セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第66話

 

「なぁッ!?お、お前まで何言ってんだよキャル!!」

 

「貴女も分かってくれる!?ほら雪音さんこの子もこう言ってるんだし参加しようよ!!」

 

クリスからすればまさかの裏切り、女学生達からすればまさかの援軍。

セレナの賛同の一言に勢いづいた女学生達の猛烈な誘いにクリスはたじたじになりながらも何とか逃れようとするが、そうはさせまいとセレナが先手を打つ。

 

「クリスさん、あの時の相談のお礼ってまだ頂いてないですよね?」

 

そいつを今言うか!!思わず叫んでしまいながらもクリスはそれを言われたら………と勢いを無くしていく。

クリスがキャルと………セレナと知り合う理由となったあの夜に起きた相談を思い出す。

フィーネの事を濁しながらも相談したあの夜。

結果的には良くない終わりを迎えてしまったが、それでも彼女との相談があったからこそクリスは胸に溜まりに溜まっていたフィーネへの感情をぶつける事が出来た。

結果は結果だが、それでもあの時に感情をぶつける事が出来たからこそ今の雪音クリスは此処にいる事が出来ているのだ。

だからいずれ再会する時が来れば何かしらのお礼をしたいとはずっと思ってきた。

 

「ぐ………ぐぬぬ………」

 

だからこそ彼女の一言にクリスは盛大に悩む。

彼女の願いを聞く、それは間違いなく恩返しのまたとない機会なのは明白だ。

――実際、クリスはステージに立つのは決して嫌ではない。

リディアンで新しく出来た友人達の誘いは嬉しく、あんな場所で歌えるんなら気持ちが良いだろうなとも思っている。

 

だが………クリスは迷っていた。

こんな平凡な生活を自らが過ごしている事に、今までに無かった日常を過ごすのに抵抗があった。

フィーネを名乗る武装組織、そこに属する装者とーーーノイズを操る力を持つソロモンの杖、そしてそれを扱うドクターウェル。

それらを前にクリスは思う。

 

こんな日常に自分は居ても良いのか、と。

 

フィーネに対抗しうる力、シンフォギア。

それを持つのは自分を含めて僅か3人しかいない。

戦う力は此処にある、それなのに自分はこんな時間を過ごしていても良いのか?と幾度も迷ってしまう。

 

ソロモンの杖の事もそうだ。

あれを起動させたのはーー間違いなくクリス自身だ。

戦争の火種を無くす、そんなクリスの願いによって起動してしまったソロモンの杖。

最初はフィーネに利用され、今はドクターウェルに利用されて多くの人々に危害を加えんとしている今、それを防ぐ力は……シンフォギアしかない。

その力を持つ非日常の住民として、そして―――ソロモンの杖を目覚めさせてしまった罪人としての後悔が彼女が日常にいる事を否定する。

無論、クリスはフィーネの真意を知らずに利用されていただけの犠牲者でしかない。

だが、それを知るのはあの戦いを得た者だけ。

ノイズによって家族を、友人を、愛するべき人を失った者から見れば―――雪音クリスは≪仇≫だ。

ノイズを操る力を持つソロモンの杖をこの世に目覚めさせ、その力で命を奪われた者は、残された者は彼女に敵意を向けるだろう。

 

クリスもそれは覚悟していた。

どう足掻いても、幾度後悔しても、過去は絶対に変えられない。

自らが仕出かした罪はどうやっても絶対に追いかけてくる。

……それから逃げるつもりなどない。

全てを受け止め、全てを背負い、命が欲しいと言うならくれてやる覚悟さえしてある。

だが、同時にもう少しだけ待ってほしいとも願っていた。

雪音クリスと言う人間を必要だと語ってくれる友の為に、共に戦う仲間の為に、そして――自らが生み出してしまった過去(ソロモンの杖)を破壊する為にこの命を使いたいから、と……

 

「……わりぃけど、さ」

 

雪音クリスと言う人間に残された人生。

それは穏やかな日常にいる事ではなく、その全てを罪滅ぼしに捧げるべきなのだろう。

日常に居たいと願う感情に蓋を閉め、雪音クリスは日常から逃れんと否定する言葉を放とうとして――――

 

 

 

 

 

「駄目です」

 

 

 

 

 

―――――速攻で否定され返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「駄目です。却下です。許しません」

 

否定する言葉が自然と流れる様に溢れ出る。

セレナは理解していた。

クリスを襲う迷いも、そして彼女の過去が彼女を苦しめている事も、知っていた。

勝手な調査であるが、セレナは雪音クリスと言う人間の過去を知ってしまっている。

両親を失った事も、幼少期に経験してしまった過酷な生活も、フィーネに拾われた事も、ソロモンの杖を起動させてしまったのも、全て知っている。

壮絶な過去、犯した罪、それは絶対に彼女が背負わなければならないし、誰かが肩代わりする事も出来ない。

1人で背負うにはあまりにも大きいそれを彼女は背負い続けなければならないとは、理解している。

だがだ、だが―――

 

「クリスさん――《逃げないでください》」

 

その過去を、その罪を、言い訳にするのは違うだろうと思う。

確かに過去に犯した罪は永遠に変わらない。

その人が背負い続けなければならない咎だ。

 

だがそれで何故日常を捨てなければならない?

何故それで日常か非日常のどちらかしか選ぶ事を許されない?

何故日常を奪われなければならない?

 

日常も非日常も、両方持って何が悪い。

 

違う、違うのだ。

雪音クリスが今選ぼうとしているのは絶対に違う。

過去、そして罪。

それらを言い訳に彼女はーーー日常(幸せ)を捨てて楽になろうとしているだけの自殺志願者(おおばか)でしかないのだ。

 

「ーーーッ!!」

 

女学生達からすればセレナの一言はあくまでステージから逃げないでと言う意味でしかないだろう。

だが、クリスは違う。

まるで自らの苦悩を指摘するかの様な一言にたじろいでしまう。

知っているはずがないのに、知るはずがないのに、

彼女の一言はあまりにも心の奥まで入り込んできた。

 

「………」

 

そして思う。

逃げないでと言う言葉に込められた意味を、

自らが選ぼうとしている選択をもう一度考え直す、言葉の意味を、

 

「………いいのか?」

 

溢れたのは弱々しいそんな一言。

こんな自分が、闇に生きてきた雪音クリスと言う人間が此処に居ても良いのか。

日常も非日常も、両方持って良いのか。

それを問うような一言に、セレナは黙って首を縦に降る。

言葉はなく、けれども優しい返答にクリスはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー分かった分かった!!出りゃ良いんだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただでさえ一杯一杯の背中に、《日常》を背負う覚悟を決めた。

彼女らしい荒々しい言葉、だがその表情はーーー明るかった。





セレナママ………
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