セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
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「馬鹿弟子!!おい!!聴こえていないのか!?………ッ!!セレナ!!返事をしろ!!」
キャロルの咆哮が空しくシャトーに鳴り響く。
オートスコアラーを護衛に付けなかった事をこれ程までに悔やんだ事はないだろう。
ガリスが持ち帰った手帳、そこに書き記されていたのは、ドクター達の目的、そしてネフィリムについての情報とーーーその過去。
それを知った瞬間にセレナが向かっていると聴いた時は最悪だと思った。
呼び止めは叶わず、セレナの悲鳴に近い叫び声と共に連絡も途絶えてしまった。
急遽ガリィを派遣したが、到着するまで映像もなくただただ不安が募っていく。
速く、速く、焦る想いの中で願いなど馬鹿馬鹿しいと思っていたキャロルは、それでも願う。
どうか無事でいてくれ、と。
《此方ガリィです、現場に到着ーーーーなによ、あれ》
ガリィからの通信と同時にその視界から待ちに待った映像が送られてくる。
セレナの無事、ただそれだけを祈りながら送られてきた映像を確認したキャロルはーーーそこに映し出された光景に絶句するしかなかった。
「………なんだ、あれは」
そこにあったのはーーー球体。
地面を抉りながら空間に固定する様に存在する黒い球体。
良く確認すると球体となっているそれがセレナのファウストローブ ニトクリスの鏡から出てくる黒い手だと分かる。
何重にも積み重なる様にして球体と化しているそれに誰もが絶句する。
《………マスター、あれなんですか?見てるだけで背筋が冷たくなるんですけど………あれマスターが設定した機能ですよね?》
「………知らない」
《………はい?》
「オレはあんな機能を作った覚えなどないぞ………!!」
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ワインをゆっくりと飲む。
人とは素晴らしい生物だと思う。
数少ない人生の中で、多種多様な開発をしてみせるその精神は称賛するしかないだろう。
このワインもそうだ。
この味も香りも、素晴らしいの一言だ。
僅かな人生でこれだけの物を作り出せる人間は、まさにこの星を統べるべき種族であろう。
だからこそ私は力が欲しい。
こんな素晴らしい物を作れる人間の可能性を守る為にも、
呪いによって可能性を阻まれた人類の救済の為にも、
あの《神》を自称する連中に抗う為にも、
私は力が欲しいのだ。
計画は既に始まっている。
今から始まるのはその序章でしかない。
だが、大事な始まりだ。
全ては此処から始まるのだ。
「さあ、生まれるが良いさ
君に与えられた力を見せてくれ、僕に」
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