セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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本当は2つに分けるつもりだったんですけど、短いかなって
後最近知ったんだけどアガートラムじゃなくてアガートラームだったんですね…
修正しなきゃ…


第29話

「はぁ………」

 

ため息は幸せが逃げると昔誰かが言っていたななぁとぼんやりとした思考で考えながらカレンダーを見つめる。

あれから数日、セレナの日常は変化なく続いている。

強いて言えばの変化としてあの黒いもやの存在が挙がるが、どうもあの黒いもやは四六時中側にいるわけではないらしい。

基本的にはセレナが会いたいと願った時だけ姿を見せると言った感じだ。

おまけにその姿を見ていても不思議と嫌悪感や抵抗はない。

なのでさほど気にならない、と言うのがセレナの本音である。

そんな感じで特に何も変化が起きていないいつもの日常を過ごしているセレナだが、彼女はその日常の中で悩んでいた。

 

「(私師匠に協力するって言ったはずなんだけど………こんなに変化が無くて良いのかなぁ?)」

 

ずずっと緑茶をすすりながらここ数日の行動を振り替える。

 

朝起きたら朝食の支度をして師匠と(たまにエルフナインさんも)食事をして、片付けをしてからどちらかに錬金術の指導をお願いし、昼になると昼食。

昼からはその日によって違うが、基本的には掃除をしてからアルカ・ノイズの研究、開発か暇そうな誰か(大抵ミカさん)と鍛錬、または買い出し。

………ああ、最近はニトクリスの鏡についての調査もしてますね。

それで夕方になったら夕食、それで後片付けしてから入浴(シャトーのお風呂はビックリするほど豪華です)

後は次の日の食事の下拵えをしてからお布団に入って睡眠…って………

 

「これじゃあ主婦の日常じゃあないですかッ!!」

 

今更気づいたかのように叫ぶセレナの後ろで掃除をするアルカ・ノイズ達は口にこそしなかったが全個体が同じ言葉を思い浮かべる。

いや、気付けよと。

 

「いけません………このままじゃいけない気がします………ッ!」

 

セレナとしては忙しい師匠達の力になりたいと家事を引き受けてきた。

だがそれはあくまで計画を知らず、何も力が無かった少女でしかなかった頃の話。

今は違う、計画を知り、それに協力をすると誓った今のセレナは思う。

このままではいけない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なに?」

 

キャロルは困惑していた。

突如部屋に来訪してきたセレナが部屋に入ると同時にーー

 

「私にも何か役目をくださいッ!!」

 

まさかの仕事要求を突き付けてきたのであった。

 

「…いきなり来てなにかと思えば………そもそもだ!オレはお前が計画に参加するのを認めた覚えはない!!」

 

「え!?あ、いや……そ、そうですけど!!けど私は決めたんです!!師匠の力になるって!!」

 

セレナの言葉に嘘はない。

キャロルの力になりたい、そう心の底から願っている。

ただ、その願いはキャロルの想像するそれとは異なるわけだが………

 

「(ここで師匠に計画から外されたままだと………!)」

 

あの黒いもやが教えてくれたキャロルの計画は決して全て判明しているわけではない。

黒いもやが知っていたのは計画の一部分と、キャロルがこの計画を企てる原因となった過去についてのみ。

それを纏めるとこんな感じになる。

 

1、師匠はシャトーの本来の機能であるワールドデストラクターを使って世界を分解しようとしている

2、ただしシャトー自体はまだ未完成、完成に至るまでに必要な要素が欠けている為

3、必要な要素の1つとしてシンフォギアの存在は必須、されどそれをどう扱うのかまでは不明

4、キャロルが計画を実行しようとしているのは父親の最後の言葉《世界を知れ》の解答を誤っているから

 

セレナとしてはキャロルの計画に協力し、その実態を解明。

それを何とか阻止しながらどうにかキャロルに父親からの答えを再度考え直してもらいたいと願っている。

だが、きっとそれが出来るのは自分ではない。

キャロルを止める事が出来るのは、その役割を担うのは他の誰かだろう。

だからセレナはその誰かが現れるまでの繋ぎでしかないと自覚している。

 

「(………本当は)」

 

叶うのであればこの手で師匠を止めたい。

師匠を止めて、それまでとは違う別の人生を歩ませてあげたい。

だけど、それは私だけではきっと無理な話なのだ。

私の言葉だけではきっと師匠には届かないと他の誰でもない私自身が理解しているから。

だからこそーーー

 

「お願いします!私は………私は師匠の力になりたいんですッ!!」

 

セレナは吠える。

込められて想いを言葉に変えて、吠える。

………それが届いたのかどうかは分からない。

だけれども………

 

「………計画への参加については考慮してやる、今はそれで我慢しろ」

 

キャロルから漏れたその言葉はセレナの目標へと確かに近づいたのであった。

 

 

 

 

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鍛錬場にて向き合うは二人。

ニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべながら頭に浮かぶ3つの風船を揺らしながら待ち受けるミカ。

対するはアガートラームを身に付けず、その手にはニトクリスの鏡を握ったセレナの姿。

 

「くふふ、楽しみだゾ!」

 

「…お手柔らかにお願いしますね」

 

あの日以来、セレナはファウストローブであるニトクリスの鏡の性能について調べた。

師匠であるキャロルが施したシンフォギアシステムを解明して取り付けたロック機能に阻まれ完全な調査は出来なかったが、それでも解明出来る範囲を調査し、その機能を理解した。

今日はその性能を初めて実戦にて試す日であった。

 

「………ふぅ」

 

自身を落ち着かせるように深く深呼吸をする。

ニトクリスの鏡、性能を知れば知るほどに背筋に冷たい何かを感じさせるセレナが持つアガートラームとは違うもう1つの力。

使わずに済めばそれで良い。

だが、今後キャロルの計画に協力する以上は戦闘があり得るやもしれない。

その時に備えて使える手段は1つでも増やしておきたい。

だから―――

 

「――行きますッ!!」

 

鏡を空に掲げる。

シンフォギアとは違い聖詠は必要としないファウストローブは要請されたプロセスを実行する。

空に掲げられた鏡から降り注ぐは―――≪黒≫

黒い何かがセレナへと降り注ぎ、その幼い身体を染めていき、球体へと変貌する。

セレナを包んだ黒は幾度か鼓動し、そして崩れ落ちていく。

 

―――崩れ落ちた球体の中から現れたセレナの身体を包むのは黒い装束。

アガートラームの白と対になるほどに黒い軽装姿で現れたセレナは軽く呼吸をすると拳を動かす。

 

「…一応は成功、ですね」

 

ファウストローブの展開に成功したのかを確かめるように手足を軽く動かし、成功している事に安堵する様に息を吐く。

アガートラームの時とは違い、胸にこみ上げる歌はない。

だが、まるでその代わりと言わんばかりにこみ上げてくるのは戦闘方法、そして―――破壊衝動。

キャロルが施したロック機能のおかげか十分に耐えられるが、込み上げてくるそれは気持ち悪さを感じざるを得ないだろう。

それを耐える様に気合を入れ、律義に待ってくれているミカへと向かう。

 

「もういいのか~?あたしは全然待ってるんだゾ?」

 

「大丈夫です!ミカさん今日も鍛錬、お願いします!」

 

そっか~それなら、と終始笑顔のミカの顔が―――瞬時に顔面へと迫った。

 

「――ッ!!」

 

距離は3~5m、その間を即座に埋めてみせたミカの機動力には何回も驚かされてしまう。

はははッ!!と笑い声と共に突き出されるミカの攻撃を何とか躱し、距離を取らねばと攻撃しようとし、生成したのは二本の剣。

掛け声と共にミカへと一撃が振るわれるが、ミカはそれを受け止める様に拳を突き出す。

剣と拳、言葉だけ聞けばどちらが勝つのかは明白だが、その実態は拳の圧勝。

ミカの一撃を受けた二振りの剣は粉々に散り、辺り一面へと散らばった。

 

「ん~?その武器脆すぎるゾ?」

 

ですね、そう答えるセレナの手には既に次の剣が握られている。

あの一瞬で武器の生成をし直した事に僅かに驚きを見せながら、ミカは今度はカーボンロッドを射出し遠距離を試す。

迫るカーボンロッドに対してセレナは剣を放棄し、その手に握るのは銃。

 

炸裂音と共に弾丸を放つそれはカーボンロッドを迎撃しようとしたのだろう。

だが迫るカーボンロッドに対してその迎撃は余りにも貧弱。

カーボンロッドと接触した弾丸は粉々に散らばり、カーボンロッドは僅かに狙いをずらされ、セレナの傍へと落ちていく。

 

「(む~)」

 

その状況を見ながらミカとしてはもやもやとした複雑な気持ちであった。

マスターであるキャロルによって製作されたファウストローブ ニトクリスの鑑。

その実力にミカは期待していたのだが…はっきり言って微妙。

破壊した剣の即座の生成、それに銃への切り替え。

恐らくあのファウストローブの特性は無尽蔵の武器の生成、と言った所だろうか。

やろうと思えば槍や斧、弓等と言った様々なバリエーションが可能であると予想出来るが……

これならばアガートラームの方が全然戦闘能力が高いだろう。

 

「(まだまだ隠してる機能があるかもしれないけど…つまらないんだゾ……)」

 

ミカとしてはもっと激しい戦闘を望んでいたのだが…まあ仕方ないかと割り切る。

あの武器の耐久力ならば接近戦に持ち込めばすぐに勝てちゃうんだゾ、と早く終わらせていつものアガートラームでの鍛錬に変えてもらおうとして――――

 

背後から迫る≪それ≫に気付いた。

 

「――――ッ!!」

 

ここで咄嗟的に回避行動を取る選択を選んだのは流石は戦闘特化型のミカだろう。

つい先ほどまでミカがいた場所に降り注ぐ≪それ≫はほんの数日前に見た物と同一。

 

≪黒い手≫がそこにいた。

 

「―――くふふ」

 

ミカとしてはその可能性は十分に考慮していた。

ニトクリスの鑑暴走事件の際に出現した黒い手、あれはきっとファウストローブの機能としても十分にあり得ると。

だが鍛錬場には反射する品なんてない、ならば使いたくても使えないのでは?と考えていた。

しかし現に黒い手は出現している。

いったいどこから…と周囲を探り、そして…気づく。

地面に散らばる≪それ≫に気付く。

 

「…あは…ははは…」

 

黒い手が生み出されていたのは、地面に散らばる武器の破片達。

散らばる破片から伸びる黒い手を前にミカはセレナの行動の真意を知った。

武器による攻撃、迎撃は全て偽装(フェイク)

黒い手を呼び出すのに必須な反射物を作る為に意図的に壊させていた事に―――

 

ミカに迫る黒い手。

そのパワーと拘束力は凄まじく、捕まりでもすれば幾らミカと言えそう簡単には逃れられないだろう。

だが、不意打ちで捕まったあの時は違い、今回は真正面からの攻撃。

正面同士の戦闘において――――

 

「あはははははッ!!!!」

 

ミカが負ける理由などない。

 

 




ファウストローブセレナVS想い出満タンミカ
……あれ?これセレナ勝ち目ない?

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