セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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眠いときに書いているのもあって、書き直しするかも、です………


第61話

 

 

舞う、舞う、舞う。

人形の乙女は複数の剣と共に戦場で舞う。

優雅に華麗に魅了する様に、舞い踊る。

 

 

 

 

ファリスを中心に周囲に展開する剣の数々はさながら意志を持つ剣の護衛だろう。

命令されるままに剣として振るわれ、時には主を守るべく盾となり、その身を以て一撃を食い止める。

普通の武器であればミカの一撃で耐えきれないだろうが、浮かぶ剣達はそのどれもが名剣。

≪デュランダル≫≪カーテナ≫≪モラルタ≫≪ベガルタ≫

分かるだけでもこれだ。

それ以外の全ての剣も名のある名剣であるのは明白であった。

古今東西、様々な英雄が扱いし名剣達。

その全てが今はファリスを主と仰ぎ、その輝きを以て敵を切り裂かんとファリスと共に舞う。

優雅に華麗に綺麗に――――ファリスの戦場の舞は繰り広げられる。

 

「ほぅ………」

 

キャロルの口から自然と感嘆する言葉が溢れる。

ファリスの特性、それは剣であれば複製し自由に扱う事が出来る物。

名高い名剣であろうが、神話にしか伝承されない魔剣であろうが、剣であれば複製するその力は凄まじいとしか言う事がないだろう。

それに何よりーーーファリスはまだ歌声を奏でていない。

それはつまり偽・聖遺物(フェイク・コア)の真価を見せていない事を現している。

通常状態でこれだけの戦闘力を示している、となると偽・聖遺物(フェイク・コア)を使えばどのようになるのか……

 

「……全く、あいつが関係する事はどうしてこうもオレを楽しませるのか…」

 

堪え切れない笑みを浮かべながらキャロルは自らが作った最強の戦闘力を持つオートスコアラーミカと、自らの弟子が作ったオートスコアラー・シスターズのファリスとの鍛錬を見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

標準(ロック) ――発射(バレル)!!」

 

ミカへ向ける指はさながら照準機だろう。

複数の剣がミカへ矛先を向けると、ファリスの合図と共に弾丸の如く放たれる。

だがミカも黙って新しい家族からの熱い一撃を喰らうつもりなどない。

両手を突き出しカーボンロッドを掃射、迫る剣を打ち落としていく。

剣とカーボンロッド、双方は金属音を奏でながら衝突していき、地面に落ちていく。

 

発射(バレル)!!」

 

しかし地面に落ちる直前に鳴り響くファリスの命令に剣が動きを変える。

地面に落ちるはずだったそれらは再度空へと舞いあがり、ジグザグに軌道しながらミカへと降り注ぐ。

それはさながら剣の雨だろう。

通常の人間であれば避けられるはずもなく、迫りくる死に恐怖するしかないだろう。

だが、ミカは―――嗤った。

 

「アハハッ!!そんな攻撃ばかりじゃああたしには勝てないんだゾ!!」

 

降り注ぐ剣の雨、ミカはその中を―――駆ける。

避けもせずに剣の雨の中を突き進み、迫る剣を握ったカーボンロッドで叩き落としながらファリスとの距離を埋めていく。

近接戦闘能力が高く戦闘に対しての恐怖心が無いミカだからこそ出来る行動だ。

 

「―――ッ!!想造(スイッチ)!!」

 

迫るミカへと連続して剣を放つがミカの突出力の前には足止めにもならない。

一本、また一本と剣を叩き落とし、死角から放った一撃でさえも難なくと撃墜してみせる。

ミカ姉さんと対峙するのならば遠距離しかないと考えていたファリスにとって接近戦は極力避けたい所ではある。

だが―――仕方がない、と自らの手に剣を握りしめて自ら前へと進み出る。

 

「ミカを相手に接近戦だと?」

 

「あらら…流石にそれはアウトでしょ」

 

キャロルの言葉に付けたす様に呟いたガリィの言葉は正しいだろう。

オートスコアラーの中で断トツの戦闘能力、それも近接戦闘においては最高の戦闘技術を持つミカ相手に接近戦はヤケクソになったとしか見えないだろう。

だがファリスとて自暴自棄になって前へ進んでいるのではない。

確かにファリスの当初の考えではミカを相手にする時は絶対に遠距離戦闘でと考えていた。

ミカの戦闘能力をマスターであるセレナから得た知識で理解しているからだ。

自らの耐久値、ミカの破壊力、それらを踏まえると接近戦での勝ち目は限りなく低いから、と。

 

だが、だがだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して、ゼロではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聴こえる歌声にミカの笑みは止まらない。

ミカにとってこの戦闘はセレナとの鍛錬の次でこそあるが楽しい時間だ。

剣を自由に扱うファラの妹、新しい家族の力をこうして実戦を通して理解し合うのがこんなに楽しいとは思ってもいなかった。

 

「もっと…もっとだゾ!!」

 

迫るファリスの剣。

先程の歌声はどのような力を引き出したのか、彼女の隠された力がどのような物なのか。

楽しみで止まらないと浮かんで消えない笑みのままミカは迫る剣にカーボンロッドをぶつけて――――

 

「――――ありゃ?」

 

――――自らの右手もろともカーボンロッドが切断されたのを、見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカッ!!!!」

 

キャロルの咆哮が鍛錬場に鳴り響く。

それも当然だ、ミカとファリスが接触したかと思いきや、この場にいる全員の予想を裏切り、ファリスが握る剣がミカのカーボンロッドごと右手を切り裂いたのだから。

突然の予想外に鍛錬場にいる誰もが困惑するのだが――――その中で一番困惑していたのが―――

 

「…………み、ミカ姉さん、大丈夫、です?」

 

事を仕出かした当の本人であるファリスであった。

ファリスの予想ではカーボンロッドだけを切り裂いて―――となるはずだったのだが、まさかの右手ごと切り裂いてしまうと言うイレギュラーに驚愕し、混乱し、おどおどとミカの周りをうろうろとしていた。

 

「鍛錬は中止だ!!ミカッ!!」

 

「ミカさんッ!!」

 

すぐにキャロルとセレナ、エルフナインやオートスコアラー達がミカの元へと駆け寄る。

当のミカはと言えばぽけーとしており、すぐさまキャロルが損傷具合を確認するが幸いな事に内部への損傷は少なく、切り裂かれた右手も切れ味が鋭すぎるおかげで逆に修理しやすいとなり、全員が安堵する様に息をつく。

 

「あわわ…すみません…です」

 

ファリスとてここまでするつもりはなかった。

ファリスの偽・聖遺物(フェイク・コア)となっている聖遺物は≪名も無き原初の剣≫

遥か昔に神々が製作し、世界に剣と言う概念を作り上げたとされる原初の剣だ。

その欠片をセレナはプレラーティから移譲され、それを元に作り上げたのがファリスなのだが、この聖遺物には1つ問題があった。

情報量が少なく、逸話や形に不明な点が多い事からどう機能するかが不明だと言う事だ。

実際、今に至るまでセレナはこの偽・聖遺物(フェイク・コア)がどう機能するか未知のままだった。

だがファリスはこの鍛錬の場にて理解した。

ファリスの偽・聖遺物(フェイク・コア)、その力は――――選んだ剣の極限再現。

ファリスが戦闘中に呼び出していた剣は疑似創造……あくまで似せて作っただけの偽物の名剣達で、耐久性が高いだけの偽物の剣でしかない。

だがファリスの偽・聖遺物(フェイク・コア)はそんな偽物を僅かな時間でこそあるが本物に極限に近い状態に変化させる物である。

 

そしてファリスがミカの一撃を食い止めんと選んだのはーーデュランダル。

シャルルマーニュ伝説において名高いローランが持っていたとされるこの剣は伝承にある通りの切れ味の鋭さを再現しーーーミカの右手を切り裂いてみせたのだ。

 

「あわわ………すみません………すみませんです………」

 

当の本人からすればここまでするつもりなど全然なく、セレナの背後に隠れながらひたすらに謝り続けるしかなかった。

そんなファリスに対してアルカ・ノイズが運んできた担架に乗せられたミカはーーー笑った。

子供のように無邪気で愛らしい笑みを浮かべてーーー

 

「クフ…クフフ!!楽しかったんだゾ!!今度は絶対に負けないんだゾ!!」

 

まるで子供がまた明日遊ぼうと言うかの如く笑顔で手を振るうミカ。

怒りもせず、文句も言う事もなく、ミカは無邪気な笑みを見せたままアルカ・ノイズに運ばれていきながら手を振るい続けた。

そんなミカの無邪気な優しさに心を許したのだろう。

運び去られて行くミカに小さく手を振るい返すファリスを見たミカがニカッと笑みを浮かべたまま部屋を後にしていく。

 

こうしてファリスの初鍛練はイレギュラーこそあったが、まさかのミカに対して勝利する形で幕を閉じた。

 

その後二人が仲良くなっていくのだが………これはまた別のお話である。


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