セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第35話

《ルナアタック事件》

フィーネが引き起こした一連の騒動がそう呼称されてはや一週間。

破壊された街はゆっくりであるが復興の手が進み、それに合わせて被害状況も露になっていった。

復興への期待、知らされる悲しい報告。

様々な感情が集ったその街の片隅に――――

 

「はーい!まだまだありますからどうぞ!!」

 

炊き出しをするセレナの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――今後の方針としては以上だ。何か意見はあるか」

 

シャトーの玉座の間。

飾り等がなく無機質な寂しさを感じるこの場に面々は集っていた。

集まった面々はキャロルに忠誠を誓う4人の人形と、キャロルの弟子であるセレナ。

シャトーの戦力の全てと言っても過言ではない面々が揃う中で、1人だけ異質な存在がいた。

それは―――

 

「あーし達はそれで構わないわよ♪」

 

キャロルの今後の意向を確かめる為に結社から派遣されてきた1人の女性、名はカリオストロ。

結社の幹部であり、かつてはプレラーティ同様に男だった過去を持つが、生物学的に完全な身体構造をしている女性へと錬金術を以て変化させ、不老長命を得た生きる歴史人物である。

話し合いの前にセレナも少しだけではあるが会話したが、話してみた限り明るいおねーさんと言った印象を受けた。

そんなカリオストロの露出の激しい衣装はセレナの眼の毒と、なるべく視界に入れない様に身体を張って視界防御をするファラだが、当のセレナはあれが大人の服装…と興味津々であった。

 

「それで?今後の方針は理解したけど、あーし達は何か協力できる事あるの?正直あの局長からの命令って時点でやる気は湧かなかったけど……こーんな可愛い子達がいるんなら話は別♪あーし張り切っちゃうわよ♪」

 

カリオストロは当初は言葉通りやる気等なかった。

局長が勝手に結んだ同盟。

あの人の好き勝手で予測できない行動はいつもの事であるが、まさかこんな事を独自に仕出かしていたと聞いた時はストレスがマッハだった。

カリオストロでこれなのだ、真面目なサンジェルマンなどもう酷く、最近では夜な夜な各国の酒場を飲み荒らしている。

その度にカリオストロ、プレラーティは酔いつぶれキャラ崩壊しているサンジェルマンを迎えに行く羽目になっていた。

そんな事態を引き起こしたあの局長の命令に従う、正直ムカつく思いであった。

だが、その同盟相手がキャロルである事、そしてそこにプレラーティのお気に入りがいると聞いた彼女は―――面白そうと思った。

 

「(実際来てみればプレラーティのお気に入りの子、とっても可愛いじゃない♪)」

 

少しだけでしかないが話してみた限り本当に可愛く、愛される子ってこういう子なのねと感じざるを得ない愛らしさを持っていた。

 

「(嗚呼…本当に可愛い子。思わず―――――)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お持ち帰りしたいくらい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カリオストロ」

 

キャロルから向けられた敵意にあらま、と感情を控える。

その眼光はまるで殺し屋のそれ。

何かすれば容赦しない、って所ね。

 

「ごめんなさいね♪悪気は無かったのよ♪」

 

やりとりを理解出来てなかったのか、それともこういうのに疎いのかカリオストロの言葉に首を傾げるセレナに本当に可愛いわねっとウインクを決めるカリオストロ。

そんなやりとりをため息交じりに見ていたキャロルは玉座から立ち上がった。

 

「現状結社側にはこれまで以上の要請はない。物資と情報、それさえあれば十分だ」

 

「りょーかい♪それじゃああーしは鬼が怒る前に帰るとするわ。それじゃあねセレナちゃん♪今度は暇な時間作って遊びに来るわね~♪」

 

よいしょっとテレポートジェムを叩き付け、玉座の間から姿を消したカリオストロを見てやっと安心したかのようにキャロルは一呼吸をした。

 

「(まさかこんな話し合い如きに幹部クラスを派遣とはな)」

 

向こうからの誠意を見せつけるのが目的?いや、そんなはずはない。

大方見張りのつもりだろう。

オレと、そして――――

 

「話しはこれで終わりだ。ファラ、レイアは二課の偵察を継続。ミカ、ガリィ、お前達はシャトー内で待機、指示を待て。馬鹿弟子、お前も待機だ。良いな」

 

以上だ、と部屋を後にするキャロルであったが、不意にその手を掴まれた。

何だ?と視線を向けるとそこにいたのは自らの弟子。

どうした。そう問おうとするよりも早く――――

 

「師匠、今からちょっと時間もらえませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでどうしてオレが炊き出し等せねばならない!!」

 

深鍋で作られた豚汁(セレナ製)を器に注ぎながらキャロルは吠えた。

場所は破壊された街中。

その片隅にてテントを張っただけの簡素な炊き出し場、そこにセレナとキャロルの姿はあった。

 

「だって暫く師匠も時間あるんですよね?だったら手伝ってもらおうかなって」

 

確かに時間はある。

キャロルが決めた方針、それはシャトーの完成を優先し、装者達に対しては基本的に接触しない様にする事だった。

月の落下を阻止する為に身を挺して犠牲になった―――とされていた装者3名の生存は既に結社の情報網で判明している。

装者の無事、それはキャロルとセレナを喜ばせた。

キャロルは計画に必要なピースが欠けずに済んだ事に、

セレナは自らと縁を結んだ友が生きていた事に、喜んだ。

 

そんな喜びの後に、キャロルが決めたのがこの方針だ。

フィーネが引き起こしたルナアタック事件、今後二課はその後始末に追われ真面に機能しなくなるだろう。

その間二課に割く時間の必要性はなく、時間の無駄だと決めたキャロルの判断だ。

そしてシャトーは大方重要部分での作業は終わりを迎えている。

後はホムンクルスに任せ、残りの必要要素に関しては後々に得る為に動けばよい。

なので確かに時間はあった。

だからと言って―――

 

「あらあら、本当に助かるわ」

 

見ただけで理解できる程に重そうな袋を持って現れたのは1人の中年位の女性。

この炊き出し場からさほど離れていないフラワーと呼ばれるお好み焼き屋の店主であるその女性は、当初セレナとキャロルのみで行われていた炊き出し場の最初の応援でもある。

彼女が中心となり、次々と炊き出しに協力する人が現れ、今では小さなテントでは狭くなるまでに多くの人が協力をしてくれていた。

 

「さっき政府の人が来たけど、向こうの避難場でやってる炊き出しだけでは間に合ってないから助かるってさ。この食糧もその人がくれたもんだよ」

 

「わあ♪これだけあったら豚汁以外にももう1品作れますね♪」

 

「そうだね~…豚汁はあたしがやるからキャルちゃんとお母さんはそっちの支度を任せても良いかい?」

 

お母さん?と首を傾げるセレナの隣をああ、と通り過ぎていくのはキャロル。

え?と困惑する中ごく自然に中年の女性と会話する姿に驚きを隠せないかのように呆然としていると、キャロルが側に来てから小声でつぶやいた。

 

「流石に子供2人で炊き出しと言うわけにも行かんだろ。欺瞞術式でオレの姿はお前の母親に見えるようにしてある。まあどう見えているかまではわからんがな」

 

錬金術って本当にすごいですねーと感心する錬金術師の弟子。

良いのかお前はそれで…

 

 

 

 

 

 

「それで?わざわざオレを連れ出した本当の理由は何だ」

 

トントンと快調に材料を刻みながらそう切り出され、動かしていた包丁が止まる。

 

「……分かります?」

 

「分かる、お前は隠し事が苦手だからな。顔見てたら大方分かる」

 

そうですか、と刻んだ材料を鍋に入れながらセレナは僅かに沈黙する。

聞こえるのは炊き出しを待つ人々の声、炊き出しの準備の音、遠くで聞こえる復興の音。

様々な音が聞こえる中、セレナは沈黙していた口を、開く。

 

 

 

 

 

「識って欲しいんです。世界を、お父さんの残された言葉の様に」

 

 

 

 

 

キャロルにとって踏み入られたくない過去へと踏み込んだ。

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