セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第101話

 

≪それ≫は空から舞い降りる。

勝つとか負けるとか、生きるとか死ぬとか、そんな事が些細な出来事に思える位に≪それ≫は純粋かつ単純で明確に等しく視る者全てにその存在を知らしめた。

 

「――うそ」

 

誰かがポツリとこぼしたその一言はまさに艦内に居る全ての人間の言葉を代理した物となった。

≪そこ≫にあったのは、≪光≫。

雲を、空を、天を蹂躙しながら迫る巨大な光。

その光景は以前に死神が放ったガングニールの光を連想させるが、あれとは違う。

あれにはまだ≪慈悲≫があった。

苦しむ間もなく殺してやろうと言う慈悲がまだあった。

 

だが、≪これ≫は違う。

そこにあるのは純粋な≪敵意≫だけだ。

苦しもうが恐れようが悶絶しようがそんなもの関係ない。

あるのは、≪平等な死≫

老若男女、敵味方、無機物有機物、全てに等しく死を。

 

空から迫る光にはその力があった。

死を等しく配り、死を等しく与え、死を万物関係なく捧げる、それだけの力があった。

――無論、それだけの力を対価無しに払えるわけはない。

 

「ー―ッ!!げほッ!!」

 

小日向未来の口から漏れだすは血液。

この一撃を放つのに神獣鏡は小日向未来の身体に残された全てを捧げた。

フォニックゲイン、精神力、そして――生命力さえも、だ。

それを証明するかのように小日向未来のエクスドライブが解除されていく。

もはやエクスドライブを維持するだけのフォニックゲインさえも今の彼女には残されていない。

今の彼女にあるのは、シンフォギアを起動維持出来るだけのフォニックゲイン、そして――生命活動に必須な最低限の生命力だけだ。

 

それ故の、吐血だった。

一度は回復させたとは言え、追い込みに追い込んだ身体は限界を迎え、悲鳴をあげる様に小日向未来に吐血と言う形で警告を知らしていた。

だが、そんな警告も今の彼女には無意味でしかない。

流れる血液をそのままに神獣鏡は見据える。

この一撃で死なねばならない、絶対に殺さねばならない敵を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

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迫るは等しい死を運ぶ巨大な光。

対するは小娘1人、槍1つ。

なんともひ弱な迎撃であろうかと誰もが思うだろう。

………その思いは必然だ。

いくら目的があの光の撃退ではなく威力の軽減化とは言え、迎え撃つにはあまりにも少なすぎる戦力だ。

それ故に少女は想う、どうして私はアレに立ち向かっているのかな、と。

 

だが、その疑問に対してすぐに解答が頭の中で出来上がった事に思わず笑ってしまう。

そうだ、そうだった、と。

それしかないですね、と。

 

「――未来お姉さん」

 

出会いは偶然だった。

ガリィさんと共に街へ出て、そこで偶然出会っただけの縁。

普通であればそこで途切れてもおかしくない程に弱弱しいそれを、小日向未来は握り続けてくれた。

そのおかげで続いた縁はセレナと言う少女に大きく影響を与え続け、セレナにとって家族以外で初めて≪守りたい≫と≪一緒に居たい≫と願う相手となった。

そんな彼女が今もなお苦しんでいる。

親友を助けたいと言う願いを悪用され、戦って傷つき、苦しんでいる。

ならば、十分だ。

それだけで十分すぎる位だ。

それだけあれば―――アレに立ち向かう理由となった。

故にセレナは逃げない。

助けたい人を助ける、あまりにも単純なその願いを叶える為にーー彼女は戦うのだ。

 

 

「やぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 

咆哮と共に放つは竜巻。

ガングニールの、天羽奏のアームドギアから放たれるそれは迫る死に比べればなんと貧弱だろうか。

サイズ差も威力も、比べる事さえも愚かだと認識せざるを得ないだろう。

なれど、その一撃には迫る光には無いモノが込められている。

≪友を助けたい≫と願う強い想いと、それに答えるガングニールの想いが、込められていた。

 

放たれた両者の技が激突する。

轟音を鳴り響かせ、世界中に振動をもたらし、激しくぶつかり合う。

堕ちる光を前にセレナの放つ技は貧弱でしかない。

なれど、その貧弱は――堕ちる光の動きを緩める。

1人と1振りの想いが力となって光を押し止めてみせていた。

だが―――

 

「―――ッ!!ぅぅッッ!!!!」

 

神獣鏡があの光を放ったのに多くの対価を必要としたのと同様に、セレナもまた対価を払っていた。

噛み締めた歯からは血が溢れ、技の衝撃に耐えきれない身体は次々と傷を作っていき、そこから血が流れ落ちていく。

セレナを襲うは――激痛。

鍛えた大人であろうともすぐに悲鳴を挙げてしまう程の激痛がまだ幼い少女のセレナに襲い掛かり続ける。

激痛に全身が蝕まれる中で、彼女の心の弱い部分が命じる。

逃げろと、槍を離せと、

誰も責めやしないからと、痛いのは嫌だろうと、悲鳴と共に魅力的な誘いを続ける。

 

しかしセレナはそんな心の声を踏みしめながら、前を見据える。

絶対に諦めるものかと、絶対に逃げるものかと、前だけを見据えて雄叫びと共に技を放ち続ける。

迫る光にガングニールが押し負け始めてもなおも諦めずに少女は叫び続ける。

血を吐き、血を流し、全身が悲鳴を挙げても、少女は諦めない。

助けると誓ったその想いを果たす為に。

例えこの身を犠牲にしてでも絶対に助けると誓った想いを燃やしながら彼女は抗い続けてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聴こえた叫び声に、聞き慣れたその声にまさかとセレナが意識を向けると同時に海面に動きがあった。

歪み、形を変えて、海水を竜巻へと変貌して上り詰めていき、セレナの放つ技と共に光へと衝突する。

 

「――まさか…」

 

セレナが知る中でこんな技を扱えるのは2人だけしか知らない。

そして先程聞こえたあの声、そこから連想できるのは―――ただ1人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ガリスッ!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいッ!!マスターの忠実なる僕!!ガリスですよマスターッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに居たのは彼女が作った人形の1人。

マスターの為に仕え、マスターに奉仕する事が一番で、姉に対してはちょっとだけお茶目な人形、ガリスの姿がそこにあった。

 

 


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