ソードアート・オンライン 〜剣豪と絶剣〜 作:☆さくらもち♪
ルアとコーバッツの相性もかなり悪かったりしますので。
第74層にてひと休憩を入れていたキリト達は甲冑パーティのその着込んでいる鎧に見覚えがあった。
《アインクラッド解放軍》と呼ばれる大型ギルドの正装があのような仰々しい鎧だったと。
「キリト。あの人たちの対応頼んでいいかな?」
「ああ。ひとまず俺が話すよ」
ユウキは眠っているルアを起こすのは憚られる。
クラインやアスナは《軍》に対して良い感情を持ってはいなかった。
キリトも似たようなものだったが1番対応しやすいのは彼でもあった。
「私は《アインクラッド解放軍》所属、コーバッツ中佐だ」
「キリトだ」
「ふむ。君たちはこの先まで攻略しているのだろうか」
「
キリトの言い方は間違いではなかった。
キリト自身は未だに74層迷宮区の攻略は終わってはいなかったがルアは既に完全踏破している。
しかしコーバッツはその言い回しの意図を汲み取れなかったようだったようで。
「ではそのマップデータを
「なっ!?マッピングがどれだけ大変か分かって言ってんのか!」
珍しくクラインが声を荒らげてコーバッツの発した言葉に反論する。
迷宮区は常に命との危険があり、いつ死ぬか分からないある意味隔離された世界でもある。
宝とも言っていい迷宮区のマップデータをコーバッツは厚かましくも無償で寄越せと言っていた。
「我々は常に貴様らプレイヤーの為に日々鍛錬を積み貢献している!その対価としての要求は当然である!」
自身が正義だと。
自分達側が正義だと当然のように思い込むその思考があまりにも場違いだった。
キリトがお手上げだと呆れ果てているとユウキが静かに頷いていたのを見る。
そのユウキの視線の先には不機嫌そうにするルアの姿があったのを見て察していた。
「んだと……」
「よせクライン。コーバッツ、俺はまだ攻略し終わっていない。一緒に組んでるメンバーが踏破してるんだ」
「ならば提供してもらおう」
「俺が欲しいわけじゃない。あんたが交渉してくれ」
「……マップデータを持っているのは誰だ」
威圧的に喋るコーバッツに手を上げたのはルアだった。
元よりマップデータに関してもルア以外は未だ探索中である。
「ふん、誰かと思えば子供ではないか。貴様ら我々をバカにしているのか」
「いいや?あんたがバカにしてる子供がまさしくマップデータの持ち主だぞ」
コーバッツはこんな子供が持っていると思っておらず、誰かが隠しているのだろうと考えた。
そして威圧的に
「マップデータの本当の持ち主を言うがいい」
「……教えた所で何かあるの」
「我々が74層のボスを見事撃破してみせる為に決まっているだろう!」
「ふーん。そう。それで、マップデータの対価は?」
「そんなものあるわけがないだろう!!このゲームから貴様らを解放する為に無償で提供するのは義務に決まっている!」
どこまでも自己中心的な思考にルアは嫌気がさしていた。
自己中心主義だったとしても無能と有能がはっきりとしており、ルアの中ではコーバッツは圧倒的な無能だった。
連れているメンバーも疲弊を隠せていないのは指揮するコーバッツの無能さを表していた。
「義務?そんなの知らない。渡すメリットが分からない」
「この……クソガキが!」
未だに渡そうとしないルアの姿勢に苛立ちが極まったコーバッツは持っている武器を抜いてルアに斬りかかった。
あまりにも突拍子な行動にユウキも反応が遅れてしまっていた。
「貴様が渡さんのが悪い!義務すら遂行出来んとは愚か者だ!」
ソードスキルが立ち上がったのを見てルアはその威力を減らそうとしつつ、あえてダメージを貰った。
「僕に攻撃するって、本当にバカだね」
「
無差別にプレイヤーに攻撃を当てた時点でカーソルの色は無犯罪の緑から犯罪者の橙へと。
そして殺人者には赤にカーソルが染まる。
「っ……貴様ぁぁぁぁぁ!!!」
もはや技術すらない力に任せた一撃。
しかしそれは当たれば致命傷ともなるだろう。
当たればの話だった。
ルアは腰を低く屈めて抜刀の構えを取った。
「…………『無明剣』」
すぐそばにいたユウキですら微かに聞き取れた程度の声量。
ソードスキルと判定されなかったが、その膂力は確かにソードスキルすら上回る火力。
目で追うにはあまりにも早すぎる神速の速さの抜刀術はコーバッツの持つ片手剣を一撃で破壊した。
「な……ん、だと……」
「ねえ」
片手剣を斬ったルアはコーバッツに目もくれず、彼が率いていたメンバーに向かって声をかけた。
「ひっ!」
「このゴミ、持って帰って。要らない」
冷酷な眼差しはユウキですら初めて見る。
人を射殺せるのではと思えるほどの濃密な殺気と殺意があった。
「は、はい!」
無能な上司のせいでとばっちりを受けた兵士達は怯えながらも手早くコーバッツを回収すると転移結晶ですぐさま撤退していった。
その姿が完全に消えるまでじっと視界から離さず見終わる。
「……は、ふ」
一息つくと興味がなくなったようにルアはユウキに飛び込んで抱きついた。
「ぎゅー」
「ルア……今のどうやって?」
「ん……武器の、弱い部分。そこに強い衝撃与える」
コーバッツが持っていた片手剣を観察し、どこが1番弱いのかを瞬時に理解するとそこに向かって攻撃しただけに過ぎなかった。
それでもそのような技術は何人も持ち合わせれるわけがなかったが。
「いや……すげえな。俺と同じ刀を使ってるとは思えなかったぜ」
同じ武器カテゴリでありながらもその動きはクラインをゆうに超えていた。
「……言い方が1番気に食わない。今までで」
「ごめんよ。寝てたのに起こしちゃって」
「んーん。いい」
「やっぱり《軍》は良い思い出が少ないわね」
「ああ。第1層を支配してるからかプレイヤーからも印象は良くないだろうからな」
《アインクラッド解放軍》と仰々しい名前をつけていながらもその実は利益を求めた集団。
第1層の主街区を支配し、転移門を使おうとすれば料金請求。
それどころか第1層に住むプレイヤーからは税と称した徴収。
犯罪に半分手をつけていると言われているぐらいに腐敗した組織だった。
「……そろそろ、行く?」
「そう……だな。休憩も出来たし。クライン達はどうするんだ?」
「キリト達がボス戦ってならこのまま続くぜ」
「ボスかー……」
どうするか思案しているとキリトの戦い方を見ていたルアが少し気になった。
「キリトは、片手剣なのに、盾使わないの?」
「あー……」
「確かに。キリト君が盾使ってるところ見たことがないかも。私はスピード重視だから使ってないだけなんだけど」
「ボクもだねー。ダメージよりスピードのが高いから盾は使ってないや」
「なんか怪しいね?キリト君」
アスナにじりじりと寄られるキリトは苦笑いしつつ、どう言い返そうか考えていた。
「まっ、いいや。いつか分かるでしょう?」
「……そういうことにしておいてくれ」
ガッカリと項垂れたキリトは立ち上がると武器を顕現させる。
「じゃ、ボスの顔見せまで行こう」
「あいよ。俺らは後ろから行くから先行っといてくれ」
クラインは仲間達と行くために遅れていくことにした。
それを聞きいれたキリト達は休憩場から立ち上がるとボス部屋目指して攻略を再開する。