遊戯王Arc―Ⅴ The Revenge of Blue-Eyes 作:青眼
とても大切で。今でも忘れられない大切な日々。
―――そして、全てが終わった日の事を。忘れるなとでも言わんばかりに、脳裏に焼き付いたそれが語り掛けてきた。、
――――耳をすませば、聞き慣れてしまった声が耳をよぎる。目を閉じ思い返せば、見慣れた光景が瞼の裏に蘇る。どちらも自分にとって大切な物だった。生まれ育ち、成長してからは自国のあちこちを相棒と共に駆け巡り。ある程度の地位を得てからは後の世代の事を想い教育に手を伸ばさんとした。幼少の頃からの夢を忘れた事は無かったが、自分が目指したあの世界へ足を踏み入れた自分は変わってしまったのだと痛感したからだ。
だからこそ、自分が信じ貫いたものをこれから生きる者達の為に動いた。齢二十にしての行動にメディアは素晴らしいとここぞとばかりに記事として取り上げられたが、嬉しくもあり鬱陶しくもあった。だが、結果として自分は有名となり。敵対する者も増えたが、仲間になった者の方が増えていった。周りの人と繋がり、多くの好敵手たちと切磋琢磨する。そして、いつかあの世界の頂点に立つのだと夢見ていた。
だが、その光景は一瞬にして崩れ去る。平凡ながら綺麗だった街通りは廃墟に変わり。耳に聞こえてくるのは大勢の人の悲鳴と、崩壊するビルの音や何かが破壊された爆発音。だが、それらを度外視してでもなお余りある巨大なナニカが雄叫びを上げる。
―――それは、一体の龍だった。今なお膨張を続ける巨躯。禍々しい緑と黒が入り交ざった邪龍は、従えた魔物たちを駆使して迫る敵を粉砕していく。それを愉しむような笑い声が廃墟となる街に轟き渡る
『さぁ! 我に挑む者はおらぬのか! 我をここまで成長させた、あさましく、愚かな人間達よ!!』
邪龍が人の言葉を話す。否、あの邪龍は元々人間だったのだ。あることをきっかけに龍となり、人間達の生きる世界を壊滅へと追い込んだ。多くの者があの龍へ戦いを挑んだ。だが、文字通りこの世界の覇者である彼に敵う者はおらず。一人、また一人とその命を散らしていく。阿鼻叫喚、地獄絵図とは正にこのこと。人間達は自業自得でこのような危機を引き起こしたのだ。ならば、それを受け入れるのもまた天命だろうと諦めかけた。
だが、邪龍に挑んで散った者の中に教え子がいた。自分の教えに則り、龍に挑んだのは蛮勇としか言えない。だが、自らの教え子が脅威に立ち向かったというのに。師である己が向かわずとしてなんとする。いつの日か、こんな日が来るのだろうとは理解していた。一人で敵う相手ではないということは重々承知していた。
―――だが、自分には共に付き合ってくれる最高の相棒がいる。
『―――悪い。こんな貧乏くじを引かせちまった』
決戦の地に向かうまでの会話は質素だった。一言、二言と言葉を返すだけのもの。だが、それだけで十分だった。もう着ないだろうと仕舞っていた足元にまで伸びるロングコートを羽織った彼は、隣に立って付いてくる女性に言葉を贈る。謝罪された彼女は一瞬だけだが目を丸くし、直後にくっくっと笑みを零しながら彼の背を叩いて鼓舞する。
『気にしていないよ。それに、付き合ってくれって言ったのはそっちでしょ? 最後まで付き合ってあげるからさ。行こうよ、相棒』
男性の前に立ち、誘うように手を差し出す。その手をゆっくりと掴み、しっかりと握る。女性らしい細い指と、男性らしい太い指が絡み合う。離れないと言いたげにしっかりと握られたそれは、これから行われるであろう壮絶な死闘を前にした最後の覚悟を確認し合う合図でもあった。
『そうだな。あぁ。その通りだった。………行こう。世界の頂点、取りに行くぞ!!!』
彼らは歩みだす。ゴーストタウン、その中央に聳え立つ不気味な塔。世界の覇者を決める決闘が行われたモニュメント。その正面に立つ龍となった憧れの人を倒すべく。今、二人の挑戦者が決闘を申し込もうとしていた――――――
二人掛かりで邪龍に決闘を挑み、結果として邪龍をあと一歩のところまで追いつめる。三人とも満身創痍ではあったが、この場に集った者は一様に獰猛な笑みを浮かべていた。
戦いの中で正気を失い狂ったからか。否である。
勝利を確信したことによる余裕からか。否である。
彼らが一様に笑っているのは、ただただ楽しからだ。一手間違えれば死に直結するような危険な決闘だが、その一手を文字通り紙一重で躱し。隙を見せた所を容赦ない火力を以て殲滅せんと猛る。
王道を征く力と力のぶつかり合い。
覇道を征く手数の多さ。
邪道とされる搦め手の数々。
命という、あらゆる生命が持つ唯一無二の物を対価として繰り広げられる想像を絶する死闘。だからこそ、各々が持つ力と技の全てを叩き込むだけの価値がある。文字通り決闘なのだとこの場に居合わせた三人の
覇王は、このような時間が、永久に続けばよいのにと。
男は、憧れの背をようやく捉えたという充足感を
女は、この戦いが終わらせられるという喜びを。
『ふ、ふは、ふはははははは!! よもやこの我が! 人間達の欲望の果てに生まれし覇王たる我を打ち倒すか! よくぞここまで我を追い込んだ。誉めてやろうぞ! 我が好敵手よ!』
「それはこっちのセリフだ。俺は、俺達は。チャンピオンである貴女に憧れてここまで来た。貴方が居たからこそ、俺達はこうしてこの場に立っている」
「貴方は希望だった。だけど、その貴方が道を踏み外してしまったならば私達がそれを止めてみせる! 次の私達のターンで決着を着ける!」
『やってみせるがいい二人の
覇王の歓喜に満ちた咆哮と共に、その配下である四体の龍が立ちはだかる。元は別の姿であったはずの四体は持ち主が覇王となった時に姿を変え、その眷属と称された下僕となった。
獰猛なる牙を顎の辺りから生やした漆黒の龍。
濁った輝きを放つようになった白の龍。
毒々しい紫を基調とした禍々しい龍。
左右で瞳の色が違うオッドアイの真紅の龍。
そして、それらを全て従える覇王龍。合計で五体のドラゴンがこの場に集っている。並の
―――ならば。それに嘆いている暇などない。臆するな。前を向け。己の信じた相棒と共に、この逆境すら愉悦に感じてみせろ。己が
――――乱入ペナルティ2000ポイント!
『むっ!?』
「えっ!?」
「誰だ!?」
突如として鳴り響くシステム音声。それは、最高潮にまで高まったこの決闘に水を差す乱入者が現れた事を示していた。覇王は己に力の増大に酔い、今回の様に変則的な決闘を受けることもある。だが、今回の様に白熱した決闘の前にそれは無粋という言葉に尽きる。だが、突如として現れた乱入者はそれを意に介さず、積み込みでもしたかのような引きで四枚のカードをすかさず発動させる。
――――それが、悪夢の始まりになるとは。この時は、誰も気づきもしなかった。
『ぐ、ぬ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 馬鹿な、我の力が霧散していく! 覇王たる我の肉体を維持出来ぬ! おのれ乱入者ァッ!! 許さん!! 断じて許さんぞぉッ!!!』
眩い閃光がフィールドを埋め尽くす。直後、邪龍が何かの左様か苦しみ悶え始める。僕である四体のドラゴンは磁石で反発し合うかのように四方へ飛び去って行く。同時に、発動した持ち主手である乱入者の体もまた四つの体へと別れて行き―――――
直後、文字通り世界に罅が入る。何かしらの力でガラスが粉々に砕けるかのように。紙を引きちぎるように世界が崩壊し始める。朦朧とする意識、崩れ始める地面に抵抗することが出来ずに体が落下していく。
下へ。
下へ。
ただただ下へと。強風と強力なGを味わわされながら自分の体がどこかへと漂流していく感覚を体感する。呆気ない幕切れに、今まで自分を立たせていた緊張の糸が切れたのか。遠くなっていく意識でそんなことを考えたが、その前にとパートナーである彼女に向けて懸命に手を伸ばす。抵抗することなく強風に充てられて逆巻く髪でも、無造作に伸ばされた手でも、何だったら彼女の着ている服でも構わない。ここまで付き合ってくれた大切な人をこの手に抱かんと手を伸ばす。
―――だが、その手は無情にも空を切る。空は分かれ、大地は砕かれ、海は渦となって荒れ狂う。この世の終わり、世界は一度。ここに終焉を迎えた。
―――此れより紡がれるは新たな物語。何一つ守れなかった非力な男が、喪ったナニカを。欠けてしまったモノを手にする為に闘争を繰り広げる
秋人「つーわけでやっとのことで復活した遊戯王小説なんだが。ちょっと設定変わってるよなこれ?」
相棒「本当にねー。というか、いきなり私達出番があって良いの? というかハゲとその娘は?」
秋人「書いてたら殺意しか湧かないから書くのやめたらしい」
覇王「それは別に構わん。いや、我がこうなったのは元を辿ればあの男のせいだから構わなくもないのだが。だが、今重大なのはこれから先の我の出番なのだが……」
秋人「別れた四人統合するまでは謎の邪念という扱いだ。仕方ないな」
覇王「ふざけるな!! ふざけるな!! 馬鹿者ぉぉぉぉぉぉぉ!!我と