セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
つい先程までこの場に満ちていたはずの緊張感は何処へ消えてしまったのだろうか。
ファリスの敗北宣言から数分が経過した。
セレナとキャロルは何かを話し合い、ファリスは椅子に腰かけたままジッと動かずにいる。
ファラはと言えば、始まる前に終わりを迎えてしまった鍛練に不満そうにしてはいるが、今は大人しくキャロルの背後に控えている。
………その表情は決して納得はしていないと不満げではあるが………
「それで、あいつはなんて?」
「えっと、鍛練に参加する事自体には別に問題はないらしいですけれど………ファラさんと戦うのは嫌だと………」
「………それは姉妹だから、か?」
「それもあるんでしょうが………主なのは相性の問題だと」
「相性?」
ファリスはガリス同様に、一欠片の本物の聖遺物と偽物で作られた聖遺物のコアーー
そのコアとして宿っている聖遺物と、ファラとの相性は最悪であり、戦えば絶対に負けるから戦いたくない。
勝敗が決定している物ほどつまらない戦いはない、とのこと。
まあ要するに―――
「…ファラ以外なら良い、と」
「ですね…」
――その会話の間、ファラの不満げな表情が段々と険しくなっていくのを横目で確認しながら、セレナはため息をつくしかなかった―――
「クフフッ!!あたしは手加減なんてしないんだゾ!!」
「はいミカ姉さん、よろしく、です」
鍛錬場にて向き合うのはミカとファリス。
あれからファラ以外ならと言うファリスの提案を踏まえ、ファラ以外の誰かとなった際に一番に立候補したのがミカであった。
ファリスもファラ姉さん以外なら誰でもよいと言うのでじゃあこの組み合わせで、となり…今こうして向き合っている。
「――――――――――」
そんな2人を羨ましそうに、妬ましそうに、何とも言えない表情で睨み――いや、眺めているファラの重圧を真横で感じ取りながらセレナに出来るのは乾いた笑みを浮かべる事だけであった。
他の面々がさりげなく安全圏へと逃れているのを見届けながら――――
今回も審判として呼び出されたエルフナインが旗を掲げる。
二回目となると慣れたのもあるのだろう、その姿は中々にさまになっている。
「それではお二人とも、準備は良いですか?」
「あたしは何時でも大丈夫だゾ!!お前は大丈夫か~ちびっこ~」
「大丈夫、ですミカ姉さん。あと私はちびっこではなくファリスです」
「そういうのはあたしに勝ってから言うんだゾ!!」
エルフナインが掲げる旗に誰もが視線を集中させる。
まもなく始まりを告げる鍛錬。
かたやオートスコアラー最強の戦闘力を持つミカ。
かたやその力が未知のファリス。
対峙する二人は高鳴る感情を胸に宿しーーーー
「では、始めてください!!」
振り下ろされ旗と同時に駆け出た。
「アハハッ!!」
先手を打ったのはミカ。
駆け出ると同時に高く飛翔し、降下しながら巨体な腕よりカーボンロッドを降り注ぐように発射する。
それを避けるファリスだが、即座にミカの狙いを理解する。
笑い声と共にカーボンロッドの雨と混じる様にしながら接近してきたミカの巨体な爪が振り下ろされる。
降下する勢いと共に振り下ろされる一撃はただでさえ馬鹿力のミカに降下する勢いが合わさった物。
まともに受け止めれば防ぎきれるはずもなく、瞬く間に破壊される破壊の一撃。
それに対してファリスはーーーー
「
語る言葉と共に光輝く腕。
それに警戒を示したミカは警戒心を行動に変化させる。
迫る爪、それを見据えたままファリスの腕は振るわれた。
曰く、《それ》に名前はない。
伝承もなく、また知る者もいないはずの《それ》。
だが、確かに《それ》は存在していた。
遠い時代、遥か昔、神と言う存在さえもまだ生まれたての時代。
神が自らの力を示す為に、自らの存在を誇示する為に《武器》を作り上げようとした。
その最初の1つ、《剣》として作成された《それ》は失敗作として処分される………はずだった。
しかし何の因果か、それは今世紀にまで欠片として残されていた。
例え失敗作としても、この世に《剣》と言う概念を作った最初の剣としてーーーー
「
ファリスを守護するかのように浮かぶ複数の剣。
その数本がミカの一撃を食い止めるようにファリスを守護していた。
だが問題はそこではない。
ファリスの周囲に浮かぶ剣、そしてミカの一撃を防いだ剣。
それらの剣は、知る者ならば誰もが知る名剣ばかり。
数々の英雄、暴君、猛者が手にして来たそれらは、新しい主の為に迫る敵へと振るわれようとしていた。
「ミカ姉さん、私も全力で行く、です」
人形は舞う。
剣と共に優雅に華麗にーーー戦いの場を舞台に舞う。
ファリスのコアとなっている聖遺物はオリジナルなのです