セレナが何故か蘇って記憶を無くしてキャロル陣営に味方する話 作:にゃるまる
空中飛行型輸送用アルカ・ノイズ(443)
このアルカ・ノイズを覚えている人はどれだけいるだろうか。
以前にソロモンの杖移送任務の際(42話参照)にセレナが搭乗したアルカ・ノイズである彼だが、その役割は名前にある通り輸送任務が主である。
施されたステルス機能と大規模な輸送能力がその証拠だろう。
一応武装こそ施されているがそれはあくまで迎撃を主とした装備。
前線に配備されるのではなく、あくまで後方から輸送や移動拠点として用いられる事が大前提に開発されのがこのアルカ・ノイズであったのだが―――
それはもう過去の事だ。
≪スクランブル!!スクランブル!!マスターから指示が降りた!!全搭載アルカ・ノイズ航空部隊は出撃させろッ!!≫
≪総員第1種戦闘配置ッ!!手の空いている奴は全員対空機銃へ登れッ!!≫
≪主砲、副砲準備よーしッ!!対空対地戦闘よーしッ!!≫
443が今居るのは最前線。
輸送用アルカ・ノイズであるはずの彼がどうしてこんな最前線にいるのか?
それは――彼が改造を受けたからだ。
今の彼は輸送用なんかではない。
航空アルカ・ノイズを発艦させるカタパルトを前部に4つ、左右片面に8つずつ。
甲板には巨大すぎる主砲と副砲がそびえ立ち、近づく敵航空戦力を叩き落としてやると言う覚悟を形にしたかのように引き詰められた対空機銃の数々。
これが今の彼の姿
――戦闘班航空部隊旗艦 航空空母戦艦型アルカ・ノイズ(443)である。
前線司令部としての機能、そして空母と戦艦としての機能まで付けられた支援も攻撃も可能となった航空部隊主力の1つとなっている。
そんな443のカタパルトから飛び出していくのは無数の戦闘機――否、戦闘機の様な形をしたアルカ・ノイズ達。
彼らこそこの航空部隊においての最大の主力である≪戦闘機型アルカ・ノイズ≫だ。
セレナが彼らを開発する段階で最も優先したのは、武装である。
そもそもノイズの戦闘方法は基本的には体当たりか近接戦闘のどちらかだ。
一部例外があるが、それでも大体はそれで合っているだろう。
しかし、ノイズがそうだからアルカ・ノイズもそうしましょうとならないのがセレナだ。
彼女が生み出したのは――銃。
無論ただの銃ではノイズが持つ位相差障壁の前ではダメージにならない。
彼女が作り出したのは、今や全アルカ・ノイズが持っているシンフォギアのデータを利用して改造された解剖器官を銃弾に搭載した物だ。
確かにこれならばノイズの位相差障壁を破れるだろう。
――だがその作業は果てしなく難しい。
解剖器官を搭載した銃弾、それはつまり―――銃弾サイズのアルカ・ノイズを作るのと変わらない。
作業だけでどれだけの時間を必要とするのか分からないこの銃弾作成だったが、セレナはそれを成功させるどころか自動生産化にも成功してみせたのだ。
そのおかげでアルカ・ノイズの武装に《銃》が登場し、彼らの様な武器を持ったアルカ・ノイズ達が生まれたのだ。
≪ソング1より各機 これよりマスターからの指示を伝える。一字一句たりとも聞き逃すなよ≫
彼ら航空部隊に与えられた任務は3つ。
1つめは敵ノイズの航空兵力の排除、並びにその眼を航空部隊に釘付けにする事。
2つめは後方より来ている要救助者輸送用アルカ・ノイズの護衛。
そして3つ目は――――
≪――死ぬな!!これはマスターが指示した内容の中で最も優先度が高い指示である!!全機一機たりとも欠ける事なく生還せよッ!!これは厳命であるッ!!≫
――その内容に、思わず全員が小さく笑ってしまった。
指示を口にしたソング1でさえも小さく笑っている。
仕方がないだろう、まさか自分達に死ぬなと命じるなんて想像もしていなかった事だから。
彼らアルカ・ノイズは本来ならば使い捨ての兵士。
感情も言葉も、心も持つ事なく指示されるがままに散るのが役目の存在でしかなかった。
だが、それがどうだ。
感情を、言葉を、心を与えられ、その恩にこの命で報いようと思えば死ぬなと言う。
笑うな、と言う方が無理な話だ。
全員が小さく笑う。
笑って笑って笑って―――覚悟が決まった。
≪ソング1より全機へッ!!各機指示通りに行動せよッ!!絶対に死ぬなッ!!死んで我らがマスターを泣かせる愚か者がいたらあの世まで追いかけてぶち殺してやるからなッ!!≫
≪ソング22よりソング1、そうなったら是非ともお供させていただくでありますッ!!マスターを泣かせる奴はぶちころしてやりましょうッ!!≫
≪ソング31よりソング1、俺も着いて行くぞッ!!≫
≪ソング47よりソング1、喜んでお供させてもらうぞッ!!≫
笑い声と共に迫る戦場。
既に敵ノイズが此方を敵視し、敵航空戦力が接近しつつある。
戦場が迫って来る。
必然と高まる緊張に誰もが先ほどまでの様に笑い声をあげない。
だが、その心はもはや決まっている。
誰も死なず、誰も死なせない。
全員で生還し、再びマスターの下へ―――
その想いが、彼らを前へと進ませた。
≪ソング1より全機へッ!!
≪ ≪ ≪ ≪ ≪
空での戦闘が始まる頃。
水上においても動きがあった。
海面に浮かぶは無数の
彼らの眼が捉えるのは船を襲うノイズと抵抗する要救助者の姿。
救うべき相手、殺すべき相手を慎重に選び―――彼らは一斉に海面から飛び出した。
≪行くぞォォォッ!!空の連中になど後れを取るなァァァァァッ!!≫
≪ウォォォォォォォォォッッッ!!!!≫
雄叫びと共に姿を現したのは戦闘班海軍部隊。
海面から飛び出したそのどれもが見覚えのあるフィルムをしたアルカ・ノイズ達。
具体的に言えば某機動戦士に出てくるハイ○ックやら○ゴックやらザ○・マ〇ナーやらゼー・○ールやら。
ジ○ン水泳部と同じ姿をした彼ら、そんな彼らの姿から開発当時セレナが何にハマっていたのか、簡単に理解する事が出来る。
水上から飛び出した彼らはその勢いのまま敵ノイズへと対し攻撃を開始する。
ある物は機関銃を放ち、ある物は見覚えのあるヒートホークで切りかかり、ある物はその拳で殴りかかる。
≪くたばれノイズがぁぁッ!!!!≫
≪てめぇらの時代は終わりなんだよッ!!大人しくくたばって退場しやがれッ!!≫
≪ジークセレナッ!!ジークセレナッ!!≫
だがそんな見た目とは裏腹に実力は本物。
雄叫びと共に船の上に纏わり付いていたノイズを蹴散らし、船と要救助達の安全を確保していく。
その様子に軍人達は困惑するが、そんな彼らの頭上に迫るは無数の輸送用アルカ・ノイズ達。
ファッ○・ア○クルを連想させるそれら輸送型が次々と甲板に着陸していき、中から出てくるのは見慣れたアルカ・ノイズ達と某北○の拳の世界を生きていそうなモヒカン頭達、そして――ラ〇ウ。
≪行くぞッ!!我等地上部隊こそ戦闘班最強であると全ての者どもに知らしめろッ!!≫
≪ヒャッハァァァァッッッ!!!!≫
輸送型から次々と飛び出していくアルカ・ノイズ達。
彼らは船に降り立つと同時に先に戦闘を始めている水上部隊と共闘戦線を開始し、残ったアルカ・ノイズ達がマイクの様な機能で船上にいる軍人達に叫ぶ。
≪我々は皆さんの身の安全を確保しにまいりました!!これより皆さまをこの輸送部隊で安全な場所まで移送します!!どうか指示に従い行動してください!!≫
その内容に誰もが困惑する。
無理もない、彼らからすればこれまで絶対に勝てない≪敵≫でしかなかったノイズが突然に仲間割れを起し、その片方が流暢に言葉を使い、挙句に自分達を助けに来たと言うのだ。
信じろ、と言う方が無理な話である。
困惑、それが避難活動に支障をもたらす。
どうにか避難してほしいとアルカ・ノイズが改めてマイクを以て避難するように呼びかけようとして―――
≪くそったれッ!!一体抜かれたッ!!≫
聴こえてきた警告と共に一体のノイズが迫る。
その矛先は困惑する軍人達。
不味い、即座に身を挺して庇おうと駆けようとして―――
ノイズを無数の黒い手が襲った。
黒い手に捕まったノイズは破壊され、灰となって散っていく。
こんなことが出来るのはただ1人――
≪マスターッ!!≫
アルカ・ノイズの声と共に姿を現したのは、セレナ。
乗っていたアルカ・ノイズ――7742の背中から地上へと降り立ったセレナは叫ぶ。
困惑する軍人達を前に堂々と叫ぶ。
「我々は――私達は日本の特異災害対策機動部二課の者達です!!みなさんの安全を確保する為に参りました!!このノイズ達は――機密情報について詳しい説明をする事は出来ませんが、これだけは言えます。彼らは私達人類の味方ですッ!!困惑する気持ちも戸惑う気持ちも分かります…ですが今はどうか信じてくださいッ!!私達は皆さんを助けたいだけなんですッ!!」
セレナの叫び。
その内容はちょっと突けば見破られても可笑しくない嘘と彼女の本音が入り交ざった物。
その言葉を、その叫びを聞いた軍人達は――――
「――OK」
1人の男が前へと進み出てくる。
白髪の軍人、如何にも歴戦の猛者と言ったその威風堂々たる姿をした彼は輸送用のアルカ・ノイズに戸惑いながらも乗り込んでいく。
それが皮切りとなった、
軍人たちは戸惑いながらも白髪の軍人に続いて乗り込んでいく。
彼女の言葉を全て信じたわけではない、けれども最後の部分において嘘を言っていないとだけは分かった。
それだけで十分だ、乗り込むのに値する十分な理由となった。
次々と乗り込み、安全地帯――二課の潜水艦目掛けて飛んで行くアルカ・ノイズ達を見送りながらほっと安堵する。
1人でも多くの人を救いたい、その想いから自らも戦場へと行こうとして、不意にそれを見つける。
今まさに輸送用アルカ・ノイズに乗り込もうとしている軍人が落とした銀色のロケットペンダント。
堕ちた衝撃からだろう、ペンダントが開き中に入っている写真が目に入る。
軍人と――娘だろうか?幼い少女と一緒に笑顔で映っているその写真を見て、いけないと駆ける。
慌てて拾い上げ、飛び立とうとしているアルカ・ノイズを静止させて、男にペンダントを手渡す。
男は落した事に気付いていなかったのだろう。
受け取ったペンダントを大事そうに胸に抱きながら、英語で何度も口早にお礼を言う。
Thank you、Thank you、と。
その笑顔とお礼を受け取ったセレナはアルカ・ノイズに飛び立つ様に命じる。
名残惜しそうに何度も何度も手を振る軍人達を見送ったセレナ。
受け取った笑顔とお礼、それが彼女を勇気づける。
向かうべき場所はただ1つ、手を伸ばす先はただ1つ。
「――全アルカ・ノイズ隊は引き続きノイズ掃討と人命救助を継続してください」
≪了解しましたッ!!マスターは如何なさいますか?443へお避難をされては?≫
「いえ、私はこのまま―――未来お姉さんを助けに行きます」
――今こそ、彼女に貰った恩を返す時だ。
ジークセレナ!!