セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
詳しい事については活動報告に書いているのでそちらを見てくれると嬉しいです。。。
本当に、ごめんなさい
声を荒げながら、怒りを解放しながら、どうしてだろうと疑問に思う。
どうして私は…こんなにもこの人を助けようとしているのだろうか、と。
「(だって…この人は……)」
目の前にいる女性は敵…そう宣言したのは他の誰でもない自分自身だ。
世界を混乱と恐怖に陥れた女性、ドクターウェルと手を結んだ世界の敵。
そして、シンフォギアの装者である以上、師匠の敵でもある。
――そう敵だ、敵なのだ。
マリア・カデンツァヴナ・イヴは私の敵なのだ。
其処に何の縁もなく、其処に何の親しみもない。
戦場で出会えば戦うしかない、敵だ。
……マリア・カデンツァヴナ・イヴと私が分かり合える未来。
もしもがあればたどり着けたかもしれない、そうなれば嬉しかったと思える未来。
――けれども、今の私達にその未来はない。
そんなものは彼女があの男と手を結んだ時点で絶たれてしまっている。
だから、どう足掻いてもマリア・カデンツァヴナ・イヴは私の敵でしかない。
だからこそ、思ってしまう。
どうして私は見捨てなかったのかと。
彼女が自らの手で死を選択した時に、どうしてそのまま死なせてあげなかったのかと。
自らの意思で死を選ぶ、其処に至る経緯や理由を私は知らない。
けれども、《それ》しかもう彼女には無かったのだろう。
死を唯一の救いだと誤認する程に、限界だったのだろう。
だったら死なせてあげれば良い。
所詮彼女は敵で、友人でも親友でも、家族でもない。
死を救済と望むのならばその選択を阻む理由など――私にはない。
そう、心の片隅にある冷たい感情が囁き、そしてその考えを真っ向から否定出来ずにいる自分もいた。
未だにその詳細を秘密とされている師匠の計画。
その内容が如何な物としても、装者との戦いは避けて通れないだろう。
必然と化した戦い、避けては通れない戦いの道。
いずれセレナは二課と、そして彼女達と戦うだろう。
セレナは確信していた。
もしもドクターウェルの暴走が引き起こしたこの事態が無事に解決し、終わりを迎えれば――必ず彼女達は二課の味方になる。
これは絶対の確信を持って言える。
二課の面々が、そしてあの優しい彼女達が必ずそうするだろう。
どれだけ邪魔されようとも、どれだけ世間から否定されようとも、彼女達は必ずそれを成し遂げる。
そう確信を抱ける程に、私は彼女達と多くの時間を過ごしてしまったのだから。
そして二課の仲間となった彼女達は――師匠と戦う。
師匠が叶えようとする父の命題の答えを否定し、争う。
6人の装者と師匠達は争い、そしてその果てに――どちらかだけが生き残るだろう。
……故に、その戦力を減らせるであろう絶好の機会である今を活用すべきだと言う考えが頭にあった。
家族を守りたいと願う者の心の声として、そしてアルカ・ノイズ達を率いる指揮官として、その考えが脳裏を支配し、そしてそれは如何なる考えを以てしても完全に払拭しきれない。
今からでも遅くないと囁いてくる始末だ。
けれども―――
「……………」
――それと同じ位に、この人を助けたいと願っている自分もいた。
敵であるはずなのに、友人でも家族でもない赤の他人だと言うのに。
それでも、どうにかして助けてたいと願う自分も心の中にいる。
決して死なせはしないと、貴女を救いたいのだと訴える自分が……
「(どうして…だろう……)」
いくら考えてもその答えに辿り着けない。
まるで何かが隠す様に、記憶の奥底にある靄が答えを知る事を拒絶され、もどかしい気持ちになる。
其処に答えがあると言うのに、手を伸ばせば辿り着ける所にあると言うのに、たどり着けない。
故にもどかしく、空しく、そして―――
「―――ッ!」
不意に体から力が抜けていき、同時に耐えきれない睡魔が襲ってくる。
彼女を掴んでいた手は自然と離れ、視界は揺らぎ始め、足取りがハッキリとしない。
気持ち悪いモノが胸の中を揺さぶり、立っているだけで吐きそうになる。
それとほぼ同時に《何か》が命じてくる。
眠れと、目を閉じろと、此処までだと。
前に聞いた物と全く同じその声は優しく、けれども反対は許さないと言わんばかりの強さを以て私の意識を刈り取っていく。
その声に意識が刈り取られ、意識が闇に落ちようとする中で私は必死に前を見て、彼女を見据える。
《もしも》を恐れてこのまま眠れないと見据える。
だが、その不安はすぐに解消した。
其処に立っていた彼女の姿を、一度は死を望み、その手で死のうとした彼女を見て――安堵する。
此方の異常に気付くことなく、自分の手を見ながら何かを呟いている彼女の瞳に先程まであった《諦め》はなく、瞳に宿しているのは――《希望》。
どれだけ辛くても、苦しくても、それでも生きる選択を選んだ者のみが宿せる明るい光。
「(…ああ、良かった)」
その瞳に私は安堵する。
敵を殺さないといけないと言う感情を一瞬忘れる程に、安堵する。
彼女が生きる事を選んだ事に喜びながら――私は静かに瞼を閉じて、闇へと意識を落とした。
《本当にやりたい事》
その一言が、マリアに勇気を与えてくれた。
己が本当に成したい事、本当に叶えたい夢。
それを思い出させてくれた言葉、己の間違いに気づかせてくれた言葉。
その一言をマリアは胸に刻み、そしてその言葉をくれた彼女にお礼をしようとして――気づく。
「え…あ、あれ?」
其処に彼女の姿はなかった。
まるで其処にいた事さえもが嘘だったかのように跡形もなく姿を消した彼女に戸惑いながらも、マリアは思う。
彼女は本当に何者なのだろうか。
私を敵だと言い、けれどもこうして助けてくれたりする。
会場での一件もあるから味方とは思えないけれども、不思議と敵だとも思えない。
本当に不思議な少女だと思わざるを得ないだろう。
けれども――
「…ありがとう」
敵か味方か、それは分からないけれども今もう一度立ち上がろうと決意で来たのは間違いなく彼女のおかげだ。
だからこそマリアは小さい声で感謝の言葉を紡ぐ。。
もしかしたら聴こえているかもしれない、そう想いながら感謝の言葉を紡ぎ、そして覚悟を決める。
もう一度戦う覚悟を、そして――
「―――――♪」
本当にやりたい事を叶える為の覚悟を――――