セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第5話

「……終わったのか?」

 

未だにショックで座り込みドナドナドーナーとどこかで聞いた事のある旋律を歌いながら体育座りで丸まってしまった少女に僅かながら同情し、この事態を引き起こした犯人であるガリィに声を掛けるが、当の本人は珍しい形相をしたまま答えない。

その反応に訝しみながらもう一度名を呼び促すとやっと此方を向くが、その瞳は未だに困惑しているのが一目で分かる。

普段は見られないガリィの反応に此方が戸惑ってしまっていると―――

 

「…あのマスター、この子…本当に人間ですか?」

 

………変な事を言い始めた。

なんだ?ガリィの眼にはこいつが化物にでも見えてしまっているのか?

…真に受けるのであれば人工知能か、視覚情報に障害でも生じたか?

ならば一度メンテナンスを含めて詳しい検査をしておく必要があるな。

 

「い、いやいやッ!!ガリィちゃんも可笑しな事言ってるな~って自覚はありますよ?けど正直これはもう疑っちゃうレベルの話だと言いますか…」

 

「……何があった、話せ」

 

彼女の反応にこれが何時もの冗談ではないのだと判断し、彼女がその発想に至った経緯を聞き出そうとするが、その視線は少女に向けられている。

……聞かせるには不味い話、か。

 

「ファラ、そこにいるな」

 

「はいマスター此処に……って、あのこれは?」

 

部屋の前で待つように指示されていたファラが室内で見た光景。

体育座りで見事なまでに丸まりドナドナドーナーと子牛が売られていきそうな歌を絶望した顔で奏でる少女の姿と、何時の間に部屋に入っていたかも分からないガリィの姿。

…ひとまず少女がこうなった経緯についてはガリィの姿を発見した時点で予想がついた。

部屋に入ってさほどの時間は経過していないはずなのに、どうしてこうなるのか…オートスコアラーとして生を受けて長年を共にしているファラでさえもガリィが仕出かす数々は未だに慣れない物を感じ取らざるを得ないだろう。

 

「……察してくれて助かる、とりあえず俺はガリィと話がある。ファラはそいつに何か飲み物と食べ物を与えて少し休ませてやれ」

 

主の不器用な優しさに静かに微笑みを携えて命令を聞き受ける。

ループ再生になりつつあるドナドナドーナーを歌い続ける少女を動かすのは哀れみと同情が沸き上がるが、どうにかこうにか立たせて部屋を後にする。

小声で「ファーストキス……」「初めて……」と呟き続ける少女に、せめて何か温かい物を提供してあげよう、そう決意を固めるファラであった。

 

 

 

 

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「さて、これで邪魔者は消えた。何があったかを全て話せガリィ」

 

悲しき背を見せながら去って行く少女とファラを見送った後、部屋に残ったガリィに問いかける。

あのガリィが此処までするのだ、よほどの情報なのだろうと始まる報告に期待する。

 

「えっとですね、マスターは私がどれだけ想い出を集める事が出来るのかは、ご存知ですよね?」

 

「……?無論だ。お前の役割は想い出を集めそれを分け与える事。その為にお前にはかなりの容量の想い出を保有出来るようにと設計してある。それがなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それなんですけど……今ので満タンになりました」

 

 

「……………は?満タン?」

 

 

「はい、もう一杯一杯。なんなら少し溢れちゃいそうな位に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリィの報告は想定を上回る内容だった。

少女から想い出を吸い取ろうと粘液同士の接触……要はキスを実行した所、彼女の中からまるで濁流が如く想い出が流れ込み、瞬く間にガリィが保有出来得る容量の限界まで満たされた。

もしもあのままキスを続けていれば……容量を超えた想い出がガリィへと流れ続け、内部から決壊しても可笑しくはなかったと言う。

普通の人間であればこれだけの想い出を吸い取れば廃人確定、そもそもを言えばこれだけの想い出を1人から搾取できるはずがない。

それ故に「本当に人間か?」の発言である。

 

「………ふむ」

 

ガリィの報告を聞き終えたキャロルは考える。

人間とは思えない程の莫大な想い出を保有する記憶を失ったシンフォギア装者。

はっきり言って異常な存在である。

普段であれば厄介な問題であるとみなし、始末するべき対象と判断するが…その利用価値を考慮するとその判断を優に覆すだけの理由にはなる。

 

「(危険性は残されたままだが、それを考慮してもあいつを処分するには余りにも損失が大きい)」

 

記憶に関しては此方が最大限警戒し、与える情報も制限すれば万が一の時でも対応できる。

想い出の供給に問題が無くなるのであればミカが常備行動可能となる。

オートスコアラーの中で一番の戦闘能力を持つ彼女に見張りを命じておけば《何があっても》対応がしやすいだろう。

そこまでを踏まえて、キャロルは決断を下した。

 

≪ファラ聞こえるか?≫

 

≪あ、はいマスターどうしましたか?あの子ならば今飲み物を……≫

 

≪そいつの部屋を用意しろ。そいつは暫く俺が面倒を見る事にした≫

 

≪…………はい?≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてその日、少女の意志は関係なくまるでペットを購入するが軽さで少女はキャロルに飼われる事となった。

 

 

 

 

 

 

 




飼育されるセレナ…エロい(確信)

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