セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話   作:にゃるまる

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第67話

 

楽しそうな歌声が聞こえる。

聞いているだけで歌が大好きだと言う事が誰にでも分かる、そんな歌声が会場中に鳴り響く。

その歌声をステージ横と言う特等席からそれを聞いていたセレナは、歌声が終わると同時に鳴り響く拍手の雨に喜んで参加する。

 

「………素晴らしい歌声でした」

 

ステージの上で拍手の雨を照れながら受けるクリスの表情は明るく、とても楽しそうにしている。

あの表情を見れるだけで彼女を繋ぎとめた甲斐はあったものだ。

審査員の評価もすぐに終わり、全員一致で彼女に高得点が与えられた。

司会の女学生がすぐにその結果をマイクで叫び、クリスがチャンピオンになった事を会場の全員が知る。

 

≪さあ!!次なるチャレンジャーはいますか!?飛び入りも歓迎ですよー!!≫

 

――中々に酷な事を言いますねとセレナは思った。

イベントを盛り上げるとは言え、司会の言葉に手を挙げる人は恐らくいないだろう。

クリスの歌声、あれを聞かされて挑むチャレンジャーなんてそういるはずが――――

 

 

「やるデス!!!!」

 

 

聴こえて来たのは聞き覚えのある声。

その正体が誰であるのかを理解すると同時にまさか――!!とセレナは用意されていた席から勢いよく立ち上がってしまう。

違ってほしい、そう想いながら覗き見るのだが、スポットライトが当てられた客席にいたのは―――

間違いなく、暁切歌と月読調の両名であった。

 

「あの子達――!!」

 

この会場にいる客達は彼女達が1週間前に全世界に宣戦布告したフィーネの仲間だと誰も知らないだろう。

他の場所でならばあんな風に目立ってもさほど問題は無い。

だが、この場ではそれは最悪でしかないだろう。

 

「あいつら!!」

 

「あれは――!!」

 

「あの2人って!!」

 

この場には立花響、風鳴翼、雪音クリスと言った二課の面々が勢ぞろいしている。

2人がフィーネの仲間だと知っており、尚且つ二課が持つ最大戦力がこの場にいる状態で目立つのは最悪だろう。

どうにか逃がしてあげるべきか、とも考えるが…装飾品が無い今、下手に動くわけにも行かないとステージ横で姿を隠しながらも何かあれば即座に行動出来る様にとファウストローブを手に握りながら緊迫する状況を見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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「やるデス!!」

 

堂々と勢いよく暁切歌の手が上がる。

自分達に優しくしてくれたお姉さんのお礼に景品を取ってやると参加しようとした2人にとって、眼の前の光景はまさに嬉しい誤算だろう。

 

「(チャンピオンになって合法的にシンフォギアを奪ってやるデス!!)」

 

元々彼女達がリディアンにまで来たのは、ネフィリムの餌となる聖遺物の欠片―――シンフォギアを強奪する為であった。

だがそうは易々と事は運ばす、どうしたものかデス…と悩んでいた時に2人はマリアに良く似たお姉さんと出会ったのだ。

彼女からすれば2人は見ず知らずの赤の他人であるのに、彼女はとても優しくしてくれた。

だから絶対にお礼を返したいとカラオケ大会に参加する事を決めたのだが、何時の間にかお姉さんとはぐれてしまい、彼女を探している内にカラオケ大会も終盤となってしまっていたので慌てて会場に入ったのだが…

まさかそこで装者と出会うなんて予想外であったが、同時にチャンスだと思った。

 

聴けばチャンピオンとしての報酬は2つ。

1つは学園が用意した賞品、そしてもう1つは――学園側で可能な範囲でこそあるが要望を叶えてもらえると言う物。

それはつまり―――チャンピオンになればお姉さんへの恩返しもシンフォギア強奪と言う目標も同時に達成できる!!

 

「まさに一石ニトリデス!!」

 

「切ちゃん、それを言うなら一石二鳥」

 

やれやれと言わんばかりに一緒に立ち上がった調。

彼女としてもあのお姉さんにお礼を返したいと願う気持ちは一緒で、その為にカラオケ大会に参加する事に異議はない。

だが……

 

「(……逃走は、難しそう…)」

 

切歌より少しだけ大人な思考が出来る彼女は、切歌が作り出した状況に冷や汗を流す。

リディアンが元々は装者育成の為に作られた学園と言う情報を、ドクターから聞いた事がある調からすれば、此処は敵の施設。

何も知らない学生の手前だからこそ装者達は動かないが、此処が敵の施設である以上どんな動きを見せてくるのか分からない。

最悪、武力行使だって十分にあり得るのだ。

もしもそうなれば―――

 

「(…切ちゃんだけでも逃がさないと…)」

 

シンフォギアを纏えばある程度の抵抗も出来るだろう。

その隙をついて切ちゃんを逃がせるのであれば、後は問題ない。

自身よりも優先すべきは大好きな切ちゃんなのだから。

だが、今は――――

 

「切ちゃん、絶対にチャンピオン、取るよ」

 

「おうともデス!!」

 

スポットライトを浴びながら2人はステージへと上がっていく。

そこで待つクリスから敵意を向けられながらも、それに立ち向かう様に堂々と前へ進む。

チャンピオンを取ってお姉さんへ恩返しをし、シンフォギアを奪う目標を果たし、マリアの力になる為に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねえお姉さん」

 

「何ですか野球少年ABC達」

 

「どうしてお姉さんこんな所で立っているの?」

 

場所はリディアンから離れた廃工場。

その少し離れた場所で、ガリスは偶然見かけた野球少年ABCと共に呑気にアイスキャンディーを舐めていた。

ちなみにだが、シスターズには一応食事機能が搭載されており、食べた物は微量なエネルギーとして変換されたりしている。

 

「ん~…まあ、お仕事ですね。ちょーとこの先にある廃工場で色々とやる事がありましてね、危険な可能性もあるからこうやって誰もいかない様に見張っているのですよ」

 

「へ~…けどお姉さん、仕事中にアイスキャンディー舐めてて良いの?」

 

「いいのいいの、お姉さんの役割はあくまで見張りですので。ほら貴方達もアイスキャンディー食べたら早く練習に行きなさいな」

 

はーい、とガリス特製アイスキャンディーを食べた野球少年ABCは子供らしい愛嬌のある顔で手を振りながら去って行く。

それを笑顔で手を振りながら見送ったガリスは、さてと耳元に装着している通信機から恐らく暇しているであろう人物に連絡を取る(シスターズは偽・聖遺物のエネルギーを使って動いているので錬金術が使えない。なので錬金術を用いた通話が出来ないので通信機)。

 

≪此方ガリス、廃工場に向かってた子供達を平和的に帰しましたよ≫

 

≪……此方ファリス、暇、です≫

 

≪案の定ですね…何か動きは?≫

 

≪……米軍の如何にもな男達が突入準備してるけど、絶対に勝てないと思われる、です≫

 

あー、とガリスは少しだけ悩む。

ガリスは数時間前に現在フィーネが仮アジトとしているこの廃工場を特定し、マスターの力になれるのでは?とファリスを引き連れて偵察活動をしていた。

だが待てども待てども動きはなく、やっと動きがあったかと思えば米国の野次馬が来ただけだ。

 

はっきり言おう。

ガリスにとって優先すべきは全てマスターだ。

ソロモンの杖移送任務の際に軍人達を救助したのは見殺しにすれば心優しいマスターが絶対に傷つくからであり、決して人命が尊いからとか可哀想だからとかではない。

一般人の犠牲は……少しだけ違うが、大方はそうだ。

彼らはあくまで非日常とは無縁の力無き子。

今まさに突入しようとしている馬鹿達とは違い、巻き込まれるだけで即死してしまうその弱弱しさは流石に見殺しにするのには気が引けるから、此処に来させない様に手を打った。

 

だが、だがだ。

そんなガリスでも―――マスターの害になると思えば喜んで一般人だろうが殺せる。

子供も大人も女も男も赤ん坊も老人も関係ない。

殺す事に一切の抵抗も無く、殺して見せよう。

 

ファリスもそうだ。

彼女はマスターへの忠誠よりも自らの欲望を優先する点こそあるが、基本的にマスターを大事に思っている。

だからこそガリス同様に人殺しに対して抵抗感も嫌悪感もない。

故に殺せる。

殺して殺して、殺す事が出来る。

 

そんな2人からすればマスターが知らない場所で自ら勝機がない戦いに挑む馬鹿達を助ける理由など―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪見殺しにしましょう≫

 

≪了解、です≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるはずもないのだ。




ガリスが良い子なのはマスターや家族の前(一応ガリィも)だけだったりするのデス
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