セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
「えーと、あの……あ、紅茶どうですか?最近師匠にもまあ飲めるなって褒められるようになって………」
「………まあまあなワケダ」
ぬいぐるみを抱えた少女の来訪から数分。
ひとまず部屋の中へと案内し、対面するように向き合ったままこうしていますけど………はっきり言って辛いです。
なんと言っても会話が続きません………ッ!
恐らく師匠の客人であろう少女に粗相をしてはいけないと頑張っていますけど、会話をしようとすると帰ってくるのは短めな返答ばかり。
そのせいか会話は続かず、部屋の中を沈黙が流れちゃっています………
「(な、何か話題を……けど初めて会う人だから何を話したら良いのか分からないし………ぶ、無難に恋ばなとかかな?けど私恋とかまだしてないし………ど、どうしよう……)」
必死に沈黙を破る術を模索する少女。
そんな姿をぬいぐるみを抱えた少女は紅茶を口にしながらただ見つめていた。
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キャロル・マールス・ディーンハイムが弟子を取った。
そんな噂が少し前に結社内にて流れ始めた。
噂を聞いた者の反応は多種多様であった。
ある者は信じ、ある者は嘘だと切り捨て、ある者は情報攪乱を狙った敵の攻撃だと騒ぎ立てた。
そんな中でプレラーティはその噂を嘘であると切り捨てていた。
キャロルと言う人間を知る者であれば誰にでも分かる、あれが弟子を取る輩か、と。
そしてそんな噂も所詮は一時的に騒ぎ立てられただけの物。
自然的に収束し、所詮は噂……で終わるはずだった。
噂が忘れ去れ掛けた頃、ノイズとアルカ・ノイズの衝突と言うイレギュラーが発生した。
未だに試作段階のアルカ・ノイズ…それも理想完成形に近い物がノイズと戦闘を行い、対等に戦って見せたと言う戦果を挙げた。
その情報は瞬く間に結社にも広がり、奇しくもこのイレギュラーがアルカ・ノイズの実用性を証明する事となった。
これによる各協力関係、支援関係にある組織達からもアルカ・ノイズへ向けられた期待は大いに高まり、局長もこのイレギュラーを逆に利用して見せ、各組織間との協力体制を更に強めると言う結社にとって大きなメリットを生み出した。
そんなメリットの裏で浮かび上がった疑問が1つ。
≪誰があのアルカ・ノイズを作ったのか?≫
無論結社ではない。
アルカ・ノイズはキャロルとの協力体制の下で開発、研究を行っているが、現段階ではあくまで試作でしかない。
しかし他の組織にアルカ・ノイズを実用化できる程に優れた錬金術師などおるはずもないし、そもそもアルカ・ノイズを作る為の術を知る者などいるはずがない。
ならば誰が?
局長もその正体を知りたかったのだろう、局長命令で正式にこの件についての調査が開始された。
しかし――――
「(情報改竄……)」
調査を開始すると同時に待っていたのは、まるで蜘蛛の巣の様に無数に張り巡らされた膨大な偽情報の数々。
明らかに何者かによって情報改竄がされていた。
ある者は80手前の老人を犯人だと言い、
ある者は10歳程度の少年を犯人だと言い、
ある者は20歳前後の病気で死に掛けの女を犯人だと言った。
情報を追いかければ他人へと辿り着くように構成された偽情報、明らかに初心者が遊び程度で用意した物ではない。
この情報改竄を行った人物は明らかにこういう方面に置ける知識があるプロだろう。
だが結社にもその道のプロはいた。
それがプレラーティである。
局長命令の正式な仕事である事、結社の構成員が偽情報に騙されまくっている現状を嘆いたサンジェルマンに頼まれた事、それがプレラーティのやる気を起こした。
そもそもプレラーティの中ではある程度の情報改竄を行った容疑者を絞り込む事が出来ていた。
後はそこから引き算形式に可能性が低い者を除外していき、膨大な偽情報の中に眠る僅かな真実を見つけながら情報を纏めていき―――――そして、辿り付いた。
決定打となったのはシャトーへ運び入れる資源や食料の量。
ある日を境に増えているそれは、計算すれば1人分が追加されている様になっていた。
そして以前に流れた≪噂≫。
そこまで分かれば後は容易かった。
シャトーは元々はプレラーティが設計した物、その既存システムへの侵入など彼女にとって容易い物であった。
シャトー内の監視システム、そのハッキング成功と共に映し出されたのは―――キャロルを師匠と仰ぎ、錬金術を学ぶ1人の少女であった。
奇しくもそれは噂が本当であった事、そしてあの偽情報はキャロルがこの少女を守る為に構成した物であると言う事が証明された瞬間であった。
「(しかしこいつがあのアルカ・ノイズを作った…正直信じられないワケダ)」
ハッキングしたシャトーの監視システムから映し出される少女ははっきり言えば異常だ。
乾いたスポンジの様に知識を吸収し、そして応用させるだけの学もある。
その知識量は錬金術師としては名が馳せているプレラーティに焦りを感じさせる程だ。
だが、映像ではなくこうして対面してみると、その様子はどう見てもどこにでもいる普通の少女。
この少女とあの映像の少女が本当に同一人物なのか?思わずそんな疑問を抱かせる程である。
「(…試してみるワケダ)」
元々今回のシャトー来訪はキャロルは知らない。
《会談》の為に護衛のオートスコアラーを率いて留守にしている間に潜入しており、キャロルが帰還する時間を考慮するとそこまで時間の余裕がない。
ないのだが……プレラーティは試してみたかった。
本当にこの少女があの映像の少女なのか?
そして―――あのアルカ・ノイズを作ったのは本当にこいつなのかを―――
「……おい、少し話に付き合うワケダ」
はい?ときょとんとする少女はそんなプレラーティの考えに気付く事なく、やっと向こうから話を振って着れくれた事に喜びを感じるのであった。
プレラーティちゃんの設定捏造発動である
メガネキャラは機械系に強いってじいちゃんがいってた