セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第143話

 

「「マリア!!」」

 

向けられる笑みと喜びに満ちたその瞳。

純粋で疑う事さえ知らないその瞳を前に、思わず唇を噛んでしまう。

 

仲良しだったこの2人が争う事になったのも、そして2人ともその命を失いかけたのも…全部私のせいだ。

私が間違えたから、私が愚かだったから、私が…私が全ての原因だ。

 

だからあの瞳を向けられる資格など、私にはない。

怒り、悲しみ、呆れ、侮蔑、そんな瞳こそ私に向けられるべきなのだ。

 

――それなのにあの子達は私にあんな輝かしい瞳を向けてくれる。

罪に塗れた私を、貴女達を死へと導きかけた愚かな私を、そんな優しい瞳で見てくれている。

 

「…ほんとうに、あの子達は……」

 

後悔と喜び、相反する2つの感情を胸に受け止めながらも今度こそはと決意する。

再び力を取り戻したアガートラームに、セレナの遺品であるこのシンフォギアに誓おう。

私は次こそは絶対に間違えないと、そして―――絶対にこの子達を守って見せるのだと。

 

「マリアさんッ!?」

「マリア!?その姿はいったい…」

「おいおい、どういう事だよ…」

 

二課の面々が此方を向いて驚きを見せる。

敵対し、争い、幾度も激しくぶつかり合ったのに、それでも手を伸ばし続けてきた人達。

分かり合えると、手を取り合えると、そう信じて言葉を紡いできた人達。

一度はそれを愚かだと蔑んだのに、それでも諦めずに手を伸ばし続けて――その果てに手を取りあった人達。

 

きっとこの子達のおかげだと思う。

私が自分の愚かさを認められたのは、私がもう一度家族以外の誰かを信じても良いと思えたのは。

彼女達がいなければ私はきっと愚かなままで終わり、調も切歌もその命を失う最悪な結末を遂げていただろう。

 

だからこそ私は――

 

「聞きたい事は後で説明するわ、今はとにかくあれを優先しましょう。私は何をしたら良いかしら?」

 

――この子達の力になりたい、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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奏でる歌声が聞こえる。

《S2CA》恐らく彼女達装者が持つ力の中でエクスドライブ以外では最も威力のある技が放たれようとしている。

問題だった立花響ヘの負荷はマリアが持つアガートラームの特性で激減しているし、《死神》は先程マリアの放った一撃が効いているのだろう、うめき声を挙げながら手を抑えている。

もはやS2CA発動に障害はなく、それはもう間もなく放たれるだろう。

だからこそ――

 

「さてさてさてェ!!それじゃあ僕も頑張りますよぉ!!!!」

 

ドクターウェルは歓喜に満ちながらもその姿をブリッチへと移していた。

所々にある端末での操作では難しいと判断し、此処へとひっそりと移動してきたのだ。

その傍らには見張りであるガリスの姿もある。

怪しい動きを見せたら即刻始末する、そう言った殺意を瞳に宿しながら狂気に満ちた男を見つめていた。

 

「…それで?どうするつもりなの?」

 

ウェルのやろうとしている事、それをガリスはまだ知らない。

男の案内のまま此処へと辿り着いたのだが、その目的が分からないままなのだ。

なのでそれを聞こうとして問いかけるとウェルは忙しそうに手を動かしながらも、意外にも丁寧に説明をし始めた。

 

「簡単な話ですよぉ。今から彼女達が放つS2CA、それを利用して――月遺跡を再稼働させます」

 

「…出来るの?」

 

「出来ますよ。S2CAが放つフォニックゲインは今や機械では数値が図れないレベルにまで上昇しています。あれが僕らの王を救済した後にこのフロンティアが持つ設備をフル動員して発生したフォニックゲインをそのまま月遺跡へと転送します。そうすれば月遺跡は無事に再起動するでしょう。後は此方から月遺跡のシステムへ介入し、月の軌道を通常状態へ戻す。これで月の落下は防げますよ」

 

――ガリスは驚いたと表情を変える。

この男はなんだかんだ言いながらも本気で月の落下を防ごうとし、既にその算段まで付けていた事に驚きを隠せない。

この男の言う通りであるのならば月の落下を防ぐ事は出来るだろう。

だがそれは同時に――

 

「…本当に良いのアンタ。月の落下を防いだ時点でアンタの英雄になる夢とやらは完全に終わりを迎えるのよ?」

 

――この男の夢の終わりを意味する。

既に一度この男は夢を諦める事を言葉として表明している。

だが、人間と言う生物は簡単に意見を変える。

いざ夢の終わりを前にして気持ちが変わるやもしれないとガリスは危惧していた。

 

だからこそ問うたのだ、本当に良いのかと。

その返答次第では――此処で終わってもらうと言う意味も込めて。

しかしウェルは小さく笑うと――

 

「ええ、良いですよそんなもの。だって、もう僕は知ってしまいましたからねぇ。本当の英雄と言う存在を――僕が仕えるべき偉大なる御方を!!僕の夢はもう変わったんですよぉ!!今の僕の夢は本物の英雄に仕え、その栄光を共に浴びる事にあるんです!!だからッ!!月の落下だって全力で防いで見せますよぉ!!僕の王の望みであるのならばなんだってしますからね僕はッ!!!!」

 

アハハ!と高笑いし始めたウェルを横目にガリスは静かに殺意を潜めていく。

この男の《死神》に対する狂った忠誠心は間違いなく本物だ。

最低でも、月の落下を防ぐと言う目的を達成するまでは生かしておいても問題はないだろう、そう判断する。

それ故に一時的に殺意を消してたが――

 

「…一応言っておく。私はアンタを信頼はしていないし、変な動きをすれば即座に殺す。けれどアンタが使えると判断している間は生かしておいてあげるわ。常々その命がいつも狙われているのだと理解しておきなさい。分かった?」

 

「ええ理解しましたよ。今は信頼が無くてもいずれは貴女からも信頼を勝ち取っていきますよ。お互いにあの御方に仕える者同士仲良くしましょうねぇ」

 

一緒にするな、そう淡々と告げながらも伝える事は伝えたとウェルの監視に戻ろうとして――不意に《死神》を映していた映像に動きがあったのが見えた。

奏でる6人の歌声、それが今まさに1つの力となり――S2CAが発動した。

 

 

 

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