セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

138 / 166
シンフォニアコラボにびっくりしている作者です。
懐かしいですねーシンフォニア。
作者販売開始すぐの頃にゲームキューブの方の買ってやりこんでました…
(後にPS2に切り替えましたけど…)
個人的に今回のコラボでやってほしいのは、あれですね。
調とプレセア、この2人の絡みが見てみたいです。


第126話

 

「…ぁ…れ?」

 

――目覚めると見覚えのある天井が未来を出迎えた。

記憶の中からその既知感を追いかけていき、そして此処が二課の医務室である事を思い出す。

どうして自分はこんな所で寝ているのだろうか?

そんな疑問を抱きながら寝ていたベットから起き上がろうとして――

 

「痛――ッ!?」

 

全身を襲う激痛に顔を歪めて思わずベットに倒れる。

とてもではないが動けない痛みに襲われながらどうしてこんな事になっているのかを思い出そうとして―――《それ》を思い出す。

 

「――――――ぁ」

 

マリアさんに助けてもらった事を。

彼女達のアジトに連れていかれ、そこであの男の人に《神獣鏡》を貰った事を。

そして――その力で響達と戦った事を、思い出す。

 

「――響は!?」

 

彼女の安否が気になり居ても立っても居られないと未来は立ち上がろうとする。

再度襲う痛みを噛み締めて耐えながら、近くにあった松葉杖を支えに何とか立ち上がり、そして外へと向かおうとして――もう1つ思い出した。

それは神獣鏡の光に飲み込まれる直前の記憶。

あの仮面の少女を見た最後を、欠けた仮面から見えたあの瞳を、思い出す。

――自分のもう1人の親友にそっくりな瞳を。

 

「……確かめないと」

 

響の安否、そして自身の中にある仮面の少女の正体の《仮説》。

この2つを確かめないといけない。

その為に未来は肉体の痛みを耐えながら前へと進む。

その先に待っているであろう答えを求めて、進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――確かにガリスの計算ではどう足掻いても《死神》に勝つ術はない。

例えそこにどんな奇跡が加算されてもこの計算が覆る事は決してないだろう。

だが、それはあくまで《勝利》を目指した場合の計算。

その目的を別の物に切り替えれば―――勝率は0ではなくなる。

 

「――――ッ!!」

 

風を切る音と共に迫るは巨腕。

純粋なる力を以て迫るその一撃は、直撃を許せば間違いなくガリスの華奢な身体は容易く砕け散るだろう。

それだけの威力を有している、一目見ただけで誰もがそう理解できる一撃を前にガリスは静かに後ろに飛びのくと同時に傍にあった水たまりを目視すると水たまりに変化が起きた。

コポコポと一瞬で多量の水泡が出ると、それらは水と言う液体から槍と言う個体へと変化する。

そしてそれは迫る巨腕に向けて一斉に発射された。

さながら弾丸の様な速度と軌道を以て放たれたそれらは巨腕に命中する。

しかしそれでも――巨腕は止まらない。

 

これが単なる人相手であれば、ガリスの水の槍は呆気なく貫いて見せただろうが…そうはならない。

巨腕に衝突していく槍はその努力も空しく振るわれる力を前に蹴散らされ、元の水となってその巨腕を濡らすだけとなる。

けれどその結果にガリスは満足そうに小さく笑うと巨腕を濡らした水を目視し、目視された水はガリスの視界を通して与えられた命令を忠実にこなし――一斉に凍り付いた。

 

《死神》は突然凍り付いた己の腕に驚愕すると同時に、凍り付いた重さが一気に己の腕に負担を掛ける。

ガリスを狙った一撃がバランスを崩し、あらぬ方向へと飛んでいくのを横目で確認しながらガリスは再度水の槍を生成しそれを発射しながら、内部時計にて戦闘開始からの時間を計測する。

 

「(20分21秒…)」

 

時間稼ぎ開始からまだそれだけしか経過していないのかと思わず歯ぎしりする。

ガリスのこの場での役目はフィーネが言う計画とやらを実行するまでの時間稼ぎにある。

稼げば稼ぐ程良いと言われてはいるが…

 

「(……そろそろ限界、ね)」

 

ガリスの能力は《視認した液体を自由に操る力》。

ガリスのコアである偽・聖遺物《トライデント》によって得られた能力であり、この能力がある限りガリスは水場においては間違いなくシスターズ最強である。

だが、それは逆を言えば水が無ければ能力が使えなくなると言うデメリットもあるのだ。

 

フロンティア上昇の際にあちこちに残された海水の水たまり。

ガリスはそれを利用する事で今まで戦っていたが、その水たまりも見える範囲ではもう数える程度しかない。

更には今のガリスは予備躯体で動いている状態。

その戦闘能力が半減している今の状態ではこれ以上は厳しいだろう。

故に限界が近い、そう判断した。

 

「…こんな時にあのくそ姉が居れば……」

 

ガリスの姉であるガリィ。

錬金術で水を作れる彼女さえいれば…とないものねだりをしてしまうが、そんな事をしている時間さえ惜しいと状況を確認しなおす。

残された水の数を踏まえて計算し、恐らくガリスが稼げる限界はあと数分程度。

その間にフィーネの言う計画が実行できる様になっている事を切に願いながら、ガリスは構える。

 

ガリスにとって幸いなのは《死神》がまだ本気を出していないと言う事だろう。

《ガングニール》

天羽奏が持っていた物と全く同じ見た目をしているこの槍がもたらした破壊の嵐。

それが振るわれれば最後、時間稼ぎさえも出来ないのだが、《死神》は何故かまだそれを使用しようとしていない。

所謂手加減状態であるのだが、今のガリスにはありがたい限りだ。

 

「(一応あの化物からは引き離しておいたし…後は稼げるだけ時間を稼いで―――)」

 

そう、思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!》

 

 

 

 

 

 

聴こえてきた咆哮にまさかとガリスは《死神》から視線を外して――《それ》を見た。

《死神》の背後から奇襲せんと跳躍し、6つの鎌を振り上げて迫る《化物》を。

それを見た瞬間舌打ちをしながらガリスは駆ける。

やっぱり殺しておけば良かったと思いながら、残された水でそれを防がんとして―――

 

 

 

 

 

 

「――させないッ!!」

 

 

 

 

 

 

――ガリスの行動より先に《化物》に迫る人物がいた。

だがそれでも《化物》は止まらない。

誰が邪魔しようが関係ない。

己の目的を、復讐を果たさんと目の前に立つ障害もろとも《死神》に襲い掛からんとその鎌を構えて―――

 

《――――――――ェ》

 

――止まった。

目の前に立つ《誰か》を認識した瞬間、止まった。

否、止まざるを得なかった。

何故なら知っていたからだ。

それが誰かを、知っていたからだ。

仲間で、親友で、家族で、

《暁切歌》がこの世で最も失いたくなくて、けれども失ってしまった筈の人物。

その名前は――――

 

 

 

 

 

《――――シ―――ラ―――ベ?》

 

 

 

 

 

《月読調》

暁切歌にとって誰よりも大事な人が、其処にいた。

 

 




調ちゃん復活

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。