セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
セレナが謹慎を命じられてはや数日。
会場の出来事から数えればちょうど一週間になるだろう。
そんな謹慎部屋と化したセレナの私室へと向かう人影がひとつ。
シャトーとオートスコアラー達の主であり、セレナの師匠であるキャロルだ。
その手には、小日向未来が二課の職員に預けていた秋桜祭のパンフレット。
中身を拝見したが、学生のみに配布されたであろう割引券が貼られており、最後のページには《待ってるから来て欲しいな》とメッセージが書き記されていた。
「………愛されているな、あいつ」
そんなパンフレットをなるべく丁寧に持ち運びながら、逆の手には茶色の紙袋がひとつ。
紙袋には洋菓子店らしき店名が記入されており、その店名を知る者ならばそれが巷で人気のプリン専門店の物だと分かるだろう。
実際紙袋からは甘い匂いが漂っており、その中身がプリンであるのは確定だとすぐに分かる。
では何故そんなプリンをキャロルが持っているのか?
無論、小日向未来が二課の職員に預けた訳でも、二課の職員が見舞いに持って来た訳でもない。
わざわざキャロルが店まで赴き、わざわざ買って帰った品である。
その理由はーーー
「………あいつ生きてるんだろうな?」
謹慎部屋と化した私室に一週間立て籠っているセレナにあった。
謹慎処分を素直に受け入れたセレナであったが、何故か彼女は部屋に籠りっぱなしとなった。
幸い食料もトイレや風呂と言った生きるのに絶対不可欠な物は全てあの部屋に揃っているし、中にはガリスもいるので1日、2日ならば問題はないだろうが………
流石に1週間となると話は別だ。
一向に部屋から出てくる気配もなく、最近は錬金術の指導時間にも来ないと言った有り様だ。
なにかあったのでは、と幾度か部屋を訪問したが待っているのはガリスからの謝罪だけ。
《マスターは今少し手を離すことが出来ませんので………》
その言葉を幾度聴いて追い返されただろうか………
強行突破も視野に入れたが、流石にそこまでして押し入る訳にも行くまいと何とか堪えてきた。
だからこそ今日は最終兵器(プリン)を持って来たわけだ。
あいつがプリン好きである事も、この店で売られている一月に数十個しか販売されないこいつを以前から食してみたいと語っていたのを知っている。
これならば出てくるだろうと、まるで餌付けだなこれは…と呆れている合間に目的地にたどり着く。
部屋の入口に立つ2体のアルカ・ノイズに挨拶を交わし、異常が無い事を確認してから扉をノックしようとして―――――
吹き飛んできた扉によって吹き飛ばされた。
「ファリスッ!!ちょっと待ってファリス!!」
「――いや、です。ファリスは外に行くの、です」
何が起きたか理解する前に、部屋から飛び出る様に駆け出た2つの人影。
片方は忘れるはずもない、自らの弟子であるセレナだ。
だがもう1人は誰だろうか、どことなーくファラに似てるような気がするんだが………
「お待ちをマスターッ!!こらファリス待ちなさいなッ!!」
その後を追いかける様に飛び出していくガリスを見て、嗚呼と察した。
あれもしかして………ファラのオートスコアラー・シスターズか、と思いながら、キャロルは扉の下敷きとなっていた。
「あの………大丈夫ですか師匠………?」
「ん?嗚呼、そいつが吹き飛ばした扉が顔面にぶつかり、挙げ句に扉の下敷きになっているのにも関わらずに何回も扉ごと踏まれたのを大丈夫と言うのなら大丈夫だぞ?
ところで馬鹿弟子、明日の鍛練だがオートスコアラー全員+オレ対お前1人でしようかと思うんだがどうだ?」
「どうだって………師匠、それ単なる一方的な殺戮ショーにしかなりませんよ………いや、あの………本当にごめんなさい………」
あれから数分後。
セレナとガリス、そして顔中に治療を受けたキャロルの手により今回の騒動を引き起こした張本人を捕まえる事は叶った。
だが………何故かその張本人はと言えばセレナの後ろに隠れる様に姿を隠しながら、ジーと覗いている。
その姿はさながら某シュルシャガナの装者みたいである。
「それで?大体予想は付くんだが……そいつはなんだ馬鹿弟子」
あ、はいと背中に隠れる少女を無理矢理と言った感じに前へと突き出すと渋々と言った感じに頭を下げる。
その姿にどことなく幼い子供のようだと連想している間に、少女の口が開く。
「オートスコアラー・シスターズ、ファラ姉さんの妹、ファリス、です。よろしく、です」
ゆっくりとたどたどしい自己紹介を終えるとさっさとセレナの後ろに戻り再びジーと覗くファリス。
ガリスの時とはえらい違う性格だなと思うキャロルだが、それは性格だけではなくその外見もガリスの時とは結構異なっていた。
まず見た目だ、ファラは誰が見ても大人の女性と言う外見だが、それに対してファリスは幼い。
ガリィの妹として開発されたガリスはどちらかと言えば双子の姉妹、と言っても良いほどに見た目にさほどの差がないのだが、ファリスの外見はさながら中学校に上がる前の小学生と言った所だろう。
恐らくファラと並ばせたら姉妹、と言うよりかは保護者と子供となるだろうな。
そして髪型。
ファラの妹と言う割には髪型はさっぱりとしたショートヘアーとなっており、ファラの髪型とは異なる物と化している。
セレナ曰く、当初はファラと同じ髪型であったのだが………
《動きにくい、です》
それでバッサリと切ってしまった、とのこと。
何と言うか……今回のシスターズは本当にガリスとは全然違うのだな………
「しかし、この性格………人格はお前とファラを合わせたのだろう?なのにどうしてこんな風になったんだ?」
「えーと、実は今回はちょっと違いまして………」
違う?と追及するとセレナは説明し始める。
ガリスの時のようにファラの人格にセレナの人格情報を合わせて作ろうと当初は計画していたのだが、それだと単なる良い人が出来上がるだけでは?と考えたセレナはそこに更に人格情報を追加する事にしたのだ。
具体的に言えば、エルフナインとガリィである。
エルフナインはあの温厚とした人格が合わされば良い感じになるのでは?と言う魂胆で、ガリィに関してはなんやかんやと優しいのでそれが上手く機能すれば………と言う感じである。
結果4名分の人格情報を合わさり完成したのが………ファリスである。
「なんともまぁ………とにかく人格については理解した。それで先程の騒動はなんだったんだ?」
「それはーー」
セレナが説明を始めようとしたが、それよりも先にファリスが動く。
先程までとは異なり、フンスフンスとやる気に満ちた呼吸をしながらーーー
「マスターのマスター!!ファリスをあの剣と戦わせて欲しい、です!!ファリスあいつと戦いたい、です!!絶対に勝つ、です!!だから戦わせて欲しい、です!!」
嗚呼、と納得する。
こいつ、確かにファラの妹だ、と。
エルフナインの気弱な性格+ファラの戦闘狂+セレナの優しい性格+ガリィのS=ファリス、である。