セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
許して!!絶唱するから!!(謝罪)
≪敵≫が何かを揉めている間、神獣鏡は小日向未来の身体の回復を最優先で実行。
そのおかげか全回復までには至っていないが戦闘行動に支障が無い程度にまでは回復。
LiNKER、そして小日向未来が持つ親友を想う愛の力によって高められたフォニックゲインがあるからこそ出来た荒業回復なので幾つか問題が残っているが、十分許容範囲内だ。
「(――戦闘行為継続可能、目標は依然敵対装者の排除 尚所属不明勢力である仮面の少女は最優先排除対象として認識)」
上空に浮かぶシャトルマーカー。
あれを利用すれば戦術が更に広がる。
先程は苦戦したがこれならば戦えると再度動き出そうとして――
≪敵≫が同時に二手に別れて動き始めた。
「――――ッ!!」
同時に、それも急に二手に別れた≪敵≫に対し神獣鏡は一瞬、ほんの一瞬なれどどちらを狙うべきかと迷いが生まれる。
それによって生じた隙を狙う様に仮面の少女が持つ拳銃が火を噴く。
だが神獣鏡は既にその武器を≪画≫として記憶しており、それが大した威力もないあくまで黒い手を呼び出す為だけに使われるだけの物だと知っていた。
それ故に神獣鏡は迎撃すると言う選択を選んだ。
あの弾丸が破裂し、黒い手を呼び出せば厄介だからと破裂する前に破壊しようとアームドギアを以て迎撃しようとして―――
光が爆ぜた。
「―――ッ!?(閃光弾!?)」
これまでの戦闘パターンには無い異例の手段。
閃光弾まで保有していた事に驚きを隠せず、そして視界を光が埋め尽くす中で―――
「はぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」
聴こえて来た雄叫び。
それが何を意味しているのかを神獣鏡は即座に理解し、咄嗟的に身体を守る様に腕を盾にするが――
放たれた衝撃は、そんな盾を呆気なく壊して神獣鏡を襲った。
「未来を、追い詰める?」
はい、と仮面の少女――セレナは作戦を説明する。
彼女達の目的は神獣鏡が放つエネルギーを未来自身に当てて神獣鏡を破壊する事にある。
だが、それは易々とは決まらない。
自身が放った攻撃に自ら当たりにいく――そんな馬鹿はいない。
もしもいるとすればそれは単なる自殺志願者だ。
…まあ、当たってくれるのであればこの状況では素直にありがたいが、そんな馬鹿げた妄想が現実に起きる筈はない。
だから、作るしかないのだ。
自身が放った攻撃に自分自身が当たる、そんな状況を作り上げるしかない。
それも弱い攻撃では駄目だ。
ギアを絶対に破壊できる程の威力がある大技、それに命中させなければならない。
そしてそんな大技を使う状況と言えば――
「…恐らく今彼女の身体を操っているのは未来おね…こほん、未来さんではなく彼女が持つ神獣鏡に施された防衛プログラムか何かだと思われます。それならばその行動パターンはあくまで機械的な判断になるはず…ですから――追い詰めるんです。徹底的に苦戦するまでに、そうすれば絶対にプログラムは追い詰められた状況を覆す為に大技を放つ筈、その時が――最初で最後のチャンスです」
「はぁぁぁぁッッッ!!!!」
響の拳が未来に――神獣鏡に襲い掛かる。
距離を取ろうとする神獣鏡に対し、絶対に離れる物かと追い詰める様に駆けながら拳を振るう響に、やっと目が見えて来た神獣鏡はアームドギアで迎撃をしているが、その動きは鈍い。
先程受けた一撃が回復した傷を再び呼び覚まし、戦闘行為継続の為に切り捨てた短時間では回復しきれなかった節々の小さなダメージが呼び覚ました傷に連動する様に身体を苦しめる。
おまけに―――
「響さん!!下がって!!」
叫び声に反応した響が神獣鏡から距離を取ると同時に黒い手が真上から一斉に襲い掛かる。
アームドギア、そして鏡から光を放って迎撃するが幾つかは間に合わず、身体に衝撃と共に痛みが襲い掛かる。
受けたダメージを数値に変換しながら神獣鏡は上空に浮かぶシャトルマーカ―を利用し、放った光を反射させて上下から黒い手へと光を浴びせて消滅させていくが、状況は芳しくない。
「(肉体損傷68%を突破、フォニックゲインの低下も確認…これ以上の低下はエクスドライブの継続展開が不可能となる…!!)」
段々と追い詰められていると自覚せずにはいられなかった。
神獣鏡が小日向未来の意志を使わずに2人と戦えているのは、エクスドライブが起動しているからだ。
そんな頼みの綱でもあるエクスドライブが消えれば、立花響と仮面の少女両名を相手に戦う事が出来ない。
減り続けるフォニックゲイン、そして数値で示されたダメージが限界に近づくに連れて残された手段――大技の使用も止む無しと判断せざるを得なかった。
状況はセレナの計画通りに進んでいる。
だが同時に、限界が近いのはもう1人―――
「―――ッ!!はぁ!はぁはぁ――ッ!!」
立花響の荒い呼吸が彼女の限界が近い事を嫌でも知らしめる。
作戦を話す時にセレナは響自身から彼女に何が起きているのかを聞いていた。
胸のガングニールが彼女を殺そうとしているのを、知った。
既に身体から放熱される熱の温度は更に上昇し、結晶もまた胸元だけではなく全身あちこちに小さい物でこそあるが出来ている。
――その姿はもう時間はないのだと嫌でも知らしめた。
「(響さんはもう限界が近い…急がないとッ!!)」
セレナは響には説明していないがもう1つ計画を練っていた。
未来さんが放つ大技、それを未来さん自身に直撃させる際に――響さんにも直撃させる。
彼女の胸のガングニールも、神獣鏡と同じくシンフォギアだ。
それならば神獣鏡の光で破壊できる可能性は十分にある。
最低でも今から船に帰らせて治療を受けさせるよりも、見殺しにするよりも何倍もマシな選択だ。
その為に大技を早く使ってもらわなければならない。
けれども―――
「(追い詰めている…追い詰めているけれど、後1つ足りない――ッ!!)」
上下から迫る光の雨。
それを時には躱し、時には腕に纏わり付く≪それ≫を盾に凌ぎながらも攻撃を継続するが、神獣鏡が大技を放つに至る最後の一手が足りないと焦っていた。
迫るタイムリミット、迫る死、迫るバットエンド。
最悪な結末が幾度も脳裏を過り、その度にセレナは誓った覚悟を胸に戦う。
大事な人を、救いたい2人を救う為に、
「そうです…守るって誓ったんです…大事な人を、守りたい人を!!だから…だから絶対に2人を救って見せるッッッ!!!!」
少女は覚悟を胸に叫び、望む結末の為に戦い、そして――――
《そう、それだ。それだからこそアタシは――アンタを選んだ》
二課全体に警報が鳴り響く。
機器は高らかに警報音と共に異常を知らせ、計測される機器は戦場で感知した数値を変換し、≪それ≫を表示する。
浮かび上がる≪それ≫に、弦十郎は…否、二課の誰もが驚愕し、そして―――
「―――馬鹿な…馬鹿なッ!!」
叫ぶ弦十郎の視線の先にあるのは、≪ある物の名前≫。
失われたそれを、立花響が受け継いだそれを、≪死神≫が扱ったそれを、
≪ガングニール≫の文字と共に、画面に映し出されたのは――白い撃槍を持つ仮面の少女の姿だった。