セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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久しぶりのシンフォギア更新です。
ちょっとおかしい所もあるかもですが、許してくれると嬉しいです


第144話

 

――光が迫る。

6人の歌声、6人の想い、そしてその想いに応えるべく集う世界中の人々の心。

それらが光となって迫る。圧倒的な力となって《死神》に迫る。

 

《-----》

 

――負けた。迫る光を前に《死神》はそう悟った。

今からではどう足掻いてもあの光を避ける術は生み出せない。

防ぐ事も恐らく難しいだろう。あれだけの威力を前に例え防いだとしても肉体が耐えきれずに崩壊してしまうのが先だ。

それにあの光からは《アレ》を感じる。

古き時代、我々がまだ大地を闊歩していたあの頃。

我らを恐れ、争い合った奴らが持っていた《神殺し》なる兵器。それと全く同じものをあの光から感じる。受ければ、間違いなく負けるだろう。

 

避ける術は無く、防ぐ術もなく、対処すべき手段もない。

ならばどうする?どう動く?どう行動する?

 

《―――》

 

胸元に手をやる。

小さく鼓動する温もり、我が第2の生で守りたいと願った存在の温もり。

それを手から感じ取り、《死神》は己の成す行動を即座に決定する。

 

《――!!》

 

歪める己の身体を。

彼女を傷つける全てを破壊する為に生み出された己の肉体の形を歪めていく。

曲げて、折り、固めて、形を変えていく。

全ては彼女を守る為だけに、それだけを目標に己の肉体を盾へと変えていく。

これならばきっと彼女だけは守り切れるだろう。

 

《――――》

 

再度胸元に手をやり、その温もりを感じる。

あの子を温もりを、《死神》が一度は捨てた世界へもう一度戻る理由となった少女を。

 

《――――――――――スマナイ》

 

そして小さく謝罪をする。

自身がこの世界に形となって出現してしまった場合の対価。

それを知っているからこそ、その対価の重みを知っているからこそ、《死神》は謝る。

きっとこの先、また自分が出てしまう時はあるだろう。

彼女を苦しめる存在が居る限り、きっとまた呼ばれてしまうだろう。

だからこそ、後悔する。

この戦いでもう自身が出て来なくても済む様に、全ての敵を破壊し尽くす事が出来ていれば……

浮かび上がる後悔。それを果たせない苦しさに《死神》は顔を歪めながら迫る光に視線を向けながら、それでもと1つだけ覚悟を以て前を見据える。

例えこの戦いに負けようとも、《アレ》だけは必ず取り戻さねば、と。

 

故に《死神》は迫る光に対し――最後の足掻きを行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来た来た来た来た!!来ましたよぉぉぉぉ!!!!」

 

ドクターウェルは待ちに望んだ時が来たと端末を操作し始める。

今まさに《死神》に放たれんとしているS2CA。それを構成する大量のフォニックゲインをこの男は待っていた。

《死神》の中に眠る彼の英雄を救う為、そしてその英雄が望む結末の為に。

男は自らが生み出した計画をただただ己が信奉する英雄の為に、全て投げ捨てたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁切歌は確信していた。

勝ったと、勝利したと。

放たれたのは世界中の人々から集まった大量のフォニックゲインを以て奏でられた6人分の絶唱を束ねたS2CA。

これならば、と。

実際切歌の確信は的中していた。S2CAの光に飲み込まれた《死神》は悲鳴をあげながら崩壊していく。

誰がどう見ても、間違いなく戦いの結末を予想させる光景だ。

 

「(これなら――!!)」

 

唯一の懸念としては《死神》の中に眠る人物が無事であるかどうかだろう。

フィーネを信じるのであれば大丈夫なのだろうが、どうしても不安な気持ちが湧き上がってしまう。

生まれてしまう漠然とした不安。しかし今は、とその想いに蓋をして前を見据えようとして―――

 

 

S2CAの光を突き破って自分に迫る異物の存在に、気付く事が出来なかった。

 

 

「――――え?」

 

呆然とした声が零れると同時に切歌の身体に――いや、切歌が持つシンフォギア《イガリマ》に異物が絡みつく。

それは黒い鞭の様な存在だった。まるで生きているかのように鼓動し、揺れているその姿は今まさに敵対している《死神》の外見とそっくりであった。

まさか、と切歌が《死神》に瞳を向ければ、其処には光に身を焼かれ、滅びながらも切歌に向けて鞭を放っている《死神》の姿。

この時切歌を含めた面々は知る由もなかったが、ドクターウェルが月遺跡再稼働に必要なフォニックゲインを集める為に起動させたフロンティアの機能。それが彼女達の放つS2CAからフォニックゲインを吸収した事によって威力が僅かであるが低下していた。それ故に《死神》は身を焼かれながらも一矢を報いる事を可能とさせていた。

だが―――

 

「切歌!!」

「切ちゃん!!」

 

2人の心配する声を聴きながら切歌はイガリマに纏う鞭を切り捨てようとしていた。

イガリマに絡みつく鞭は、ハッキリ言って弱い。

威力が低下しているとは言え、S2CAの威力は《死神》を倒すのに十分なもの。

これを受けながら放った一撃はまさに弱弱しく、S2CAを発動している今の状態の切歌でも容易く切り伏せる事が可能だった。だからこそ切歌は迷う事なくそれを切り伏せようして―――

 

 

突如脳内に響いた悲鳴に顔を顰めた。

 

 

「な、なんデスかこれ!?」

 

聴こえる悲鳴はもはや言葉になっていなかった。

あらゆる感情が入り混じり、あらゆる思いが混ざり合い、あらゆる物が全て1つにされたかのようなその悲鳴は切歌の脳内中に響き渡り、そして――突然消えた。

 

「――え」

 

それと同時に自身の中から何かが消えた感じがした。

先程まで感じていた力が、脳内に甘く鳴り響いていた歌声が、全て消え去っていった。

どうして、そう戸惑う切歌の視線の先でイガリマに絡みついていた鞭が解け、光の中へと戻っていく。

――――その先端に、何か鏡の破片の様な物を巻き付けて。

 

「―――――ぁ」

 

切歌は無意識にそれに手を伸ばしていた。

鏡の破片を取り戻す様に、手を伸ばすがそれより先に鞭は鏡の破片を巻き付けたまま光の中へと消えていき、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

聴こえる悲鳴を最後に、《死神》は消失していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消えゆく《死神》。その姿を映像を通してみながら――弦十郎はやっと笑みを見せる事が出来た。

 

「―――勝った」

 

司令が零したその一言が指令室全体に広がっていく。

1人、また1人と同じ言葉を紡ぎ、そして――全員が笑みを浮かべて勝利の雄たけびをあげた。

勝った!とやった!!と。ある者は1人で拳を握って勝利の喜びを噛み締め、ある者は傍に居た人に抱き着いて勝利の喜びを分かち合った。満たされる勝利喜び、その中で1人のオペレーターが驚きと喜びが入り混じった表情で叫ぶ様に報告する。

 

「司令!!ふ、フロンティアより謎の光が発生!!光は月にある月遺跡へと照射され――あ!!い、今月軌道が――修正されていきます!!地球への落下コースから外れて元の軌道上へと戻っていきます!!」

 

信じられない報告に弦十郎は再三確認する様に伝え、オペレーター達も何度も確認するが、結果は変わらない。

フロンティアから照射された光が月遺跡を再稼働させ、その軌道を元に戻したのだ。

何故?どうして?と言う疑問こそ残ったが、その場にいた全員はそれを素直に喜んだ。

2つの危機が同時に去った。その事に喜び、そして――

 

「藤尭!!装者達の現在地点は!?」

「確認済みです!!」

「よし!!ならすぐに迎えに行くぞ!!地球の危機を救った英雄達をな!!」

 

彼等は向かう、この物語を英雄の元へと。

誰しもがそれに従い、喜びを胸にしたままそれに従って行動していく。

 

 

――だからこそ、気付けなかった。

 

 

フロンティアの上空に、一瞬だけ可笑しな反応があった事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やった、な」

 

6人の装者達はボロボロだった。

S2CA、そしてそれを発動させるまでに発生した数々の戦いで立っているのもやっとと言う段階で傷つき、疲れ果てていた。しかし彼女達は勝利した。《死神》に、そして地球に迫る最大の危機に。

 

「たぁ~…もう限界だ」

 

言葉と共に雪音クリスが倒れ込む様に地面へと横になる。

それに続く様に次々と奏者達が倒れていくが、ただ1人マリアだけは立っていた。

 

「そんな所に横になっていると汚れるわよ?」

「……今日は許してほしいデス~」

「…切ちゃんに同意。もう限界」

「切歌ちゃんと一緒~…流石に疲れた~」

 

F.I.S.と二課。敵対していた2つの組織の装者達が今は仲良く倒れた語り合う。

その姿に全員が小さく微笑みながら暫く語り合うが―――

 

「……私達は、どうなるのかしら?」

 

マリアの一言にF.I.S.の面々の表情が強張る。

最終的に協力したとはいえ、彼女達はテロリストだ。

この後彼女達は捕まり、法の裁きを受けるのは確定だ。

無論、マリア達も己の罪を理解しているし、それから逃げるつもりもない。

だが、それでもとマリアは2人の幼い装者を見詰める。

自身の歪んだ想いで此方側へと引きずり込んでしまったこの子達だけでも、どうにかしてあげたい。

そんな想いを察したのだろう。二課を代表して翼が口を開こうとする。

可能な限り力になると、そう言おうとする。

 

だがそれより先に、遠くで何かが倒れる音が聞こえた。

何が、とその場に居た全員が視線を向ければ――そこには1人の少女が倒れていた。

《死神》が消失した場所と全く同じポイントで倒れている少女を6人の装者は知っていた。

 

「あの子――!!」

 

咄嗟的に立ち上がった響、そして元々立っていたマリアの2人が急いで少女の元へと向かう。

倒れている少女、それはあの仮面の少女だった。

仮面を被ったまま意識を無くしているのであろう、小さく聞こえる寝息が彼女が生きている証拠となり、それを聴いた2人は安心する。

 

「……もしかして、この子が?」

 

《死神》が居たポイントで眠っている事、そしてフィーネが言っていた《死神》の中に居る人物。

それらを合わせて考えれば、仮面の少女こそがあの《死神》の中に居た人物であろうと判断して間違いないだろうと2人は推察して――当然の疑問を抱く。

彼女はいったい何者なのか、と。

響からすれば敵対こそすれど最終的には未来を救う為に一緒に戦ってくれた恩人。

マリアからすれば自身に対し凄まじい敵意を見せ、けれども最後は怒りを以てもう一度立ち上がる勇気を与えてくれた恩人。

2人からすれば敵でも恩人でもある、そんな不思議な人。

それが今目の前で倒れている。無防備に、静かに眠っている。

 

いけない事だと、理解しながらも2人は仮面へと手を伸ばす。

その下にある顔を、貴女が誰であるのかを知りたいと、手を伸ばし、そして―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒りを込めた何者かの声。

それが聴こえたと同時に―――――周囲に攻撃が降り注いだ。

 

「な、なに!!?」

「――――ッ!!?」

 

飛びのく様に後方へと飛び去る2人は、空を見上げて気付いた。

其処に居たのは、仮面の少女が率いていたノイズの軍勢。

複数の大きな空飛ぶ戦艦の様な体格をしたそれらが一斉に装者目掛けて攻撃を降り注いでいた。

その光景は、さながら爆撃と称するに相応しいものだった。

 

「どうしたッ!?」

「お、おいおいおいなんだよいったい!?」

「マリア大丈夫デスか!?」

「マリア!!」

 

遅れてやってきた装者達も自分達目掛けて降り注ぐ弾丸や攻撃を躱し、凌ぎながらどうにか集まり、味方をしてくれていたノイズ達が突如攻撃をしてきた事に戸惑いながら、空から降り注ぐ攻撃にどう対処するべきか考える。

そんな中でただ1人、マリアだけは気付く事が出来た。

降り注ぐ攻撃の中で、仮面の少女だけには1つも攻撃が向けられていない事を。

そして――――眠っている仮面の少女を誰かが抱えている事に。

 

「――貴女は?」

 

問い掛ける様とした声は、降り注ぐ攻撃によって阻まれる。

そしてほんの少しだけ目を離したと同時に――仮面の少女も少女を抱えていた人物も消え去っていた。

それとほぼ同時だろう。大地が大きく揺れた。

 

「な、なに!!?」

「お前達!!!!」

 

突然の振動に慌てる面々だが、それと同時に空からヘリが一機迫る。

ヘリはそのまま強行着陸で着陸するやいなや、側面の扉から弦十郎が姿を見せて呆然としている装者達に向けて叫んでいた。

 

「急いで乗れ!!何故かは分からんが俺達が居るフロンティアのこの区画だけ強制排除されようとしている!!このまま此処に居てはこの区画諸共海面に叩きつけられるぞ!!!!」

 

突然の知らせに僅かに戸惑いを見せるが、装者達はすぐにヘリに飛び乗る。

だが空にはノイズが居る。攻撃を受ければヘリなんか一瞬で崩壊してしまうと奏者達は戦闘態勢を構えるが――ノイズ達はヘリに攻撃をしてこなかった。それどころか進行方向を開ける様に散開さえする始末だ。

いったいどういう事だと戸惑いながら装者達は離れていくフロンティアに視線を向けて――そして驚く。

 

「な、何だよあれ!!?」

 

戸惑う様に叫ぶクリス達の視線の先で、フロンティアの前に―――突如巨大なゲートの様な物が開いたのだ。

まるでSFファンタジーで見る様なそれを前にフロンティアは中へと突き進んでいき、そして全体がその中へと入ると同時にゲートは閉じ、そして――フロンティアは完全に姿を消した。

後に残されたのはフロンティアに破壊された艦艇と静かな海。

まるで此処にフロンティアと言う存在があったのが嘘だったように、この騒乱の原因となった古代船は姿を消したのであった。

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