セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
「……主役を置いて眠るとは、我が弟子ながら困ったやつだ」
オレの膝の上で寝言を呟きながら幸せそうに眠る馬鹿弟子に呆れながら、その髪を優しく撫でる。
パーティー開始からはや数時間、その間こいつはずっと動き回っていた。
料理にアルカ・ノイズの指示にとオレ達がパーティーを楽しめる様にと必死に裏方に努めて、眠そうになりながらも頑張っていたのを知っていた。
外での事もあって疲れているだろうに、そんな様子を一切見せる事無く頑張り続けて…遂に限界を迎えたのだろう。
パーティーを邪魔してはいけないと思ったのか、ばれない様に人目の少ない場所で眠りこけているのをファラが見つけ、ここまで連れてきてくれた。
膝枕は…あれだ、寝にくそうにしてたし、こいつの頑張りを認めたオレからの褒美であってだなッ!
「テンプレツンデレ乙、なワケダ」
余計なことを言うなプレラーティッ!とツッコミを入れつつ、このまま此処で寝かすのは申し訳ないとファラに馬鹿弟子を預ける。
「部屋に連れて行ってやれ、もし起きたとしても今日はもう休めと伝えておけ」
はい、とどこか嬉しそうなファラと、その腕の中で眠る少女が玉座の間から姿を消す。
パーティーは終わりだな、と部屋にいるアルカ・ノイズに片づけを命じるとてきぱきと片付けが始まる。
「………便利だな本当に」
手際よさに感心しながら片付けを見守りながらキャロルは部屋の一角へと向かう。
片付けが進む玉座の間、その一角に置かれた机の上にはプレラーティが用意したワイン。
あの少女の前では酒は身体に悪いと飲む事が叶わなかったそれを、2人の錬金術師はグラスに注いで音も無く静かに飲む。
「…美味いワインだな」
「持っている中ではかなりの一品だ、美味いに決まっているワケダ」
グラス一杯を飲み干している間に片付けは終わっていたのだろう。
広がる光景はいつも通りのそれ、残された異物はオレとプレラーティが腰を下ろしている椅子と机だけとなっていた。
残されたアルカ・ノイズ達は指示を待つかのように待機しているのを手で出ていく様に指示すると、一礼してから指示通りに外へと出ていき―――遂に2人だけとなった。
静かな空間に聞こえるのはワインを注ぐ音と飲む音。
2人の錬金術師は互いに言葉もなく、注がれたワインを飲んでいき―――
「…キャロル、お前に1つ聞いておきたい事があるワケダ」
それを破ったのはプレラーティ。
用意された最後のワインをグラスに注ぎながらキャロルに対して疑問をぶつける。
「なんだ?今のオレは気分が良い、答えられる質問なら答えてやるぞ?」
「お前が企ててる計画、あれにお前の弟子を巻き込むつもりなのかどうか、それを聞きたいワケダ」
―――ワインが不味くなる話だな、と飲みかけのグラスを静かに机の上に置いた。
「…どこから知った?」
「お前の弟子について調べる時にもしや、と思ったワケダ。
忘れてると思うがこのシャトーの基礎設計を務めたのは私なワケダ。シャトーの機能、そして結社と共同で行われているアルカ・ノイズ開発とお前のオートスコアラー、そして最近になってお前が集めだしたシンフォギアの情報にお前の持つ聖遺物ダインスレイフ。
ここまで揃えば大体は分かるワケダ」
そうか、と言葉を切ると同時にキャロルが纏う雰囲気が一変する。
静かな空間に満ちていくのは―――敵意。
キャロル・マールス・ディーンハイムが数百年を以て学んできた錬金術が無言のまま展開され、玉座は吹き飛ばされ、整えられた部屋の中は荒れ果てていく。
さながら嵐の様な錬金術が展開されていき、その中央に位置するキャロルの表情は………冷酷そのものであった。
「……残念だプレラーティ、お前とはなんだかんだと仲良く出来るかも、とは思ったんだがな」
計画を知られた以上生かしておくつもりはないと言うわけか、とプレラーティは静かに息を吐いて、ワインを飲み干す。
空になったグラスを机に置いてーープレラーティは答える。
「誤解しないでほしいが、私にお前の計画を阻止又は妨害する意図は一切存在しないワケダ」
プレラーティの言葉にキャロルの表情が僅かに揺れる。
「…何故だ?お前らからすればオレの計画達成はお前たちの破滅と一緒。阻止する理由になっても何もしない理由にはならないはずだが?」
確かにキャロルの言う通りである。
キャロル・マールス・ディーンハイムが成そうとしているのは世界の解剖。
それが達成される事、すなわち自らさえも解剖される事を指す。
それを妨害するならまだしも何もしないと言われれば、誰だって疑うだろう。
だが、プレラーティとてそれを分かった上で答える。
「あまり結社を…私を舐めないで欲しいワケダ。
さっきも言ったがシャトーの基礎設計をしたのは私なワケダ。シャトーは世界解剖にも耐えうる様に設計されている。
シャトーそのものをもう一基は流石に無理だが、シャトー同様の避難シェルターの開発ならば十分に可能なワケダ。
シェルターがある以上私はお前の計画を阻止する理由などない、好きに世界解剖でもなんでもやるが良いワケダ」
実際プレラーティの言葉は本当だ。
彼女にとって大事なのは結社でも、己の命でもない。
プレラーティにとっての光、プレラーティにとっての全てでもある存在こそがサンジェルマン。
彼女さえ助かるのならば世界がどうなろうが知った事ではない、そう本心から望んでいるのがプレラーティと言う人間なのだ。
そしてキャロルもまたプレラーティと言う人間との関係こそ浅いが、命惜しさに妄言を吐く人間ではないと知っている。
彼女の言葉、それはまさしく本心から出ているものであると信じれるぐらいにはプレラーティと言う人間を知っていた。
それに、だ。
「……ふん、あいつに感謝しろ。今日はお前と喧嘩はしないと書類に記入させられているからな」
展開した錬金術が消えるのを見届けてプレラーティも静かに息を吐いて、流れる汗を拭う。
プレラーティからすればもしもここでキャロルと戦闘にでもなれば間違いなく勝機はなかっただろう。
ファウストローブが完成しているのであれば話は別であるが…そこは重要ではない。
プレラーティが求める答えをキャロルはまだ話していない。
「………それで?私が邪魔をするつもりがないと分かってくれたならば答えて欲しいワケダ。お前は……あの弟子を計画に巻き込むのか、それとも違うのかを聞かせて欲しいワケダ」
ふん、と荒れ果てた部屋の中から椅子を起こし、奇跡的にも無事だった飲みかけのワインを飲み干す。
そして流れる沈黙。
時間にすればほんの数分間だけ流れた沈黙、されど体感する者からすれば永遠に近い沈黙。
そして、沈黙の果てにーーー
「………答えはNOだ。あいつはいずれこのシャトーから逃がすつもりだ」
キャロルの答えがでた。
実際本編だとサンジェルマン達、世界解剖からどう逃げるつもりだったのだろうか?