セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
セレナが小日向未来と再会したのは全くの偶然であった。
むしろセレナは意図的にこの再会を避けていたのだ。
その理由はやはり―――装者達にある。
立花響、風鳴翼、雪音クリス。
かつて縁を結んだ友であり、いずれは争わなければならない…敵。
そんな3人の友である彼女とどんな顔をして会えば良い。
友達だと語るその相手が自らの親友の敵であるとどう伝えたら良い。
それを知った彼女が見せる表情に、セレナの幼い心が耐えられるはずがない。
だからこそセレナは意図的に避けた。
彼女達が通う学院付近を避け、寄り道するであろう商店街から離れた。
彼女達と出会わないように、と。
彼女達の笑みを見る度に沸き上がる罪悪感から逃れる様に。
だが出会ってしまった。
小日向未来とセレナは再会してしまった。
逃げようと思えば逃げれた、逃げる手段は幾らでもあった。
テレポートジェム、ファウストローブ、シンフォギア。
これ等を用いなくとも彼女の身体能力であれば逃げ切れるのも可能だっただろう。
では何故逃げなかったか?
「(……嬉しいって思っちゃうんですね、まだ)」
笑顔で手を振って駆け寄る未来を見た時に感じたのは、罪悪感でも恐怖でもない。
嬉しい、と。
自らを友達と呼んでくれる未来に会えた喜びを最初に感じてしまったセレナに、逃げると言う選択肢は浮かばなかった。
それが今セレナが此処に留まっている理由。
罪悪感から逃げ出したいと願う心と、友達と一緒に居られる喜び。
反発する2つの感情に挟まれながら、セレナは盛り上がる会場を見つめるのであった。
「いや~けどまさかヒナのお友達って子にギリギリで会えるなんてね」
「本当によかったですね、せっかく風鳴さんが招待してくれたんですから皆で来れて良かったです」
「けどこんなギリギリで登場なんて、アニメみたいだね~」
「あ…あはは…すみません、最近色々と忙しくて……」
「ううん、気にしなくていいよ。あの事件でどこも大変なのは知ってるから」
特等席として用意された席に座るのは5人。
小日向未来とその友人である≪安藤創世≫≪板場弓美≫≪寺島詩織≫
そしてセレナの5人。
これだけの人数がいてもまだ余裕がある席の広さに、内心此処のチケット代とかヤバそうですね…と思いながらもセレナは悩んでいた。
此処から逃げるべきか、残るべきかを。
………本当ならば逃げるべきだと理解している。
これ以上彼女達と仲良くしていても、辛くなるのは自分なのだと理解しているから……
けれども―――
「早く始まらないかな~♪今日の為に昼ぐっすり寝て来たんだよ~♪」
「ビッキーみたいな事してきたわね…まあ私もして来ちゃったんだけどね」
「あはは…じ、実は私も…」
「「え!?詩織が!?」」
「わ、私だってお昼寝位しますよ~!!」
―――この環境に居たいと願っている自分もまた存在していた。
この温もりに、陽だまりの世界に、私も居たいと、そう願ってしまう位に……
―――けれどもそれは許されない。
セレナと言う少女は自らの師匠を辛い過去から解放させる為に暗がりを生きる道を選んだのだ。
もはや彼女に陽だまりの世界に生きる資格は―――ない。
「(…出よう)」
此処に居てはいけない。
此処は自分のいるべき場所ではない。
適当に理由を付けて外へ出よう、それから――――
「キャルちゃん、もしかして悩みがあるの?」
―――――胸の鼓動が高鳴ったのを実感した。
もうすぐ始まるであろう会場の雰囲気に飲まれる様に盛り上がる人々の声でほとんどの音は聞き取れなくなってもその声は―――小日向未来の声ははっきりと聞こえた。
「…どう、して…そう思うんですか?」
「なんとなく、かな。ほら、響もそういうの隠したがるから察する力が増えちゃった~、てね」
冗談交じりに笑顔で語る彼女に、適わないなと釣られる様に笑みを浮かべる。
そして―――
「―――じゃあ、少しだけ相談に乗ってもらっても良いですか?」
何時かの時とは真逆になった≪相談≫を切り出した。
「―――――そっか」
キャルの相談を聞いた未来は返答に悩んだ。
彼女の悩みは友人関係にある。
曰く、キャルちゃんはとある辛い過去を持つ友人の為に色々とお手伝いをしているけれどもその友人には敵が多く、その敵の中に自身の友人も交じっているらしい。
キャルちゃんとしてはその友人と争いたくない、けど辛い過去を持つ友人を見捨てる事も出来ない。
だから、その友人と争う覚悟を決めたのだけれど……
「…私、弱いですよね。ししょ――いや、その友人の為に頑張るんだって決めたのに、こんなに迷って…」
その迷いは必然であると未来は思う。
もしも自分がその立場に立って考えてみる。
響の為に今いる友人全てを敵に回す、響の為ならと思う反面、友人たちを敵に回したくないと願う自分もまた存在している。
自分でこれだけ迷うのだ、この小さな子であればその負荷はどれだけの物か…
何とか助言してあげたいと思う。
けれども所詮私はどこにでもいる単なる女子だ。
響の様に力があるわけでも、翼さんの様に知識があるわけでもない、単なるか弱い女の子だ。
そんな私の言葉で彼女の力になるのか、思わず躊躇してしまう。
「(だけど……)」
彼女はそれを求めて私に打ち明けてくれたんだ。
1人で苦しみ、悩み、その果てに相談してくれたんだ。
ならば答えないといけない。
力のないどこにでもいる少女の言葉なれど、答えなければならない。
頭に浮かぶ答えを、正しいか分からない答えを。
――けれどもこれだけは確信を持って言える。
「私なら、それでも皆が仲良く出来る道を探す、かな」
私の大好きな親友ならば絶対にこう答えるだろう、と。
ナツカシノメモーリアー カウント2