セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
こう言う設定とか書いていくの好きなんですけど偶に混乱するんですよ……
なので可笑しい所とかあるかもしれませんが、そう言った所は逐一修正していきますのでご容赦を……
「どういう事だ馬鹿弟子ッ!!説明しろッ!!」
ガリスが歌と共に生成した武器、あれは間違いなく聖遺物である。
それを何故持っているのか、先ほどの歌は何なのか、突き詰める様にセレナに答えを求めるキャロルであったが、セレナはそれどころではない。
「はぁぁぁッ!!!!」
掛け声と共に振るわれるガリスのトライデント、ただそれだけを心配そうに見つめていた。
「こんっのぉ!!」
迫るガリスのトライデントの突きから逃れる様に床を滑り、距離を取ったガリィは先程同様に鋭い刃と化した水を放つ。
その数合計10。
圧倒的な速度を以て放たれた水の刃は、狙い通りにガリスへと向けて放たれる。
放たれる水の刃はそのままガリス目掛けて飛んでいきーーー
急に方角を変えて、ガリィ自身へと襲い掛かった。
「なぁッ!?」
驚愕し、慌てて防がんと生成したのは水と氷、2つの盾。
その耐久力は想い出が満タン状態である今だからこそ発揮できる絶対不滅の盾。
これならば防げる、そう判断したガリィであったが………
―――水の刃と盾が接触した瞬間に、盾がその役割を放棄するように呆気なく崩れたのを見るまでは―――
「―――ッ!!」
言葉ならない驚きと共に慌てて自らが放った攻撃の雨を躱すが、全ては躱しきれない。
腕に、脚に、身体に、掠る様にでこそあるが受けた痛みに表情が歪む。
それでも何とか直撃だけは躱す事が出来たガリィは困惑する様にガリスを見つめる。
「……まさかそんな隠し玉があるなんてねぇ」
自身が放った攻撃が自らに襲い掛かり、防がんとした盾はその責任を破棄して瓦解する。
これらの異常の原因は安易に予想がつく。
ガリスが生成した武器、あれに違いないだろう。
「ええ、ええ。想像通りですガリィお姉さま。
この槍はギリシャ神話において名高い海の神、ポセイドンが扱いし槍、トライデントのほんの少しの欠片を元に生成された武器です」
数値で言えば1%にしか満たない本物の欠片と99%の偽物で作られたこの武器はある意味を言えばシンフォギアに近い性質を持っている。
ただシンフォギアとの違いは所詮紛い物であると言う事だ。
確かに一部本物を使用してはいるが、所詮は雀の涙程度。
シンフォギアに用いられる聖遺物のサイズと比べれば遥かに劣る小ささだ。
普通であればそんな物使っても聖遺物の神秘性の再現など不可能で、単なる槍として扱う事しか出来ないだろう。
それを可能にしたのが、錬金術と哲学兵装である。
哲学兵装とは簡単に言えば思い込みと言葉の力だ。
ファラの
彼の剣は≪剣であれば全て壊す≫と言う思い込みを形に変えた武器だ。
長い年月を掛けてそうであると思い込みを掛け続けられた武器が、その思い込みを≪そうである≫と認識する事で生まれるのが哲学兵装だ。
要はそれの応用だ。
僅かにでもポセイドンの槍であるトライデントの欠片を使用して作られた槍を錬金術を以て言葉の力を封じ込めていき、槍自身にこれが本物のトライデントであると思い込ませた物を形にした物がこの槍だ。
簡単に言えば、偽物のトライデント自身に本物のトライデントであると思い込ませているのがこの槍の正体。
後はガリスの歌で発生するフォニックゲインに反応させて聖遺物として使うだけで良いわけだ。
「言葉の力って凄いですよねー、おかげでこの槍は偽物でありながらも本物と変わらぬ機能を扱う事が出来ます―――そう、例えばこんな風にですねッ!!!!」
ガリスのトライデントが振るわれると同時に、ガリィ、ガリス両名の攻撃によって濡れていた地面に残った僅かな水滴が一瞬で短刀へと変わり、周囲一帯を囲む様にガリィに襲い掛かる。
咄嗟的に盾を構築しようとするが、先程の事を思い出し、即座に回避に切り替える。
迫る短剣の雨を躱しながら、氷の刃を手に纏おうとするが、それさえも上手く機能しない。
「(この場の水全ての支配権を奪われたってわけね…)」
伝承曰く、ポセイドンはトライデントを以て海と地震を支配したとされる。
その伝承があの偽物の槍で再現されているとなれば、水はおろか地震を起こす事さえも可能であると思われる。
はっきり言おう、勝ち目はない。
ガリィの水を封じられた時点でガリィに残された攻撃手段はほぼゼロ。
それどころか防御手段さえもない。
攻めるも守るも不可能、ガリィに残された道は降伏か破壊か、だろう。
そんな思考の間さえもガリスの攻撃は止まらない。
地面から生まれる無数の短剣が、トライデントの突きが、ありとあらゆる水を用いた攻撃がガリィを追い詰めていく。
特にトライデントによる攻撃の恐ろしさは驚かされる一方だ。
難なく壁に穴をあけ、地にクレーターを作り、振るえば破壊、刺せば破壊と言った暴力の具現と化している。
「―――ッ!!くそったれッ!!」
もはやガリィに選択肢はなかった。
こんな所で退場なんて許されるはずがない。
ガリィにはまだ役目があるのだ。
マスターの計画の1つとしてこの身を捧げる役目が―――だから―――
「―――――分かったわよ……」
決して口にしたくない単語を、絞り出す様に、捻りだす様に、言葉として発する直前――――
ガリスを無数の黒い手が襲った。
「――――ッ!!!?」
突然の襲来、ガリィに注意が向いていたガリスはまともな行動を取る前に即座に動きを封じこめられる。
幾つもの黒い手に捕まり、その動きを完全に封じられたガリスは叫ぶ。
こんな事が出来る唯一の人間に、自らのマスターに、
「マスター!!どういうつもりですか!!あと少しで―――!!」
ガリスは確かに見えていた。
姉が絞り出す降伏の言葉を、勝利への道を、
それを阻んだ人物、マスターへと怒りが向けられる。
例えマスターでも許せない、そう言いたげな言葉に対して――――
「もう少しもくそもありませんッ!!ガリスッ!!≪それ≫の使用はまだ許した覚えはありませんッ!!」
セレナのお怒りがさながらおいたをした子供を叱る様に、吠え返されたのであった。
「う……で、ですがマスター!!トライデントの起動は無事に成功致しました!!これでしたら何も問題は―――」
「問題大ありです!!ガリス分かっているんですか!!貴女にとってそのトライデントは最大の武器であると同時に決定的な弱点ッ!!未だに耐久性に問題があるのにそれを勝手に使うなんて…言語道断です!!」
苦し紛れの様に言葉を紡ぐガリスに対して、セレナの言葉はまさに抵抗の余地さえも許さない弾丸の様な勢いを持った物。
言葉を紡ぐたびに縮こまっていくガリスを見ながらガリィはポカンッと呆然としていた。
そんな混乱に満ちた鍛錬場の隅に避難する様に姿を隠していたエルフナインがゆっくりと姿を現して現場を眺める。
えっと、これは…と暫く悩んだ末に、エルフナインは持っていた旗を両方掲げて――――
「ひ、引き分けにしますー!!」
鍛錬の終了を告げた。
「…………なるほど、な」
鍛錬終了後、傷ついたガリィとガリスをそれぞれのマスターが修復しながら、キャロルはセレナからの報告を聞いていた。
ガリスはボディこそ廃棄躯体を再利用して生まれたが、その中身は別物である。
そもそもセレナの力ではキャロルやオートスコアラー達が扱う想い出を力へと変換する錬金術の再現は難しかった。
錬金術の基礎は分解と再構築だ。
セレナとて錬金術師の端くれ、目に見える物の分解、再構築は問題なく出来る。
だが、想い出と言う目に見えない物の分解はレベルが違う。
その再現性は難しく、だがこれ無くしてはオートスコアラーの製作など夢のまた夢。
しかしどうしても上手く行かないセレナは逆に代わりとなるエネルギーを作ればよいと考えた。
それが聖遺物。
歌の力を以て起動し、無数のエネルギーを生み出すこれに目を付けたセレナはエルフナインの力を借りてボディを改造。
錬金術を扱う事を前提としていたボディを聖遺物のエネルギーに対応できるする事で問題を解決したのだ。
残すはコアとなる聖遺物の発見だけだったが……これはそう簡単にいかない。
発見自体が珍しい聖遺物。それも素人が探し当てる等無理難題でしかないだろう。
それに独断での外出を禁じられているセレナにはとても探しに行けるわけもなく、ボディだけを完成させて放置する羽目になっていた。
そんな事態が急変したのが結社との同盟。
それも結社のトップであるアダムと個人的友好関係にあり、結社もアダムからの命令で彼女に対しては積極的な協力を優先する様にと指示が下りていたのもあって、結社に保管されていた聖遺物を頂ける事となった。
それこそが彼の海の神ポセイドンが扱いし槍、トライデントの破片。
だがそれはほんの僅かにしかなく、そのままでは聖遺物としても機能しない欠片でしかなかった。
どうにかして使える様にと考えた末に生まれたのが件の哲学兵装だ。
哲学兵装の理論を利用して作られたそれは無事に聖遺物として機能し、トライデントは無事にガリスのコアとして起動したのだが……
「…あのトライデントはまだ完全に完成に至っている訳ではなく、あくまでコアとしてのみ耐えうる状態で起動しているだけです。それをこの子は独断で兵装としてまで使うなんて……」
ガリスの最終武器、それは自らのコアとして機能しているそれを武器として扱うと言った物だ。
当然その威力は本物で、トライデントに纏わる逸話の再現も可能な程だ。
最終武器としては十分だろう。
だが、これは諸刃の剣。
その手に握るのは自らの心臓、もしも壊れれば――――
「それがお前が止めた理由、か」
突然ニトクリスの鑑を纏った時は驚かされたが、そういう理由ならば仕方ない。
しかし、とキャロルは考える。
まさかこいつが独断でこんな物を作っているとは……
はっきり言ってあのまま続けていればガリィは負けていた。
ガリィを屈する程の実力を持ったオートスコアラー・シスター。
「…使えるやも、な」
え?と聞き返す様に言葉を発するセレナに何でもないと手を振ってキャロルはガリィの修理を進めるのであった。