セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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仕事が忙しい…更新遅くなって本当にごめんなさい…
セレナぁぁ癒してぁぁ!!


第127話

 

――時間は少し遡る――

 

「――これで、よし」

 

この数分間でやっと安堵出来たとフィーネは安息の息をつく。

目の前で眠るは風鳴翼。

その身体を貫いた穴は綺麗に塞がり、唯一気掛かりであった血液量も無事に必要量を再生する事が出来た。

…ハッキリ言って彼女の状態は危険極まりなかった、

あと少し遅ければ間違いなく救う事も出来ず、そして普通の治療では到底間に合うはずもなかっただろう。

だが、今のフィーネには《それ》があった。

 

――ルナアタック事件にてその身と融合を果たした完全聖遺物《ネフシュタンの鎧》が―――

 

「…まさか、これがまだあるなんてね…」

 

《無限の再生能力》と言う特性を持つ《ネフシュタンの鎧》

完全なる破壊状態からでも再生を可能とするこの鎧は、ルナアタック事件の最後に起きた戦いにおいて、フィーネは融合症例第1号である立花響から得た情報を元に自身の身体との融合に成功。

その再生能力と力を以て二課本部を強襲し、二課が保有していた《デュランダル》を奪取。

《ネフシュタンの鎧》《デュランダル》《ソロモンの杖》

この3つの聖遺物を以て二課の装者と激しい戦闘を繰り広げて――彼女は負けた。

その際にデュランダル、ネフシュタンの鎧は破壊され、もうこの世には残っていない筈……だった。

 

だが、失われた筈のネフシュタンの鎧は此処にある。

魂だけとなったフィーネに、その特性は引き継がれていた。

何故残っているのか、その理由はフィーネ自身でも解明出来ない。

しかし、その事実が風鳴翼を救う一手となったのは間違いないだろう。

 

フィーネはネフシュタンの鎧が持つ無限の再生能力を治療へ利用したのだ。

けれどもその治療法は決して完璧なものではない。

実験も検証も済ませていない上に、聖遺物と言う未知の力に頼った治療法だ。

副作用や治療自体の危険性があるのではないか、と問われれば否定はできない。

だが、それでも実行するしかなかった。

目の前で失われようとしている命を救うには、それしかなかった。

 

「――我ながら無茶をしたわね」

 

幸い、現段階において副作用や拒絶反応と言ったものは起きていない。

この様子であれば、少し寝かせてあげて体力が回復したらもう動けるだろう。

可能であれば治療設備が整った場所に移動させてあげたいが、そうはいかない。

彼女にはまだ役目がある、装者として…歌を力に変える事が出来る彼女の力が――

 

「…………」

 

静かに呼吸を繰り返す翼を尻目に、フィーネは手に握る《それ》に目を向ける。

ネフシュタンの鎧の無限の再生能力を使った治療法を施す際に剥がした応急処置の痕。

血液を吸い取り真っ赤に染まった状態になっているが……それでもフィーネには《それ》が何であるのかを理解できた。

 

「…どうしてこれが……」

 

昔…それこそ二課にまだ戦力となるのが2人の少女しかいなかった時代。

当時2人はどうしても戦場で負傷を負う事が多かった。

ノイズとの戦い、市民の避難、戦闘のアクシデント。

多種多様の理由が彼女達に傷を作り、傷だらけで帰還する事も多々あった。

結果、怪我を負ってから時間が経過した傷口はどうしても残ってしまう事が多かった。

2人は戦う事こそが使命なのだからとさほど気にしていなかったが…そんな2人を見かねたのが弦十郎だった。

 

装者である前に歌姫、歌姫である前に女の子。

まだ若い彼女達の肌に傷を残してはいけない、と櫻井了子と話し合いを繰り返した結果――櫻井了子が処方した薬入りの緊急応急処置セットが完成した。

天才である彼女が処方した薬は少ない荷物であるのにも関わらず、抜群の効果を発揮した。

少ない荷物で確実な効果。

これには2人も気に入り、以降の戦闘において2人はずっとこれを所持していた。

櫻井了子がこの緊急応急処置セットを作ったのは後にも先にもこの2つだけだ。

 

――それが翼に使われていたのだ。

彼女自身が持っていた物ではない、治療の際に未使用で所持していたのを見つけている。

2つしかない緊急応急処置セット、そしてその片方は使われていない。

だったら…答えは1つしかないだろう。

 

「……あり得ない…わね」

 

先程聴こえた歌声がそう思わせたのだろう。

浮かび上がる可能性、浮かび上がる姿を自ら否定する。

彼女はもういないのだからと、否定し…けれども手に握る《それ》がその否定を揺らがせる。

もしや、と言う希望を抱いてしまう。

 

「…そうよあり得ないわ…だってあの子は…―――ッ!!!!」

 

無意識に零れる否定の言葉。

そんな言葉を阻んだのは激しい頭痛だった。

その痛みが何を意味しているのか、即座に理解する。

もう時間がないのだと。

 

「――ッ想像より…早いわね……ッ」

 

想定ではもう少し時間が得られる筈だった。

だが、その想定は崩されたとみて間違いないだろう。

このままフィーネが《月読調》の身体を支配すれば、彼女の強大な魂が月読調の魂を吸収し、融合を果たしてしまうだろう。

そうなれば…間違いなく《月読調》と言う存在は消えてなくなってしまう。

…それだけは避けねばならなかった。

《アレ》を倒す為にも、そして――彼女達の未来の為にも。

 

「……本当は…もう少し居たかったけれど……」

 

浮かび上がる二課の仲間達。

賑やかで、楽しくて、自らの宿願を果たす事に迷いが生まれてしまった人達との時間。

その中でも一番会いたいと思ってしまうのが、《彼》だったりする自分に小さく笑ってしまう。

今でも《あの御方》に心を寄せているのに、それでも《彼》を求めてしまう自分に呆れて笑ってしまう。

笑って笑って、そして――覚悟を決める。

 

「……本当に、残念」

 

出来ればもう1度くらい会いたかったけれど…

そう小さく願いながら――フィーネは自らの意思で《月読調》の身体から自らの魂を切り離す。

これが唯一彼女の魂を助ける方法であると理解しているからこそ、その選択を選ぶ。

――その後の自分がどうなるか、なんて考えずに。

 

「(さて…どうなるかしらね)」

 

――正直な話、自分に《次》があるのか分からない。

フィーネの転生人生において今回のはイレギュラー中のイレギュラーだ。

これまで誰1人とて魂の融合を自らの意思で止めた事もなく、魂が完全に肉体に定着していない状態で力を使い過ぎる事も無かった。

必ず、その影響は出るだろう。

だからこそ、《次》があるかどうかがフィーネにもわからない。

新しい器で覚醒するかもしれない、もしかしたら永遠に覚醒する事なく漂うだけの存在となるかもしれない。

――もしかしたらこれが最後かもしれない。

 

――《あの御方》にもう1度出会う、その夢を叶える事が出来ないのかもしれない。

己の宿願である再会、それがもう叶わないかもしれない。

それはフィーネにとって身を引き裂かれる様な残酷な答えだ。

その想いに一切の揺れはない、そんな結末を想像するだけで涙が溢れそうになる。

 

…けれども、そう、けれども………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――頑張りなさい、かわいい子達」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――不思議と、後悔はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――うん、頑張る」

 

託された想い、そしてフィーネの魂から授けられた彼女の《計画》

それを全て受け止め、彼女は駆ける。

他の誰でもない、この世界で一番守りたい人の元へ、

 

――大好きな切ちゃんを助ける、その想いで少女は駆ける。

 

 

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