セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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どうせなら100話と言う区切りの良い所までは書いて社畜に戻ろうと思います(白目)仕事行きたくなーい(アヘ顔)

あ、それと皆さんコロナには本当に気を付けて下さいね。


第100話

 

「――――タ―!!――マス――――!!」

 

 誰かが呼んでいる、聴こえる呼びかけにキャロルはゆっくりと目を覚ます。

 

「マスターッ!!嗚呼…ご無事で何よりです…」

 

 そこにいたのは、ファラ。

彼女に抱えられる様に横になっていたキャロルは状況が理解出来ないと起き上がり―――目の前に広がる惨状に驚愕するしかなかった。

玉座の間の壁が、崩壊している。

壁は無くなり、瓦礫が部屋の中に散乱している。

その被害は玉座の間だけに留まらず幾つもの部屋の壁を破壊しているのが此処からでも確認できる程にシャトー内部は破壊し尽されていた。

 

「…何が起きた」

 

 目の前の惨状から眼を背けたくなるキャロルであるが、受け止めるしかないと覚悟を決め、そうファラに聞くと彼女は遠慮がちに説明し始めた。

マスターであるキャロルの命令に従ってシスターズの出撃を防ぐ為に2人と交戦した事、両名を追い詰める事が出来たが彼女達が奏でる歌声から生まれたフォニックゲインが未完成状態だったレイアの妹であるレアとレイ、ミカの妹であるミウを起動させてしまった事。

そして――ミウがミカとの交戦状態の際に自らの偽・聖遺物を顕現させようとして、失敗。

暴走したエネルギーはシャトー内部で巨大な爆発となって拡散し、シャトーに大きな損害を与えた。

 

「現在レイアが主体となって被害状況の確認をしておりますが…ダメージは外壁部にまで達している可能性が高く修復には時間が掛かるかと…」

 

――何ともまあ最悪な状況を作り上げてくれた物だとキャロルは舌打ちをする。

恐らくはファラの言う通りミウとやらが生み出した爆発はシャトーにかなりのダメージを与えている。

修復作業を急ピッチで行うとしても予定していた計画始動を少しばかり遅くする必要が―――

 

「――ッ!!そうだ!!あいつは…馬鹿弟子はどうなったッ!!」

 

 思い出すのは自らの弟子。

友である小日向未来を救うべく独断で出撃し、今もなお戦場で戦っている筈の彼女。

その安否が気になったキャロルがそうファラに問うが――彼女は首を横に振る。

 

「…現在ミウの起こした爆発によってシャトーの機能が幾つか使えなくなってます。その影響で映像は途絶えており、彼女の様子は不明のままで……」

 

くそったれッ!!思わず吐いた毒舌と共にキャロルは外へ、弟子の下へと向かおうとするが、その身体は思う様に動かない。

恐らくは爆発の余波を受けた影響だろうが、今は思う様に動かない己の身体にさえ煮え繰り返る様な腹立たしさを感じざるを得ないが………その腹立たしさは苦々しい想いへと形を変える。

何故なら、気付いたからだ。

例え身体が動けたとしても、キャロルが出撃すると言う事は必然的に錬金術を、錬金術師の存在を露見してしまう事態となる。

そんな事態を許してしまえば、計画に支障が出るのは確定。

キャロルにとって最も優先すべきは父からの命題を果たす事にある。

その為に長年を掛けて用意した計画だ、絶対に失敗は許されない。

だからこそ救援に行く事を禁じ、自らも心を殺し、命令を無視してまでも救援に行こうとしたシスターズの出撃を封じたのだ。

 

――それが自らの弟子を切り捨てた事になると分かっていてー―

 

そこにどんな理由があろうとも、選んだ選択がもたらす答えはそこに至る。

自らの計画の為、父の命題の為に、キャロルは切り捨てたのだ。

自らの愛弟子を、醜いこの世界で初めて得た守りたいと願う存在を―――キャロルは切り捨てたのだ。

 

「…それとマスターもう1つご報告が」

 

「…何だ報告しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ファリスを始めとするシスターズは捕縛しましたが…ガリスだけ取り逃がしてしまい、その姿はシャトーにありません。恐らくはセレナの下へ向かったのかと」

 

 

 

 

 

 

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腕に纏わり付く≪それ≫が姿を消し、代わりに顕現したのは白い撃槍。

それをこの場にいる面々は皆知っていた。

ガングニールの本来の持ち主、家族を奪ったノイズへの怒りで戦場へ挑み続けた少女。

≪天羽奏≫が持っていたそれを、今はセレナが握っていた。

 

「―――これ、は」

 

セレナはこの撃槍を情報だけではあるが知ってはいた。

だが所詮は≪知ってはいた≫程度だ。

そこまで詳しくは知らないと言うのが本音だ。

知っているのは天羽奏と言う装者が所持していたシンフォギア≪ガングニール≫のアームドギアである、と言う事位だろう。

それがどうしてこの手にあるのか、その理由も意味も全く以て不明でしかない。

 

だが、何故だろう。

槍を持つ手が不思議と馴染む。

まるで以前から…そう、ずっと前からこの槍を扱っていたかの様な一体感さえ手から感じ取れる。

使い方も、技も、何もかもが分かる。

 

「――――ッ」

 

どうしてこの槍が突然現れたのか、どうしてこの槍の使い方を知っているのか。

幾らでも沸く疑問、だがセレナはそれを考えずにただ槍を――ガングニールを構える。

親友を助けたい、その為ならば使える物は何でも使うと言うセレナの想いに白い撃槍もまた答える。

矛が回転し始める、空気を纏い、徐々に回転速度を上げて纏わる空気を巨大な竜巻へと変貌させていく。

唸る風音と共に巨大化していく竜巻は巻き込む者を容赦なく切り裂く風の刃へと成り代わっていく。

その技を、二課は、クリス以外の装者は知っていた。

 

「あれは…あの技は…」

 

「あれって…奏さんの…!!」

 

≪LAST∞METEOR≫

 

天羽奏が得意とした大技の1つが時を超えて今此処に再臨しようとしていた。

それに対し神獣鏡は遂に待ちに待ったその選択を選んだ。

 

「――――ッ!!」

 

神獣鏡は手に持つアームドギアを空高く放り投げる。

放たれたそれは高く高く、空を飛び、遂には大気圏を越えて宇宙へと辿り着き、鏡となってエネルギーを貯めこんで地上へと矛先を向ける。

 

≪天光≫

 

神獣鏡のエクスドライブが可能とする超大規模型攻撃。

その威力は間違いなく神獣鏡が持つ技の中では一番の大技だろう。

だが、ただでさえフォニックゲインが低下している中での大技使用は、ある種の賭けだ。

恐らくこの一撃を外せばどう足掻いても神獣鏡には勝ち目がない。

それ故に神獣鏡はこの一撃に全てを込める。

残ったフォニックゲインを、残った全ての力を、この一撃に注ぐ。

 

「――ッ(駄目だ、あの威力では――!!)」

 

神獣鏡が放とうとしている大技は余りにも威力が大きい、それは見ただけですぐに分かった。

このままの一撃を2人に受けさせたらシンフォギアもろとも2人を殺してしまいかねない。

だから、威力を下げる必要がある。

ーーそして、それが今できるのは、この場において恐らく彼女だけだろう。

それ故に彼女は逃げない。

手に握るガングニールにエネルギーを貯めさせながら、迫るであろう一撃を睨みつける様に迎え撃つ。

 

空から向けられるは神獣鏡の文字通り全てを込めた最後の一撃。

対するはセレナが持つガングニールと天羽奏が得意とした一撃。

 

空と地、両者は互いの想いを以て向き合い、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーッ!!!!」

 

「やぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空から光が、地からは竜巻が、放たれた。

 

 

 

 

 

 

 


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