セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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ちなみにセレナ謹慎中の本編流れ

流れとしては大体原作通りですが、違う点としては
1、立花響、調に偽善者とこの場で言われる
2、マリア、セレナとの戦いによるダメージの後遺症で翼相手に苦戦
と言った感じの変化が起きております


第63話

「ごめんなさいデス!!」

 

「…ごめんなさい」

 

「そんなに謝らなくても大丈夫ですよ。誰だって間違える事はありますから」

 

セレナは冷静に対応しながらも内心では混乱していた。

それもそのはず、眼の前にいる2人の少女―――暁切歌と月詠調は、世界を相手に宣戦布告したテロリスト≪フィーネ≫のシンフォギア装者だからだ。

それがまさかこんな場所におり、それも学園祭を楽しんでいるのだから驚くなと言う方が無理な話だろう。

 

「(けれど…何でしょうか、この子達…)」

 

まさかの登場にセレナも警戒してしまったが、話している限りとてもではないがこの子達がテロリストだと到底思えなかった。

何処にでもいる普通の女の子、それがセレナが2人に抱いた感想だ。

それさえも演技の可能性はあるにはあるが……2人を見ていると到底ではないがそんな事が出来るとは思えない。

むしろ彼女達がテロリストだと言う情報を持っているセレナ自身でさえも本当なの?と疑ってしまっていた。

 

「それで…えっと、マリアさん、でした?私ってそんなに似ているんですか?」

 

とりあえず彼女達の様子を見る限りこの場でノイズ出現させたり、何かしらの行動を起こす気配も無い事から様子見と可能な限り情報収集をしておきましょう、と2人に話を振る。

 

「そうなんデスよ!!お姉さん本当にマリアそっくりなんデス!!」

 

「…同一人物にしか見えなかった」

 

マリア、と言うのがマリア・カデンツァヴナ・イヴであるのは間違いないだろう。

彼女とそっくりだと語る2人に自らの大人姿がどんな感じなんでしょうか?と興味が湧くが………今は後にしておき、この調子で会話を繰り広げながら情報収集をしようとして―――――

 

ぐ~と愛らしい音が鳴り響いた。

 

「…切ちゃん?」

 

「ご、ごめんなさいデスよ!!昨日は晩御飯少なめだったからつい……けど安心するデス!!今日はマムからお小遣いを貰って来ているからこれで何か食べるデース!!」

 

デデン!!と取り出したるは年季が入ったお財布。

恐らくそのマム?と言う人の物であろうそれを切歌は見せつける様に広げて―――

 

中にある1枚だけの1000円札が虚しく風で揺れた。

 

「…………………………」

 

え?待って?1000円?これだけ?

今のこのご時世にたったの…1000円?

困惑するセレナであったが、2人の反応は異なっていた。

 

「見るデス調!!買い出し費用以外で初めて札のお金を貰ったデスよ!!」

 

「凄い…!!1000円あれば298円のカップラーメンが3個も買えるよ切ちゃん…!!」

 

「チ、チ、チ、駄目デスよ調…今日はこれだけ美味しそうな食べ物があるんデスよ!!今日くらい豪勢に……たこ焼きを2人で分けて食べるのデスよ!!」

 

「切ちゃん、いいの?さっきはあそこのクレープ食べたいって…」

 

「いいんデスよ、あそこのクレープ600円ですから2つ買えないデスし、そこまで大きくないから2人で分けたらすぐに無くなっちゃうデスよ。それに比べてたこ焼きは10個入りで600円!!同じ値段でも5個ずつ分けて食べられるからアタシも調もハッピーデスよ!!」

 

「切ちゃん…」

 

「あ、そうデス!!お姉さんにお詫びも兼ねてたこ焼きご馳走するデス!!えっと…アタシが3つで調が4つ、それでお姉さんが3つでどうデスか?」

 

「…切ちゃん、間違えたのは私も一緒。だから私が3つでお姉さんが4つでいいよ」

 

「調ぇ…分かったデスよ!!それじゃあお姉さんが4つにするデス!!」

 

さあ買いに行くデスよ!!とルンルン気分で去ろうとする2人の肩を優しく止める。

どうしたんデスか?とキョトンとする切歌と調をそっと近くにあったベンチに座らせると―――セレナは駆けた。

駆けて駆けて、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません!!あるだけ全部下さい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調~♪甘いデスよ~♪ふわふわクリームデスよ~♪」

 

「切ちゃん、こっちのカスタード美味しいよ?」

 

「どれどれ…本当デス!!美味しいデス!!」

 

「良かった…お姉さんは食べないの?」

 

「……うん、2人を見ていると幸せでお腹いっぱいだから気にしなくていいよ」

 

出店から大量購入してきた様々な食事を笑顔で食していく2人を幸せそうに眺めるセレナ。

恐らくこの秋桜祭において最もお金を払ったであろう彼女の財布だが、実際まだかなりの余裕がある。

もう何週か全ての店舗の食べ物を買い占める事も可能な程の余裕はあるが、使った金額が一般的に見ればかなりの額であるのには間違いない。

2人には先程の射的で取った無料券で買ったから気にしなくていいよとは言っているが……

 

「(いや、無理ですよ…あんなの見たら…無理ですよ…)」

 

あのお金で眼の前の幸せな光景が見れるのならば安い買い物だろう。

2人も最初は遠慮していたが、無理に推し進める形で食べる様に促しているとゆっくりとであるが食べ始めて、今はもう勢いよく食べ進んでいる。

恐らくこういう食べ物とは無縁の生活をしているのだろう。

本当に幸せそうに食べる2人を見ていると、此方も幸せな気持ちになってくる。

 

 

 

 

 

 

だからこそ、思う。

ほんとうにこの子達がテロリスト≪フィーネ≫の仲間なのか、と。

何か理由があって、従っているだけなのではないか?と。

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、さっき話してたマリアって人だけど…2人にとってはどんな人なの?」

 

「んむんむ…ぷは~!!マリアデスか?マリアは…大事な家族デス!!」

 

「…マリアがいる所が私達の居場所」

 

しかし2人からの返答は、その考えを否定する。

その表情に嘘はなく、きっと本心からマリア・カデンツァヴナ・イヴを信頼し、家族だと思っているのだろう。

 

「………どうして」

 

その返答に思う、思ってしまう。

どうしてそんな人があの男と…ドクターウェルなんかと手を組んで世界に宣戦布告なんてするのか。

こんな優しい子達の愛情を受け取っておきながら、どうして他人に害を向ける事が出来るのか。

この優しい子達に武器を持たせて戦う事が、どうして出来るのか。

――分からない、マリア・カデンツァヴナ・イヴと言う人間が…私にはわからない。

 

「…お姉さん?」

 

「え、あ、ど、どうしたの?まだ何か食べたい物ある?」

 

「…ううん、大丈夫…何だろう……お姉さん見てると……懐かしい人を思い出して………」

 

懐かしい人?と続く言葉を待っていると、遠くから歓声の様な物が聞こえてくる。

何だろうと視線を向けると、どうも向こうの建物の中でカラオケ大会をしているとの事。

パンフレットで確認してみると、規模も中々で景品も出るらしく、学生以外の飛び入り参加も可能なのもあってか結構な人が向かっている。

そんな人の流れを見ていると、そうデス!!と切歌が叫びながら立ち上がった。

ーーー口の周りを生クリームでベタベタにしながらーーー

 

「お姉さんにお礼としてこの景品を勝ち取ってきてあげるデス!!」

 

「……手伝うよ切ちゃん」

 

え、ちょ、と止めるより先に二人は会場であろう建物へと駆け出してしまう。

そもそも景品が何か知らないのだけど………と困惑しながらも二人を追いかける様にセレナも駆けるのであった。


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