セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第141話

 

――そこからどうなったか、それはフィーネの記憶には残されていなかった。

ただ結果として男とその親友はかつての友情を崩壊させる程にまで激しく戦い、その果てに親友の男は自分の娘を救う事が出来た。

そして親友の男は旧組織を解散させ、今度《神》にまつわる研究に参加しないと決めて、自身は娘と一緒にどこかの田舎町に隠れ住む様になるのだが……

 

「……」

 

そこから先を調は思わず言い淀んでしまう。

その先にある末路――それは果てしなく残酷で、悲惨な末路だから。

 

 

親友の男は――異端者として炎に焼かれて殺されたのだ。

 

 

どうしてそうなったのか、そこまでは分からない。

ただ記憶にあるフィーネはそれを阻止しようとしたが、辿り着いた時にはもう既に全てが終わった後だった。

遺体は既に灰となって燃え尽きており、彼の娘は行方を暗まし、彼らが住んでいた村は何者かによって徹底的に破壊と殺戮を果たされていた。

 

「…惨いな」

 

過去の歴史においてそれが行われたと言うのは知っている。

だがそれはあくまで授業等の為に大体的に短縮された内容でだ。

実際にそうなった人物の話を聞いたのはこれが初だろう。

この中で一番の精神を持つ翼でさえ、その内容に表情を歪める。

 

「なぁ、とりあえずそいつらの話は分かったけど!まだこいつをどうすれば倒せるのかって話が出てきてねぇぞ!!」

 

クリスがそう吠えるのも無理はない。

会話の最中、《死神》は幾度も攻撃を繰り返していたが、それを回避し、時には迎撃しながらも聞いていた話に肝心なそれが出てこないのだから吠えたくなる気持ちも分かる。

その言葉に調は静かに目を瞑ると――

 

「――はい、今からその話をします」

 

肝心の計画を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《死神》は焦っていた。

《敵》である立花響を排除できない事に、そしてそんな彼女を支援するかのように此方と戦いを繰り広げる装者達に。

彼女達が何かを企てている事は既に理解していた。

その企てが何かまでは分からない、だがその内容が此方に対し極めて危険性が高い内容である可能性が高い事だけは分かる。

だから、1秒でも早く倒さなければならないのだ。

奴らの企てが果たされるより先に倒さなければならない。

 

なのに――

 

「雪音ッ!!」

「分かってるって先輩ッ!!」

 

剣と銃撃の嵐が此方の視界を阻み、

 

「デェェェッス!!」

 

《アレ》を宿しているおかげでその実力を増している鎌が此方の攻撃を切り裂き、

 

「援護するね切ちゃん!!」

 

そんな鎌を排除しようとすればその攻撃を鋸が邪魔をし、

 

「はぁぁぁぁッッ!!!!」

 

生まれた隙を拳が襲い掛かってくる。

 

なんだ、なんなんだこいつらは。

思わずそう吠えたくなる程に目の前の敵は有効的に此方を阻んでいる。

排除しようとする攻撃を、殲滅戦とする意思を、阻んでくる。

それがあまりにもうっとおしく、そして全力を出す事が出来ない己自身に不甲斐なさを抱いてしまう。

このままでは守れないと、あの少女を誰よりも心優しい彼女を守れないと。

 

この世界にはあまりにも彼女を傷つけようとする物が多い。

純粋で無垢で、それでいて誰よりも心優しい少女。

自身よりも家族を守りたいと願い、誰かが傷つけば悲しみの涙を流せる少女。

誰かに救いを求める事が出来ずに、ただ1人で傷ついていく少女。

そんな彼女を守りたいと思うこの気持ちは間違いであろうか?

 

――否、断じて否だ。

彼女を守りたい、そう思ってこれまで戦い続けてきた。

あの優しい少女を、傷ついていく少女を、この手で守ってあげたい。

その想いはこの先も何も変わりはしない、だから私は――彼女を守る為に敵を討たねばならないのだ。

 

故に目の前の敵を排除する。

彼女を傷つける原因はすべて排除する。

だから、死ね。

全て死ね、疾くと死ね、早々に死ね。

これ以上、彼女を傷つけるなと吠え、そして拳を振るおうとして――気づく。

遅すぎた気付きに、彼女らの目的に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セット!!ハーモニクスッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――調は、いやフィーネの記憶は語った。

フィーネを始め組織の数名は考えていたのだ。

もしもあの《神》が万が一にでも此方の世界に君臨し、その力を破壊に振るった場合の危険性を、そしてその対処法を。

それは――文字通りの《神殺し》

 

ルル・アメルに《神》として信奉されていた彼等は概念的に《神》、または《神》に近い生物として成り立っている。

ならば《神殺し》の聖遺物が有効ではないかとフィーネは考え、いくつかの実験を通して検証し、そしてそれが有効である事を証明した。

だからと言って《神殺し》の聖遺物や武器があればそれがすぐに可能かと言われたらそうではないと答えなければならない。

 

《神》は圧倒的な再生能力と防御力を持っている。

それを前にいくら《神殺し》を使ったとしても、それらが《神殺し》の威力を上回ってしまい、逆に《神殺し》が破壊されてしまうのだ。

だから《神殺し》単体だけでは足りない。

 

それを知っていたのだろう、一度目の暴走の時キャロルはオートスコアラーを総動員してそれを弱めた。

頭部一カ所だけではあったが、オートスコアラー総員の力を用いてこれを徹底的にまで攻撃し、再生能力と防御力を奪い、そして《神殺し》であるミスティルテインを用いて《死神》を殺し、その中にいた彼女を救い出したのだ。

 

今から行うのはそれと全く同じだ。

ただ違うとすれば――彼女達は一度の攻撃で再生能力と防御力を奪おうとしているという事だけだろう。

普通の攻撃ならばそれは不可能だ。

だが、彼女達には《それ》がある。

 

歌う事でその身を壊し尽くすまでの苦しみを対価に得られる《絶唱》

そして他者と手を繋ぎあう事に特化している響だからこそ生み出した《S2CA》が。

 

「セット!!ハーモニクスッ!!!!」

 

ぶっつけ本番、まさにその言葉通りだろう。

響、翼、クリスは幾度も練習してきた技だが、調と切歌はこれが初だ。

上手くいくかどうか、それさえもはっきりしていない。

もしかしたらと言う危険性だって十分にある、万が一の場合は最悪の可能性だって存在している。

 

だが、それでも彼女達は覚悟を以て歌声を奏でる。

S2CAのおかげで多少はバックファイアが軽減されているとは言え、全てが消えているわけではない。

全身を襲う痛みと苦しみ、歌うのを止めてしまいたくなるそれを前にしながらも彼女達は歌うのを止めない。

そこまでして彼女達には《死神》の中にいると言う人を助ける理由はないのに、むしろ敵対さえもありうると言うのに、それでも彼女達は歌うのをやめない。

 

その目的はただ1つ、《死神》の中にいると言う人を助けたい、ただそれだけの為に。

その為だけに、彼女達は歌い、少女達の願いを込めた一撃が、放たれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《な、なぁどうする?》

 

《どうするったって…》

 

その戦いの様子を見ている者達がいた。

セレナに作られ、そしてこの戦いに参加し、最終的には撤退を命じられていたアルカ・ノイズ達だ。

彼等は作戦通りに撤退しようとしていたが彼等のマスターであるセレナが《死神》に再度変化した事で撤退行動は中断され、マスターの救援に向かうべしとの意見とマスターの作戦に従うべしとの意見が彼らの間に生まれたのだ。

その意見を話し合っていた折に戦いは最終段階を迎え、装者達が歌い奏でた力S2CAが《死神》に向けて放たれている。

既にガリスからフィーネとの条件を聞いている彼等からすればあの光がマスターを《死神》から解放してくれると信じる他ないのだが、それを踏まえてそろそろどうするかを決めなければならない。

 

マスターを救いに行くのか、それとも撤退するのかを。

残されたアルカ・ノイズの中でも司令官クラスとして配備されているアルカ・ノイズ達がそれをいい加減決めようとして――――

 

 

 

 

「――全員聞け」

 

 

 

 

突如姿を現したその人物に誰もが驚き、戸惑い、そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今からお前達の指揮権はオレが握る。命令に逆らう事は許さない、分かったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――彼女の指示に従う事を決めた。

 

 




突然現れてアルカ・ノイズの指揮権を握るなんて…
いったい何キャロルちゃんなんだ…
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