セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
この話においては先のお話の要素が出てきますが、にゃるまるは予定を組んでも予定が崩壊する事が多々あるのでもしかしたら先のお話において出現しない要素となる可能性もあります。
その時は………あれです………
全てはギャラルホルンのせい、と言う事でお願いします………
2月16日、わたしの、月読調の誕生日。
以前であれば大好きなマリアとマム、そして切ちゃんの四人で過ごしていたけど、今は違います。
S.O.N.G.の皆や、セレナにキャロル、オートスコアラー達。
以前に比べたら本当に多くなりました。
四人でやった誕生日も楽しかったけど、大勢でやる誕生日はもっと楽しいです。
前にしたクリス先輩の誕生日を思い出す。
最初は本当にどうなってしまうのかと思ったけれど、キャロルの機転で無事に楽しく過ごせた誕生日。
クリス先輩、本当に楽しそうだったな。
そして今日は私の誕生日。
セレナからの提案で誕生日パーティーを行う事が決まり、場所はいつものシャトー。
キャロルも諦めたのか、誕生日パーティーの準備に進んで協力してくれてるって準備の手伝いの為に先に行ってる切ちゃんからの連絡で聞いている。
少しの申し訳なさと誕生日パーティーの楽しみを胸に私も行こうと扉を開けてーーーー
「やぁ」
閉めた。
玄関先に見覚えのある白衣と見覚えのある気持ちの悪い笑顔が見えた気がするけど絶対に気のせいだろう。
白昼夢、と言う奴だと自らに思い込ませながらもう一度扉を開ける。
そうだ、白昼夢だ。
白昼夢に違いない、と。
「やぁ」
ーーーーうん、認める。
白昼夢じゃない、現実だと認める。
そこにいたのはドクターウェル。
今は色々あってS.O.N.G.預かりとなり、首に付けられた監視装置付きの首輪(余計な真似したら電気ショック)の装着を絶対としてある程度の自由が認められている男が何故かそこにいた。
「………ドクター、どうして此処に?」
「いやはや、私もついさっき知ったのですが今日は貴女の誕生日と言う事ではないですか。私も1人の大人としてこれはお祝いしないといけないと馳せ参じた訳ですよ。ほら誕生日プレゼントだって用意していますよ」
ほらと如何にもな箱に用意されたプレゼントを見せてくる。
………確かにプレゼントだ。
怪しい機械でも薬でもない、プレゼントだ。
その証拠にドクターに付けられた首輪から警告音が流れない。
ドクターの首輪には嘘発見器も備えられているのでこの発現に嘘はないだろう。
だがこの男がわざわざ誕生日に参加すると言うこと事態が想像しにくい。
何か理由がある、それが何かを判断しようとする中でドクターが頻りに時計を気にしているのが分かる。
なんだろう?理由が分からないまま首を傾げる私にドクターはごほんと咳き込み1つした後にーーー
「ほ、ほら誕生日パーティーに速く行かないと間に合いませんよ?なんなら私が車を出しましょうか?こう見えても優良ドライバーなので運転は任せてください」
ーーー嗚呼、と理解した。
この男の目的を理解すると同時に納得する。
理由はこれか、と。
「………ドクター」
「ん?何ですか?やはり私の車で行きますか?では御待ちください、すぐに用意してーーー」
「どう足掻いてもドクターはパーティーに参加できないよ」
「ーーーーーーぐはッ!!?」
そう、この男の目的は恐らくパーティーに参加する事で彼女にーーセレナに近付く事にある。
そもそもドクターの首輪の装着に関しては過去のいざこざや問題もあるのだが、一番の原因はセレナのストーカーになっていた事にある。
その理由までは知らないけれど、S.O.N.G.預かりになってからドクターはひっきりなしにセレナにアタックしてはマリアとキャロルに徹底的にやられるを繰り返していた(優しいセレナでもドクターを見る目は養豚場の豚を見るそれ)
このままではセレナに悪影響になる、S.O.N.G.の最大戦力である装者達、そして協力組織のトップであるキャロルからの怒りの直訴の結果ドクターの首輪がエルフナインとキャロル主体で開発されたのだ。
当初は爆弾を内蔵すべきだ、と言う話にまでなっていたが、人道的な観点からそれは免除となり、結果電気ショックが代わりに内蔵された(電圧制限なし)。
そんなこんなで首輪付きとなったドクター。
元々セレナや他の面々にも嫌われまくりのこの男に誕生日パーティーの招待状が届く事がなかったのだろう。
だからこそ今日の誕生日パーティーのメインである私の付き人をする事で誕生日パーティーに参加してセレナにアタックしたい、と言った所だろう。
「………ドクター、ドンマイ」
「嫌ですッ!!僕はパーティーに参加したいだけなのですよ!?1人の大人として子供である貴女の誕生日を祝う!!それの何がいけないんですかッ!?」
「………ドクター、本音は?」
「ほ、本音?な、何を言っているのですか貴女は………私は最初から本音をーーー」
ビービービー
首輪から鳴り響く警報音がドクターの嘘を破り捨ててくれる。
「………ジー」
「くッ!?………う………ぅぅ………そ、そうですよ!!私は私の英雄に会いたいだけなのです!!彼女の側に立つのは同じ英雄たる僕だけしかいないのですから!!それの何がいけないのですか!!愛は誰にだって平等であるべきなのですよ!!」
「………ドクターの場合、過去が過去だし、それに愛が重いから………」
的確な答えだと満足。
ドクターは正論を前に悔しそうに唸るが、時間を見ると本当に余裕がない。
ドクターを放置してテレポートジェムで移動しようかなと考えて、テレポートジェムを取り出した瞬間
「ーーッ!!いまだぁぁぁぁッ!!!!」
衝撃と同時に取り出したテレポートジェムを奪い取られたと理解するが、時遅し。
ジェムを地面に叩き付け、満足げにドクターは嬉々とした表情のまま消えていく。
「あっはっはーーッ!!貴女もまだまだ甘いでぇすねぇ!!さあ待っててください僕の英雄ッ!!今貴女の英雄が側に行きますからねぇッ!!!!」
あっはっはーと笑い声と共に姿を消したドクター。
本来ならば慌てて連絡してセレナを避難とかさせないいけない、と思うべきなのだろうが、違う。
調は笑う。
某ノートに名前を書いたら死ぬ漫画の主人公の様に笑って笑ってーーー
「計画通り………!!」
ドクターは呆然と目の前に立つペンギンを見つめていた。
周囲にあるのは氷点下の氷の世界。
ドクターは思う、どうしてこんな所にいるのか。
ペンギン達が突如現れた人間を不思議そうに見つめる中でドクターは気付く、気付いてしまう。
テレポートジェムを奪い取ったときーーー月読調がうっすらと笑っていた事に、気付く。
自らの思惑通りに事が運び、勝利を確信した笑みであった事に気付く。
「騙したな………僕を騙したなぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
ドクターの咆哮が氷の世界に悲しく木霊する。
男の悲しげな絶叫を、ペンギン達だけが聞いていた………
「あ、調ッ!!遅かったデスね?どうかしたんデスか?」
「んーん、何でもないよ切ちゃん。ただ《ゴミ》を捨ててただけだよ」
「ゴミ?言ってくれたら手伝ったのにデス!!」
「大丈夫だよ切ちゃん。もう終わったから」
「あ、月読さん!!遅かったから心配してましたよ?大丈夫でした?」
「うん大丈夫だよ。ゴミ(ウェル)を捨ててただけだから。セレナも身の回りのゴミには気を付けてね」
「………?それはどういう………?」
「あら、やっと主役の登場ね。ほらみんな準備は良い?」
「バッチこーいです!!立花響ッ!!いつでも準備は万端です!!」
「もう響ったら………マリアさん、準備は良いですよ」
「そう、なら皆一緒で行くわよ、せーのッ!!」
「「「「「「誕生日おめでとうッ!!」」」」」」
ドクターはその後平泳ぎで帰還しました