セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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XD新OPを見て一言…
セレナのあの角度は反則だと思う。
うん、あれはいけないって…可愛いが過ぎるって…
あと大人セレナとか最高なんですけど、いやXD神げーですわいやマジで…
ありがとうシンフォギア!!


第124話

 

「――ふぅ」

 

二課との協力体制による作戦会議、それを終えた了子は静かに安堵する様に息を吐く。

元々断られて当然の話だった。

一度手痛く裏切った相手からの協力要請、そんなもの叶う筈のない話だった。

だからこそ了子は二課が利益になるであろうあらゆる物や情報を提供する事でその無理を通そうとしていた。

それなのに……

 

「……もう、本当にあの人は……」

 

弦十郎の言葉が何度も頭の中に響く。

司令としては最悪の言葉、けれども1人の男としては最高の言葉。

そんな言葉が頭の中に響く度にフィーネの…櫻井了子の胸中にある感情が揺れる。

もう何百…何千年と忘れていたあの感情を、想うだけで暖かく優しい気持ちになれるそれに、櫻井了子は静かに笑みを浮かべて―――

 

 

「惚気話は終わったかしら」

 

 

――聴こえてきたのは、冷たい声。

一切の感情を含まずに発せられたであろうその声によって現実に引き戻されたフィーネは《彼女》を見る。

彼女の視線の先に映る――不機嫌そうな1体の人形を。

 

《オートスコアラー》

錬金術師が戦力の一つとして作り上げるその人形をフィーネは知っていた。

その人形達の詳細を、その主を、知っていた。

己の計画を阻む《敵》となるやもしれぬからと調べていたのだ。

恐らく、彼女はほとんどを知っている。

キャロル・マールス・ディーンハイムが企む世界を壊す計画を、

アダム・ヴァイスハウプトが企む計画も、知っている。

だが、そんな彼女でも――目の前に立つ人形については一切の情報を持っていない。

 

――まあ、無理もない話ではある。

ガリスを始めとするシスターズが作られたのは、彼女が引き起こしたルナアタック事件後だ。

魂として月読調の中にこそいたが、そこから得られる情報では限りがある。

だからフィーネがガリスを知らないのは仕方がない話だ。

 

「…ええ、終わったわ。貴女が我慢してくれたおかげでね」

 

「それは良かったわ。正直言うとその首吹き飛ばしてやろうかって何回も考えたけど」

 

ガリスは笑顔で敵意を隠そうとさえせずにそう語る。

実際その手にある氷の刃で幾度その首を断ち切ってやろうかと悩んでたりしている。

けれども抑え、我慢した。

マスターの過去を歪めたフィーネを始末する事を耐えて見せたのだ。

それは――――

 

 

 

「それで…本当なんでしょうね?あんたに協力したら《アレ》から無事にマスターを救って見せるって話」

 

「…安心しなさい、嘘は言わないわ」

 

 

 

――フィーネが提案したその条件があったからだ。

《アレ》が出現した際にガリスは思わず口走ってしまったのだ。

《マスター》と。

《アレ》を知り、その中身を知るガリスが口走ってしまった1つの言葉。

その一言がフィーネに1つの提案を作り上げたのだ。

己の――いや、肉体である月読調の命を守る為に、そして《アレ》を封じる為に、フィーネは提案を口にした。

 

《《アレ》の中にいるお前のマスターとやらを助けてやる、その代わりに協力しろ》と。

 

その条件を前にガリスは悩んだ。

以前はマスターのマスター…キャロルがいたからこそどうにか解決へと至った。

だが、今は彼女はいないし、自分が出てきた時の状況を踏まえて考慮すると、援軍として姿を現す可能性ははっきり言ってゼロに近い。

そうなればどうやってマスターを救う?

ガリスの今の身体はあくまで予備躯体。

その戦闘能力は半減している上に、前の時みたいに他のシスターズやオートスコアラー達はいない。

たった1人で《アレ》と闘い、マスターを救う。

果たしてそれは――可能か?

 

「――――ッ」

 

ガリスに搭載された人工知能は即座に回答を提示する。

《無理》だと。

どれだけ足掻いても、どれだけの奇跡が加算されても、待っている結末はガリスの死のみ。

恐らくこの計算が覆る事は――ないだろう。

 

だからこそガリスは悩んだ。

己の命が惜しい為ではない。

マスターと誓った《約束》があるからだ。

あの約束がある以上、ガリスはマスターであるセレナより先に死ぬ事を絶対に禁じられている。

 

約束したのだ、彼女と。

全てを1人で背負いこみ、自身の犠牲で他人を救う事しか出来ない不器用な彼女と約束したのだ。

《先に死なない》と。

だからガリスは―――目の前にいるマスターの過去を歪ませた張本人からの提案を受けたのだ。

マスターを救う為に、マスターとの約束を守る為に。

 

「――方法は」

 

彼女へ向けた言葉にガリスは感情を現さない。

現してしまえば、零れてしまいそうになるからだ。

マスターの為に受け入れたとはいえ、彼女に対する敵意、殺意が消えたわけではない。

心の奥底へ一時的に封じ込める、それで何とか耐えているのだ。

だから今、彼女に対して感情を向けてしまえばその封じ込めた感情がこぼれてしまう。

――無意識に殺めてしまいかねない程に。

 

「方法はあるわ、ただしその為にはまだ準備と時間が必要なの」

 

自然とガリスは問おうとする。

その時間とやらはどうやって稼ぐのかと。

だが、それは言葉にはならない。

何故ならば、気付いたからだ。

この女が自身にさせようとしている事がどんな事なのかを理解してしまったからだ。

 

「――ほんと、アタシあんた嫌いだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《―――――――――――――》

 

《死神》

そう呼ばれ人々に恐怖を巻き散らしている存在は――降り立った状態のまま動かずにいた。

その姿に《死神》を知る者は困惑する。

どうして行動を始めないのかと、どうしてあの時の様な攻撃をしないのかと。

誰しもが困惑し、ただその存在を見つめていた。

 

――それが嵐の前の静けさだと誰しもが理解しながら、見つめていた。

 

《―――――――――》

 

《死神》は沈黙の中で、《それ》を選定していた。

このフロンティアに集まった様々な勢力。

二課、F.I.S.、米国、国連。

その全てを見て、観察し、そして決断を下していく。

 

《どれが《セレナ》の敵であるのか》を。

 

どれを破壊し、どれを殺し、どれを生かすか。

その判断が次々と《死神》の中で出来上がっていく。

生かす者、殺す者、そのリストを頭の中で構築しながら、《死神》は待つ。

選定の終わりを、そして彼女が心の安らぎを得る為の戦いの火蓋が切って落とされるのを待っていた。

 

「―――ぁ―――ッ」

 

選定をする《死神》のから少し離れた場所に《彼女》はいた。

《風鳴翼》。

仮面の少女の暴走を止めんとし、黒い手によって命を奪われた―――筈だった。

小さく、本当に小さくだが風鳴翼は荒い呼吸を繰り返している。

送り込まれる酸素が体内を巡り、臓器を活動させている。

――そう、生きているのだ。

黒い手によって的確に急所を貫かれた筈の彼女だったが、生きているのだ。

 

――ただし、その終わりは近いと言う条件を付けて、だが。

 

「…(不味いな…そろそろ…………)」

 

風鳴翼が僅かに命を伸ばす事に成功したのは、やはり彼女が歴戦の強者である事に起因する。

背後と言う死角から迫る黒い手。

その存在にギリギリの段階で気づけた彼女は必死に身を捻り、急所を貫かれると言う事態を回避出来た。

だが、胸元に風穴が出来たと言う事実に変わりはない。

そこから零れる血液、そして臓器。

それが流れ落ちる度に翼は、己の身体が冷たくなっていくのを感じ取りながら、何とか命を繋いでいた。

 

しかし彼女の命の灯が燃え尽きるのは目前であるのは誰の目にも明らか。

そんな彼女を救う事が出来る人はこの場に―――いる。

いるが、決してその人は彼女に手を刺し伸ばす事はないだろう。

それも当然だ、その人物と言うのは――

 

「嗚呼嗚呼!!素晴らしい…素晴らしいですよ!!それでこそ僕の英雄!!!!やはり英雄と言うのは貴女の様な神々しく、そして絶対頂点の存在でなければならないんだ!!あは――アハハハハ!!!!」

 

――この男、ドクターウェルだからだ。

狂信者の様にただ《死神》を崇拝している彼には、風鳴翼の存在などどうでもいい些細な存在でしかない。

敵も味方も計画も何も今の彼にはない。

ただ目の前に君臨した己が思い描く理想通りの《英雄》

その出現に感極まり、涙を流しながら狂った様に笑みを浮かべていた。

 

故に風鳴翼に残された選択肢は1つ。

救援を呼ぶ、ただそれだけしかない。

その為に必要な通信機は所持している。

だが…それを起動させるだけの体力がもはや彼女にはない。

それを実行するにはあまりにも多くの血を流しすぎたのだ。

普段ならば何事もなく動かせていた指先1つさえも、今ではほんの僅かでさえも動かせない始末だ。

 

結果、彼女が救援を呼ぶ事は叶わない。

助ける人もおらず、救援も呼べない。

…もはや彼女に救いの道はないだろう。

風鳴翼に残された唯一の道、それは――死への一方通行しかなかった。

 

「(…奏…私……せいいっぱい……生きれたかな…?)」

 

思い出す記憶、そのほとんどを埋めるのはツヴァイウイングとして共に同じ道を駆けてきた親友であり、家族であり、風鳴翼にとって全てであった1人の女性。

そんな彼女が――奏がいるあちらへ行ける。

それは以前の自分が心のどこかで臨んでいた事。

奏を奪ったノイズに対して復讐を果たさんと戦いに明け暮れていた日々の中で心の奥底で確かに《それ》は存在していた。

 

《死んでしまえば奏に会える》と。

 

ノイズを相手に負ける、それはこの国を守る防人としては絶対に許されない失態。

なれど思う、思ってしまう。

たった1人でいくら倒しても姿を現す彼等との永遠と思える戦いの日々の中で、もしも負けてしまえば楽になるのでは?と幾度も思ってしまった。

こんな辛い日々から解放される、死んでしまった奏に会える。

そんな自殺願望としか表現しようのない感情に何度誘惑されただろう。

幾度剣を置いてこの身を死へと導こうと思い描いただろう。

 

そして今、それが起きようとしている。

風鳴翼の身体はこのまま何もせずにいるだけで生命活動を停止するだろう。

死の誘惑が全身を支配し、力を抜いていく。

このまま楽になれと、そうしたら《彼女》に会えるぞ、と。

聴こえる誘惑、それはあまりにも甘美で魅力的で、逆らう事さえ愚かだと思ってしまう位だ。

 

――ならばどうして、と翼は思う。

どうして私の身体はそんな誘惑を跳ね除けようとしているのだろうか。

どうして私の身体はもう力さえ入らないと言うのに動き、藻掻こうとしているのだろうか。

どうして私の身体は聞こえる子守唄を無視しているのだろうか。

 

――どうして私は、生きようとしているのだろうか。

 

死ねば会えると言うのに、大好きな彼女と会えると言うのに、

叶えたかった願望なのだろう?望んでいた結末だったのだろう?

ならば何故足掻く?何故受け入れない?

 

だからこそ自問する。

どうして死を受け入れないのか。

どうして醜く足掻いて生きようとするのか。

それを問う、己の心に問う。

何故、どうして、と。

そして―――呆気なく答えは出た。

 

「(………嗚呼…そうか……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――風鳴翼は生きたいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きな歌をもっと歌いたい。

歌でもっと多くの人達と繋がっていきたい。

もっと立花や雪音と共に毎日を過ごしたい。

もっと、もっと、もっと――風鳴翼は生きていたい。

だからこそ足掻く、だからこそ藻掻く。

醜くても、笑い物にされても、それでも生きたい。

風鳴翼は、まだ生きていたい。

 

「(…ごめん…奏)」

 

心の中できっとあちらで待っていてくれている大好きな彼女に謝る。

そちらにはまだいけないと静かに謝る。

けどその代わりに翼は約束した。

風鳴翼は絶対に長生きをしてやると。

必死に必死に生きて生きて生き抜いて、そしてあっちに行った時に語りつくしてやるのだ。

風鳴翼の生きた人生を、風鳴翼の歌の物語を、

 

だから翼は天に向けて手を伸ばす。

生きたいと願って、死にたくないと願って、

誰かに掴んで欲しいと願って、伸ばす。

願いを込めて必死に伸ばす。

どうか、誰か、と。

そして―――

 

 

 

「―――全く、仕方ないなぁ翼は」

 

 

 

その願いを受け止める様に、懐かしい声と共に手を包む暖かい感触がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――《死神》の選定が静かに終わりを迎える。

《彼女》に害成す敵の特定は終わったのだ。

今から始まるのはそんな敵の始末だけ。

恐らくそれは戦いにもならない一方的な殺戮となるだろう。

 

《死神》の目がまず眼下を見下ろす。

彼女によって地に伏している《化物》を見下ろす。

ダメージを多く受けた影響だろう、《死神》に対し敵意こそ向けているがその身体が動く様子はない。

なれど、この化物がこの場において僅かにでも危険率の高い《敵》であるのは明白。

 

――ならば殺そう。

 

《死神》の拳が構えられる。

ガングニールを使うまでもないと判断したのだろう。

純粋な力による殴殺、それこそがこの《化物》の最後に相応しいと判断したのだ。

構える《死神》、明白な殺意を前にしても敵意を向け続ける《化物》

数秒後に待つ結末がどんなものか、それは誰の目にも明らかだった。

 

「切歌ぁぁぁッ!!!!」

 

「――ッ」

 

家族の死をただ映像を通して見つめる事しか出来ないマリアは叫ぶ。

どうして私は大事な人を失ってしまうのかと嘆きながら。

 

愛しい家族の死、それを直視出来ないとナスターシャは目を背ける。

自身が犯してしまった罪、それがもたらしてしまった現実を嘆きながら。

 

そして《死神》の拳は振り下ろされ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………?」

 

誰もが疑問を感じた。

どうして何も聞こえないのかと。

映像が途絶えたわけではない、何かしらの機器トラブルがあったわけではない。

時間が止まったわけでもない。

なのに、何も聞こえない。

拳が振り落とされる音も、命が壊される音も、聞こえない。

 

全員が映像を見る。

答えを知ろうと、何が起きたのかを確かめようと、映像に視線を向けて――《それ》を見た。

氷を、《死神》の拳を中心に周囲に柱を伸ばして凍る氷を、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《化物》を庇う様に、青いトライデントを握ったガリスが《死神》と対峙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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