セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第3話

「これは…まさかッ!?」

 

少女が奏でる悲しき歌と共に放たれるは力の嵐。

まさに逆巻く風の如く降り荒れるその力はあまりにも強く、咄嗟的に剣を突き刺しそれを支えとする事でやっと持ち堪える事が可能な程の威力。

なれど彼女が奏でる旋律はまだ歌い終わっていない。

旋律が続く度に増していく威力に、危機感と焦りが遅れて沸き上がる。

 

「余波でしかないのにこんな威力なんて……!?」

 

少女はと言えば瞳がはっきりとせずにどこを見ているのかさえ分からないのか、呆然としたまま歌を奏でている。

その歌が自らの身体を殺そうとしているとは気づいているのかさえも怪しむレベルで少女は歌を歌い続けようとしている。

 

他の3人も少女の危険性を十分に理解しなおしたのだろう。

もしもこの旋律が完全に歌い終えたら、4人どころかチフォージュ・シャトーも、そして何よりも自らの主にも危険を及ぼすだろう。

それは絶対に避けねばならない――!!

もはや捕獲は無理だと判断するしかないだろう。

此処にいる4人全員の力を以て対象を仕留める、それが現状を打破できる唯一の手段。

 

「―――!!」

 

それしかないッ!!そう判断して4人が動き出すよりも先に――――

 

 

 

「――ふんッ!!」

 

 

 

少女の身体に巻き付くは無数の弦。

少女の動きを封じ、自らを殺す歌声さえも口ごと封じ込めたその弦の使い手などたった1人しか考えれない。

 

「マスターッ!?」

 

そこにいたのは4人のオートスコアラーの主である少女キャロル。

ただしその外見はいつも見せている幼いそれとは違う、成長した大人の姿である。

よほどでなければ使う事がないファウストローブさえも展開させている、それは少女が放たんとしていた一撃がどれだけ危険であったのかを簡単に予想させた。

 

「マスター…大変申し訳ありません、マスターのお手を煩わせる様な失態を…」

 

「いや、許す。むしろこればっかりは俺の失態だ。まさか絶唱を口にするとはな…」

 

≪絶唱≫

シンフォギア装者が持ち得る最大の攻撃であると同時に自らの死さえも呼び起す、死の歌。

最近であれば≪ツヴァイウイング≫の片割れがそれを歌い、自らの肉体が欠片さえ残らずに死滅したのが新しい。

それをこの少女が口にするとは、流石のキャロルでもそこまでは想像出来ずにいた。

 

「……こいつから聞きたい事が山ほどある。ファラ、簡単で良い。こいつの手当てをしてから俺の所へ連れてこい。ただし、シンフォギアは没収しておけ」

 

弦を引き戻す様に少女から解くと、少女は力なく地面に倒れ堕ち、気絶したのもあってかシンフォギアが解除され元の姿へと戻る。

それを見届けてからキャロルは幼い姿へと戻るが、その足取りは少しおぼつかない。

 

「マスター…まさか今ので?」

 

「いや、想い出を焼却するまでには至っていない。だが…あの余波に肉体が少し損傷を受けた様だ。大丈夫だ少し休めば回復する。それよりもファラは先ほどの命令通りに事を進めろ。ミカ、お前はこいつとの追撃で荒らした通路をレイアと共に片づけておけ。ガリィはこの場の後始末を頼む」

 

「え?ちょちょ!!マスター待ってくださいよ~!?どうしてガリィちゃんがこの場の後始末なんてしないといけないんですかぁ!?どうせ通路の片づけするんならミカちゃんとレイアちゃんにさせたらいいじゃないですか!!」

 

キャロルが口早に命じた指示に真っ先に反抗するはこの面々の中では一番厄介な性格を持つ青い少女こと≪ガリィ≫

まあ確かに彼女の言う事も納得はできなくはない。

どうせ片付けるならば2人に任せる……とまで行かなくとも3人で協力して行うと言うのであれば納得出来る話であるが、2人に完全に押し付けようとしている所から既に彼女の性格の悪さがにじみ出ている。

しかしキャロルからすればそんな物もう慣れ切った毎日の出来事の1つ。

小さくため息を漏らし、取り出すは録音機。

首を傾げるガリィの前でスイッチを押すと――――

 

≪がんばってねお嬢さん~♪≫

 

そこに録音されていたのはもろくそ敵を応援しているガリィの声。

げっと声を漏らしたガリィが言い訳を展開させようとするがそれを彼女の主が許すはずがない。

 

「確かに敵の実力は弱く、ファラ単独でも十分に対応出来たからそれを見据えて援護しなかったと言うのなら分かる。だがその敵を応援するとは言語道断だ!!これはそんなお前に与える罰に相応しいと俺は思っていたが……優し過ぎたか?ならばレイアとミカが担当する部分もお前がやっても――――ふん」

 

言い切る前に既に姿を消したガリィに仕方ない奴だと呆れながらもこの場を任せて部屋へと戻ろうとし、4人の自分に忠節なる部下達の目が届く事がない場所まで到達すると、未だにおぼつかない身体に耐え切れずにゆっくりと腰を下ろした。

 

「(まさかこれほどとは……)」

 

絶唱の威力と言うのは既に知っている。

ツヴァイウイングのライブイベントにて発生したノイズ事件を終息させた≪天羽奏≫の絶唱。

命を燃やして歌う、確かにその価値があるだけの威力を放つ一撃であると認めよう。

だがあの少女が放ったそれと比べると威力が違い過ぎる。

余波で自らにこれだけのダメージを与えたあの少女が持つフォニックゲインは恐らく天羽奏、そして生き残った片割れの風鳴翼の上を行くだろう。

 

「……あの力、利用できまいか?」

 

経験こそないが十分に素質はある。

あれを従わせる事が、そしてそれを都合のよい駒としての運用が叶うのならば今後の計画に混ぜ込んで上手く利用できるやもしれない。

我が命題、父からの課題を果たす為にーーー

 

 

 

 

 

 

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少女は目覚めるや否や先ほどまで剣を向けられていた相手に手当てされてから連行されると言う謎シチュエーションに困惑していた。

 

「えっと…あれ?私なんで捕まって…もしかしてさっきのは夢だったり、します?」

 

「いいえ、夢ではありませんよ」

 

あ、あっさりと否定されちゃった…

てことはあの装束も、彼女と戦ったのも本当の事で……ってあれ?

首に違和感が?と視線を下げると先ほどまでは首元にぶら下がっていたペンダントが紛失している事に気付く。

どこで手に入れたのかも実は覚えていなかったりするのだが、所持品が無くなるのは気持ち的に嫌で慌てて探す様に周囲を見渡すが―――

 

「もしかして、これをお探しで?」

 

探し物のペンダントを持っていたのは剣の女性。

見つかった事に安堵するが、同時に……

 

「返しては……くれないんですよね?」

 

「ええ、マスターからの命令あるまでは私が預かります」

 

……まあ仕方ないよねと素直に諦める。

どうしてあのペンダントだけ奪ったのかは理解出来ないけれど…もしかしてさっきの装束とかと関係あるのかな?

そんな事を考えながら人気のない寂しい通路を無音で歩く事数分。

辿り着いたのは大きな扉。

 

「うわ~…大きいですね」

 

思わず関心して言葉にしてしまうが、そんな私に対して剣の女性は道を開けて中へ入る様に促す。

ごめんなさいと謝罪をすると同時に扉の前へ立つとゆっくりと扉は開いていく。

そして――――

 

「ようこそ、と言ってもお前に与えられる選択肢は2つだ。

知っている事を全て吐くか、死ぬかだ。どちらを選ぶかは好きにして良いぞ」

 

自分よりも年下であろう幼女にもろくそ上から目線で毒を吐かれた。

 




キャラ崩壊待った無しのセレナでごめんなさい(白目)

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