セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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久しぶりに更新しました!
書く時間が年々減っていっていく…
ライブ行きたかったなぁ……


第147話

 

――夢を見ていた。

 

《マム!》

 

《あの子》の夢を。

私が――私達大人が殺してしまったあの子の夢を。

 

《どうしましたセレナ?》

《えっとですね…これ受け取ってください!!》

 

夢の中のあの子が差し出したのは、小さな花の束。

それを見て、嗚呼と理解する。

この夢はかつての記憶の再現なのだと。

そしてこの光景は、元気が無かった私にこっそりと施設を抜け出したセレナが集めてきた花を手渡してきたあの時の物だと。

 

《セレナ、この花は…》

《えへへ…マム最近元気無かったから、少しでも元気を出して欲しいなって》

 

――そうだった。

この時元気が無かったのは、上層部の決定でネフィリムの起動実験が執り行われる事が決まり、そして実験にもしもがあった場合――唯一の装者であるセレナがその対応に当たる事も決まったからだ。

 

《…本当に貴女は優しい子なのねセレナ》

 

私は、目の前にいる優しい子に危険が迫る事を重々承知しながら、その決定を覆す事が出来なかった。

ネフィリムの起動実験。其処に含まれた危険性など彼等にとっては些細な事でしかない。

もしも仮にセレナの命が失われるのが確定していたとしても、彼等はそれさえも許容して実験を進めただろう。

それほどに彼等は欲深く、そして欲に忠実で醜い生物だった。

 

「(……いいえ)」

 

――それは私も同じだ。

実験を止められないなら他にも手段はあった筈だ。

この子達を逃がしてあげる、ネフィリムを破壊する、そう言った手段は選ぼうと思えば選べた筈だ。

けれど私はそれを選ばず、実験に参加する道を選んだ。

あの子の命が失われる可能性はある、そう理解してもなおその道を選んだのだ。

どんな言い訳をしても、どんな理由を並べても、私はその道を選んだのは否定出来ない事実なのだ。

そんな私と彼等に、何の違いがあるだろうか。

何ら変わらない――醜い生物だ。

 

そして迎えたあの結末。

あの子を失い、それまでの罪に苦しみ、あの子達と復讐の旅を始めたあの結末。

その旅の最中で何度も後悔した。

己の決定を、己が進んだ道を、悔やみ、後悔し続けた。

他者の欲に魅せられ、自らの欲に負けた愚かな己の判断を。

その欲の果てに失われたあの子の命に、ただ後悔し続けるしかなかった。

 

「――そんな私に、その笑顔を向けられる資格はありませんね」

 

そう呟くと、夢の世界に亀裂が入る。

夢を否定した結果だろうか。亀裂が世界を割って崩壊していき、そして夢は終わりだと告げる様に意識が覚醒していくのが分かる。

覚醒していく意識の中、割れた夢の中で笑みを浮かべているあの子を見て、思う。

 

「(…もしも)」

 

もしも、何かの奇跡であの子にもう一度会えるのならば――その時は絶対に間違えないと。

あの優しい子を、今度こそ道を誤らずに守りたいと。

そう小さく思いながら、私は夢から目覚めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あ。目を覚まされましたか?」

 

聴こえた声を招きに、ナスターシャは静かに目を覚ます。

目を覚ました彼女がまず見たのは、見覚えのない清潔な部屋と此方を心配そうに見詰めている1人の少女。

此処は―?ぼんやりとする頭で身体をゆっくりと起こして辺りを見渡すが、見える景色に覚えはない。

 

「あぁ!まだ無理をしないでください!臓器系の治癒は終わりましたが、術式の負担がまだ残ってますから!」

 

そんな動きを慌てて静止する様に向けられた言葉に、ナスターシャはふと己の身体の異変に気付く。

あれほど病で苦しく、重く感じていた身体が驚く程に軽く、そして楽になっていた。

現代医学では匙を投げられ、もはや終わりを待つ事しか出来なかったこの身体が、だ。

いったいどうして――そんな戸惑いを察したのだろう。目の前に居た少女はゆっくりとだが説明を始めた。

 

「えっと、詳しい事情を説明するのは禁止されているので、うまく言えないのですが…今の貴女の身体はほとんど治療を終えている状態です。臓器系の損傷が激しかったので治療に数日を必要としましたが、そちらも問題はないと思います。脚の方も日常生活に問題が出る事はないと思いますが、まだ治療を終えてばかりなので暫くの間は安静にしてください」

 

その話はとても現実とは思えない程の内容だ。

どんな医学でも、どんな名医でも匙を投げた程に悪化していた己の身体。

もはや残された時を全てあの子達の為に投げ打つと覚悟をしていたのに、それが治ったと言われても信じられなかった。

けれど、その証拠に身体はこれまでの苦しみが嘘の様に楽になっていて、脚も自由に動かせる。

嘘のようで、けれど本当の事を言っているのだと理解せざるを得ないだろう。

 

「(いったいどのように…いえ、それよりも……)」

 

己の身体の回復に驚かされながらも、ナスターシャが気になったのはあの子達。

マリア、切歌、調。

あの子達がどうなったのか、それを問おうとして――

 

「やあ、失礼しますよエルフナインさん。ナスターシャが目覚めたと言うのは――ああ、本当のようですね」

 

まるでそれを阻む様に部屋に入ってきたドクターウェルの存在に目を見開く。

 

「ドクターウェル!?」

「あー、はいはい。僕を恨む気持ちもその怒りも驚愕も理解していますが、今はそんな事置いておいてください。今貴女がやるべき事はただ1つ――ある御方を診て欲しいんですよ」

 

ある御方?

それが誰であるのかを問おうとするが、それより先にウィルは車いすを手にして視線で乗れと促す。

聴きたい事は山ほどあったが、今は従うしかないと私は彼に従い、車いすへと移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――な、んですか…ここは……」

「あー、まあ驚くなと言うのは無理な話ですよねぇ」

 

ウェルの操作で進む車いすから見せられた光景は、理解が追い付かない物ばかりだった。

無数にいるのではないかと思う程に大勢のノイズ――いえ、アルカ・ノイズと呼ばれる錬金術で作り上げられた人工のノイズ達がそれぞれ各々の仕事を果たし歩き回っているその光景は、彼の言う通り驚くなと言うのが無理だ。

 

「…錬金術にアルカ・ノイズ…まさか私達の知らない世界がこうもあるとは…」

「私も一科学者を名乗らせてもらっている身としては少々複雑な気持ちはありますが、現実はこれですよ。けれどこれで驚いていてはここでやっていけませんよ?」

 

ある御方とやらが居る部屋まで案内される道筋でドクターウェルは彼が知りえる全てを語った。

私が眠っていた間に起きた一連の全てと、此処が異なる空間に存在するシャトーと呼ばれる場所である事。

そして――此処には絶対の王が居ると言う事。

 

「キャロル・マールス・ディーンハイム。この名前は覚えておいて損はないですよ。このシャトーの頂点に君臨する存在で、彼女の気分を害したらあっと言う間にポイされますから」

「……覚えておきましょう」

 

曰くその外見は美しい幼女である。

だがその外見に騙される事あらば、その命容易く失うだろう。

シャトーを治める絶対君主であり、他者の命を削る事に躊躇がない暴君。

それこそがシャトーの王、キャロル・マールス・ディーンハイムであるとウェルは語る。

 

「実際、ボクもこうして自由に動いているのには結構な条件付けられてたりするんですよねェ~、例えば、コレ」

 

衣服の首元を緩めると同時に姿を見せたのは首輪。

何処となく美術品を連想させる綺麗な作りであるそれをウェルは笑顔で指さしながら――

 

「実はこれ、爆弾なんですよねェ」

 

まるで子供がお宝をアピールするかのような明るい声で、驚愕の事実を告げた。

 

「なッ!?」

「起爆条件は色々とありますが…まあ、端的に言ってしまえばあの幼女を怒らせたら即起爆って感じです。おかげで色々と調べたいのですが、思う通りに行かないんですよねェ」

 

その首輪が爆弾である、そう説明したウェルがため息をつく。

その首に付けてあるそれが己が命を奪う物であると理解しながらも、一切の恐怖を見せずに。

 

「……貴方は理想を叶える為ならば他者の命を利用し、己が生を優先する男である事は先の件で嫌と言う程理解させられました。そんな貴方が他者に己が命を握らせるなんて…何があったのですか」

 

ナスターシャの問いにウェルは先程まで見せていた笑みとは異なる笑みを浮かべる。

それはさながら――邪教に魅せられた狂信者が浮かべる狂った笑みの様だった。

 

「――運命に、出会えたんですよ」

「…運命?」

 

その言葉にナスターシャが思い至ったのは、カ・ディンギル跡地で起きた戦いの後に見せたウェルの様子。

あの《死神》に対し異常な程の執着と狂った愛を向ける様になった彼が語る運命。

其処から連想させるのは――

 

「……まさ…か…居るのですか?此処にあの《死神》が!?」

 

そう考えれば辻褄が合う。

突如現れたシンフォギアを使わない黒い手を操るあの少女の存在も。

その黒い手を連想させる《死神》の出現も。

あれだけの存在が誰にも認知されていない事も。

全て辻褄があっていく。

 

「はい。居ますよ。あの御方は此処に…そして貴女も今から出会うんですよ」

 

いつの間にか辿り着いていた1つの部屋の前。

数体のアルカ・ノイズに警備された其処を前に、ウェルは慣れた様に入口のアルカ・ノイズに声を掛けると、彼等は何処か嫌そうな雰囲気を醸し出しながらも扉を開けようとする。

 

「――ああ、そうだった。2つ言い忘れていました。ナスターシャ博士、この部屋の中ではボクは彼女の主治医です。余計な言葉は言わないでくださいね。そして―――中に居るのが誰であっても絶対に驚かないでくださいね」

「……は?」

 

驚くなと言うのはどういう事だろうか。

それを問い掛けようとするが、それよりも先にゆっくりと扉は開かれて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、こんにちはウェル先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――《その声》を聴いた。

二度と聞ける筈のないその声を。

幾度も聞いたその声を。

絶対に忘れないと誓ったあの声を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――セ……レナ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あの日失った優しい子が、今目の前に居た。

 

 

 

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