画の実写化のさ」

 

彩「えっ? あの人気の俳優さん達が大勢出てるドラマですか?」

 

律「そそ、それの続編でさ……これでうまいこと主演掴み取れたら、パスパレも一気に有名になってくよなぁ」

 

彩「あのシリーズ、私も毎週見てました……そっか……あのドラマに……私達が……」

 

 彩はごくりと唾を飲み込み、自分がとても大きな舞台に立とうとしていると言うことを再認識する。

 

 そんな彩と同じように、オーディションへの参加が決まった麻弥と千聖もまた、緊張に顔を強張らせていた。

 

 

彩「オーディション……が、がんばらないと……もちろん、ライブも成功させなきゃ……!」

 

麻弥「ジブンがあの人気ドラマに……ですか……オーディション、今から緊張しますね……」

 

千聖「ええ、だけど……これも夢を掴む為ですもの……頑張って受かりたいわね……」

 

律(あちゃー、朗報だと思って話しては見たものの、これじゃ却って緊張させちゃったかな……)

 

 自分の言葉がライブ前の彼女達……特に彩に対して不要な緊張を与えてしまったことを律は反省する。

 

 この緊張をどうにか和まそうと思った矢先、一つの方法が律の頭の中に浮かび上がり……。

 

 その思い付きににやりと口角を上げつつ、悪戯をする子供のような顔で律は彩達にそっと呟くのであった。

 

 

律「……ひょっとしたら、キスシーンとかもあったりなんかして……」

 

彩「えええ?? き、キキキキキキス……ですか!?!?!?」

 

麻弥「そ、そそそそそそんな!!!! ジブンなんかがその……あわわわわわわわわわ……!!!」

 

イヴ「そ、そんなっ! フシダラですっ! ハレンチですよっ!」

 

日菜「うわぁ~、私、すっごく楽しみになってきた♪」

 

千聖「………………」

 

 律の言葉に顔を紅潮させ、動揺の声を上げる2人だったが、女優歴の長い千聖だけは律の嘘を即座に見破っていた。

 

 

千聖「律さん、あまり二人をからかわないで下さい……大丈夫よ彩ちゃん、麻弥ちゃん……未成年の私たちにそんな過激なシーン、やらせる筈がないでしょ?」

 

律「ちぇ、バレたか」

 

彩「えっ!? ……あ、あははははははっっっ……そ、それもそうだよね……あ~~……びっくりしたぁ」

 

麻弥「も~~~~! 律さんも人が悪いですよぉ! ジブン……本気で信じる所でしたよぉー!!」

 

律「わーるかったって! 謝るから、そんなに怒らないでよ~」

 

 膨れる麻弥と涙目で座り込む彩に向け、律は両手を合わせて許しを乞いていた。

 

 

イヴ「ドッキリだったんですね……よかったです……」

 

日菜「な~んだ。キス、しないんだ」

 

千聖「……日菜ちゃんは何をそんなに残念がってるのかしらね…………」

 

―――

――

 

彩「うぅぅ……でも、ドラマの出演かぁ……嬉しいけど、やっぱり緊張するよ~」

 

律「まだ決まったわけじゃないけどなー、そのためにも、しっかりオーディションに合格しなきゃね」

 

日菜「うんうん。それにさ、映画の撮影なら前にみんなでやったし、もうお芝居なら大丈夫なんじゃない?」

 

千聖「あれはお芝居と言っても、ほとんど本人役だったからね……ドラマでやる演技は、映画の時の演技とは全然勝手が違うわよ」

 

麻弥「あ、ジブンにもそれはなんとなく分かります」

 

千聖「ドラマの演技は、それこそ脚本家さんや監督のイメージ通りの役をカメラの前で演じなければいけないから、かなり大変よ」

 

千聖「もちろん共演する役者さんや、プロの先輩方も大勢いらっしゃってるし、当然、スタッフ全員の予定だってあるから……結構大変なのよ」

 

律「さすが千聖ちゃん、長く女優やってただけのことはあるな……」

 

 千聖の言葉に感心しつつも、律は再度緊張している彩を励ますために言葉を投げ掛けていた。

 

 

律「ふふっ……大丈夫だよ彩ちゃん。こういう日のために、今まで頑張って演技のレッスン受けてきたんだろ? もっと自分に自信持ちなって」

 

彩「律さん…………」

 

彩(……うん……律さんの言う通りだよね、この時のために今まで頑張ってきたんだもん……こんな事で負けてなんかいられないよね……)

 

彩「……はいっ! 律さん、ありがとうございますっ♪」

 

 先程とは違う、律の素直な励ましに彩は緊張も解けたのか、彩は笑顔で返していた。

 

 

律「……あーそうだ。ドラマと言えばもう一つ話を聞いてさ、千聖ちゃん」

 

千聖「……はい?」

 

律「『はぐれ剣客人情伝』って昔あったでしょ、今度あれのリメイクもやるって話があるんだけど……千聖ちゃん、今度は子役じゃなくて主役でやってみない? 良かったら私、上に話してみるけど」

 

千聖「ま、また懐かしい作品ですね……ええ、ありがとうございます、喜んで受けさせていただきます!」

 

 律の声に照れ臭いような顔で千聖は俯く。

 

 それもその筈、律が口にしたそのドラマは千聖にとって縁の深い作品であり、デビュー間もない子役時代に一度だけ出演した事のある時代劇だった。

 

 

イヴ「リツさんっ! 私も時代劇、出てみたいです♪ 私のブシドーを、日本中の皆さんにお披露目したいです♪」

 

律「あははは……ま~、モノが時代劇だからな……うん、今度、制作会社に行った時にでも話してみるよ」

 

イヴ「はい♪ よろしくお願いします♪」

 

 内心難しいだろうとは思いつつ、それでもネガティブな事は言わぬよう、律はイヴに返していた。

 

 イヴの売り込みをどうしようかと頭の中で組み立てていた時、ふと壁にかけてある時計が目に止まる。

 

 時刻は既に、律がここに来てから1時間近くの時が過ぎようとしていた。

 

 

律「さてと……やべ、話し込んでたら結構時間経っちゃってたな……みんな、練習はもう良いの?」

 

麻弥「そうでした、あの律さん……もし宜しければ、少しドラムの事で教えて頂きたいところがありまして……」

 

律「うん、いいよー、まだ時間もあるし、私もちょうどドラム叩きたいなって思ってたところだから、せっかくだしみんなに手本を見せてやろっか」

 

麻弥「いいんですか!? あ、ありがとうございます!」

 

日菜「律さんのドラムって、本場のドラマーって感じがしてかっこいいよね、私好きだなー♪」

 

彩「うんっ♪ 私も……律さんのドラムって、本当にプロの人の演奏って感じがするよね」

 

律「ははははっ、みんなありがとねー。さてと……んじゃ、田井中大先輩によるドラムテクニック、とくとご覧あれっ! なんてな♪」

 

麻弥「はい! よろしくお願いします!」

 

 にこやかな笑顔でスティックを握り、律は意気揚々とドラムを叩く。

 

 複雑なリズム、ビートも容易くこなすその姿を、パスパレの全員が尊敬の眼差しで見ていた。

 

 そしてしばらくの間、律のライブの自主練も兼ねたドラムパフォーマンスは、その夢を追う輝きを持つ少女達の視線を一身に受けつつ、続けられるのだった――。

 

 

―――

――

 

-ライブ4日前 Afterglow-

 

【羽沢珈琲店】

 

 学校が終わってからの事、課題の片付けや各自委員会に部活など、高校生としての本分にその日の少女達は追われていた。

 

 瞬く間に時間は過ぎ、夕日が街を染め上げる頃……同じく夕日の名を冠する彼女達……Afterglowの5人は、貸切状態となった馴染みの喫茶店で課題の消化に奮闘していたのだった――。

 

 

巴「今日も疲れたな~、進級してから、勉強の量明らかに増えたよなぁ」

 

蘭「そうだね……課題も増えてきたし、今日は練習は一旦休んで、課題の片付けに回そっか」

 

つぐみ「うん、今日はお店も早く閉めるみたいだから、みんなでゆっくり勉強できるね」

 

ひまり「ほら、モカも座って課題やろうよ~」

 

モカ「ん~~、モカちゃんはもう終わってるよ~」

 

 ここに来る途中で購入した文庫本のページを捲りながら、モカは言葉を返す。

 

 

巴「だったらちょっと教えてくれないか? マンガはそれからでも大丈夫だろ?」

 

モカ「トモちんは分かってないなぁ~、これはマンガだけどマンガじゃないんだよ~」

 

蘭「え……でもその表紙のキャラクター、モカがたまに見てるアニメのキャラでしょ?」

 

モカ「ふっふっふー、原作は一緒だけど、これはちょっと違うんだよねぇー」

 

 モカが赤いギターを手にした少女のイラストが描かれた文庫本の表紙を見せながら蘭に返す。

 

 モカが今から読もうとしていた本、それは、モカが毎週見ているアニメ作品の原作小説だった。

 

 

つぐみ「そういえば、最近多いよね、マンガとかアニメの小説ってさ」

 

巴「あこもそういう小説……ライトノベルっていうんだっけ? 結構好きなんだけど……アタシはダメだぁ、文字が多いと頭ん中爆発しそうになるんだよなぁ……やっぱ、絵でスカッと見たいタイプだからな~」

 

蘭「漫画の小説か……それなら私も読めるかも……」

 

ひまり「まぁまぁ……その話は一旦置いといて、まずは課題の片付けやっちゃおうよ」

 

巴「ああ、そうだな……ほら、モカもここ座って、課題の片付け手伝ってくれ」

 

モカ「は~い」

 

 巴の言葉に従い、モカはテーブルに着く。

 

 それからしばらく、5人は互いに助け合いつつも、課題の処理に奮闘するのであった。

 

 

-数時間後-

 

巴「ん~~~~……なんとかキリの良いとこまで片付けられたな……みんなはどうだ?」

 

 背伸びをしながら巴は皆に問いかける

 

 その言葉に合わせ、各々が声を返していた。

 

 皆、巴と同じように丁度終わりの目処が着いていたようだ。

 

 

つぐみ「うん、私も、あとは自分でできそうだよ」

 

ひまり「蘭、モカ、ありがとね、あとは自分でやってみるよ♪」

 

蘭「ううん、私もひまりのお陰で助かったよ、ありがと」

 

モカ「いいえー、このお礼はひーちゃんの手作りお菓子でねー」

 

ひまり「うんっ、まっかせて♪」

 

モカ「さてさて……それじゃーモカちゃんはさっきの続きを~♪」

 

 筆記具を片付けるや否や、すぐさま読書の続きに取り掛かるモカだった。

 

 

モカ「お~、そっか~、この子、あの時はそーゆー気持ちだったんだ~、へ~~」 

 

巴「ふふっ、モカのやつ、楽しそうに読んでるな……」

 

蘭「私も、後で借りて読んでみようかな」

 

ひまり「でも、元は同じ作品なんでしょ? アニメと小説ってそんなに違うものなの?」

 

モカ「ぜ~んぜん違うよ~、小説だとマンガやアニメとは違って各キャラクターの心理描写も細かく丁寧に描かれてるしー、なんといっても情景が自分でイメージできるのがいいんだよね~」

 

モカ「それに、これはアニメとは設定が全然違ってるから、これはこれで別のお話って感じがしておもしろいよ~♪」

 

巴「へ~、そう言うものなのか」

 

 モカの言葉に感心したような素振りで巴は返す。

 

 巴と同じように、蘭もまた、モカの言葉に同意の意を示していた。

 

 

蘭「情景が自分で想像できる……か、うん、モカの言ってること分かるかも。私も小説読む時、結構イメージとか頭の中に浮かびながら入ってくるんだ」

 

ひまり「あ、だからなのかな? 蘭の書く歌詞って、割とイメージしやすいんだよね」

 

巴「ああ……きっと、読んだり書いたりしてるのに慣れてるから、アタシにも蘭の歌詞が伝わりやすいのかも知れないな」

 

ひまり「蘭って、実は小説家になれる才能があったりして……♪」

 

蘭「やめてよ……そんな訳ないでしょ」

 

 照れるようにそっぽを向きながら、蘭は返していた。

 

 

巴「はははっ、前にモカとつぐもマンガ描いてたし、今度は蘭が小説を書くってのも面白いかもな」

 

ひまり「うんっ♪ ねえねえ蘭、今度小説の新人賞狙ってみようよ、結構良いセン行くかもよ?」

 

蘭「やらないよ……小説書いてる暇があったら、一つでも多く歌詞書きたいしさ」

 

つぐみ「みんな課題お疲れ様ー、はい、どうぞ、紅茶淹れてみたよ」

 

蘭「うん。つぐ、ありがと」

 

モカ「おー、ありがと~……う~ん、今日もツグってる味がする~♪」

 

つぐみ「ふふっ、ありがとね」

 

 つぐみの淹れてくれた紅茶を口に含み、満足そうな顔で返すモカ。

 

 そんなモカの顔を見て、つぐみもまた笑顔で返していた。

 

 

巴「そういや、今モカの読んでるマンガ……いや、小説か、どんな話なんだっけ?」

 

ひまり「ええっと確か……女子高生ガールズバンドが主役の青春物語だと思ったけど」

 

つぐみ「笑いがあって感動もあって……私もこの子達みたいに頑張りたいなって思う所、結構あったんだぁ」

 

巴「へ~、なんだかアタシ達みたいな話だな……ちょっと興味湧いてきたよ、一体どんな話なんだ?」

 

 巴に振られ、その物語のあらすじを、皆にも伝わるようにモカは簡単に説明する。

 

 

モカ「うん、小さい頃、歌がとても好きだった、一人の女の子がいたんだ~」

 

 

 ――しかしその少女は幼い頃、その大好きな歌を馬鹿にされて以来、自分や歌に対して臆病になってしまい、一人寂しい高校生活を送っていた。

 

 そんな主人公の少女がある日、星の導きにより、一つの赤いギターを見つけた事をきっかけに物語は動き出す。

 

 

 音楽への情熱を取り戻し、大好きな歌を歌うため、バンドを結成するために邁進する少女。

 

 様々な困難を乗り越え、音楽にひたむきに、一生懸命に向き合う主人公の姿に感化され、次々とバンドメンバーが集まり、遂にそのバンドは結成され、少女達は更なる夢を追い続ける……という内容だった。

 

 

モカ「蘭も読んでみるー? ライブのシーン、結構面白いよ~」

 

蘭「……うん、ちょっと見てみるよ」

 

 モカから文庫本を手渡され、蘭は栞の挟んであるページを開く。

 

 そのページは、その物語の見せ場の一つ、ライブのシーンだった。

 

 少女達の音楽に対するひたむきな姿勢にどこか感情移入しつつ、蘭は一心に物語を読み進めていた。

 

 

蘭「…………」

 

 そしてしばらく、蘭はページを閉じ、文庫本をモカに手渡しながら口を開く。

 

 

蘭「…………うん、良かったと思う。モカ、ありがと」

 

モカ「いいえ~、どう、面白かったでしょ?」

 

蘭「そうだね……ライブの描写もそうだけど、演奏する登場人物の気持ちもしっかり書かれてて、結構本気で読めたよ」

 

モカ「うんうん~、この主人公の子、なんとなーく蘭に似てるよね~♪」

 

蘭「ふふっ……どうかな……あたしはここまで不器用じゃないと思うけど」

 

 

蘭「……なんだか演奏したくなってきた……っても、今からじゃ演奏できないし、帰ったら曲造り進めてみようかな」

 

つぐみ「私も、もう一度演奏の確認しとかなきゃ」

 

巴「そういえば、あこの自主練に付き合う約束してたっけな」

 

ひまり「ふふっ……結局、みんなバンドの練習はお休みでも、音楽そのものはお休みにはならなさそうだね」

 

 そしてしばらく、話題は読書の話から、音楽の話へと移行する。

 

 ひまりの言う通り、練習は休みでも、皆が皆、好きな音楽を休むことだけはしなさそうだった。

 

―――

――

 

蘭「そういえば、昨日の練習、なかなか良かったね」

 

巴「ん~、アタシはまだ少し不安かもな……もう少し自主練しとかないとな」

 

ひまり「あまり無理はしないでね? 巴、一人だと頑張りすぎる時あるから」

 

巴「大丈夫だよ、あこもいるし、そんな無茶しないって」

 

モカ「そういえばつぐ、なんだか昨日はいつもよりツグってたよね~」

 

つぐみ「うん、ライブも近いし、私も頑張らなきゃって思って♪」

 

蘭「そうだね、ライブまであと4日……もうすぐだね」

 

巴「ああ、アタシもだ、今からすっげー楽しみになってきた!」

 

モカ「お~、あついあつーい、蘭とトモちんが燃えてるー」

 

 ライブへの期待を顕にする蘭と巴。そんな二人の様子を見るモカ、ひまり、つぐみの3名また、ガールズバンドパーティーへの期待を確かに高めていた。

 

 

ひまり「ライブ……澪さんにがっかりされないように、私も頑張らなきゃっ……う~! やっるぞーーっ!」

 

 拳を上に突き出し、威勢良くひまりは叫ぶ。

 

 

モカ「あのねーひーちゃん、気持ちはわかるけど、ひーちゃんは頑張りすぎず、いつも通りでいいとモカちゃんは思うよー?」

 

巴「はははっ、モカの言う通り、ひまりはいつも通りが一番かもな」

 

蘭「うん、ひまりが頑張りすぎて空回りするの、よくある事だもんね」

 

ひまり「も~、みんなひどーい! せっかくやる気出したのに~!」

 

つぐみ「あはははっ。でも、ひまりちゃんの気持ち、分かるよ……あのお姉さん、私達の演奏楽しみにしてくれてたもんね」

 

ひまり「うん……だから、澪さんにも精一杯楽しんでもらえるように、私ももっと練習しとかないと……蘭もそう思うでしょ?」

 

蘭「…………」

 

 ひまりの問いかけに蘭はしばし口を閉ざし、自身の考えを巡らせる。

 

 

蘭「…………別に、誰が来てもあたし達のやる事は変わらないよ」

 

蘭「いつだって……どこでだって、あたし達はあたし達、『いつも通り』のあたし達で……ライブでも『いつも通り』、全力で歌う……そうでしょ」

 

 言葉を紡ぐ蘭の眼に、確かな決意が宿る。

 

 

巴「ああ……蘭の言う通り、だな」

 

モカ「あたし達はあたし達の、『いつも通り』の歌を……だね」

 

つぐみ「うん! ライブ、みんなで頑張ろうね!」

 

ひまり「えへへへ……うんっ! そうだね!」

 

 蘭の意思に呼応するように、4人の胸中に決意が宿る。

 

 それは、少女達が抱く純粋な想い。

 

 いつだろうと、何処だろうと、誰の前であろうとも変わらない、彼女達が今を生きる輝きだった――。

 

 

 

ひまり「よーし! みんなやるよ! えい! えい!……」

 

蘭「………………」

 

巴「いや……それは何か違わないか?」

 

つぐみ「あまり大声で騒ぐと、お母さんに怒られちゃう……」

 

モカ「ひーちゃん空気読めてな~い」

 

ひまり「も~~~~!!! みんなのばか~~~~!!」

 

 顔を膨らませ、ひまりは叫ぶ。

 

 そんな彼女を、4人の優しい笑い声が包み込む。

 

 静かな店内は、今日もいつも通り変わらない、5人の笑い声で賑わっていた――。

 

 

―――

――

 

-ライブ3日前 ハロー、ハッピーワールド!-

 

 それぞれの学校が終わってからすぐの事、こころ達ハロー、ハッピーワールド!もまた、CiRCLEでライブに向けての調整に勤しんでいた。

 

 こころの思いつきにはぐみと薫が便乗し、それを美咲(ミッシェル)と花音が宥めることの繰り返し。それが、普段のハロハピの練習光景であった。

 

 ……だが、その日の練習は普段以上に慌ただしく、和やかな練習となっていた。

 

 

【CiRCLE カフェテリア】

 

美咲「うぅ……今日は本気で疲れた……」

 

 着ぐるみを脱ぎ、私服に戻った美咲はカフェのテーブルで一息つく。

 

 

花音「美咲ちゃん、お疲れ様。アイスティー買ってきたんだ、良かったらどうぞ」

 

美咲「ああ、花音さん。……ありがとうございます」

 

 差し出されたアイスティーを有り難く受け取り、一口流し込む。

 

 程よく冷やされた紅茶が火照った身体をクールダウンさせ、練習で疲れた美咲の身体を内側から癒やしてくれていた。

 

 

美咲(そういえば……ここって何故か足湯があったっけ……あとで浸かってみよっかな)

 

花音「今日のこころちゃん達、すごく楽しそうだったね」

 

美咲「ええ……こころのやつ、いきなり予定にないことやるんですもん……抑えるの大変でしたよ……」

 

花音「あははは……本当にお疲れ様だったね……」

 

美咲「花音さんもありがとうございました、私一人じゃあの子達を抑えるのキツくて……」

 

花音「ううん、私は大丈夫だよ。でも、ライブまであと3日かぁ……なんだか、あっという間だね」

 

美咲「……緊張、してます?」

 

花音「うん……少しだけだけどね」

 

美咲「まぁ、私も全然緊張してないって言えば嘘になりますけど……あの3人を見てると緊張も吹き飛ぶと言いますか……そんな余裕もないって感じです」

 

 乾いた笑いを浮かべながら、美咲は隣のテーブルで話し込んでいる3人を見る。

 

 

こころ「演奏の最後には花火でドーン!ってやって、5人でお客さんの所に飛び込んでいくっていうのはどうかしら?」

 

はぐみ「うんうんっ! こころん、それ、すっごく面白いと思う!」

 

薫「ああ、なんて儚く、粋な演出だろうね……」

 

 美咲達の苦労を他所に、こころ達はライブの演出の話で盛り上がっていた。

 

 

美咲「こころってば……またとんでもない事言いだしてるし……」

 

花音「あはははは…………」

 

こころ「ねえ美咲! 私達の演奏が終わったら、最後にみんなで……」

 

美咲「却下だよ、花火やった上に客席にダイブだなんて危ないこと、できるわけないでしょ。誰かケガでもしたらどうすんの?」

 

こころ「……それもそうね、美咲、ありがとっ!」

 

はぐみ「みーくんすごいねー、こころんが言おうとしてた事、全部分かってたみたいだよ」

 

薫「フフッ……美咲には、人の心が読めるのかも知れないね」

 

はぐみ「えーー! すっごーい! みーくんってそんな能力があったの!?」

 

美咲「いやいや、私にそんな能力ないから。ていうか、あんだけ大きい声で話してりゃ誰だって聞こえるって」

 

 そんなやり取りも交えつつ、こころは再びはぐみと薫と共に演出の案を出し合っていた。

 

 

こころ「それじゃあこういうのはどうかしら? 演奏の途中で私とミッシェルが……」

 

花音「ふふふっ……みんな、本当に楽しみにしてるんだね」

 

美咲「多分ですけど……ほら、前にパーティーで会ったあの人達……」

 

花音「うん……紬さんと菫さん、だったよね」

 

美咲「あのお二人が来てくれるって言ってたからだと思います、こころ達がライブに向けてあんなにはしゃいでるのって」

 

花音「うん、きっとそうだね……あの人たちだけじゃなく、来てくれる人たち全員の期待に応えられるように、私達も頑張らないとね」

 

美咲「ええ……そうですね」

 

 互いに美咲と花音は頷き合い、ライブへの決意を固めていく。

 

 そして――。

 

 

女の子「ふぇぇぇん……おかーさん、おとーさん、どこにいっちゃったのー?」

 

 カフェからやや離れた街道、そこを、一人の女の子が泣きながら歩いていた。

 

 

はぐみ「ねえねえこころん見て! あそこに泣いてる子がいるよ!」

 

こころ「あら……迷子かしら? みんなで笑顔にしてあげましょ!」

 

薫「ああ……笑顔パトロール隊、久々の出動だね♪」

 

こころ「ええ、そうね♪ 美咲! 花音! 行きましょ、笑顔パトロール隊、出動よっ♪」

 

花音「ふえぇぇ……みんな、ちょっと待ってよ~」

 

美咲「ちょっとみんなー、いきなり飛び出したらあの子もびっくりするでしょー! おーい、待ちなってばー!」

 

 

 こころ達は走り出す、一つでも多くの笑顔を咲かせるために。

 

 場所を、人を問わず、こころ達は、今日もありのままでいる。

 

 その笑顔が放つ輝きは、今日もまた、世界を笑顔に変えていくのであった―――。

 

―――

――

 

-ライブ2日前 Roselia-

 

 ライブに向け、個々のバンドの準備は着実に進んでいく。

 

 それは、青き薔薇の紋章を掲げた彼女達……Roseliaも同じである。

 

 彼女達の練習は連日のように行われており、他のバンドのそれとは比較にならない程の熱が込められていた――。

 

 

【某スタジオ】

 

 ――♪ ――――♪ ――……♪

 

あこ「……っ! あっ……」

 

友希那「ストップ。あこ、また外したわよ」

 

あこ「すみません! もう一度お願いします!!」

 

友希那「……これで3回目よ……もっと集中して貰わないと困るわ」

 

あこ「ごめんなさい……」

 

 あこの謝罪をやれやれと言った様子で受け入れ、友希那は再度マイクの前に立ち、息を整える。

 

 そんな友希那に向け、リサが声を上げていた。

 

 

リサ「待って友希那っ、あのさ……一度休憩にしない?」

 

紗夜「今井さんに賛成です、明らかにパフォーマンスが下がってきているようですし、一旦休憩を挟むべきだと思います」

 

友希那「リサ、紗夜も……でも、まだ始めてからそんなに時間は……」

 

リサ「初めたばかりって……もう2時間以上もぶっ通しで練習してんだよ? アタシもそろそろ限界だよー」

 

燐子「私も……できれば少し……休憩を……」

 

 皆の声に友希那は壁にかけられた時計を見る。

 

 確かにリサの言う通り、既に練習を始めてから2時間半もの時間が経っていた。

 

 

友希那「……そう、もうそんなに経っていたのね……全然気付かなかったわ」

 

 友希那が背後のメンバーを見る。すると、確かにメンバー全員の顔に、疲労の色が伺えていた。

 

 このまま無理に練習を続行するのは、却って演奏の質を落としてしまう事に繋がるだろう。

 

 練習を続行したい気持ちを抑え、友希那は3人の提案を快く受け入れていた。

 

 

友希那「……分かったわ、このまま続けても悪い流れになりそうだし……少し休憩にしましょう……あこも、さっきは悪かったわね」

 

あこ「そんな……あこの方こそすみませんでした」

 

リサ「はいはい、二人ともそのぐらいにしときなって。そうだ、アタシ、クッキー焼いてきたからさ、みんなで食べよ、ね?」

 

あこ「うんっ、リサ姉のクッキー、楽しみだなぁ♪」

 

 リサの言葉に先程の様子とは一変し、嬉々とした様子で準備に取り掛かるあこだった。

 

 その様子を見た燐子と紗夜もまた、テーブルを並べては休憩の準備に取り掛かっていた。

 

 

友希那「…………私もまだまだね……少し、外の空気を吸ってくるわ」

 

リサ「うん、お茶の用意しておくから、気をつけてね」

 

 スタジオの扉を開け、友希那は席を外す。

 

 普段とは違う、やや疲れを感じさせるその足取りを、静かにリサ達は見守っていた。

 

 

リサ「友希那……大丈夫かな……」

 

紗夜「湊さんに限って身体を壊す程の無理はしないと思いますが……それでも、少し心配ですね」

 

あこ「最近の友希那さん、特に集中してますよね」

 

リサ「あ~、それは、たぶん前にあの人に会ったからじゃないかな」

 

あこ「あの人って、前に桜が丘で会った……」

 

燐子「中野梓さん……の事だね」

 

リサ「うん、あの人と話してから友希那、前以上に音楽にのめり込むようになったみたいでさ……今度、ちゃんと身体休ませるように言っておかなきゃ」

 

紗夜「集中する事は悪いことではないですが……身体を壊してしまっては元も子もないですからね」

 

あこ「今度、みんなでどこか遊びに行きたいですね」

 

リサ「そうだねー、気分転換に旅行なんてのもいいよね♪」

 

 などと言った会話をしつつ、休憩の準備は進められる。

 

 それから程なくして友希那が戻ってきた頃、テーブルの上にはリサのクッキーと燐子の淹れてくれたお茶が並び、疲弊した身体と心を癒やす為の、ささやかなお茶会が開かれるのであった。

 

 

あこ「ん~~~~~……リサ姉のクッキーにりんりんのハーブティー、すっごく美味しい~~♪」

 

リサ「あはは♪ ありがと、たくさんあるからどんどん食べてね。ほーら、友希那も、可愛いネコさんクッキーだよ♪」

 

友希那「ふふっ……ええ、美味しいわ……ありがとう、リサ」

 

紗夜「今井さん、今度また、お菓子の作り方を教えてもらってもいいかしら?」

 

リサ「うん、いつでもいいよ♪ そだ、友希那も今度一緒にお菓子作り、やってみない?」

 

友希那「私は遠慮しておくわ、リサ程上手にできなさそうだもの」

 

リサ「こういうのは上手い下手とかじゃないよ、みんなで楽しくやるのが大事なんだって♪」

 

友希那「ふふふっ……そうね、機会があったら……是非見学させてもらうわ」

 

リサ「うん、それじゃあ近い内にね♪ 楽しみになってきたなぁ」

 

―――

――

 

燐子「そうだ……あこちゃん……今度のNFOのイベント……楽しみだね」

 

あこ「うんっ! ライブが終わった次の日に配信だったよね、確かタイトルは……」

 

紗夜「『黄昏の剣と蒼き荊棘の共闘』……ですね、私も少し興味があります」

 

リサ「それって、どんなイベントなの?」

 

あこ「うん、NFOの世界に黄昏騎士団っていうグループと、荊棘戦士団っていうグループが現れて。陣営を決めてその人達と対決したり、共闘したりして進めていくイベントなんだー」

 

あこ「……でも、『けいきょく』って、一体どういう意味なんだろう?」

 

紗夜「荊棘……いばらと読んで、中国語ではバラを差す言葉の事ね。『蒼き荊棘』とはつまり、青い薔薇っていう意味よ」

 

リサ「へ~、黄昏……つまり夕日と、青いバラの共演かぁ……はははっ、なんだか私達みたいだね」

 

紗夜「ええ、私達も以前、夕日を表す人達と共演したことがありましたね」

 

友希那「そうね、懐かしいわ……」

 

 友希那達の脳裏に蘇る、以前繰り広げられた2マンライブ。それは、AfterglowとRoseliaの初めての共闘ライブの事だった。

 

 

燐子「あの時の皆さん……凄く……盛り上がってましたね……」

 

リサ「またやりたいよね、対バンライブ」

 

あこ「うんっ! お姉ちゃんとライブで演奏、すっごく楽しかったな~」

 

紗夜「ガールズバンドパーティーが終わったら、また美竹さんに提案してみるのもいいかも知れませんね」

 

友希那「……もちろん、『FUTURE WORLD FES.』に向けての練習も欠かさずにね」

 

一同「………………」

 

 友希那のその言葉に、全員の表情が引き締まる。

 

 『FUTURE WORLD FES.』……それは先日、Roseliaが苦労の果てにようやく掴んだ夢への挑戦権であり、Roseliaの目標の一つ。

 

 そのイベントに出場することこそが友希那の以前からの夢であり、今の湊友希那が舞台に立ち、歌い続ける理由だった。

 

 

リサ「うん、みんなでようやく掴んだ夢だからね……!」

 

紗夜「はい、そのためにも、今以上に腕を磨かないと……」

 

あこ「はい! あこも、もっと、もっと練習します……いつか、お姉ちゃんにだって負けないぐらい……上手に……!」

 

燐子「私も……更に上を目指さないと……」

 

友希那「ええ……でもまずは、ガールズバンドパーティーを成功させることが先決よ、ライブまであと2日、みんな、最後まで気を抜かずに頑張りましょう」

 

 友希那の言葉に頷き、Roseliaの5人は決意を込めて立ち上がる。

 

 

リサ「うん、さーってと……練習頑張ろっか」

 

あこ「へへへ、リサ姉のクッキーとりんりんのお茶のおかげであこ、HP満タンだよ♪」

 

燐子「ふふっ……あこちゃん……ありがとう……」

 

紗夜「湊さん、曲の出だしはどうしますか?」

 

友希那「そうね、もう一度、さっきの所から始めましょう」

 

 再び彼女達は楽器を手に、音を紡ぐ。

 

 少女達の魂が、輝きが……楽器を、喉を通してスタジオ中に響き渡る。

 

 頂点を目指す少女達が放つその情熱の輝きは、今日も強く、また鋭く……研ぎ澄まされていく――。

 

―――

――

 

-ライブ前日 Poppin'Party-

 

 放課後になり、彼女達はすぐさま一つの場所を目指し、歩み始める。それが彼女達の、ここ最近の日常だった。

 

 ――Poppin'Partyの5人は、今日も市ヶ谷有咲の蔵に集まり、練習に明け暮れていた。

 

 

【市ヶ谷家 蔵】

 

 ――♪ ―――♪

 

香澄「やったぁー! 今の演奏、完璧だったね!」

 

沙綾「うんっ♪ みんな、歌も演奏も大丈夫だったと思うよ」

 

りみ「通しで演奏、緊張したぁ~……」

 

有咲「ああ、もう衣装も仕上がったし、あとは明日に備えてみんな、身体を休めておいた方がいいんじゃねーか?」

 

たえ「有咲の言う通りだね……どう香澄、大丈夫? 疲れてない?」

 

香澄「だいじょーぶ! 平気だよ、おたえ、ありがとうっ♪」

 

 たえの言葉に香澄は元気良く返す。

 

 ここ数日、学校生活と並行して練習しているにも関わらず、香澄は微塵も疲れた様子もなく、練習に向き合っていた。

 

 

りみ「ふふっ、香澄ちゃん、すごく気合入ってるね♪」

 

香澄「うんっ! 唯さんも見に来てくれるって言ってたし、もう明日が楽しみで楽しみで……♪」

 

沙綾「あははっ、香澄、ホント唯さんのことになると元気だよね」

 

有咲「元バンドのギタリストでしかもメインボーカル……まさに香澄からすりゃ大先輩ってとこだもんなぁ」

 

たえ「うん。そのおかげで、前以上に香澄の演奏、上手になったよね」

 

沙綾「そうだね、難しいリフもどんどん弾けるようになってたし……香澄、この1週間で凄く成長したと思うよ」

 

有咲「香澄ー、分かってると思うけど、お客さんは唯さんだけじゃないんだからなー、そこんとこ、ちゃんと覚えとけよー?」

 

香澄「だいじょーぶだよっ、唯さんだけじゃなくって、聴きに来てくれるお客さん全員のためにも頑張るからさっ!」

 

有咲「ならいいんだけどな……」

 

 元気に返す香澄を見やりつつ、やや寂しそうに有咲はぼやいていた。

 

 

たえ「やっぱり有咲、少し妬いてる?」

 

有咲「だから誰も妬いてねえっての! ……ったく、なんか一気に疲れて来た……なあみんな、明日に備えて、今日はもう早めに練習切り上げようぜ」

 

香澄「うん、そうだねっ」

 

沙綾「私、今日もいっぱいパン焼いてきたから、みんなで食べよっか」

 

りみ「わぁ……沙綾ちゃん、いつもありがとう♪」

 

有咲「私、お茶でも淹れてくるよ。おたえ、手伝ってくんねーか?」

 

たえ「うん、いいよ♪」

 

 有咲の提案に乗り、全員で休憩の準備に取り掛かる。

 

 和やかな空気が蔵全体に流れ込み、安らぎに満ちた一時が訪れる。

 

 それから程なく、香澄と沙綾は仲良く談笑をし、その傍らではりみとたえが課題の続きをやったりと、各々が自由に過ごしていた時の事だった。

 

 

香澄「それでね、その時あっちゃんがね~」

 

沙綾「あはははっ、そんな事があったんだ」

 

りみ「ねえ有咲ちゃん、数学のこの部分なんだけど……教えてくれないかな?」

 

有咲「どれ、ちょっと見せてみ……ああ、ここか、これはこのxの所をyでくくってだな……」

 

りみ「あ~、そっか、うん! 分かったよ、ありがとう有咲ちゃん♪」

 

たえ「有咲、この漢文なんだけど……」

 

有咲「あ~~、ちょっと待て、一旦ゲーム中断する」

 

 たえとりみの声に有咲はスマートフォンの画面を閉じ、二人の宿題に向き合うことにする。

 

 こうして各メンバーの勉強を見ることも、優等生としての有咲にはよくある光景の一つだった。

 

 そして、ひとしきり宿題も終えた頃――。

 

 

有咲「あーくそ、またフルコンミスった……」

 

たえ「ねえ有咲、さっきから何のゲームやってるの?」

 

有咲「ああ、音感の鍛錬になると思って音ゲーをな」

 

 有咲が画面を見せながらたえに返す。

 

 有咲がプレイしているゲーム……それは今、学生世代を中心に流行っているスマートフォン専用の音楽ゲームだった。

 

 

たえ「これ、今テレビでCMやってるやつだね」

 

有咲「ああ……最初は簡単だと思ってやってたんだけど、やってみたらなかなか本格的でな、ストーリーも結構面白いし、結構楽しくってさ」

 

香澄「それ、クラスの子もやってたよ、私も前から興味あったんだ~」

 

りみ「そのゲーム、前にテレビで特集してたけど、結構難しそうなんだよね」

 

沙綾「へ~、今はこういうゲームが流行ってるんだね」

 

 有咲のゲームに興味津々と、全員がスマートフォンの画面を覗き込んでいた。

 

 

たえ「あ、この曲知ってるよ、昔流行ったアニメの歌だよね?」

 

香澄「懐かしいなー、よくあっちゃんと一緒に見てたよ、このアニメ」

 

有咲「結構有名どころの歌もカバーされてるからなぁ。だからなのか、プレイヤー層も小学生から大人まで、結構幅広いんだと」

 

たえ「ふ~ん、ねえ有咲、ちょっとやらせてもらってもいいかな?」

 

有咲「別にいいけど……」

 

 たえは有咲からスマートフォンを受け取り、有咲の指示に従いながら画面を操作する。

 

 

有咲「演奏だけど、青いシンボルはタップで、緑はラインに沿ってスライド、赤はタイミングに合わせてフリックさせて、黄色は必殺技の発動で……」

 

たえ「……? うん、よくわからないけど、とりあえずやってみるよ」

 

 ゲームの簡単なレクチャーを受けたたえは『フリーライブ』と表示された部分をタップする。

 

 その画面には、ゲーム内に収録されている、様々な曲が並べられていた。

 

 

たえ「あ、この曲懐かしい、これにしよっと」

 

 たえの指が一つの曲で止まる。

 

 

有咲「っておいおたえ、そのレベル、私もまだフルコンできないぐらい難しいレベルなんだけど……」

 

たえ「え、そうなの?」

 

 そして、EX26と表示されたレベルの曲が始まり……。

 

 

たえ「えっと、こう……かな、あ、できた♪」

 

 有咲の心配をよそにリズムに合わせ、たえは的確にゲームを攻略していく。

 

 流れるように上から降ってくるシンボルをはじめ、慣れていても躓くような変則的な難所も容易くクリアし、着実にたえはコンボを繋げていく。

 

 

有咲「うわ……あの難所もあっさり攻略しやがった」

 

たえ「始めてやってみたけど、結構楽しいね♪」

 

 そのまましばらく、たえはコンボを途切れさせることなくゲームをクリアした。

 

 曲を完走させたゲーム画面には『FULL COMBO!』という表示と共にハイスコアが表示されており、有咲は眼を丸くしてその画面を見ていた。

 

 

有咲「初見でフルコンとかマジかよ……おたえ、本当にこのゲーム初めてなのか?」

 

たえ「うん、似たようなゲームならゲームセンターでたまにやるぐらいだけど」

 

香澄「おたえすっごーい! ねえねえ有咲、今度は私にもやらせてみて♪」

 

有咲「別にいいけど……ちょっ! 香澄、近いっての!」

 

 まるで抱き着かんかと言わんばかりに距離を詰める香澄に向け、有咲は顔を赤面させながら声を上げていた。

 

 

有咲「あ、そういや……イベガチャ今日が最終日だったな……おたえのおかげでスターも溜まったし……一応回しとくか」

 

香澄「可愛いキャラクターがいっぱいいるねー、ねえねえ、今度は何の画面なの?」

 

有咲「ああ、イベントガチャだよ、今日が最終日だから、回しとこうと思ってな」

 

香澄「……ガチャ?」

 

有咲「簡単に言えばこのゲームでできるクジみたいなもんだよ、欲しいキャラがいるんだけど、これがなかなか引けなくてな~……」

 

香澄「へぇ~、そうなんだぁ」

 

 ぼやきながら、有咲はイベントガチャの部分をタップする。

 

 

香澄「…………♪」

 

有咲「わかった! わかったからそんなに見るなって! 香澄、やってみたいんだろ?」

 

 眼をキラつかせながら自分を見つめる香澄の視線に赤面し、有咲は香澄にスマートフォンを手渡していた。

 

 

香澄「えへへっ♪ うんっ! 私にまっかせて! こう見えて、クジ運は結構良いんだよっ♪」

 

有咲「初めて聞いたぞ……まぁいっか、んじゃ頼むわ」

 

香澄「ここを押せばいいの?」

 

 有咲の言葉に従いつつ、香澄の指が10回ガチャの部分をタップする。

 

 

有咲「ああ、ま、そうそう当たんねえけどな~」

 

香澄「わ~、虹色だー、キレイだね~♪」

 

有咲「ってマジかよ!?」

 

 香澄の言葉に有咲は食い付くように画面を覗き込む。

 

 見れば、画面上には虹色のサイリウムが揺らめいており……レアキャラゲットの確定演出が表示されていた。

 

 

有咲「いやいやいや……いくら確定してるからってそうそう当たったりは……」

 

 どうせ被りだろうと思う反面、でも香澄ならもしかして……とも期待しつつ、有咲はガチャの結果を見守る。

 

 すると……。

 

 

有咲「おおおおお!! ☆4来た! しかも私が一番欲しかったキャラ!!」

 

香澄「あはははっ、有咲、すっごく嬉しそうな顔してる♪」

 

沙綾「なんていうか……この子、香澄みたいなキャラクターだね」

 

りみ「うんうん、声の感じとか、このポーズも、香澄ちゃんにそっくりだね~」

 

たえ「有咲が一番欲しかったキャラって、香澄の事だったんだね」

 

香澄「えへへへ♪ いいよ、有咲にならいつ貰われても平気だよ♪」

 

有咲「…………っっ! ご、ごご誤解を招くような言い方すんじゃねえ!! ……ああでも……香澄……あ、ありがとな……」

 

香澄「ううん、どういたしまして♪」

 

 顔を紅潮させつつ、有咲は香澄に感謝の言葉を告げる。

 

 

香澄「えっと……んじゃあ、私この曲やってみよっと♪」

 

りみ「あ、有咲ちゃん、その……わ、私もやってみてもいい……かな?」

 

たえ「私も、もう一度やってみたいな♪」

 

有咲「ああ、つーか、いちいち許可取らなくてもいいんだけど……沙綾はどうだ?」

 

沙綾「ううん、私は平気、みんなのやってるのを見てるだけで楽しいよ」

 

 そして、各々がスマートフォンを回しながら、ゲームに興じていた。

 

 それはライブの前日とは思えない程にリラックスした空気であり、ライブ前の心境としては、この上なく理想のコンディションでもあった。

 

 

有咲「ったく……おたえはあっさりフルコンするわ、香澄は余裕で☆4引くわ……このゲームを長くやってる私は一体……」

 

有咲「でもま、こういうのも悪くないのかもな……」

 

香澄「ねー有咲ー、このスターショップってなーにー?」

 

有咲「ちょっ……! それは課金の画面だ!! やめろーーー!!」

 

 みんなで仲良くゲームで遊ぶ、そんな日があってもいいと思いつつ、有咲は4人と共に笑い合う。

 

 誰よりも、何よりも音楽を愛する少女達の純粋な輝きは、今日もまた、5人の心を照らし続けていた――。

 

―――

――

 

香澄「そうだ! あのさ、帰る前に、みんなでCiRCLEに寄ってかない?」

 

有咲「いいけど……何か忘れ物か?」

 

香澄「そうじゃないんだけど……みんなで見ておきたいんだ、明日、私達が歌う場所を……」

 

沙綾「うん、いいと思うよ。ライブ前だし、気持ちが引き締まりそうだもんね」

 

たえ「じゃあ、もう遅くなってきたから、早めに出よっか」

 

りみ「うんっ♪」

 

 自分達の明日の舞台に向かい、少女達は歩き出す……。

 

 その先で思いがけない再会を果たせる事になるとも思わず、少女達の足はCiRCLEへと進んでいた。

 

―――

――

 

 

-ライブ前日 放課後ティータイム-

 

 香澄達が練習に励んでいたその時を同じくして、桜が丘のライブスタジオでは、放課後ティータイムの最後の練習が行われていた。

 

 社会人として仕事をこなしながらの練習は彼女達に想像以上の負担を強いていたが、それでも彼女達はめげずに集まり、ライブに向け、日々奮闘していたのだった。

 

 

 ――♪ ~~~♪

 

 最後のイントロを終え、唯が大きくフィニッシュを決める。

 

 そして音が鳴り終わったと同時、ステージ上の全員が大きな達成感を感じていた。

 

 

律「よっしゃああ!!! どうにか最後まで演奏しきったぞ!!」

 

澪「危ない所も多かったけど……なんとか当日までに完成できたな……あああ……良かったぁぁぁぁ……」

 

唯「わ……私、もうヘトヘト……」

 

梓「私も……ここまで大変だとは思いませんでした……」

 

紬「ええ……でも、これで終わりじゃないわ……」

 

梓「はい、いよいよ明日……ですもんね」

 

 流れる汗を拭いながら、明日への期待に胸を膨らませる5人だった。

 

 そんなステージの上の5人に向け、その練習風景を見ていた憂達からも労いの声が飛ぶ。

 

 

憂「皆さん、お疲れ様でしたっ!!」

 

純「梓も澪先輩もすっごい演奏だったなぁ……本当に久々なのかって思うぐらい凄かったですよ!」

 

菫「皆様お疲れ様です、すぐにお茶をご用意いたしますので、こちらへどうぞ」

 

直「先程の演奏、録画しておいたので見てみますね」

 

 そして、ステージを降りた唯達の眼前には美味しそうなお菓子とお茶が並び、かつて、幾度となく過ごした放課後が始まる。

 

 憂の手作りお菓子に菫の淹れるお茶……それは過去に、梓達わかばガールズが過ごしていた日の光景でもあった。

 

 

唯「ん~~~……憂のお菓子……お、おいしひ……」

 

憂「うんっ♪ たくさんあるからいっぱい食べてね、お姉ちゃん♪」

 

律「はははは……唯のやつ、泣きながら食べてる……」

 

梓「唯先輩と憂のこのやり取りも……凄く懐かしいですね……」

 

純「スミーレの淹れてくれたお茶も久々だなぁ……前よりもずっと美味しくなってるね」

 

紬「菫ちゃん、確かティーコンシェルジュの資格を持ってるのよね」

 

菫「はい、お陰様で、琴吹家にいらっしゃる来賓の方々にもご好評頂いております」

 

澪「さすが、琴吹家のメイド……」

 

 

直「すみません梓先輩、律先輩……動画のこの部分なんですけど……」

 

梓「あ……私も気になってたんだ、入りが少し甘かったよね」

 

直「ええ……私もそう思いまして」

 

律「ん~、だったら……唯のギターに合わせて、そこから梓が繋げてみるってのはどう?」

 

梓「そうですね、その方が良いかも知れませんね」

 

律「じゃあ、私もちょっとアレンジ変えてみっか……」

 

 直のノートパソコンを見ながら、音楽を生業としたプロによる、細かいチェックが行われていた。

 

 そんな3人を、純は尊敬の眼差しで見ながら呟く。

 

 

純「凄い……プロの会話って感じがする」

 

唯「りっちゃんも凄いよね、普段はあんななのに、音楽の事になると顔つきが変わるんだもん」

 

律「おーい、聞こえてるぞー」

 

澪「私もここ数日律と一緒に練習してきたけど、仕事の事になると急に真面目になるんだから驚いたよ」

 

紬「ええ……みんなで集まって練習してた時もよく携帯持ってお外でお話してたみたいだし、凄いと思うわ」

 

憂「芸能界のお仕事って、大変なんですね……」

 

律(だーから、聞こえてるっての……照れっからあんま褒めんなよな……)

 

 照れるような表情で律は頭をかく。

 

 尚も続けられる周囲の称賛の声を聞こえない振りをしながら、律は演奏のチェックを進めていた。

 

 そして、その作業も一区切りついた頃。

 

 

澪「いよいよ明日か……なんていうか、あっという間だったな……」

 

唯「うん……大変だったけど、でも、凄く楽しかったよね」

 

紬「……お祭りの前の楽しさ、そんな感じのする毎日だったわね」

 

律「個人的には、もうしばらく忙しいのは勘弁だなぁ……疲れすぎてお腹いっぱいだよあたしゃ」

 

梓「私もです……でも、唯先輩の言う通り、とても充実した1週間だったと思います」

 

菫「私、学生の頃の学園祭を思い出しました」

 

律「あ、それ私もだよ、クラスの準備に部活の準備……両方こなしながらもちゃんとできてたもんな、昔は」

 

唯「意外と、身体って動くもんだよね~」

 

律「べっつに、私達だってまだおばさんって呼ぶような歳でもないだろ……そりゃあ、明日の演者に比べたらかなり歳食ってる方だとは思うけどさ」

 

澪「はははは……確かにそうかも」

 

 律の声に笑いながら、澪は明日のことを考える。

 

 

澪「うん、確かに忙しかったけど楽しかった……でも、それも明日で終わりだと思うと、なんだか少し寂しい気もするな……」

 

律「みーお、それは違う、明日で終わりなんかじゃないよ」

 

唯「……うん、明日が終わったらまたそれぞれの生活に戻っちゃうけど、でも、それで終わりじゃないよね」

 

紬「ええ……またみんなで集まって、こうして演奏ができる日もきっと来るわよ」

 

梓「いつになるかは分かりませんけど、またやりたいですね……」

 

澪「みんな……」

 

澪(そうだ、明日で終わりじゃない……終わりにさせるのは、まだ早いよな)

 

 皆の言葉に、落ち気味だった気分をどうにか澪は食い止めていた。

 

 

律「でもまさか、最初はビビってライブに出るの渋ってた澪からそんな言葉が聞けるとはねぇ~」

 

澪「しょ、しょうがないだろ……? あの時はまだ決心がついてなかったんだし……」

 

律「ふふっ、けど、そんな澪をそこまで本気にさせたAfterglowの歌かぁ、パスパレのみんなとも仲良いみたいだし、確かに気になるよなぁ」

 

澪「私もライブを見たわけじゃないからまだはっきりとは言えないけど、あの子達の歌はきっと……ううん、絶対にみんなも盛り上がれる歌だと思うんだ」

 

律「Pastel*Palettesだって負けないぞー、澪もあの子達のライブを見れば絶対に盛り上がれるさ」

 

梓「……ふふっ、Roseliaの人達がどんな演奏をするのか、私、楽しみです」

 

紬「私も、こころちゃん達の……ハロー、ハッピーワールド!のライブ、今から楽しみだわ……♪」

 

唯「私、明日みんなでやる演奏もだけど、香澄ちゃん達の歌も楽しみなんだ~、Poppin'Partyのみんなにまた会えるの、楽しみだなぁ」

 

 皆が皆、明日のライブと、そのライブに出演する少女達の事を思い浮かべていた。

 

 

憂「ふふっ、お姉ちゃんたち、凄く良い顔してるね」

 

純「うん、私も、明日が楽しみになってきたよ」

 

菫「お姉ちゃん……皆さん、頑張ってくださいっ♪」

 

直「私達も、応援してます!」

 

 唯達と同じように、憂達4人もまた、明日への期待に心を踊らせていた。

 

―――

――

 

澪「それじゃあ、今日は早めに帰って、身体を休めとくか」

 

律「そうだなぁ……あ、待って、その前に私から一言いい?」

 

一同「……?」

 

 帰りの支度を始める澪を制し、律は立ち上がり、優しい眼差しを全員に向けつつ声を上げる。

 

 

律「みんな聞いてくれ。……もう私達にやれることは全部やりきったし、あとは明日、全部ぶつけるだけだ」

 

律「唯、澪、ムギ、梓……今日までお疲れさん、仕事も忙しい中、本当に頑張ってくれたと思うよ」

 

唯・紬「りっちゃん……」

 

澪「律……」

 

梓「律先輩……」

 

 

律「菫ちゃんや直ちゃん、憂ちゃんに純ちゃん達も本当にありがとう、こうして練習に付き合ってくれたり、色々と手伝ってくれたりして、凄く助かったよ」 

 

律「きっと、誰か一人でも欠けてたらこうはならなかったと思うんだ……だから私……いいや、私達、明日は全力で頑張るから……」

 

律「みんな……明日は、盛り上がってこーぜえっっ!!!」

 

一同「――うんっ!」

 

 その声に合わせ、皆が立ち上がり、大きく頷く。

 

 律の言葉……それはまさに、まさに宣誓と呼ぶに相応しい鬨の声だった。

 

 放課後ティータイムのリーダーとして、桜が丘高校軽音楽部の部長としての宣誓……。

 

 その言葉に込められた力は、疲労困憊にあった全員の気力を最大限まで引き上げ、明日への期待に大きく拍車をかけていた。

 

 

 そして、各々が帰り支度を済ませ、車で帰宅する為に駐車場へ向かい、歩いていた時。

 

 

澪「……まさか、律があんな事を言うだなんて思わなかったな」

 

律「ふふっ、あーゆー鼓舞はよくやるんだよ、私……まぁ、ライブ前の儀式みたいなもんだよな」

 

梓「パスパレの皆さん、幸せですね……こんな良い先輩にマネージャーやって貰えてるんですね」

 

紬「ええ、りっちゃんのおかげで私も、元気が出たわ……明日は頑張りましょうね」

 

律「へへへっ……ああ、楽しみだなぁ、明日の打ち上げのビールはきっと最っ高に美味いぞ~♪」

 

澪「……ふふっ、ああ、そうだな♪」

 

 

唯「あ、ごめんねみんな。私、ちょっと寄りたい所があるんだ」

 

澪「ああ……分かった。唯、明日は朝イチで花咲川に行くんだから、遅れるなよ?」

 

唯「うんっ! 大丈夫! 絶対に遅れずに行くから! じゃあ、また明日ね~!」

 

 別れの挨拶と共に唯は駅方面へ向かい、駆けていく。

 

 その背中を見送りながら、律達はそれぞれの車に乗り込んでいた。

 

 

澪「唯のやつ、一体どこに行くんだろう?」

 

憂「さぁ……お仕事の事で何か思い出したのかなぁ」

 

梓「……そういえば、本当に良かったんでしょうか、ライブへの参加のこと……演者の人達に言わなくても……」

 

律「ああ……いいんだよ、みんなライブの演者の子達とは知り合いなんだし、ならサプライズで驚かせるってのも面白そうだろ?」

 

澪「律のこういう子供みたいなところ、昔から変わってないよな」

 

憂「ふふっ、さっきの鼓舞もそうでしたけど、そういう所も律さんの魅力なんだと思います♪」

 

律「はははっ……今日はみんなよく褒めてくれるな~」

 

 そして、車は走り出す。

 

 そのハンドルを握る律の気分と同じように、軽快に夜道をひた走るのであった。

 

―――

――

 

【ライブハウス CiRCLE前】

 

 放課後が解散してからしばらく。

 

 明日のライブ会場、CiRCLEの前には唯の姿があった。

 

 

唯「なんとなくだけど来ちゃった……明日ここで、みんなとやるんだよね……」

 

 ライブハウスを前に、唯は一人、その決意を固めていた。

 

 

唯「あ……まりなちゃん」

 

 その時、フロントにいるまりなの姿を見かける。

 

 まりなに声をかけようと唯がドアの前に立ったその時、明日のライブの告知看板が目に入った。

 

 チョークで手書きされたそれにはRoselia、Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド!らの名前の他、明日出演する多数のバンドの名前が綴られており……。

 

 その中には、Poppin'Partyの名前と共に『スペシャルゲスト緊急参戦決定!』という煽り文句もはっきりと記されていた。

 

 

唯「ふふっ……スペシャルゲスト……かぁ♪」

 

声「あれ……? 唯……さん??」

 

 微笑みながらその看板を見ていた唯に向け、背後から声が投げ掛けられる。

 

 

唯「……? あ、香澄ちゃん♪」

 

 声に振り向くと、そこにはPoppin'Partyの全員が驚いた表情で唯の姿を見ていた。

 

 

香澄「びっくりしたぁー……唯さん、こんばんわっ♪」

 

有咲「どうも、唯さん、お久しぶりです」

 

沙綾「唯さんこんばんわ、先日はどうもありがとうございました♪」

 

りみ「でも、一体どうして花咲川に?」

 

たえ「何かお仕事の関係……ですか?」

 

唯「あ~いや……うん、ちょっと用事でね……それで明日、香澄ちゃん達、ここでライブやるんだなって思って、寄り道してたとこなんだー」

 

 出演について律に口止めされていた事を思い出し、咄嗟に話を誤魔化す唯だった。

 

 

唯「香澄ちゃん達は? もしかして……こんな遅くから練習?」

 

有咲「いやいや、さすがにそんな事は……、まぁ、香澄の思い付きで立ち寄っただけですよ」

 

香澄「明日になる前に一度……私達が歌う舞台をみんなで見ておきたいと思ったんです」

 

沙綾「ここに来たら、気が引き締まるって思って来たんですけど……でもまさか今日、ここで唯さんに会えるとは思いませんでしたよ」

 

唯「ふふっ、そうなんだ……」

 

唯(香澄ちゃんたちも、私と同じ事考えてたんだね……♪)

 

 そして、次第に談笑の雰囲気も夜風に流れたかのように静まり返った頃……。

 

 

香澄(――明日……ここで、唯さんに見てもらうんだ……私達の歌を……!)

 

唯(―――明日……ここで、香澄ちゃん達にも見てもらうんだね……私達の歌を……)

 

 胸に抱いた決意を確かめるように……唯と香澄達は、ただ無言でCiRCLEの建物を眺めていた。

 

 

唯「香澄ちゃん、明日のライブ……期待してるね♪」

 

香澄「……っ! はい! 私達、精一杯歌いますから、唯さんも応援、よろしくおねがいしますっ!」

 

唯「うんっ! 有咲ちゃんも、おたえちゃんも、りみちゃんも沙綾ちゃんも、みんな、がんばってねっ!」

 

一同「はーいっ♪」

 

 唯の声に明るい返事で応える香澄達だった。

 

 

香澄「それじゃ唯さん、お先に失礼します。明日、楽しみにしてて下さいね! あー、早く明日にならないかなぁ~、ねー有咲っ♪」

 

有咲「分かったからいちいち抱きつくな! ったく、浮かれるとすぐコレなんだから……」

 

唯「ふふっ……ほんと、みんな仲良しさんだねぇ」

 

 香澄達は足取り軽く帰路につく。

 

 その姿を静かに見送る唯に向け、今度は店内からまりなが声を掛けていた。

 

 

まりな「……あれ、唯ちゃん??」

 

唯「あ、まりなちゃん、お疲れ様~」

 

まりな「あれは香澄ちゃん達……そっか、そういえば唯ちゃん、香澄ちゃん達とは知り合いだったんだよね」

 

唯「うん、前に職場体験で私の務めてる幼稚園にあの子達、来てくれた事があって、それでね」

 

まりな「そうなんだ……あははは、世の中って案外狭いんだね~」

 

唯「そうだねー、もうびっくりしちゃってさ」

 

まりな「あ、よかったら入ってく? 立ち話もなんだし、良かったらお茶ぐらい飲んでってよ」

 

唯「ううん、私ももう帰るところだったから大丈夫だよ、ありがとね♪」

 

まりな「そっか……ねえ唯ちゃん、ガールズバンドパーティーに出演を決めてくれて……私達に力を貸してくれて、本当にありがとうね」

 

 唯に向け、まりなは深く感謝の言葉を述べていた。

 

 

唯「そんな……私の方こそお礼を言わせて! またみんなで……放課後ティータイムで演奏できるきっかけを作ってくれて、こらちこそありがとうっ!」

 

まりな「うん……明日……あの子達だけじゃなく、放課後ティータイムにも期待してるからね」

 

唯「……任せて、あの子達にも負けないぐらいの演奏をしてみせるよ」

 

唯「りっちゃんも、澪ちゃんも、ムギちゃんも、あずにゃんも、凄く頑張ってたんだ……だから、明日はきっと最高のライブになるよ」

 

まりな「うん……楽しみにしてる、頑張って……ね」

 

唯「……へへへっ、うんっ♪」

 

 笑顔で言葉を発する唯のその瞳には、確かな決意と意思があった。

 

 明日への期待に胸を躍らせながら、唯は足取り軽く、家路を進む。

 

 

 そして……皆が待ち望んだこの日が遂にやってくる。

 

 

 彼女達の……少女達の様々な思い、希望、期待に満ち溢れたライブ。

 

 

 放課後と五色の輝きが交差するライブ……ガールズバンドパーティーは、いよいよ開催の日を迎えるのであった――。




ライブ前の日常回です。

作中のキャラがバンドリの原作小説を読んだり、ガルパをプレイしたりと、作者が二次創作でやりたかったことを詰めて書いてみましたが如何だったでしょうか。


次章より物語は佳境に入ります。


放課後と5組のバンドによる共演を、どうぞお楽しみくださいませ。

この物語で特に評価できる点があれば教えて下さい

  • 大人になったけいおんキャラを描いた所
  • 作品の枠を超えたキャラの掛け合い
  • 随所で見られる原作小説とゲームネタ
  • ライブの選曲
  • 『輝き』というテーマ
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