ソードアート・オンライン 〜剣豪と絶剣〜 作:☆さくらもち♪
第50層主街区にて。
辺りをざわつかせる光景が見えていた。
「ルア〜」
「ん……なに」
SAOにおいて絶対的強者である少女があまり変わらないだろう歳の少年に抱きついている光景だった。
「ユウキ……歩きづらい」
「う……嫌なら止める」
「もうちょっと緩めて」
煩わしそうにしつつも決して嫌ってはいない様子が見て取れた。
そのまま主街区であるアルゲートの細道を通っていくと一つの店舗に辿り着く。
「よう。らっしゃい」
中にいるのは黒人ばりの長身男性。
その気になればドスを利かせれるだろうダンディな相手だった。
「久しぶり」
「ああ……久しぶりだけどよ、なんでユウキちゃんがいるんだ?」
「エギルさん?」
「ルアが誰かといるなんて初めて見たぞ?珍しいこともあるな」
エギルが言うようにルアは基本的にはソロプレイヤー側の人間。
従って立ち回りもソロ特有の動きになるためパーティを組むことなどなかったのだ。
「しっかし、そんなに密着してるってことはそういう事か?」
「いや、違う」
想像された内容が何となく察したルアは即座に否定する。
すぐ側にいたユウキは大変不服そうな様子だったがルアは見て見ぬふりをした。
「サボってないで買取やって」
「分かった分かった」
お手上げになったエギルは大人しくルアの買取を受けると次々と出てくる品物に驚愕を通り越して呆れ始めていた。
「これ全部ルアの?」
「ん、そう」
「こいつがいつも持ってくる品物は毎回驚いてたら苦労するぞ?ユウキちゃん」
ルアは特に気にしていないがSAOでは入手困難とされるアイテムや素材などがあった。
『プネウマの花』や『クリスタライトインゴット』の他に『黒紫鋼』など武具の素材としても最高級とされていた。
「買取はいいが……金額的にうちじゃ一括は無理だぞ」
「別に構わない」
「ならボクが黒紫鋼を買い取っていい?」
「そりゃあ有難いがルアとしてはどうなんだ?」
「欲しいの?」
「うん。ボクの武器もそろそろ新調しないと厳しいから」
ユウキが使っている片手剣は未だ扱えるものの火力不足は否めなかった。
黒紫鋼を使った武器は一線級の軽量武器な為、ユウキの戦闘スタイルでは最適とも言えた。
「なら普通にあげる」
「ホント?ありがとう!」
ストレージから新たに黒紫鋼を取り出してユウキに手渡す。
エギルに見せた分だけではなくまだ持っている辺りがルアの所有量の底知れなさを伺えた。
「とりあえず値段はある程度出せたがな。売り終えるまで時間がかかることは覚えておいてくれ」
「分かった」
「あとユウキちゃん。ルアのこと、よろしく頼む」
「まっかせて!」
ルアの事情をよく知りはしないエギルでも子供のルアがあれ程までに達観してしまっている環境に違和感を覚えてしまっていた。
だからこそ近くにずっといるかもしれないユウキに彼を託そうと考えたのだろう。
二人が店から出ていくと店の2階からまた二人が降りてくる。
「はぁ……」
「どうしたんだ?エギル」
「いや、さっき来てた二人がどうなるのか気になってな」
「どんな人なんですか?」
「ユウキちゃんのお相手になるんじゃないか?お互いして気を許している様子だったぞ」
「ユウキの……?そんなの初めて聞いたけれど……」
「アスナ、つけてみるか」
「ええ。気になるもの」
ーーーーーーーーーー
エギルの店を出た後、ルアとユウキは今後どうするか迷っていた。
元より狩り場のために組んだパーティだったが意外にも居心地が良く感じていたルアはこのまま居ても良いと思っていた。
「ルアはどこか行くの?」
「今日はもう宿に行く。そっちは?」
「せっかく黒紫鋼を手に入れたから武器を新しくしたいかなあ……」
「……そう。だったらパーティ解散しようか」
「そう、だね」
何処と無く解散したくなさそうなユウキを見ていて気になったルアはパーティ解散をするとフレンド申請を送った。
「へっ?」
「気が向いたら送ってきてくれればいい。今日はお互い解散」
「……うん。ありがとう」
申請されたユウキは喜んで承諾すると笑顔でルアと別れた。
解散してしまったがフレンド申請されるぐらいには信頼してもらえているのだろうと信じて。
「えへへ……」
ユウキと別れたルアは後ろから二人組が《隠蔽》で隠れながら着いてきている事に気がついていたが、その格好を視界に入れて察するとすぐに宿屋に入った。
「《黒の剣士》に《閃光》に大いに関係するユウキと関わったのはどうなることやら」
独り言を呟きながら個室の鏡に写る自分を見つめた。
「もうちょっと一緒に居てもよかった」
美しいサファイアの瞳が憂うように伏せられる。
宝石の如きその蒼眼と少し長めの銀髪はルアが自分の容姿で一番の自慢だった。
大好きだった両親の一部を受け継いだ気がして。
「……寂しいな」
その感情の言葉は誰にも伝わらない。
一人の時間が早く過ぎるようにベッドに潜り込む。
「……来る、のかな」
ルアが指を滑らせたのはユウキと表示されたメッセージ。
自身が今どこの宿屋の号室にいるかを送ると宿泊室のドアの設定もフレンド限定にする。
「きたら、いいな」
ぽつりと零れた言葉は毛布に吸い込まれていった。