セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第122話

 

「――そうか」

 

鎌倉にある風鳴の屋敷。

その一室にて風鳴一族の長であり、この国を裏から支配していると言っても過言ではない男《風鳴訃堂》は二課に潜入させている手駒からの報告を聞き終えると、通信を切り、目の前の暗がりに視線を向ける。

 

「…《あれ》の出現もお主の想定通りか」

 

そして問う。

暗がりへ向けて、風鳴訃堂以外誰も入る事が叶わない部屋の中へ向けて、誰も答える人などいる筈もないと言うのに、問う。

なれど―――

 

「いえ、あれの出現は予定外……ではありますが、嬉しい誤算とも言える結果でもありますね」

 

その暗がりから返事を返しながら姿を現したのは――アダム・ヴァイスハウプト。

パヴァリア光明結社統制局長であり、錬金術師でもある男の突然の登場に、風鳴訃堂は驚きもせず、ただ睨みつける様にその男を見据える。

 

「…《あれ》の二度目の出現の予定は当分先だった筈だが?」

 

言葉と共に向けられる鋭い眼差しはさながら野生の獣の視線と言えば良いだろう。

見られるだけで感じる圧倒的な圧。

そこらの人間であれば睨まれるだけで良くて気絶、最悪命を絶ってしまえそうな程にその圧は重い。

 

「(齢100を超えて《これ》とは…いやはや、敵に回したくないものだねぇ…)」

 

その姿は、まさに鬼人とでも呼ぶべきだろう。

恐らく今この瞬間でさえこの男は一切油断していない。

アダムが下手な動きをすれば、即座に戦いの火蓋が切って落とされるだろう。

無論、アダムが全力で事に当たれば《負けはしない》だろう。

だが、《勝てもしない》。

この男の――風鳴訃堂の全力とぶつかる、それはそう言った類の結果しかもたらさない不毛なものだ。

だからこそ、アダム・ヴァイスハウプトはこの男を選んだのだ。

 

「ご安心をミスターフドウ。確かに《彼女》の二度目の出現は想定外ではありますが、計画全体から見れば誤差の範囲です。むしろ此度の出現により計画を何段階か前倒しに出来る可能性さえあります。ですからどうかご安心を。貴方様の望まれるこの国を守護する絶対の力は必ず手に入ります、ボクと貴方が共に歩む限り、ね」

 

――己の夢を、人類の相互理解を阻むバラルの呪詛を解き放ち、この星の支配者を《神》から人へと譲る、それを叶える為に――アダム・ヴァイスハウプトは風鳴訃堂を同盟相手に選んだのだ。

 

男は望む、愛する人類の発展とこの星の未来を。

男は望む、男が愛してやまないこの国を害する全てからこの国を守る絶対なる護国の力を。

故に2人は手を結びあう。

互いに互いが望むものを持ち、そしてアダムがもたらした《計画》の先にある《未来》を得る為に、

錬金術師と護国の鬼は、誰にも知られない同盟を結んだのだ。

 

 

「――どうかご静観ください。お互いにとって悪くない結果がきっとでますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先の《死神》出現と死神がもたらした被害。

それは二課に――いや国際社会に十分に危険視される程の結果をもたらした。

今や《死神》は世界中から恐れられる生物災害と言っても過言ではない。

だからこそ、国連は二課から得た死神のデータを参考にある《システム》を作り上げた。

 

《code D》

 

死神から観測されたエネルギー量、生体反応、その他諸々を機械に記憶させ、同様の反応を感知したら即座にアラートが鳴り響く単純なシステムだ。

単純に言えば、対死神警報システムとでも呼べば良いだろう。

国連をはじめ、各国はすぐにこれを兵器群に搭載した。

死神を倒す為――ではない。

死神を避ける為に、だ。

あの絶望に、あの力に抗っても待つのは死だと、誰もが理解しているからだ。

そして今、そのアラートは――二課に鳴り響く。

 

「《codeD》発令!!フロンティアに《死神》出現!!」

 

その報告が二課に鳴り響いた時、誰もが驚愕し、そして恐れた。

あの化物の再来を、装者達に徹底的な敗北をもたらし、二課を恐怖に染め上げた死神の出現に恐怖した。

それも最も最悪なタイミングでの登場と来た。

 

「――ッ!!全世界への中継映像を止めろ!!あれの存在が人々に知られればパニックになる――」

 

「ダメです!!既に中継を通して《死神》の存在が人々の目に!!」

 

藤尭の言葉を証明する様に既に人々は突然の雄たけびと同時に映し出された《死神》の存在に困惑しているのが各国からの映像を通して伝わってくる。

なんて事だ、弦十郎は苦虫を嚙み潰したよう表情を歪ませる。

どうして今――この星の運命が決まるであろうこの状況で出てきた、と。

 

《――あれが、《死神》》

 

通信を通してナスターシャもまたその存在に驚愕する。

見ているだけでおぞましく、それでいて何故か目が離せない謎の魅力を持つ存在。

それがフロンティアに降臨する。

最も最悪なタイミングで、降臨してしまった。

 

「――ッ!!装者達の位置は!!?」

 

「クリスさんはナスターシャ教授の護衛を継続中!!響ちゃんと翼さんは《死神》出現と同時に発生した電波障害で位置特定が出来ず、連絡も取れません!!例の仮面の少女の位置もまた不明です!!」

 

――最悪だと、そう思うしかできなかった。

弦十郎は思わず映像越しに移る《死神》を睨みつける。

どうして今なのかと、どうしてこのタイミングで姿を現すのかと。

もはや人々は恐怖している。

あの存在に、あの死神に、

もはや、歌声を以て協力する余裕などないだろう。

 

「――くそったれ!!」

 

月の遺跡を再起動させる、その為に各国が協力してくれた計画は――破綻してしまった。

これでは月の落下を防ぐ事などできもしない。

最悪だ、最悪の一言しかない状況だ。

 

「(どうする…どうすればよい…どうすればこの状況を打破できる…ッ!!)」

 

幸い死神はまだ攻撃を始めていない。

攻撃が始まるまでの僅かだが、時間はある。

その間に考えるんだ。

この状況を打破する作戦を、この窮地を脱する事が出来る作戦を。

頭の回転を止めるな、考えろ考えるんだ……ッ!

何か……何かある筈だ――ある筈なんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《――相変わらずね弦十郎さんは》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――それは《彼女》の声ではない。

けれども、聞こえてきたその声に弦十郎は俯いていた顔を上げる。

懐かしい感覚に、少し前まで頼り切ってしまっていた彼女を思い出すその口調に、顔を上げる。

そこに映っていたのは―――

 

 

《――久しぶりね》

 

 

《彼女》専用に残されていた通信ライン。

それを以て通話してきたのは――致命傷を負い、この世を去ったはずの月読調。

それが通信してきている、その事実に騒ぐ二課の面々の中で――弦十郎はまさか、と声を漏らす。

ありえないと、だが、と。

そしてぽつりと、その名を呟いた。

 

 

 

 

「……了子、くん」

 

《――ええ。私よ》

 

 

 

 

 

月読調の口から出た言葉に誰しもが驚愕する。

あの戦いで二課が打ち倒した相手の出現に、それまでずっと共にやってきた仲間の出現に、

誰しもが驚きを隠せなかった。

 

「…本当に、了子くんなのか」

 

弦十郎とてその1人だ。

隠しきれない感情を胸に何とか言葉を出す。

必死に、失ってしまった人へ向けての言葉を出す。

それを調は――いや、了子は何とも言えない面持ちで聞いていたが、それを絶つ様に――

 

 

 

 

 

《――再会に喜びたい気持ちも分からなくはないけど、今は少しでも時間が惜しい。あなた達を騙してきた私が言うのもなんだけれど…協力してほしいの。《あれ》を止める為にも》

 

 

 

 

 

二課に協力を願い出た。

 

 

 

 




了子さん復活。
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