セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第38話

ガリィは不機嫌感をマックスに現しながら廊下を歩く。

それも当然だ、ガリィの妹≪ガリス≫が現れて1日。

そうたった1日しか経っていないのに……

ガリィを取り巻く環境は変わり果てていた。

 

「おはようございますファラお姉さま。嗚呼、よろしければお手伝い致しましょうか?ええ、全然構いませんとも」

 

礼儀正しく、積極的に手伝いに励み、

 

「あ、レイアお姉さま、此方お願いされていた書類です。必要はないかと思いましたが項目順に書類を整理して、幾つかあったミスも修正しておきましたので、後此方も時間があったので…」

 

仕事上手の上に気配り上手で、

 

「ミカお姉さま、申し訳ありませんが私に想い出を供給できる機能は搭載されておりませんので…後でガリィお姉さまにお願いしに行きましょう」

 

幾ら忙しくても笑顔を崩す事なく丁寧に対応し、

 

「マスターのマスター、此方先ほど焼いておきましたマフィンです。シャトー完成の為に頑張るのは良い事ですが、時には休憩も必要です。紅茶も用意しておきましたので少しご休憩でも如何ですか?」

 

料理上手で目上に対する対応までも完璧なあの妹にーー!!

 

はっきり言おう、ガリィは完全にガリスにその立場を奪われようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぷんぷんと不機嫌なガリィは廊下を歩く。

ガリス、そう名乗る妹は完璧超人かってツッコミを入れたくなるほどに優秀過ぎた。

ファラもレイアも、ミカまでもが彼女を気に入っている。

気に入らない………とイライラしながら歯を噛み締めるが、まだ堪えられた。

何故ならガリィにはマスターがいる。

マスターの寵愛さえあれば良いもんねーと不貞腐れながら廊下を歩き、

 

「いや、すまない助かるぞガリス」

 

聴こえてきたのはマスターの声。

その口から出た憎らしい名前にまさかと駆け足で向かうと、そこはとある部屋。

僅かに空いた扉から中を様子見するとーーー

 

「いえいえ、マスターのマスターは頑張りすぎだとマスターに聴いておりましたのでこれくらいならば喜んでご奉仕しますよ」

 

ベッドに横になったマスターをマッサージするガリスの姿があった。

 

「(ぐぎぎぃ………あ、あたしだってマスターのマッサージなんてさせてもらった事がないのに………ッ!!)」

 

込み上げる嫉妬心に折れそうになるほど指を噛み締めながら、それでも何とか耐えて様子見に徹する。

失敗してマスターに怒られろ!と呪いのような呪詛を小声で紡ぐ辺りが流石はガリィだろう。

 

「しかし、上手いな……馬鹿弟子に教えてもらったのか?」

 

「はい、マスターからは必要になるであろうあらゆる情報をインプットさせてもらっていますので大抵の事は出来ますよ」

 

なにその完璧超人システム……

てかあいつなに変な情報ばかり入れてるのよ!!

あれか!?前にした仕返しのつもりか!?(28話参照)

あれは妥当でしょう!!あたしは悪くはない!!

 

「そうか……それと気になっていたのだが、お前のその人格は……」

 

「はい、ガリィお姉様を基礎にマスターの人格情報をコピーして作られました。どちらかと言えばマスター寄りになってしまいましたが………如何でしょうか?」

 

「いや、正直オレはそちらの方が良いと思うぞ、うん」

 

ぐぎぎぎ!!とハンカチが破れそうになるほど噛み締めながら、ガリィのイライラは高まっていく。

こいつ……!腐ってもあたしの妹ならばあたしに花を持たせなさいよ!!

なーにマスターにちゃっかりと気に入られようとしてるんですか!!この泥棒猫めぇ!!

マスターもマスターですよぅ!!あんなパッと出の小娘になーにあんなに安心した顔してるんですかぁ!?

そーんな小娘なんかよりもガリィちゃんの方が優秀で可愛くて最強ですよ!!

そもそも人格だって基礎はあたしだって――――

 

「(………ん?)」

 

ふと思った。

今確かガリスはあたしを基礎にって言ったわよね?

ならばと考える。

《ガリスの立場になったガリィ》を考えてみる。

あたしならばどうする、と。

突然の妹の出現に困惑しているガリィに対して、あたしならばどう行動を取る?

 

―――そう考えると1つの答えが出た。

 

まさか、もしかして、と。

答えが生まれ、もしやと睨み付けるように視線を戻すと――気付いた。

ガリスの視線が此方を見ている事に、そしてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニヤリ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らの姉を馬鹿にしたような笑みを浮かべながら面白そうに見つめている事に、気付いた。

 

「あ、あのガキィィィィッ!!!!」

 

理解した、全て理解した。

あのガリスとか言う糞野郎は≪あたしで遊んでやがる!!≫

意図的に好まれキャラを作ってそれに嫉妬するあたしを面白がってやがる!!

許せん…絶対に許せん!!

誰かをからかって遊んで良いのはあたしだけなの!!

決してあんたじゃないわよガリスゥゥゥゥゥ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…それでどうしてこうなってるんですか?」

 

鍛錬場にて向き合うのは怒りに震えるガリィとニコニコと笑みを絶やさないガリス。

向き合う様に並ぶ2人の間に立つのは審判として呼び出されたエルフナイン。

久しぶりの出番なのに、暇そうだったからと言う理由で呼び出されたこの子も哀れである。

そんな2人と被害者1人を遠巻きに見るのは、キャロルとセレナ。

どうしてこうなったんだろうと困惑しながらハラハラした想いで見守るセレナに対し、キャロルは冷静に見つめていた。

 

「(ガリィの暴走はいつもの事だが…今回ばかりは丁度よいやもしれんな)」

 

キャロルからすればガリスはとても良い子だ。

正直、セレナにガリィと交換しないかと提案しかける程に良い子だ。

しかしそれをすればガリィが絶対にキレると堪えているのだが……まあこれは置いておこう。

現状、キャロルが最も知りたいのはガリスの戦闘力だ。

セレナ曰くボディに関してはエルフナインの手こそ借りて改造、調整しているが、基本的にはそのままだと言う。

だがそれ以外は完全に不明のまま。

それ故に今回の鍛錬はそれを証明できる絶好の機会でもある。

 

「えっと、それでは始めますけど…双方準備は良いですか?」

 

「はい♪いつでも♪」

 

「――その余裕な笑みをすぐにぶち壊してあげるわよッ!!」

 

睨むガリィ、微笑むガリス。

片や込み上げる怒りを形に変え、片やそんな姉の姿に益々と笑みを増していき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、始めてください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――オートスコアラー同士による姉妹喧嘩がはじまった―――

 

 

 


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