セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
アンケートの結果を踏まえまして、XD要素も出して行こうと思います!!
と言ってもすぐには無理ですので、後々になりますが………地道に頑張っていこうと思います!!
それでは本編の方をどうぞ。
ーーー時間は少し遡るーーー
「………………」
リディアン音楽院の屋上。
普段は学生達が穏やかな時間を過ごしている場所だが、今日はいつもとは違い、人気が無い。
安全上の理由で屋上での出店、イベント行為は中止されたせいで寄る理由もない学生達は立ち寄る事もなく、学校外から訪れている一般人にはそもそもここまで立ち入る事は許されていない。
なので人気も無く、校庭や建物内の和気藹々とした雰囲気とは異なる殺風景な景色がそこに広がっていた。
そんな屋上で1人佇むのは、風鳴翼。
クラスの出店にてクラスメイトと共に汗水流しながら働き、やっと得た休憩時間で彼女が訪れたのはこの屋上。
火照った身体をそよぐ風で冷ましながら、考えるのはやはり―――
「(
廃病院襲撃の際、風鳴翼はドクターウェル救援に現れたマリアに一騎打ちを挑んだ。
適合係数の低下、そして脚に受けてしまった一撃、それらが原因で敗北してしまい、襲撃してきたフィーネの装者二名によりドクターウェルも取り逃がしてしまった。
あそこで私がマリアに勝利していれば…
悔やんでも悔やみきれない想いに幾度胸を焦がしただろうか。
だが、一騎打ちを通して分かった事もある。
マリアは完全に回復しきっているわけではない。
未だに痛みが残る身体を動かして戦っている、と。
刃を交えたからこそ分かる違和感、それはマリアがまだあの戦いによる後遺症を残している事を安易に教えてくれた。
そして、その原因を作ったのはーーーー
「……黒い手を操る謎の少女、か」
思い返す度に背筋に冷たい物が流れる。
見ているだけでおぞましく、この世の物ではないと思う程に恐怖心を抱かせるあの黒い手。
そしてそれを手足の様に操り、マリア達を一方的に叩きのめして見せたあの少女。
あの場において私は無力でしかなく、傍観する事しか出来なかったが…分かった事もある。
「…勝てない、だろうな」
マリアやフィーネの装者達を一方的に屠り、必死の攻撃を嘲笑うかの様にどのような攻撃でも難なくと受け止めてみせたあの黒い手。
もしもあの黒い手と戦えばどうなるか、それを想像するとすぐに答えは出てしまう。
勝ち目などない、と。
切っても千切っても復元してみせる再生力、一本だけでも強敵なのに複数呼び出し、そして立花の一撃から少女を守る為に見せた自発的な行動。
更に言えば未だに実力が未知なままの黒い手の主たる少女。
それらと戦うときが訪れれば、私の剣で勝ち目があるのか……
「……しかし、何故あの少女は私に手を出さなかった?」
あの時の少女の狙いはマリア、そしてフィーネの面々のみ。
此方には敵意を向けるどころか完全に無視を決め込み、此方が幾度か黒い手に対し敵意を向けても仕掛けてくる様子さえ見せなかった。
まるで戦うのを意図的に避けるかのように……
「…何がともあれ、情報が少ない現状ではこれ以上の思考は無意味、か」
報告を聞いた二課も全総力を挙げて彼の少女の行方を追いかけている。
映像が残っていないのが難点ではあるが、其方において私は力になれないだろう。
この身に出来るのは、敵を討ち果たし、守るべき物を守る事だけ。
戦場において彼の少女と敵対しても対応できる様に常に備えておく事こそが今の私の役目だろう。
だが、だ。
「そう言えばそろそろ舞台でのイベントの時間であったな」
せっかくの秋桜祭なのだ。
今日1日位は気を休めても良いだろう。
それに流石に冷えて来た、そろそろ会場の方へ行ってみるのも―――――
「――――――は?」
一瞬、目の前の光景に理解が追い付かなかった。
屋上から見える校庭、そこにいる人物の存在がすぐには肯定出来ず、幻か幻覚かと疑ってしまった。
だが幾度確認し直しても、それが幻ではない事を再認識させる。
馬鹿な、思わず溢してしまった一言と共に駆け出す。
ありえない、いるはずがないと思うが、校庭にいるその人物は間違いなくあそこに実在している。
どうしてそこにいるのか、混乱する脳内を現す様に思わず吠えてしまう……否、吠えるしかないだろう。
何故ならばーーーー
「――――何故マリアが此処にいるッ!?」
全世界に宣戦布告し、テロリストとして全世界から指名手配されているはずのマリア・カデンツァヴナ・イヴが秋桜祭を楽しんでいるからだ――――
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学生が、教員が、一般客が、
誰もがその姿を見て恐らくはこう思っただろう。
もしかしたらマリア・カデンツァヴナ・イヴではないか?と。
髪色や服装など、異なる点もあるが、基本的にそっくりな彼女を見て誰もがそう疑問を抱くだろう。
だが、すぐに人違いだろうと自らの発想を否定する。
それも仕方がないだろう。
何故なら、誰もが《いるはずがない》と思うからだ。
こんな学園祭に、世界を相手に宣戦布告したテロリストである彼女がいるはずがないと誰もが思うからだ。
だからこそ疑いこそ抱くが、それが言葉や形となる事もなく、騒ぎにならずに済んでいるのだ。
そんな思い込みに救われているとは知らないセレナは先に行ってしまった二人を慌てて追いかけていたのだが、ゴミの始末によって時間を割かれ、更に初めての場所である事も原因となり、セレナは完全に二人を見失ってしまっていた。
「あれぇ?確かこっちに………」
二人の姿を求めて校内を彷徨くセレナ。
会場へと向かっていたはずなのに、どうして私は校内にいるのでしょうか、泣きたい気分でそう自問自答しながらもセレナは二人を探して駆けようとしてーーー
「うぉッ!?」
「え?きゃあ!!」
曲がり角から出てきた誰かと衝突してしまう。
結構な勢いで衝突してしまったセレナはすぐに立ち上がり謝罪しようとするが、衝突してしまった相手を見るとその言葉が引っ込んでしまったのを自覚した。
それはーーー
「いてて……悪いな、急いでいたもんで………って、お前キャルじゃねぇかッ!!」
自らの名前を呼ぶ彼女をーーー雪音クリスと出会ってしまったからーーー