セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第103話

  

――犠牲無くして勝利無し――

 

どこかで読んだ書物にそんな言葉があったと思い出す。

それを見た時、私はこの言葉を否定した。

犠牲を出さずに勝利する事は可能だと、

犠牲を生み出してしまった瞬間にそれはもう勝利ではなく敗北でしかないと、

私はそんな勝利を肯定しないと、否定した。

それが己が生き様だと、己が貫き通す志だと、否定した。

 

 

 

 

だが、今は思う。

それは驕りであったと、

戦場を知らぬ夢見る乙女が見ていただけの空想であったと、思い知らされた。

 

 

 

 

「………あ」

 

セレナの顔に降り注ぐは水滴と化した水。

つい先程まで共に居た家族がその身を犠牲に放った水の竜巻――否、あれはもはや水の矛と言うべきだろう。

セレナが放つ技と水の矛は1つとなり、堕ちる光を阻み、そして切り裂いて見せた。

見事役目を果たした技は、霧散し、水滴となって降り注ぐ。

顔を、全身を濡らす水滴と共に落ちてきた≪それ≫にセレナは無意識に手を伸ばす。

自身が初めて作った偽・聖遺物を、自身が初めて作った家族の心臓を、

≪トライデント≫を、その手に握る。

 

「……ぁ…あぁ………」

 

トライデントと共に降り注ぐは、≪ガリス≫だった物。

エルフナインと共に作り上げた身体が、彼女に似合うであろうと選んだ衣装が、次々と落ちてくる。

破片となって、断片となって、落ちてくる。

それは彼女に理解させる、何が起き、何が終わったのかを理解させていく。

 

「…あァ…!!…あぁぁ……!!」

 

そんな理解を、脳が拒む。

そんな事はないと、落ちてくるそれは単なる見間違いだと否定する。

壊れ逝く心を本能的に守ろうとし、目に見える情報を否定し、歪曲し、否定し続ける。

 

なれど、眼の前に落ちた≪それ≫にその否定は限界を迎える。

そこにあったのは、左手。

青いハンカチを握ったままの、左手。

つい先程自らが流した涙を拭ってくれた彼女の手と、彼女のハンカチ。

それが目の前にある、崩れて壊れて、付け根より先を無くしてそこにある。

それを視界に収めた瞬間――脳は現実を否定できなくなった。

 

 

 

「ぁ…ぁぁ……ッ!!…あぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

 

 

理解する、理解させられる、理解してしまう。

先程見た光景が幻でも夢でも仮想でもない。

セレナにとって最も守りたいと願う家族の1人が、その命を燃やし尽くしたのだと理解させられる。

他の誰でもない、セレナの為に――

 

その事実が、彼女を苦しめる。

家族の誰にも傷ついてほしくないからと1人で勝手に出て来たのに、その結果がこれだ。

自身が起こした独断がもたらした答えがこれだ。

己が選んだ選択の結末が――これだ。

 

 

――ガリスを殺したのは、私だ――

 

 

少し考えれば気付けた話だ。

彼女達の忠誠心を知っているセレナであれば、彼女達の誰かがこの選択を選ぶ可能性があると気付けた筈だ。

だが、気付けなかった。

気付く事が出来たのに気付けず、止める機会はあったのに止められず、救えたのに救えず、

親友を守りたいと、救いたいと願う心が――セレナから家族を奪い取った。

その罪悪感が、その後悔が、彼女を苦しめ、落涙させ、嗚咽させる。

その死を受け入れたくないと、けれどももう現実は変えられないのだと、どうしようもない現実に涙するセレナ。

 

だがそんな彼女の苦しみでも時間は止まる事を許してくれない。

上空ではガリスの放った最後の一撃によって幾つかに裂けた光が先程よりも威力が落ちているとは言え、尚も落ち続けている。

小日向未来、立花響両名に直撃させるには最適の威力、その為の手段も状況も出来てはいる。

なれど、唯一セレナの心だけはその状況に対応出来ない。

家族を失い、壊れかけた彼女には、今はもう立ち上がる力はない。

 

セレナとて理解はしていた。

立ち上がるべきだ、と。

彼女の――ガリスの想いに答えるのならば此処で立ち上がり、己が目的を果たすべきだと。

なれど、身体は動かない。

脚も手も、身体の全てが思う様に動かせない。

果たすべき目的を胸に立ち上がろうとしても、それを心と身体が否定する。

 

――無理もない。

セレナと言う人間は、まだ子供なのだ。

例え錬金術が出来ようが、アルカ・ノイズを作ろうが、シンフォギアやファウストローブで戦場を舞おうが、大人びた言葉を語ろうが、彼女の心はまだ幼い子供なのだ。

故に誰も死なせたくないと言う子供の様な夢を持つ事が出来た。

戦場を、世界を知らないが故に持つ事が出来た。

だが、今日その夢が所詮は子供が持つ淡い幻想なのだと知った、知ってしまった。

よりによって最悪の条件で―――家族と言う大事な人を失う事で知ってしまった。

 

その時点でもう彼女の心は折れていた。

夢を幻想だと知り、その幻想を持ち続けた故にガリスを死なせた。

≪それ≫は彼女の心を折るには容易い程、あまりにも過酷で残酷な現実であった。

 

時間さえあればもしかしたらそれを乗り越えられたかもしれない。

悲しくても辛くても、乗り越えられたかもしれない。

だが、それは許されない。

迫る光が、進む状況が、それを許さない。

 

故に、残された結末は1つしかない。

バットエンド、その言葉しか表現の仕様がない結末がゆっくりと、着実に迫り、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だあぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!ちょちょちょお待ちなさいなッ!!!!!私はそんなバットエンド迎える為に全身燃やし尽くしたわけじゃあねぇってのですよッ!!!!!てかなんですかその結末ッ!!?みんな光に焼かれましたENDとかクソゲーのクソゲーENDじゃねえっすかッッ!!!!私のマスターにそんなふざけたEND迎えさせるとかぶっ殺しますよッ!!?え?誰をって…そりゃこんな糞みたいなシナリオにしようとしている関係者もろもろ全員ですよッ!!!!!特にあの変態メガネだけはマジで殺す絶対に殺すッ!!!!!てかマスターはしっかりしてくださいなッ!!!!いや、その泣き顔も可愛いですけれどッ!!!!今はそんな事してる場合じゃありませんでしょッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――――――――え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セレナは呆然と、聴こえて来た声に、失われ二度と聞こえる筈のないその声に、顔を挙げる。

その姿はどこにもなく、なれど声は絶えず聞こえる。

力無い瞳はその声が出ている先を求めて揺れ動き、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

≪此処ですッ!!!!此処ですよッ!!!!マスターッッ!!!!≫

 

 

 

 

 

 

 

 

手に握る槍から、トライデントから聞こえる声に、彼女は困惑するしかなかった。




おかえりガリス
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