セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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アンケート200近く協力ありがとうございます!
とりあえず明後日ぐらいまでは続けるつもりですが、多くの協力に大変感謝してます!
ひとまずの方針としてはXVまでを目指すつもりで頑張らせて頂きます!
そして一番投票が多かったので今後も頑張ってなるべく速く続きを書いていきますので応援してくれると嬉しい限りです!
長々と失礼しました、では本編の方をどうぞ


第26話

歌が聞こえる。

招かれるように歌が聞こえる。

 

 

こっちだよ

 

もうすぐだよ

 

速く速く

 

誘いの声は優しく、招かれる足は軽い。

歓迎するように、パーティーの主催を出迎えるように、優しい歓迎の声が聞こえる。

 

鏡が見える。

どこか見覚えのある鏡。

どこだっけ?………嗚呼、駄目だ思い出せない

けど何でだろう。

あの鏡を見ているとーーー無性に懐かしい想いが胸を包む。

 

「ーーーー」

 

鏡に手を伸ばす。

自然と、そうしなければいけないと思えたから伸ばす。

迷いや躊躇もなく、ただ伸ばしーーーーそして、触れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を満たすのは炎

崩れ落ち崩壊する建物の中で少女は思う

私、守れたのかな?

大事な人を、大事な世界を、守れたのかな?

流れる血液、ボロボロの身体、きっと私はもう長くはない。

崩壊する建物に巻き込まれて死ぬか、炎に呑まれて死ぬか、身体が限界を迎えて死ぬか。

どれにせよ救いなんてもうないだろう。

 

「ーーー!ーーー!!」

 

遠くでマリア姉さんが呼んでる。

答えてあげたい、救いが無いとしてもせめて何か言葉を残してあげたい。

けどごめんなさい。

もう口もまともに動かす事が出来ません。

 

「(………きっと落ち込むだろうなぁ)」

 

マリア姉さん、私にとってとても大事な人。

優しくて、綺麗で、私が大好きなマリア姉さん

ずっと一緒に居られるんだって思っていた。

施設での生活は辛かったけど、マリア姉さんがいたから頑張れた。

マリア姉さんがいたから、今日まで生きてこれた。

 

「(………泣いちゃうんだろうなぁ)」

 

マリア姉さんああ見えて泣き虫さんだからきっと………て、あれ?

頬を伝う涙に、先に泣いちゃいましたね……と自虐する。

 

段々と意識が薄れていくのを実感する。

消えていく意識とそれに合わせるように消えていく痛み。

死ぬってこんな風なんだ、とどこかぼんやりと思う。

 

「(………………ないなぁ)」

 

死を前にして少女は願う、願ってしまう。

それは人としては当たり前で、誰だって願ってしまう、願い。

大好きな人の為、世界の為とその身を犠牲にした少女の、最後の願い。

 

 

 

 

 

 

 

「(………死にたく………ないなぁ………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿弟子ッ!!!!」

 

聞き慣れた叫び声と共に世界が反転する。

炎は消え去り、建物は見慣れたシャトーに戻っている。

そして、少女の手を掴むのはーーー

 

「………師匠?」

 

そこにいたのはキャロル。

迫る黒い手に錬金術を放ちながらその手は少女を力強く握り締めている。

 

「やっと戻ってきたようですねッ!」

 

「派手に心配させてくれたものだッ!」

 

「大丈夫かー?心配したんだゾ!」

 

「あたしは心配なんてしてませんけどねー!!」

 

その周囲ではオートスコアラーがそれぞれの特性、武器を最大限活用しながら黒い手の迎撃を行っている。

アルカ・ノイズもまた解剖器官を展開し、奮戦しているのも見えた。

しかし部屋全体から溢れるように出現する黒い手は勢いを増し、迎撃の手が追い付いていない。

 

「え?え?」

 

状況が理解できないのか困惑するように揺れ動く視線。

それをキャロルが手で自分へと向けるように動かす。

 

「いいかよく聞け!!あの鏡に攻撃をやめるように命じろ!!鏡にお前が主であると知らしめるんだ!!」

 

「え?え?鏡にって………え?あの………どういう………」

 

「いいからやれッ!!お前なら………いや、お前にしか出来ない事だッ!!」

 

状況は理解できない。

されど、師匠の言葉に少女は従い鏡の元へと駆ける。

それを阻止せんと濁流が如く溢れる黒い手が少女に襲い掛かるがーーー

 

「させるかッ!!」

 

轟音と共に吹き飛ぶ黒い手。

キャロルが放った一撃は鏡へと続く道を作り上げ、少女はその道を駆ける。

キャロルから逃れた黒い手が周囲から阻止せんと更に迫るが、それを阻むはーーー四人の人形達。

 

「邪魔すると許さないんだゾ!!」

 

「地味な役回りだが任せて行け!!」

 

「あの子の邪魔はさせません!!」

 

「全くもう!こんなのあたしのキャラじゃないってのに!!速く行きなさいなッ!!」

 

立ち塞がる四人の人形達が迫る黒い手を阻む。

炎が、硬貨が、剣が、水が、少女の道を守護する。

 

「ありがとうございますッ!」

 

律儀にお礼を叫びながら少女は駆け、鏡に辿り着く。

滲み出る《何か》を溢れさせながら目前に立つ鏡に、身体が震える。

去れ、言葉なくそう言われているような奇妙な感覚が全身を襲うが、少女は勇気を振り絞るかのようにゆっくりと鏡に手を伸ばす。

しかしそれを許さないと言わないばかりに四人のオートスコアラー、そしてキャロルさえも抜いて迫るのは、黒い手。

 

「馬鹿弟子ッ!!」

 

キャロルが吠えるが、既に遅い。

黒い手が少女へと迫る。

殺すつもりはないのだろう、その形状はキャロル達に向けられた残虐な形ではなく通常の手ではある。

されどあれに捕まれば少女の動きが封じられる。

そうなればもはや、鏡を止められる人物はいなくなってしまう。

だがそれを防ぐ事が出来る人はこの場にはいない。

少女に迫る黒い手、ただ眺める事しか出来ない己に怒りさえ混み上がりながら、もう一度吠えようとしてーーーー気付く。

 

黒い手の動きが、止まった。

まるで時間が静止するように、時の歯車が止まったように動きを止めた黒い手は、ゆっくり、ゆっくりと消えていく。

砂のように散っていくそれをただ眺めながら、キャロルは事態の終息を察して安堵のため息を吐いた。

 

「ーーー師匠」

 

少女が振り替える。

そこにあった鏡は今や少女の手に収まる程に小さな鏡となり、少女の手に握られている。

《ファウストローブ ニトクリスの鏡》

完成に至り、されど暴走したそれは今や与えられる予定だった持ち主の手に渡った。

 

「………私、師匠に言わないといけない事があります」

 

少女の真剣な表情にキャロルは察する。

少女と鏡、互いに惹かれ合い、接触してしまった今ならば………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………私、自分の名前を思い出しました」

 

 

 

 

 

 

 

きっと取り戻してしまう、と。

 




やっと少女から解放される………何回名前を書き込む失敗をしてしまったか………

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