セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
「藤尭ッ!!まだ復旧しないのかッ!!」
「――ッ!!駄目です!!再三による再アクセスを試みていますが、完全にシャットダウンされてしまいますッ!!通信、映像どちらも此方からのアクセスを一切受け付けませんッ!!」
「友里さんから連絡ですッ!!装者二名と共に現場へ急行中ッ!!到着まで後少しとの事ッ!!」
「急ぐように伝えろッ!!―――くッ!!いったい、何が起きているんだッ!!」
二課は完全に混乱状態にあった。
緒川の手により全世界への映像は中断されたが、二課は翼が持つシンフォギアからの映像を通して現場を見続けていた。
マリア・カデンツヴァナ・イヴに味方するデータにないシンフォギアを纏う2人の少女の登場、3対1と言う苦戦を強いられる現状。
それら全てを見て、知っていた。
だが二課に出来るのはバックアップ程度しかない。
逐一変わる情報を風鳴翼に伝える事しか出来ない自分達にやるせない想いを抱いていた時に―――通信と映像が途絶えた。
最初に浮かんだのは翼が敗北した可能性。
だが、会場外にいる二課の職員から会場から戦闘音が継続して聞こえていると言う報告を受けて、その可能性は無い事が証明される。
ならば次に考えられたのは―――意図的な妨害。
シンフォギアを3つも保有する彼女達であれば妨害電波を発生させる機材を確保していても可笑しくはなく―――それは的中していた。
「会場全体を包み込む様に発生している妨害電波によって中の状況は一切不明……緒川とも連絡が取れずにいるとは…ッ!」
あの緒川がそう簡単にやられるとは到底思えない。
だが現場では何が起きるのか分からないのも事実。
最悪の可能性だって十分にあり得る……
「―――翼、無事でいてくれ」
二課の司令としてではなく、翼の叔父として心配する言葉と共に未だに復旧しない映像を、その先にいるはずの翼を見つめた。
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「まったく、あの子は………」
眼下にて繰り広げられる光景、先程までは傍観していただけのそれに加わったーー加わってしまった
会場の上、屋外部分に身を潜めるファラがこの場にいるのは、元々風鳴翼の監視の為だ。
二課の監視をレイアが、岩国に向かった装者達はセレナが、そして風鳴翼はファラがそれぞれに監視していた。
………決して彼女の歌声に聞き惚れていたわけでない。
断じて、ない。
なので懐にあるCDについてはあくまで対象の情報をしっかりと得る為に購入した物だと説明しておこう。
………話が逸れてしまった。
とにかく、ファラが此処にいるのは監視の為。
なのであの子の介入など予想もしていなかった事態なので驚きながらも咄嗟に行える支援としてこの妨害電波を放ったわけだ。
レイアからの報告だと二課はあの子の参戦前から映像を途絶えてしまっているので、映像として残る事だけは回避出来たらしい。
………まあ、後で風鳴翼の口から報告は上がるだろうけれど、映像として残るよりはマシだろう。
「………まぁ、あの子らしいと言えばらしいですけれどね」
本当に仕方のない子、と再度ため息をつきながらファラは自身の視界を通してこの状況を見ているであろうマスターの心配をする。
………怒っているだろうなぁ………と。
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「………………」
言葉なき怒り、とはまさにこの事だろう。
玉座に腰掛け、ファラの視界と共有されている映像を睨み付ける様に見据えるキャロルの表情を例えるとすれば………般若だろう。
遠巻きに眺めるミカとガリィ、ガリスが近付くのを躊躇う程に満ち溢れた怒気は凄まじく、下手すればあそこに乗り込んで説教と言う名前の殺戮を始めかねない程である。
「マスター………怖いんだゾ………」
「………流石のあたしもあのマスターはちょっとマズイわねぇ………ほらガリス貴女行きなさいよ、私の妹でしょ?姉の命令に従いなさいな」
「………嫌ですよガリィお姉様、私だってまだ壊されたくないですから………」
キャロルは遠巻きから聞こえる人形達のひそひそ話を耳にしながらも、映像を睨み付ける。
馬鹿弟子の暴走はいつもの事とは言え、今回は少々お痛が過ぎただろう。
帰ってきたらどうしてくれようか………浮かび上がる《説教》の内容に口許を歪める。
「………しかし、ちょうど良いと言えばちょうど良いかもしれんな」
キャロルの言葉には2つの意味が込められている。
1つはファウストローブ ニトクリスの鏡の性能テスト。
対シンフォギアとして開発されたあのファウストローブだが、その性能は開発者であるキャロルでさえも未知な部分が多い。
その理由としてやはりコアとなっている聖遺物ニトクリスの鏡に原因があるだろう。
未だに未知な部分が多いニトクリスの鏡、その使用に関しても迷いがないと言えば嘘になる。
だが、恐らくあの鏡と馬鹿弟子はーーーー
「………………ふん」
そして理由2つめはーーー覚悟を問う事。
馬鹿弟子の情報について大抵の事は調べ尽くしている。
装者達と関係がある事も、友と呼べる絆がある事も、
今まさに敵対発言をした相手が………自らの姉である事も知っている。
………可能であれば避けてやりたかった道だ。
あの姉妹が平和に再会出来るように、この過酷な世界から解放してやるつもりだった。
だが、あいつは選んだ。
この道を、オレと共に行く道を選んだ。
その道が茨の道であると分かっていながら………
だからこそ、ちょうど良いと思った。
恐らくこれは始まりだ。
今から始まる長い出来事の始まりでしかない。
そんな始まりに介入したこいつはきっとその終わりまで介入し続けるだろう。
守りたい者の為に、彼女の心が命ずるままに………
だから、見守ろう。
この一連の出来事を通して、それでもなおオレと共に行く道を選べるか、それを見極めよう。
ーーー叶うのであれば、どうかあいつがオレとは異なる道を進んでくれる事を願ってーーー