セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
「それでは皆さん飲み物を手にしましたか?ではでは…かんぱーいッ!!」
「…かんぱい」
「…かんぱいなワケダ」
玉座の間に並ぶ多くの食事と飲み物を前にして、音頭を取った少女の言葉と共にキャロル、プレラーティ仲良しパーティーが始まりを告げた。
……と言っても、主役2人は微妙そうな表情で渡された飲み物(カル○ス)をチビチビと飲みながらお互いの動きを警戒しているのだが……
「………」
「………」
ここで行われているのは本当にパーティーなのか?
思わずそうツッコミを入れたくなる程、2人から溢れ出る緊張感。
流石に先程までの一触即発……とまでは行かないがそれでも漂う緊張感は、見る者を恐縮させるだけの威力を有している。
されどそんな様子を少女はどうやって歩み寄ろうと悩んでいるのだと前向きに捉え、ニコニコと食事を運ぶ為に部屋から出ていく。
「(くそ…こいつと仲良くって言われても…)」
「(…何を話せば良いワケダ?)」
―――実際、少女の考えも全くのはずれと言うわけでもなかった。
2人とも既に少女の怒りを体験している身。
あれをもう一度受ける位ならば…と仲良しパーティー中だけでも仲が良いふりをしようとしているのだが……
何といってもこの2人、会話のネタがない。
キャロルは基本的にオートスコアラー以外に話す相手がいないから持ちネタの数は少ない。
結社相手の時には錬金術やアルカ・ノイズと言った自分のペースで展開出来る話しかする事がなかったのも原因だ。
そんな自分ペースで展開出来る持ちネタは既に少女が帰る前に話し尽くしたのもあってネタがないキャロル。
対するプレラーティもほぼ同等。
基本的に結社内ではサンジェルマンとカリオストロ、後は嫌々ではあるが局長ぐらいとしか会話はなく、ほかの結社面々とは精々あっても幹部として指示を下すだけ。
おまけに話すと言ってもサンジェルマンはともかく、カリオストロとの会話はほぼ一方通行。
向けられる言葉の雨に適当に返事を返すぐらいだ。
そして此方もキャロル同様に自分の持ちネタである錬金術関係を使い果たした後である。
結論で言うと、基本的に会話をする機会がない2人共々会話の持ちネタが少なく、そんな数少ない持ちネタを使い果たし、無難な会話をしようにも元々そこまで深い付き合いがあるわけでもないので互いに何を話せば良いか分からない。
なので2人とも会話をしようにも会話が出来ず、ひたすらにグラスに注がれた飲み物(カ○ピス)をチビチビと飲むしかなかった。
「(どうする?話すとしたら…例の鏡の件とかか?)」
「(だが流石にキャロルの弟子がいるこの場で話すわけにもいかないワケダ)」
どうしたものか、そう悩みながら飲み物を飲み干した矢先ーーー
《オカワリイリマスカ?》
「ん?ああ頼………む?」
「すまない…ワケ……ダ?」
こうなればやけくそで話をと互いに覚悟を決めながら飲み干したグラスにお代わりを注いで貰いながら―――ふと、思った。
今の誰だ?と。
何気なく抱いた疑問を解決する術は1つ。
くるりと未だにグラスへ飲み物を注いでくれる人物が誰かを確かめるために振り返ってみると―――
《―――――♪》
《―――――♪》
鼻歌交じりに飲み物を注ぐアルカ・ノイズがそこにいた。
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「おい馬鹿弟子、あれはどういう意味か説明しろ……今すぐにだッ!!」
「同感なワケダ」
上手にパイが焼けて気分ルンルンで玉座の間へと運んでいる時に突如鳴り響いた悲鳴。
さながら某見た目は子供の探偵アニメで出るようなその悲鳴に慌てて駆けつけてみれば、そこにいたのはアルカ・ノイズを前に臨戦態勢になっていた2人。
慌てて止めに入り、何とか落ち着いてもらった後に少女は正座させられていた。
これじゃあさっきの反対ですね…と思いながら説明をする。
「えっと、プレラーティさんには見せましたよね?アルカ・ノイズの別方面における活用方法の資料」
「ん?ああ…と言ってもほとんど見れていないワケダ。どこぞの誰かに邪魔をされたワケダ」
ふんっと面白くなさそうに顔を背ける師匠に苦笑いを浮かべ、説明を続ける。
対ノイズ戦闘を主に開発された少女のアルカ・ノイズであるが、何かしら別方面で利用できないか?と考え、まず浮かんだのは雑務の代わりだ。
シャトー内部の掃除は現状手の空いているオートスコアラー(ガリィ以外)と少女の手によって行われているが、なんと言っても広い上に人手が圧倒的に足りない。
前々から何とか人手を増やせないかと悩んでいた少女が、アルカ・ノイズの利用方法に雑務を真っ先に思い浮かべたのはある意味納得出来るものでもあった。
思い浮かんだら何とやら、アルカ・ノイズから解剖器官を撤去、位相差障壁も必要ないので撤去し、人型と言う観点から武士型アルカ・ノイズに改造を施し、その手を武器ではなく人の様な手に変更。
そして経験を重ねさせる事である程度の物の運搬、細かい品の持ち運びまで可能となり、そのお披露目も併せて今日のパーティーの手伝いを任せていた。
「まあ色々とあって説明はしてなかったですけど……」
少女の説明に……2人は頭を悩ませていた。
アルカ・ノイズ、その使い方次第では現存の兵器よりも圧倒的上に行く兵器になりうる可能性があるアルカ・ノイズを雑用に……
料理を運んで机の上に並べるアルカ・ノイズ。
何時でもお代わりを注げますと飲み物を持って待機しているアルカ・ノイズ。
ゴミや汚れを始末する為に箒を持ったアルカ・ノイズ。
…確かにいわれてみるとこの部屋の中だけでもかなりのアルカ・ノイズが雑用をしているのが見て取れた。
…世界広しと言えどもアルカ・ノイズをこんな使い方をするのは他にはいないだろうな、と呆れてしまう2人であった。