セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
「それでは~!!キャルちゃんチャンピオン記念パーティー始まりだ~!!」
パパンと爽快な音と共にクラッカーの音が高々と鳴り響く。
場所は変わり未来と響が住んでいる寮の一室。
既に秋桜祭は終了し、時刻は既に夕方を超えて夜になろうとしている。
そんな時間にセレナは≪チャンピオン≫とお手製感マックスのたすきを身に付け、以前のライブ会場の時と全く同じ面々から祝われていた。
「いや~!!まさか本当にチャンピオン獲るなんてさ~!!もうアニメみたいでテンション爆上がりだよね!!」
「ですよね!!私も興奮してしまいました!!」
「分かる!!けどまあ…代わりにわたし達は努力賞で終わったんだけどね…」
悲しくそう語る創世の手には恐らくその努力賞で貰ったであろう全く見覚えのないマスコットのキーホルダーが握られている。
所謂キモカワ系統に分類されるそれは、恐らく大量購入が可能な程に安く売られていたのだろう。
その証拠になるべく痕跡を残さずに剥がそうとしたのであろう値札シールの痕が足元に悲しく残されている。
うっすらと100と見えるのは、まあ見なかった事にしようと目を逸らした。
それに対してセレナの手にあるのは一枚のチケット。
学園近隣の飲食店全店舗で使える割引券(1年以内なら回数無限)を手にしたセレナは3人の残念そうな姿に乾いた笑みを浮かべるが、セレナとしては既にこのチケットの使い道は決めていた。
「未来お姉さん」
「ん?どうしたのキャルちゃん?」
キッチンから美味しそうな香りを漂わせながら手料理を載せているのであろう皿を幾つか持って此方へ来た未来。
机の上に並ぶお菓子やジュースの間に器用に皿を置きながら近づいてきた未来に、セレナは手に握っていたチケットを差し出した。
「これ、あげます。良かったら使ってください」
「…え!?い、いいの!?」
「はい、どうぞ」
セレナの言葉に未来は戸惑いながらもそれを受け取る。
本当に良いの?と幾度も確認してくるが、その度に良いんですよと返事をしながらもセレナとしては最高の使い方が出来たと満足していた。
二課の調査が進んでいる今、今後は外での活動を自粛せねばならないだろう。
そうなればこのチケットを使う事も無くなり、持っていても宝の持ち腐れだ。
ならば有効活用出来る人に譲渡するのが一番だろう。
「……ありがとうねキャルちゃん」
受け取ったチケットを大事そうに持ちながら、未来はそうだ!と机の引き出しから何かを取り出して戻って来る。
その手には、セレナをモチーフにしたであろう手のひらサイズのお手製人形があった。
「わぁ♪可愛いですね、どうしたんですかこれ?」
「チケットのお礼……ってわけじゃないのだけど、前からキャルちゃんに渡そうと思って作ってたの。良かったら受け取ってほしいな」
かつて未来はキャルにいつか渡そうとしていたマグカップを、ルナアタック事件で失ってしまった過去がある。
買い直そうにも限定であったらしく、幾つかの店舗を回ったが買い直す事は叶わなかった。
その代わりに、と自分で手作りしたこの人形をいつか渡せたらと思っていた未来からすれば丁度良いタイミングでもあった。
そしてセレナとしても断る理由など無く、素直にそれを受けとるのであった。
「ありがとうございます未来お姉さん♪」
「いえいえ、此方こそありがとうねキャルちゃん♪」
まるで姉妹の如く仲睦まじい二人。
そんな二人にこっそりと近付くのはーーー蚊帳の外にされていた仲良し三人組であった。
「ヒ~ナ~………私達の事忘れてないかしら?」
「私達だってキャルさんとお話したいです!!」
「キャルちゃんってさアニメとか興味ない?あるならオススメのアニメがあるんだけどさ~♪」
ーーーセレナは思う。
まるでひだまり様な優しい温もりに満ちた時間だと。
いつまでも浸っていたい優しい世界だと。
そして考えてしまう。
もしも、私や師匠が錬金術もシンフォギアも関係ない日々を過ごしたらどうなるだろう、と。
「(きっと師匠の事だから………)」
成績とか毎回トップの優秀生徒とかなって………けどあの性格だからちょっと孤立してしまいそうですね。
そこにエルフナインさんとかオートスコアラーの皆が師匠の相手をして、そこに響さん達がやって来て師匠が嫌がりながらも相手したりして………
きっと楽しい生活になるだろうなぁと思う。
毎日が楽しく、平凡で、けれども飽きることのない愉快な時間がきっとそこにあるだろう。
そうなったら私はどんな生活をしているのだろうか?
甘く、優しい空想を幾度も思い描く。
こうであってほしい、ああであってほしいと思い描いていく。
目の前にある幸せな光景、そこに師匠達が混ざった姿を想像し、こうなってほしいと願いを込めて思い描いて行く。
だが、そんな優しい時間はーーー
《マスターお楽しみ中に申し訳ありません。至急ご報告したい事が》
終わりを迎えてしまった。
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セレナは少し前まで楽しんでいた暖かい時間に名残惜しみを感じながらも、ある場所へと向かって移動していた。
旧リディアン音楽院跡地であり、今は東京番外地・特別指定封鎖区域と呼ばれるーーー破壊されたカ・ディンギルが眠る土地。
そこにノイズ反応を感知した二課の面々が移動していると情報を掴んだガリスからの報告に、セレナは急行していた。
「(いったいどうしてこんな場所へ………)」
報告を聴いたセレナの脳裏に浮かんだのは昼間の優しい二人が言い残した決闘と言うワード。
確かに人目を避ける決闘の場と言うのであればこれ以上はない。
カ・ディンギルの処理が終わりを迎えていない此処は立ち入りが禁じられている上に周辺は荒野と化しており障害物も少なく戦闘にも打ってつけだ。
だが、不審な点が多すぎる。
決闘の合図にノイズを用いた事、その反応は未だに消えずにまるで待ち受けるかのように点在している事。
あの二人が決闘をすると言うのであれば恐らく……いや、絶対にノイズを用いるとは思えない。
「(あり得るとすれば………)」
彼女達の決闘を利用した別の誰かによる呼び出し。
そしてーーーノイズを用いるなんて方法が使えるのはただ1人。
「ドクターウェル………!!」
あの男である可能性は高い。
そしてあの男であるのであれば、絶対に何かしらの思惑があるのは間違いないだろう。
それが何かは分からないがこのまま放置するのはいけない。
ガリスの報告ではドクター達が企んでいるであろう計画の情報を記した手帳をとあるルートから入手出来たと聞く。
解読に時間を有するが、情報を得られるのであればこれ以上ドクターを野放しにする必要もない。
「此処で捕らえる………!!」
段々とカ・ディンギルが近付いてきた。
既に戦闘音と歌が聴こえる。
もう戦闘は始まってしまっているのだろう。
自身もファウストローブを展開しようとニトクリスの鏡を持ちながら駆けるがーーー不意に連絡が入った。
《馬鹿弟子!!今何処にいる!?》
聴こえてきたのは何処か焦っているような急いた声で吠える師匠。
どうしたのだろうか?と疑問を抱きながらも素直に答える。
「ガリスから報告を聞いて今カ・ディンギル跡地に向かってます、もう間もなく到着でーーー」
《戻れ!!行っては駄目だ!!!!》
え?と師匠の言葉の意図が理解できないまま、セレナはーーー
《それ》を《見てしまった》