セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
――俺は悪夢を見ているのか。
弦十郎は思わずそう思う、思わざるを得なかった。
「ノ、ノイズ反応増え続けています!!と、止まりませんッ!!」
「千…二千…三千…ま、万を超えましたッ!!なおも増え続けていますッ!!」
「嘘だろ…何だよこれッ!!どうなってるんだよッ!?」
もはや悲鳴に近い絶望的な報告が次々と挙がる。
レーダーを埋め尽くす無数の赤。
それらが全てノイズである事を機器が無慈悲に警報音と共に知らしめる。
種類も多種多様だ。
神話に存在する巨人を連想させる超巨大なノイズ。
戦闘機を連想させる飛行型ノイズ。
大型空母を連想させる巨大輸送型ノイズ。
ノイズ、ノイズ、ノイズ。何処を見てもノイズしかいない。
人類の歴史において観測された事がない規模の大軍と化したノイズがそこにいた。
「―――ッ!!翼とクリスはッ!!」
「翼さんは敵装者と接敵中ッ!!クリスさんは避難活動をしており身動きが出来ませんッ!!」
――最悪だ。
弦十郎の人生の中で最も最悪な状況だと言っても過言ではない。
迫るノイズの大軍、機器が計測出来ただけでも3万は超えている。
3万、3万だ。
人類史上においてこれ程の大軍を計測した事は、恐らくはないだろう。
それも未だに数は増え続けているのだ。
この調子では倍に増えても可笑しくはない。
もしもそうなれば、俺達は6万ものノイズと戦わなくてはいけなくなる。
いや、俺達と言う言い方は間違いだろう。
闘う力を持たない俺達大人は見ているだけで、実際に戦うのはたった3人の少女達だけ。
それもその内の1人――響くんはとてもではないが戦わせられない。
―――2対6万―――
勝てる見込み等あるはずもない絶望的な数字、絶望的な戦力差。
更には確認できるだけでかなりの個体がこれまでに観測された事のない未知の新種タイプばかり。
実力もその能力も未知数なまま、数の差も絶望的。
何もかもが絶望的なこの状況において最も正しい判断は≪逃走≫だろう。
此処は撤退し、機を改めるのがベストなのだと分かる。
分かるのだが―――――
「―――それは出来ん」
――即座に自らの考えを否定する。
約束したのだ。
今もなお戦う2人を、未来くんのあの姿を見ても耐えてくれている響くんと約束したのだ。
未来くんを助けると、取り戻すと。
だから退けない。
例え待ち受けるのが絶望だとしても、大人として交わした約束を無下にする真似などしてたまるか。
「藤尭ッ!!翼とクリスに人命救助を優先する様に伝えろッ!!」
「で、ですがそれだと敵装者と未来さんがッ!!」
「――そちらは俺が出るッ!!」
弦十郎の言葉に二課がざわつく。
無理もない、司令でありシンフォギアを持たない弦十郎が出撃するのは危険極まりない行為であり、この状況で飛び出そうとする弦十郎の言葉に困惑するのも無理はない。
だが同時に納得も出来る。
弦十郎の実力は誰もが知っている。
ルナアタック事件の際には正体を現した了子さん―――ネフシュタンの鎧を身に纏ったフィーネと単機で闘い、あと一歩の所まで追い詰める活躍を見せた。
その弦十郎であれば敵装者と未来、両者を相手にしてももしや……と言う期待感が無いと言えば嘘になるだろう。
だがそれは―――
「駄目ですよッ!!まだ外にノイズがいるこの状況で司令が出撃するのは危険すぎますッ!!」
「そ、そうですよ師匠!!師匠が出るなら私がッ!!」
「それは許可出来んと言った筈だ!!」
外へ、あの戦場へ行く。
それはシンフォギアを持たない弦十郎にとってノイズと接敵する可能性が生まれる事。
ノイズとの接触――それは死への一方通行でしかない。
シンフォギアを纏う彼女達とは違い、弦十郎は力があってもただの人間。
ノイズ反応が未だに残っており、迫るノイズの大軍もいるこの状況で弦十郎が出れば、ほぼ間違いなくノイズと接敵し―――死ぬだろう。
だが、それしかないのだ。
響くんは胸に宿るガングニールの浸食をこれ以上させない為にもシンフォギアを纏わせる事は出来ない。
翼とクリスは避難活動している間は動けない。
緒川は敵装者――月読調を移送中なので動けない。
必要なのだ、もう1人誰か動ける人間が必要なのだ。
そしてそれを成せるのは――この場において1人だけ。
「可能な限りは気を付けるさ!!海面へと上昇させろッ!!」
「司令ッ!!」
「師匠ッ!!」
向けられる静止。
分かっている、今からするのがどれだけ危険で愚かな行為なのかを―――理解している。
仮に敵装者、そして未来くんを止められたとしてもノイズを相手に出来る事など何もない。
待っているのは――死だろう。
だが、それでも止められないのだ。
響くんの師匠として、二課の司令として、大人として、止まるわけには行かないのだ!!
「――――え?え、あ…嘘、これって…し、司令待ってくださいッ!!」
「どうした友里ッ!?翼達に何かあったのかッ!?」
「い、いえ…その…」
珍しく友里が言いよどむ。
彼女らしからぬ事に弦十郎は催促する様にもう一度彼女の名前を呼ぶと―――
「せ、接近してくるノイズの大軍から―――通信が届いてます」
―――――――――――――は?
つう、しん?
今、通信と言ったか?
ノイズが?通信?
理解出来ない、一瞬冗談かと思ったが彼女が元々冗談を言う性格で無い事、そしてこの状況で言うわけがないとすぐにその可能性を断ち切る。
彼女の言葉は本当なのだろうと理解するが………やはりその内容には理解が出来ずにいた。
だが、時間を無駄には出来ないと弦十郎は一度理解出来ない事を頭の外へと追いやり、現実だけを見る。
「―――なんと、言ってきている?」
「え、あ、はい。の、ノイズからの通信は全て内容は同じ――――」
≪我等此れより人命救助並びにノイズ討伐へと参加する。貴艦も協力されたし≫
ちなみにだけど、この時点での班別関係なくの総数だと11万くらいです