セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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さらばシリアス!


第37話

「ふふ…ふふふ…」

 

シャトーにある一室。

セレナが使用を許可されているこの部屋は、基本的には錬金術の自己鍛錬をする際に用いる部屋である。

だがその部屋の奥にある小さな個室、そこはシャトーの主たるキャロルでさえも何があるか不明の部屋。

一度キャロルが何気なく追及した際にトップシークレットと頑なにその部屋を語ろうとしなかった。

そんな部屋の中にて、微笑むのは部屋の主であるセレナ。

眼の前に置かれた机の上に眠る≪それ≫の完成に至る品が遂に結社から届けられた事に堪えきれない笑みがこぼれる。

 

「長かった…本当に長かったです」

 

思い返すはキャロルに弟子入りをしてすぐの頃。

師匠の実力を学びたいと廃棄躯体を調べた時に思ったのだ。

凄い、と。

同時に思ったのだ、もしも自分がこんなのを作れたら、と。

そんな思いを糧に変え、努力してきた成果。

結社との同盟により遂に最終パーツを手に入れたセレナは震える手でそれを嵌め込む。

そして遂に―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

ガリィはその日ご機嫌であった。

暇潰しで始めた読書に何やかんやと嵌っているガリィであるが、最近はその中でも嵌っている作品があった。

≪うたずきん≫、そう呼ばれる少女向けコミックの最新刊を無事入手したガリィは自室に戻り読書へと興じようとしていた。

 

「あら、ガリィ」

 

そんなガリィの前に現れたのはファラ。

最近は二課の偵察でシャトーにいるのが珍しいファラの帰還に僅かに驚きながらも何の用と答えようとして―――

 

「さっきはありがとねガリィ。おかげで助かったわ」

 

―――全く身に覚えのないお礼を言われた。

 

「はぁ?ちょっとファラ、それどういう意味よ?」

 

「え?どういう意味って…さっきガリィに荷物運びを助けてもらったじゃない。忘れたの?」

 

―――再度言おう、全く身に覚えがない。

そもそもガリィがシャトーに帰還したのはついさっきだ。

手伝いはおろか、シャトーにさえいなかった人物がどうやって手助けなんて出来るだろうか。

 

「…え~と、ミカちゃんと間違えたとかは…ないわよね、うん」

 

「当然よ、あれは間違いなくガリィだったわ」

 

はて?とお互いに困惑する。

どうも話が一致しないと悩む2人。

そんな二人の前を通りかかるように現れたのは、機嫌が良さそうなレイア。

 

「どうした2人とも?地味に頭を抱えて」

 

「あ、レイアちょうどよかったわ。ねえさっきだけど―――」

 

「そう言えばガリィ、先ほどは派手に助かったぞ。まさかお前が率先して手伝ってくれるなんて、派手に驚かされた」

 

―――何度だって言おう、全く身に覚えがない。

今度はどういう事だとレイアに説明を求めると、少し前にマスターから言いつけられていた報告書の整理をしていた時にガリィが現れて率先して手伝ってくれたらしい。

おかげで予定していた作業時間を大幅に削減出来て、空いた時間でこれから妹に会いに行こうとしていた矢先に2人を見かけたので来たのだと語るが………

 

「………ガリィ、身に覚えは…」

 

「無いわよ…え?ちょっと、どういう事なの?」

 

背筋に冷たい物を感じざるを得ないだろう。

2人の説明を纏めると、本来はガリィがいないはずの時間にガリィがいて、そのガリィは普段はしない手伝いを率先して行った事になる。

無論ガリィに心当たりなどない。

それすなわち―――明らかな異常事態であった。

 

「レイア、そのガリィは何処へ?」

 

「すまない…特に気に掛けていなかった…派手な落ち度だ」

 

「と、とにかくその偽物のあたしを探すわよ!!」

 

もしかすればマスターに仇なす敵やもしれない、そう判断した三名が慌てて探しに行こうとしてーーー

 

「あれ?みんな揃ってどうしたんだゾ?」

 

聴こえてきたのはミカの声。

戦闘能力が圧倒的に高いミカの力があれば偽物と戦闘になれば助かるとミカへ協力を頼もうとしてーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカと仲良く歩く《ガリィ》を見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さて馬鹿弟子、これはどういう事か説明してもらおうか」

 

シャトーにある玉座の間。

少し前に方針を決める話し合いの場として活用されたこの部屋に集まったのはカリオストロを除いた全く同じ面々だ。

あの時と違うとすればセレナが床に座らされている事、そしてーーー

 

「………?」

 

状況を理解仕切れていないようにキョロキョロと辺りを見渡すガリィよりも少し幼い身体をしたガリィがそこにいる事だろう。

 

「えーと、ですね………」

 

セレナはどうにか誤魔化そうとするように言い淀むがそれはこの場が許してくれない。

説明しなければ分かっているだろうな?と言いたげな雰囲気に後押しされるようにセレナは諦めるように説明を始めた。

 

「………実は前から思ってたんです」

 

事の発端はキャロルに弟子入りしてから少し後の事。

あまりの巨体ゆえにシャトーに入る事が叶わないレイアの妹と何だかんだと仲良くなり、ある日そんな彼女と戯れながら、思った。

どうしてレイアの妹だけで他のオートスコアラー達には妹がいないのだろうか?と。

他のオートスコアラー達も言葉にこそしないが、本心では望んでいるのではないか?と。

 

「そんな事を思っていますと………ですね………」

 

元々自分も作ってみたいと言う欲があった。

その欲と思いは混ざりあってしまい、1つの計画を作り上げた。

その計画こそがーーー

 

 

「名付けてオートスコアラーS(シスターズ)プランです!」

 

 

ババンッとまるで番組のタイトルコールが如く熱く語るセレナに釣られるようにセレナの隣にいた幼いガリィは立ち上がり、スカートの裾を掴み、優雅にかつ礼儀正しく深々とお辞儀をしながら自己紹介を始めた。

 

「初めまして皆様、私マスターセレナの手によって作られました、ガリィお姉様の妹《ガリス》と申します。

以後どうかお見知りおきを」

 

ーーー目眩がしてきた、キャロルはそう思いながら目の前の現実を否定するかのように目を閉じた。


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