セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第57話

――時は少し遡る。

住宅街の一角、どこにでもある普通の住宅から出て来た黒いスーツ姿の男達こと二課の職員達に丁寧に対応しながら、車に乗って去って行くその姿が見えなくなるまで笑顔のまま手を振るう1人の女性がいた。

優しい笑顔で手を振るうその姿は、どこか見る者を魅了させる美しさがあった。

実際訪れた二課の職員もこんな美人と縁があれば良いのにと帰りゆく車内で話していた。

そんな会話を≪聞きながら≫女性は微笑む。

美人とは嬉しい事を言ってくれますね、と嬉しそうに笑顔を見せる女性こと―――ファラは車が見えなくなるのを見届けてから静かに息を吐いた。

やっと帰ったか、と。

 

「――行ったワケダ?」

 

聴こえてきたその声は、間違いなくセレナの物。

だが、目に映るその姿は声の持ち主とは異なる姿をしていた。

 

「ええ、行きました。周辺に監視の気配もなく、隠しカメラ等が設置された痕跡もありません。お疲れさまでした―――プレラーティ様」

 

ふん、とセレナの私室として用意されていた部屋から出てきたのは、結社の幹部であり、名高い錬金術師の1人でもあるプレラーティ。

首元に展開している錬金術が消え去ると同時に、その声が何時もの彼女の物へと変わり、不機嫌そうにしながらファラの元へと歩み寄って来るのだが……

その姿はいつも着ている衣服とは異なっていた。

もこもことした愛らしいピンク色のパジャマ姿、手に持つカエルも同じくピンク色の愛らしい物へと変わっていた。

普段の彼女からは連想できない姿である。

だが元々幼い見た目をしているプレラーティ、そんな彼女のパジャマ姿は違和感を感じさせず、歩いてくるその姿は愛らしいの一言だろう。

しかし当の本人はと言えば不機嫌そうにパジャマの裾を引っ張っていた。

 

「全く、演技程度であれば他の奴で良いワケダ。それなのにどうして私がこんな真似をしないといけないワケダ…それにこのパジャマは何だ?部屋の中に入られた時の為にと着せられたが…ハ、自らの滑稽な姿に笑いが止まらないワケダ」

 

「いえいえ、プレラーティ様結構お似合いですよ?それ、元々あの子の為に買い揃えていたパジャマでしたけど、プレラーティ様でも十分に着られるようですし、良ければ1着提供しましょうか?」

 

「いらんワケダ!!」

 

似合っていますのに…と残念そうに呟くファラの前でさっさと脱ぐワケダ!!と怒りを露わにしながら羞恥心など全く感じさせない爽快な脱ぎっぷりでパジャマを脱いでいく。

しかしプレラーティは知らない。

そんな愛らしいパジャマ姿をファラの瞳に内蔵されたカメラで撮影されている事を、その撮影された映像と写真が密かにキャロルからカリオストロへと流れている事を、知らない。

 

「(マスターもお人が悪い…まあ、こんな役割頼んでいる時点でお察しですけれど…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は会場でのセレナの乱入にある。

あの時、やむを得ないとは言え会場から姿を消したセレナであったが、いずれは公的機関、または二課が安否の確認で調査に動きだすとキャロルは理解していた。

装者と、その友人と結んだ縁が必ずそうすると、理解していた。

それ故に先手を打った。

データベースにハッキングしての避難者名簿の登録、情報操作、セレナの偽の戸籍情報の作成にと、打てる手は打った。

戸籍情報に至っては以前より下準備をしていたので容易く、名簿の登録や情報操作等もキャロルの手に掛かればさほどの苦労なく実行する事ができた。

だが、幾ら情報を弄った処で安否確認の為に人材が送られてくるのは目に見えていた。

馬鹿正直にシャトーへご案内、なんて出来るわけもない。

幸い、元々セレナがシャトーから離れた時の為に用意していた物件を住所として登録していたので、そこでセレナの無事を確かめさせればさっさと帰るだろうと思ったのだが、此処で問題が生じた。

 

そう、セレナは謹慎中である。

 

こう言う場合ならば良いのでは?とファラとレイアが言っていたが、師匠として一度決めた事を反故にするわけにも行かず、それに装者以外の二課との直接的な接点を作るのは今後を考えると危険であると判断した為だ。

しかしキャロルは結社との会談の為に動かねばならないし、オートスコアラー達の誰かでは誤魔化しきれるか危うい。

どうした物かと考えた末に――――1人、思い浮かんだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつの説教に参加して後は帰るだけだったワケダが…まさかこんな催しに参加させられるとは、想像していなかったワケダ」

 

ピンク色のパジャマから何時もの衣装へと戻ったプレラーティがリビングでワインを飲む。

今回キャロルから協力の報酬にと貰って帰った(キャロルは知らない)ワイン、その値段を聞くだけで恐ろしいそれをプレラーティは遠慮する事なく飲んでいく。

立場上ファラは止めるべきなのだろうが、まあこの位なら良いですかと許容する。

どうせ先ほどの映像と写真、結構良い値段で売りつけているでしょうし、と。

 

「しかし、キャロルは本気でこれで終わりだと思っているのか?あいつの戸籍情報見せてもらったワケダが、良く出来ているワケダ。普通の連中であれば疑いを抱かないワケダが……ちょっと分かる奴は疑いを掛けてくるぞ。そこの所どうするつもりなワケダ?」

 

プレラーティの言葉正しい。

現に二課は、弦十郎は疑いを掛けているのを監視しているレイアから情報を得ている。

無論それに対しての備えも万全ではあるが、決して完璧ではない。

いずれ…そう、いずれは限界を迎えるだろう。

 

「…マスターとてこれが一時凌ぎだと理解しています。可能な限り妨害工作等して時間を稼ぎますが…はっきり言っていずれ限界が来ます」

 

「……その時が、あいつが選択を決める時なワケダ」

 

計画に参加し、キャロルを過去の呪縛から解放させ、明るい未来を生きてもらいたいと願うセレナ。

計画参加に反対し、セレナをこの辛い世界からの解放し、平和な世界を生きてほしいと願うキャロル。

どちらも似たような事を、と小さく笑う。

キャロルが今回の騒動を通してあいつの選択を見極めようとしているのは知っている。

だが、プレラーティは判っていた。

 

 

あいつは絶対に、辛い道を選ぶであろう、と。

 

 

「……ふん、キャロルに伝えておくワケダ。此方側からも可能な限りの妨害工作と情報操作をしておいてやる、と。それと演技役はあいつの謹慎期間の間ぐらいは協力してやるワケダ」

 

――素直じゃないですね、とファラは笑みを浮かべる。

そして手を伸ばす、仮初の、演技でしかない家族を現す様に手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

「…ふふ、そうですね。ではお願いしますよ≪キャルちゃん≫」

 

「ふん、そうだな。≪ファラ叔母さん≫」

 

 

 

 

 

 

せめて、あの子に与えられる時間を僅かにでも増やせれば、その想いで2人は仮初の家族を演じるのであった。

 

 




さて、次回は―――遂にシスター2人目ですぞー
けど、ねえ……ぶっちゃけ、ねえ…
名前が決まってないの(ヤバい)
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