セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
あ、今回大人セレナでますけど設定とか妄想しまくりですので……
今年もやってきました10月15日。
そう、この作品の主人公であるセレナの誕生日である。
無論、今年も誕生日パーティーの開催は決定であり、誰もがその準備に汗を流していた。
そんな中でセレナはーーー
「………えっと」
「………えーと」
「「貴女誰ですか?」」
「……おい、どうしてこうなる」
キャロルは眉間に皺を作りながら、目の前の光景に困惑し、戸惑う。
数百年を生きる錬金術師の感情をそれだけ揺すぶる原因となっている光景、それは――
「えっと…その…」
「そのーですね…」
――自らの弟子であるセレナが2人いると謎の光景にあった。
それも片方は大人の姿で、だ。
同一人物が2人いると言う事だけで困惑するのに片方は大人の姿でと来た。
これに困惑するな、と言う方が無理だろう。
「えーと、実はですね…」
そしてそんな状況を説明しだしたのは意外な事に大人の方のセレナ。
キャロル的にはどうせまた馬鹿弟子が馬鹿してこうなったのだろう、と言う位の認識であったのでこれには驚かされる。
大人のセレナ曰く、彼女が本来いた世界でとある実験が行われたらしい。
その詳しい説明は省くが、簡単に言えば並行世界関連らしい。
その実験の最中に起きた些細なトラブルによって視界を埋め尽くす光に襲われ――気づけば彼女は此処にいるらしい。
「…とりあえずだが、理解はした。それで?お前はどうやって戻るつもりだ?」
「あ、えっと、元々の実験内容は実験対象のネズミを数時間だけ並行世界へと飛ばす…と言う物で、恐らくトラブルによってその対象がネズミから私に切り替わってしまったと考えています。並行世界への転送が成功していると言うこの状況から推察する限り、実験自体は成功しているので…多分ですけれど、ネズミを回収する為の元居た世界へ転送開始するタイマー機能も無事に起動しているはずです。なので数時間後には自動的に戻れるかなぁ、と…」
大人セレナは冷静に説明をするが、内心では緊張していた。
無理もないだろう、何故なら目の前にいるのは――キャロル・マールス・ディーンハイム。
彼女のいた世界において最も名の高い錬金術師として知られている彼女は世界的にも有名人だ。
古来より存在する錬金術を現代錬金術として実用化させた現代錬金術開祖の錬金術師。
そんな彼女と語る機会などただの研究員であるセレナには1度たりともなかったと言うのに――それが目の前にいる。
彼女が並行世界に住まう人物で自分の知るキャロル・マールス・ディーンハイムとは別人だとは理解している。
だが、それでも興奮が抑えきれなかった。
あの、キャロルと会話が出来ている、その事実がセレナに歓喜の興奮を引き起こす。
そして何よりも――
「………?」
隣に座るもう1人のセレナを、この世界のセレナを憧れの目を以て見つめる。
《あの》キャロルの弟子となり、現代人でも理解できる様に翻訳された現代錬金術ではなく、本物の錬金術である古代錬金術を彼女から直接学んでいる彼女を見つめる。
そして思う。
「(羨ましい…!!)」
どういった経緯でそうなったのかは知らないけれど、純粋にそう憧れてしまう。
彼女の隣にいる、それだけで羨ましいのにそれに加えて弟子と来た。
キャロルに憧れを抱く彼女からすれば羨ましいの一言しか出てこないだろう。
「(マリアが此処にいたら絶対に喜ぶのに…)」
元居た世界に残してきた妹の存在を思い出す。
錬金術、機械学両方に知識のある彼女にこの光景を見せたらどのような反応をするのか一瞬で想像できる。
連れてきてあげたい、そう叶わぬ願いを胸に思い描きながら――
「ふむ、それならば…その数時間を有意義に過ごさせてやろう」
「――え?」
「―――え?も、もしかして…セレナ、なの?」
「――その声って…え!?もしかして、マリア!?」
誕生日パーティー会場は中々に阿鼻叫喚な光景となっていた。
セレナの誕生日パーティー開始の時間と共に姿を現したのは――2人のセレナ。
おまけに1人は大人の姿でときた。
突然の大人セレナの出現に大混乱を引き起こしながらも大人セレナの説明で一度は落ち着いたのだが、その落ち着きは一瞬で消え去った。
具体的に言えば――マリアのせいで。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!!ね、ねえ確認なんだけど…そちらの世界では、私が妹なの?」
「え、ええ…私が姉でマリアは妹なのだけれど…え!?もしかしてこっちでは逆なの!?」
「セレナにマリアって呼び捨てされる…ありね!!」
「マリアを姉さん呼び…確かにありですね!!」
大人セレナとマリアは勢い良く質問をぶつけあう。
異なる世界で生まれた2人はこの珍しい機会を物にしようと全力で交友をかわす。
確かにこれはキャロルの言う通り有意義な時間つぶしとなるだろう。
だがしかし、しかし、だ。
その光景を1人、面白くなさそうに見つめる人物が此処にいた。
誰か?それは―――
「――むー……」
我らが主人公、セレナである。
大人セレナと自身の姉であるマリア。
その2人が仲睦まじい事には何ら問題はない。
むしろその光景に微笑ましい感情がある程だ。
では何が気に入らないのか、と問われれば答えは1つ。
「(マリア姉さん今日誰の誕生日なのか忘れっちゃったのかな…)」
自分が放置されてしまっている、その事実にだ。
並行世界から出現した大人の自分。
その登場にこそ驚きこそしたが、内心では喜んでもいた。
並行世界の自分と出会う、そんな機会二度とないだろうと。
多くの語り合いたい、と。
けれどもそう思った気持ちは、暗い感情によって揉み消される。
大好きな姉であるマリアを独占され、大人の自分もその会話に夢中となってしまっている。
その孤立感、置いて行かれた感がセレナに更なる苛立ちを募らせて、まるでハムスターの様に頬を膨らませる状態を作り上げてしまっていた。。
「―――?」
そんな様子を大人セレナは横目で確認し、そして嗚呼と納得する。
何故なら知っているからだ。
ああした時にどういった感情を胸に秘めているのかを、本当はどうしてほしいのかを。
自分にとって一番大切な存在、マリアが教えてくれたものだから。
だからこそ大人セレナはさり気なくセレナの視界から見えない死角へと移ると――
「――あ、そろそろ時間みたいですね」
《懐に隠してあった帰還スイッチ》を押した。
同時に身体が薄れていき、この並行世界からの転移がゆっくりとはじまっていく。
それに気づいたのは、彼女の目の前に立っていたマリア。
そして、この会場に入ってから一度たりとも目を離していなかったキャロルだけだろう。
「あ――」
その姿を見たマリアは思わず無意識に止めようと手を伸ばすが、大人セレナはそれを優しく止める。
そしてこっそりと耳元に向けて――
「ごめんなさい。貴女を独占しすぎちゃったみたいで貴女の可愛い妹をお怒りにさせてしまいました。だからその手は私じゃなくあの子に伸ばしてあげてください」
――優しい拒絶の言葉を出す。
本来の予定ではもう少しこの世界について情報とサンプルを取るつもりであったが…まあ潮時でもあった。
世界が違っても流石はキャロル・マールス・ディーンハイムだ。
このスイッチの存在を気付いていた上で見過ごされていた。
問題を起こすつもりはなかったけれど、これ以上彼女の反発買う様な真似はしたくない。
だからこそ潮時だと判断したのだ。
「それに…」
あの子のハムスター姿を思い出してクスリと笑う。
その姿があまりにもそっくりなのだ。
元居た世界にいる最愛の家族、マリアの姿と。
あの姿を見たせいで速く会いたいと願ってしまったのが運の尽きだろう。
きっと帰ったらまた不安そうに、泣きそうになりながら抱き着いてくるだろう。
その感触が待ち遠しく、再会が待ち遠しく思いながら、消え去る瞬間にそうだと、それを紡いだ。
「お誕生日おめでとう、この世界の私」
そして世界から彼女の姿は消える。
たった2人にだけ別れを告げて、静かに気付かれずに姿を消した。
1日に届きもしない奇跡の時間は、こうして静かに終わりを迎えた。
「おかえり!!セレナ姉さん!!」
「――ふふ、ただいまマリア」
《この話における大人セレナ》
機械学、特に並行世界関連の技術において1,2のトップ科学者。
現代錬金術と呼ばれる誰でも使える様になった錬金術の開祖キャロルに憧れを抱いている(こちらの世界ではパパの命題の正しい答えを自力で見つけ、人々を許し、導いている)
当初は事故を装ってこの世界へと来たが、実際は意図的。
並行世界での情報を得る為にこうしたわけだが、最初の説明の時に此方の世界のキャロルのウソを見抜かれている(ただし害はないと判断しているので放置)
マリア大好き
《この話における並行世界マリア》
姉であるセレナの様になりたいと機械学を学び、その技術に錬金術の理論が使えるのではないかと錬金術にも手を出している才女。
セレナの様になりたいと憧れているがその才能は姉を超えている。
ただし無意識に姉を超えるのを躊躇しており、発揮している実力は平均程度と化している。(セレナはそれを知っている)
セレナ姉さん大好き