セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
ちょっとだけなんですけど体調崩してしまいまして…
コロナが流行している今の時期では単なる風邪でも職場では重く見てしまうので、念には念をで休めと休暇を頂いたので休んでいました。
ちょっとだけまだ熱っぽいですが、仕事にも復帰したので執筆も再開させて頂きました。
こんな作者ですが、これからも応援してくれると大変ありがたいです。
では本編どうぞー
少女は気付くことなく叫び続ける。
叫んだその内容が自らの正体を明かしている事に、
その事実が後々自らの首を絞めて苦しめる事に気付くことなく叫び続ける。
高ぶる感情を声に変えて、叫び続ける。
「誰よりも響さんを信頼していた貴女がッ!!誰よりも響さんを守りたいと願った貴女がッ!!響さんを悲しませてッ!!響さんを傷付けてッ!!その挙句に脚や腕や声を奪ってでも連れて行く?ふざけないでッ!!!!貴女が求めていた答えはそんな事なの!?貴女が求めていた温かい時間はこんな物なの!?貴女が…貴女が得たかった未来はそんなふざけた物だったんですか!!!?」
言葉が止まらなかった。
口を止めねばならないのに、今後を考えるとこれ以上下手な事を叫ぶわけにはいかないのに。
それでも、止められなかった。
許せなかったのだ。
小日向未来の悩みを知る者として、そして彼女が見つけた答えを知る者として、今の彼女が生み出してしまった歪んだその答えを許す事が出来なかった。
だから叫ぶ、だから止まらない。
胸から次々と込み上げてくる感情を言葉に変えて、セレナは叫び続けた。
そんな言葉を聞いた小日向未来は戸惑い、そして困惑した。
何故なら、それを知るのはこの世でただ1人だけしかいないのだから。
「………どう………して………」
小日向未来の脳裏に浮かんだのは1人の少女。
自身よりも幼いのに時折見せる大人びた姿が印象的で、誰よりも優しく、誰よりも強い心を持ち、そして誰かの為に自らを犠牲に出来る少女が、
――小日向未来にとって2人目の親友であるキャルしか知らないそれを何故貴女が知っているのか―――
そんな疑問に対して自然と答えは出る、出てしまう。
だってそうだろう、それしかないのだから。
そう、あの仮面の少女の正体は――――
「違う…違う!!」
浮かび上がったその答えを小日向未来は否定する。
そんな筈がない、ある筈がないと否定する。
あのキャルちゃんが、誰よりも優しい彼女が、誰よりも戦場に相応しくない彼女がこんな場所にいる筈がないと否定しようとするが、生み出してしまった疑問は次々と新しい疑問と答えを作り上げてしまう。
思い返すはあのライブ会場の出来事。
自ら囮となり、ノイズに追われながら姿を消した彼女を思い返す。
あの時は彼女の無事に安堵し、その喜びで浸っていたからこそ考えもしなかったが――考えてみると可笑しい話であった。
ノイズの存在理由は人類の抹殺。
響達が持つシンフォギアと言う対抗手段がない一般人ではノイズ相手に逃げ切る事も、撃ち倒す事も出来ない。
ノイズに一度狙われたら…死しかないのに――
それなのに、あの子は無事に帰還した。
殺意を振りまきながら追跡していたノイズから無事に逃げ、生還してみせた。
――どうやって?―――
どうやってあのノイズから逃げ切れた?
体力なんて存在しない、一度狙った相手を灰とするまで追いかけてくるノイズを相手にどうやって逃げ切れたのだ?
――目の前にある姿に答えはあった。
「違う…」
可笑しな点はそれだけではない。
前に皆でショッピングに行った時、彼女は別れてすぐに姿を消した。
あの時だってそうだ、いくら足が速くても僅かな時間で姿が見えなくなる程の速度で、なんて無理に決まっている。
ならばどうやった?
――目の前にある姿に答えがあった。
「違う…違う…!!」
一度始めてしまった疑問は次々と更なる疑問を生み出していく。
あれもこれもと、生み出されていく疑問に脳は冷静に答えを生み出していく。
その答えが目の前にあると生み出していく。
それしかないと、これしかないと答えが出来上がるに連れて小日向未来の心は悲鳴を挙げていく。
「違う違う違う違う違うッ!!」
視られたくなかった。
こんな姿を、親友に友情を超える感情を抱いているこんな醜い姿を、そして欲望を解放してしまったこの姿を、彼女にだけは視られたくなかった。
あの優しい子にだけは、こんな姿を視られたくなかったと心が悲鳴を挙げた。
そんな悲鳴を挙げる心に、神獣鏡は――――答える、答えてしまった。
「ちが―――――」
小日向未来の叫びに近い否定の言葉が急激に止まる。
まるで機械が電源を落とされたかのように急に止まった言葉に、セレナもそして響も戸惑いを見せる中―――放たれたのは光だった。
「―――ッ!!?」
狙われたのはセレナ。
未来の近くにいた響を完全に無視して突然放たれた光の数々。
殺意を以て放たれたそれらに驚きながらも躱していく。
「未来さ――!!?」
突然の攻撃にどうしてと叫ぼうとしたセレナは気づいた。
――小日向未来の瞳に光が無い事に。
瞳だけではない、口から垂れる涎が、力なく揺れ動く腕が、即座に答えを作り上げた。
――あのシンフォギアが未来さんに何かしたのだと――
実際その予想は正しかった、
小日向未来の悲鳴を挙げる心に対して神獣鏡はあくまで機械的に状況を把握。
これ以上の戦闘行為に対して≪小日向未来の精神≫は邪魔になると判断した神獣鏡は、彼女の意識を刈り取り、眠らせる事でその問題を排除した。
今の彼女は神獣鏡が持つシステムだけで動いているだけの文字通りの操り人形状態にあった。
そしてそんな状態になった神獣鏡が狙うは事の原因となった仮面の少女の排除。
彼女さえいなくなれば≪小日向未来の精神≫は通常通りに戻ると判断し、排除しようと動き始めたのだ。
その結果が、この攻撃であった。
「――ツ!!み、未来ッ!!」
無数の光に襲われる仮面の少女を見て響もまた立ち上がる。
先程までの魅力的な提案を頬を叩き気合を入れ直す事で忘れ、これ以上親友に誰も傷つけさせないと拳を構える。
だが、いざ止めようとするとどうしても一瞬だが迷いが生まれてしまう。
未来を、陽だまりを殴る事に抵抗感を抱いてしまう。
そんな響の迷いさえも神獣鏡の計算の内なのだろう。
響が生み出した僅かな隙を突く様に颯爽と距離を取ると仮面の少女へと光を放ちながら、その手にアームドギアを生成して動き始め――光を避けるのに無我夢中になっている仮面の少女の不意を打つ様にアームドギアが振り下ろされた。
「危ないッ!!」
思わず叫んだその言葉が届くよりも先に、小日向未来が持つアームドギアは叩き付けられる。
その衝撃で海水が吹き飛び、降り注ぐ海水が辺りを覆い隠す。
これだけの威力を受けてしまったのだ、自然と最悪な結末が想像される。
その結末を前に、響は――自らに怒りとそして悲しみを抱く。
覚悟が足りなかったから彼女を救えなかったと嘆き、そして今後こそ覚悟を決める。
例え彼女を、未来をこの拳で殴って求めると再度覚悟を決め直し、その名を叫ぼうとして――気付く。
降り注ぐ海水のせいでしっかりとは見えないが、海面に立っている人影が2つある事に。
それがどういう事か、即座に響は理解し、そして安堵する。
彼女が無事であった事に、未来が誰も殺してしまったりしていなかった事に安堵する。
けれども――可笑しいと響は首を傾げる。
1つは未来の影だとすぐに理解出来た、だがもう1つ――仮面の少女である筈の影が≪可笑しい≫。
≪大きい≫のだ。
彼女の姿よりも大きなその人影に響は困惑しながらもその姿から目が離せずにいた。
その姿が似ている気がしていたから、目が離せなかった。
降り注ぐ海水が途切れていく。
人影は人へ、視界ははっきりとその姿を捉えていき、そして―――――
「―――――――え」
≪それ≫を立花響は知っていた。
映像で見て知っていた。
二課において最も最重要危険生物として認識されている≪それ≫を知っていた。
だけど理解出来なかった。
どうして、どうして―――
―――どうして貴方が≪死神≫と同じ手をしているの?―――
彼女の目に映る光景。
それは―――小日向未来のアームドギアを受け止めている≪腕だけが死神と化している≫仮面の少女の姿だった。
おや?セレナの腕が?